はじめに
最近はクラウド環境が増えてきて、1からOSインストールを実施する機会は減っているかもしれませんが、VirtualBox等でちょっとテストマシンを作ったり、クラウド利用料などのお金の心配せずにマシンを使いたいといった場合にISOファイルやDVDからインストールするような場合も多々あるかと思います。
私はVirtualBoxでテスト用仮想マシンを作ることが多いですが、毎回OSインストール→セットアップするのも面倒なので、あらかじめPXEブート
構成を作っておき、Kickstart
でテストマシンを作成することをよくやっています。
今まではCentOS7系OSでPXEブート環境を作っていましたが、今回CentOS8系OSでブート環境を作ったので内容を残しておこうと思います。
PXEブートとは
Preboot eXecution Environment(PXE、ピー・エックス・イー、ピクシー)は、コンピュータのブート環境のひとつ。インテルの策定したネットワークブートの規格である。
ネットワークブートを利用することにより、ストレージをもたないクライアントコンピュータや、ストレージに別のOSが導入されているクライアントコンピュータがサーバ上のOSイメージを使用して起動できる。
PXEブートは基本的に、OSがインストールされていない状態からのブートを前提としているため、ネットワーク経由でブートイメージを取得する必要があります。
そのため、Wikipediaにも記載されている通り、ブートイメージを配布するためのTFTPサーバ
とTFTPサーバと通信するためのアドレスを払い出すDHCPサーバ
が必須となります。
PXEブートの起動シーケンス
PXEブート時は起動直後のDHCP要求で、IPアドレスとともに起動用ブートイメージが格納されているTFTPサーバの場所とブートイメージファイル名を要求します。
DHCPサーバから応答を受け取ると、受け取った情報に従ってTFTPサーバにブートイメージとブート構成ファイルを要求することで、OSの起動に必要となるOSイメージファイルやOS構成ファイルの場所を把握し、ブート構成ファイルに記載されている内容に従って、指定されたプロトコルでOSイメージ等をダウンロードします。(下図参照)
今回の記事ではPXEの起動で必要となるDHCPサーバ、TFTPサーバの構築まで行います。
DHCP構成を考える
DHCPサービスはブロードキャストで通知されるDHCPリクエスト
を受け付けるため、基本的に構築するマシンと同一ネットワーク上に設置設置する必要があります。
※途中の機器でDHCPリレー
の設定が行えるようであれば、別のネットワーク上に設置することもできます。
また、同一ネットワーク上に複数のDHCPサーバが存在した場合の動作は早い者勝ちで意図しない動作となってしまうので、間違ってもVirtualBox等で作成したDHCPサービスが動いている仮想マシンをブリッジで社内ネットワークに繋ぐことはやめましょう!!
ただ、テスト環境でPXEブートを行いたいけど、DHCPサーバが簡易的なものでPXEブートの設定ができなかったり、テストのためだけにDHCPサーバを集約したりするのは面倒なので、今回はProxy DHCP
機能を使うことで既存のDHCPサーバと同居できる構成とします。
Proxy DHCPとは
DHCPサーバが複数存在した場合の動作は早い者勝ちで、先に受け取ったDHCPサーバのアドレスを使用しますが、Proxy DHCP機能を使用すると、PXEブート
する際に使用するnext-server
やboot-filename
等のパラメータのみDHCP Offer
で送信して、それ以外は他DHCPサーバのパラメータを使用することになります。
大雑把に言うと、PXEブート用のパラメータのみ上書きするイメージです。
そのため、他DHCPサーバが動作していても、ネットワークに影響を及ぼすことなく同居することが可能です。
※他DHCPサーバがPXEブート機能も提供している場合はその限りではないのでご注意を。
構築環境
今回はVirtualBoxで以下構成の仮想マシンにPXEブート
環境をセットアップします。
ネットワーク1
はゲートウェイは設定せずホストオンリーのセグメントのアドレス(192.168.56.105)を固定で適当に割り当てて、ネットワーク2
はDHCPでアドレスをもらうようにしておきます。
また、Proxy DHCP
を使用するため、VirtualBoxのDHCP機能は有効のままとしておきます。
構成 | 種別 |
---|---|
OS | CentOS 8.2.2004 |
ソフトウェアの選択 | 最小限のインストール |
ネットワーク1 | ホストオンリーアダプター |
ネットワーク2 | NAT(パッケージインストール用) |
構築方法
本構築では以下手順でPXEサーバ
構築まで進めます。
PXEサーバを使ったKickstart
などはまた別途。
- SELinuxの停止
- パッケージインストール
- DHCPサービスセットアップ
- TFTP用設定
- dnsmasqサービス有効化
