自己紹介
はじめまして。株式会社LITALICOで、障害福祉施設向けSaaSのPdMをしている@sasisusesoumiです。 2025年7月に現職へ入社し、ちょうど半年が経過しました。 前職ではHR業界にて、新規事業の営業やカスタマーサクセスなど、ビジネスサイドから事業成長を推進していました。
本記事では、SaaS事業においてPdMが果たすべき役割を「役職」や「業務」ではなく「ミッション」として捉え、入社半年でパフォーマンスを発揮するために実践してきた「手触り感」のあるアプローチについてまとめます。
1. PdMを「ミッション」から捉え直す
前職時代はまだSaaS黎明期でインサイドセールスやカスタマーサクセスというものが日本に広まりつつある時代でした。私もカスタマーサクセスとして模索をする中で、「カスタマーサクセスは概念」と捉え、「事業成長と顧客の成功の両立」を目指し、ビジネスモデルや事業フェーズにあわせて役割を定義し自社におけるあるべき姿を落とし込むようにしていました。
今、PdMも再定義が必要
AIの普及により、要件定義や仕様策定といった「PdM的な業務」の敷居は下がり、ビジネス側やエンジニアとの業務の境目が曖昧になってきました。
だからこそ今、PdMもタスクベースではなく「概念」として定義し直す必要があります。
私が考えるPdMの定義は以下の通りです。
ビジョン実現に向け、顧客価値と事業成長の両輪を最大化する。そのため、プロダクトのあり方と取り組みを、精度高く意思決定すること。
意思決定こそPdMとして最もレバレッジがかかる点であり、かつビジネス、顧客、技術の3軸で具体から抽象までバランスよく解像度を持つことが求められるため専門性が高いと考えています。
これを実現するためのコアスキルこそが、プロダクトを捉える4階層「Core・Why・What・How」の定義と、階層ごとの接続性を高い解像度で取り扱う力です。

2. なぜ「接続性」の言語化が重要なのか?
特にSaaSにおいて、「Core・Why・What・How」の「接続性」を言語化することは非常に重要です。理由は大きく2つあります。
① プロダクトの数値だけでは「価値」が見えないから
SaaSにおいて、プロダクトの利用ログ(数値)と、顧客が実際に感じている価値は必ずしもイコールではありません。
私自身のカスタマーサクセス時代の経験としても、「機能は使われているのに解約される」、あるいは逆に「ログ上はあまり使われていないのに、ROIを感じて満足している」というケースに何度も直面しました。
SaaSは単一機能の利用有無やログイン頻度等で価値を測ることが難しく、複数の機能の組み合わせから受け取る価値を構造的に捉える必要があります。だからこそ、プロダクトの数値だけを見るのではなく、「届ける機能や体験(What/How)が顧客価値にどう影響し、それが結果として事業数値(Why)にどう跳ね返るか」というロジック(接続性)を、PdMが言語化する必要があります。
② 事業構造の複雑化(マルチプロダクト/BPaaS)
単一プロダクトであればシンプルな構造で管理できたものも、マルチプロダクト化やBPaaS化が進むと、ビジョンや顧客価値、事業戦略を単一のプロダクトだけで切り出せない部分が出てきます。
複数のサービスや機能群を組み合わせ、相互作用により独自価値を出す事業構造においては、個別のプロダクトごとの階層の言語化だけでなく、「全体としてどういうCore/Why/What/Howになっているか」という接続性も捉える必要があります。ここがブレると、事業戦略やビジョンを正しく捉え全体最適を図ることができません。
3. 階層ごとの接続性へ手触り感を持つために実践した4つのアクション
既存事業にはすでに一定の「Core/Why/What/How」が存在しますが、PdMはそれを自分の言葉で理解し、取り扱い続けなければなりません。「手触り感」を持って理解するために、私が入社半年間で実践した具体的なアクションを紹介します。
① 「Core/Why」の解像度を上げる:営業としての商談実施
事業のCore(プロダクトビジョン・戦略)やWhy(なぜ自社がやるのか/誰にどんな価値を届けるのか)を腹落ちさせるため、実際に営業担当として商談を行いました。
自ら顧客と対峙し、自社の価値訴求を言語化することで、「お客様は誰か」「お客様はなにに困っているか」「なぜ自社が選ばれるのか」ということを言語化していきます。
