はじめに
知人から余った PC を譲り受けた。「インフラの勉強にちょうどいい」と思い、Proxmox をインストールして仮想マシンを建ててみることにした。
USB メモリを購入し、Proxmox の ISO ファイルをダウンロード。Rufus でブート USB を作成して、インストール自体は順調に進んだ。しかしネットワーク設定でどハマりした。同じ LAN にいるはずなのに、PC から Proxmox 管理画面へまったく繋がらない。
この記事は、そのときの試行錯誤と原因・解決策を備忘録としてまとめたものです。
Proxmox とは
Proxmox VE(Virtual Environment)は、ベアメタル型ハイパーバイザーの一種です。
| 項目 | Type 2(ホスト型) | Type 1(ベアメタル型)= Proxmox |
|---|---|---|
| 定義 | OS 上のアプリとして動作 | ハードウェアを直接制御 |
| 構造 | HW → OS → アプリ → VM | HW → ハイパーバイザー → VM |
| 性能 | ホスト OS のオーバーヘッドあり | リソースを最大限活用可能 |
| 管理 | ホスト OS の GUI 操作 | Web ブラウザ(:8006)でリモート管理 |
一般的な VirtualBox や VMware Workstation とは異なり、PC 全体が「サーバー」になるイメージです。インストール後はキーボードやモニターは不要で、別の PC のブラウザから管理画面にアクセスして操作します。
構築手順
こちらの記事を参考に構築しました(ありがとうございました)。
設定完了後、別 PC のブラウザで https://<IPアドレス>:8006 にアクセスすると
通常動作では管理画面が表示されます。
「プライバシーエラー」が出る場合
NET::ERR_CERT_AUTHORITY_INVALID と表示されますが、Proxmox が自己署名証明書を使用しているための警告です。LAN 内の自前サーバーなので危険性はなく、「詳細設定」→「〇〇にアクセスする(安全ではありません)」で進めて問題ありません。
ハマったポイント:中継器 = スイッチではない
状況
自宅のネットワーク構成はこうなっていた。
- ルーターから Wi-Fi 電波を飛ばしている
- 部屋の隅に TP-Link の Wi-Fi 中継器が 2 台ある
- PC は中継器 A の有線 LAN ポートに接続
- Proxmox サーバーも中継器 B の有線 LAN ポートに接続
ビフォー:PC と Proxmox がそれぞれ別の中継器に有線接続されている構成
IP アドレスは同じ 192.168.0.xxx セグメントに割り当てられており、「同一 LAN にいるから繋がるはず」と思っていた。ところが ping は一切通らず、管理画面にもアクセスできない。
原因:TP-Link 中継器の MAC アドレス書き換え(プロキシモード)
調べて分かったのが、TP-Link の Wi-Fi 中継器は有線ポートに接続した機器の MAC アドレスを書き換えて親機(ルーター)へ転送するという仕様だ。
[ルーター 192.168.0.1]
│
├─ [中継器 A] ──(有線)── PC ← MAC アドレスが中継器のものに書き換え済み
│
└─ [中継器 B] ──(有線)── Proxmox ← MAC アドレスが中継器のものに書き換え済み
↑
同じ /24 セグメントでも、相互に直接通信できない
IP アドレスは同じセグメントに見えていても、ARP(IPアドレスからMACアドレスを解決する仕組み)が機能しないため、パケットが届かない。
ルーターには 2 台の機器が見えているが、中継器がそれぞれの MAC アドレスを「握りつぶして」いるため、同士の直接通信は不可能になる。「中継器 = スイッチ(ハブ)と同じ」という思い込みが罠だった。
解決策
即効策:Proxmox のケーブルを PC と同じ中継器のポートに差し替える。
アフター:中継器 1 台にハブを接続し、PC と Proxmox をまとめた構成
同じ中継器のポートに繋げば、中継器内部での転送となり MAC アドレス書き換えの影響を受けずに通信できる。
根本解決策:中継器を「AP(アクセスポイント)モード」または「透過モード」に変更する。このモードでは MAC アドレスの書き換えが行われないため、別々のポートに繋いでも疎通できるようになる。
ネットワーク設定・診断コマンドまとめ
Proxmox(Debian ベース)にコンソールやシェルで接続する際によく使ったコマンドをまとめておく。
IP アドレスの確認
ip a
現在のネットワークインターフェース一覧と IP アドレスを表示する。これが「現在の実際の状態」。
起動画面(黒い画面)に表示される 接続先IP アドレスは /etc/issue という静的なテキストファイルの内容であり、実際のネットワーク設定とは無関係です。設定変更後は必ず ip a で確認すること。
出力例:
2: eno1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500
link/ether xx:xx:xx:xx:xx:xx brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
3: vmbr0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500
inet 192.168.0.200/24 brd 192.168.0.255 scope global vmbr0
vmbr0 が Proxmox の仮想ブリッジ。ここに正しい IP が割り当てられていれば OK。
ルーティングテーブルの確認
ip route show
どの宛先に対してどのインターフェースを使うかが分かる。
出力例:
default via 192.168.0.1 dev vmbr0 proto static
192.168.0.0/24 dev vmbr0 proto kernel scope link src 192.168.0.200
default via 192.168.0.1 がデフォルトゲートウェイ(ルーター)を示す。ここが正しくないと外部への通信ができない。
疎通確認
# PC から Proxmox への疎通確認(PC 側で実行)
ping 192.168.0.200
まとめ
| 現象 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| ping が通らない | 別々の TP-Link 中継器に有線接続していた | 同じ中継器のポートにまとめる / AP モードに変更 |
| 起動画面の IP が古い |
/etc/issue は静的なテキストで実状態と無関係 |
ip a コマンドで確認する |
| ブラウザで証明書エラー | Proxmox は自己署名証明書を使用 | 警告をスキップして進める(LAN 内利用なら問題なし) |
Wi-Fi 中継器は「スイッチの延長」ではなく、MAC アドレスを操作するプロキシとして動作する場合があります。家庭用ネットワーク機器の「見えない仕様」に振り回されたいい経験でした。
環境情報
- Proxmox VE 8.x
- TP-Link Wi-Fi 中継器(RE シリーズ)
- ホスト PC: 中古デスクトップ PC
参考記事: 自宅でProxmoxを動かしてみた