- Apache設定
- Apacheサービス有効化
- firewalld許可設定
SELinuxの停止
作業に都合が悪いのでSELinux
を停止しておきます。
sudo setenforce permissive
sudo sed -i -e "/^SELINUX=/s/=.*/=disabled/g" /etc/selinux/config
パッケージインストール
以下パッケージをインストールします。
尚、dnsmasq
サービスはDHCP機能、Proxy DHCP機能だけではなく、TFTP機能も含まれるため、個別にTFTPサービスをインストールことはせず、今回はdnsmasq
パッケージのみインストールすることとします。
インストールパッケージ | 用途 |
---|---|
dnsmasq | DHCP、TFTP用 |
syslinux | ブート用ファイル取得用 |
httpd | Kickstart等でのOSイメージ転送等 |
sudo dnf -y install dnsmasq syslinux httpd
DHCPサービスセットアップ
今回PXEブートで使用するネットワークはVirtualBox
のホストオンリーネットワーク
を使用します。
アドレス等は各環境に合わせて適宜修正して下さい。
sudo cat << _EOF_ | sudo tee /etc/dnsmasq.d/pxeboot.conf
# DHCPサービス設定
dhcp-range=192.168.56.0,proxy
log-dhcp
dhcp-boot=pxelinux.0,192.168.56.105
pxe-service=x86PC,"Network Boot",pxelinux,192.168.56.105
# TFTPサービス設定
enable-tftp
tftp-root=/tftpboot
_EOF_
※単純なヒアドキュメントの書き方だと権限がなく書き込めなかったためteeにパイプして書き込み。
TFTP用設定
PXEブート用ファイル格納ディレクトリ作成と必要モジュールをTFTPディレクトリに格納します。
sudo mkdir -p /tftpboot/pxelinux.cfg
sudo cp -p /usr/share/syslinux/{pxelinux.0,ldlinux.c32,libcom32.c32,libutil.c32} /tftpboot/
dnsmasqサービス有効化
DHCP、TFTPの設定ができたらdnsmasq
サービスを有効化します。
sudo systemctl enable --now dnsmasq
Apache設定
PXEブートを使用して、実際に各OSをネットワーク経由でインストールするにはHTTP/HTTPS
やNFS
等でOSイメージやOS設定ファイルを転送する必要があります。
今回はHTTPでOSイメージを転送することを想定してApache
のセットアップを行っておきます。
sudo mkdir /pxeboot
sudo cat << _EOF_ | sudo tee /etc/httpd/conf.d/pxeboot.conf
Alias /pxeboot/ "/pxeboot/"
<Directory "/pxeboot">
Options Indexes MultiViews FollowSymlinks
AllowOverride None
Require all granted
</Directory>
_EOF_
Apacheサービス有効化
httpd
サービスを有効化します。
sudo systemctl enable --now httpd
firewalld許可設定
firewalld
を有効にしている場合は、以下サービスに対してfIrewalld
の許可設定も行います。
許可サービス名 | ポート番号 |
---|---|
dhcp | 67/udp |
proxy-dhcp | 4011/udp |
tftp | 69/udp |
http | 80/tcp |
https | 443/tcp |
sudo firewall-cmd --add-service=dhcp --zone=public --permanent
sudo firewall-cmd --add-service=proxy-dhcp --zone=public --permanent
sudo firewall-cmd --add-service=tftp --zone=public --permanent
sudo firewall-cmd --add-service=http --zone=public --permanent
sudo firewall-cmd --add-service=https --zone=public --permanent
sudo firewall-cmd --reload
まとめ
ここまでの構築でPXEブートする環境が整いました。
実際にPXEサーバを使用したOSインストールについては次回紹介します。