特に競合比較表を作成して3Cを捉え直すことが非常に有用でした。いわゆるカタログスペックによる比較表ではなく、それも含めターゲットごとに価値ベースで自社の強み(訴求ポイント)と競合の強みをまとめて比較表を作成します。
そうすることで自社がどのようなお客様に、何を届けることで、選ばれているのか、それによりどのようなビジョンを実現しているのかと言うことが手触り感を持って捉えられるようになります。
また副次的な効果ではありますが、営業シーンで競合比較を整理する中で、自ずと競合のプライシングやプロダクトの仕様、開発傾向(スピードや何に力を入れているかなど)への理解が深まったことも大変役に立ちました。
② 「Why」と「What」を結びつける:顧客インタビュー
「Why」と「What」をつなぐために有効だったことはふたつあり、ひとつは顧客インタビューです。LITALICOではお客様理解のため顧客訪問にかける工数を惜しみません。ときには飛行機や新幹線をつかって遠方に足を運ぶこともあります。
私自身も入社後、一番最初に行ったことはひたすら顧客訪問して、業務フローやプロダクトの利用状況についてインタビューを行うことでした。特に障害福祉領域はまだまだアナログな業務も残っている環境です。パソコンは一人1台ない、FAXは現役で活躍しているなど、私の前職環境とのギャップも大きいものでした。そのため行かずして「私たちのお客様はこういう方々だ」というペルソナを決めつけてしまうと私のアウトプットも大きくずれたものになっていたと思います。
訪問を踏まえ、業務フロー図を書き出し、精度を上げる過程で反芻することで、「why(誰にどのような価値を届けるか)」と「what(カスタマージャーニーやユーザー体験)」の接続性に手触り感を持つことができました。
また、もう一つの狙いとして、実際に訪問することでプロダクトが届けられている価値はもちろん、プロダクトがまだ解消できていない課題を見つけることができます。
事務所の張り紙や手書きの書類など、訪問しないと見つけられないヒントを得ることができます。
③ 「Why」と「What」と結びつける:オンボーディングの実践
「Why」と「What」をつなぐために有効だったことのふたつめは、実際に自分でお客様のオンボーディングをすることでした。
実際に顧客にプロダクトを導入し定着まで支援することで、顧客はどういったプロセスを辿り価値に辿り着くのか目の当たりにし、その結果、具体的に何を喜んでいるのか?ということへ理解を深めます。
言葉としてはCSから共有を受けたり、見知ったことでも、実際に目の前のお客様が「プロダクトをどのように操作して」「どのような温度感で何に喜んでいるのか」という手触り感はなにものにも変え難い感覚だと思います。
これがあるだけで、ロードマップの検討時もこれを実現したらこの人が喜びそうだなと顔が浮かんでくるようになります。
また、初見のお客様がプロダクトを操作した際に躓いたり、間違えやすい点を理解し、インターフェースの改善案を見つけることができたのも収穫でした。
④ 事業メトリクスとプロダクトの接続
①②③の活動を通して、「Core/Why/What」の定義や接続性について理解を深めました。 その経験を踏まえて事業メトリクスを眺めることで、単なる数字の羅列ではなく、意味のあるデータとして捉えられるようになります。
- 受失注要因や解約要因を自分の手触り感に照らした際、n1のイメージが浮かび上がってくる
- 各種KPIを見た際、ビジネスオペレーションが浮かび上がってくる
具体と抽象をつなげて捉えられることにより、「声の大きい誰か」に引っ張られることなく、よりフラットに自分の言葉で意思決定を言語化できるようになります。また、お客様に価値を届けることが翻って、事業メトリクスにどのようにヒットして、どう事業成長につながるのか勘所が掴めてきます。
おわりに
入社して半年、これらの取り組みを通じて「Core/Why/What/How」の接続性を意識してきました。 もちろん、たった半年で全てを完全に理解できたわけではありません。あくまでもPdMとして考え方の土台ができはじめたくらいの感覚に近いです。
しかし、AIによって「作る」ことのハードルが下がった時代だからこそ、「ビジョン実現に向け、顧客価値と事業成長の両輪で最大化する」専門家としての矜持をもち、 現場の手触り感を大切にしながら、向き合い続けたいと考えています。
さいごに
LITALICOでは1プロダクトを1PdMが担当しており、本質的に顧客価値と事業の成長に向き合える環境です。ご興味ある方はぜひご応募お待ちしております。