「Obsidianと生成AIを組み合わせるのが流行ってるらしい」と知ったとき、正直最初の反応は「また新しいツールか」だった。
普段からClaudeやChatGPTは使っている。でも「メモツールとAIを連携させる」というのは、なんとなくハードルが高そうで後回しにしてきた。セットアップが面倒そう、続かなさそう、そもそも自分に必要なのかよくわからない。
そういう人に向けて書く。流行りに乗って試してみたら、予想より「あ、これか」という体験があったので。
「第二の脳」って何の話?
PKM(Personal Knowledge Management)という言葉をご存知だろうか。自分の知識・思考・情報を体系的に管理する考え方で、「第二の脳を外部に作る」と表現されることが多い。
もとをたどると、社会学者ニクラス・ルーマンが紙のカードを使って構築した「Zettelkasten(ツェッテルカステン)」という手法がある。アイデアをカード単位でメモし、互いにリンクして網の目のようなネットワークを育てていく。ルーマンはこのシステムを使って膨大な著書と論文を残した。
Zettelkasten(ツェッテルカステン) とはドイツ語で「索引箱」の意味。ルーマンが体系化した知識管理手法として知られる。
ObsidianはこのZettelkastenの考え方をデジタルで実践するのに向いたツールだ。ノート間のリンク、グラフビューによるネットワーク可視化、ローカル保存によるプライバシー。「クラウドに個人の思考を全部預けることへの抵抗感がある」という人にも使いやすい。
「EvernoteやNotionと何が違うの?」という疑問はもっともだ。Obsidianの特徴は、ノートがすべて手元のMarkdownファイルとして保存されることと、使うAIを自分で選べる点にある。Notionのようにサービス側が提供するAIに縛られない。クラウドサービスが終了しても手元にデータが残る。この2点を気にしない人はNotionやEvernoteで十分だと思う。
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なぜ今「AIと組み合わせる」のか
PKM×AIの流れが加速しているのは、気のせいではない。
AI研究者のAndrej Karpathyが2026年4月3日にXで「LLM Knowledge Bases」を投稿し、翌4日にそのアーキテクチャをまとめたGist「llm-wiki.md」を公開した。この投稿は2週間で5,000スター超を集め(2026-04-22時点のGist確認値)、話題になった。
技術的な詳細はひとまずおいておく。ポイントは「AIをメモシステムと組み合わせる」という発想が、いまエンジニア・研究者の間でかなり本気で議論されているということだ。
日本語圏でも、ZennやQiitaでObsidian×AIの実践記事が増えている印象がある(件数の公式統計は確認できていないが、2025年後半からAIプラグインやMCP連携の記事が目に入るようになってきた)。
「ChatGPTでもできるんじゃないの?」——その通りだ。AIはClaudeでもChatGPTでも、チャット画面が使えるものであれば何でも試せる。「Claude Codeを使わないと無理」ということはまったくない。私自身、Obsidianとの連携でやっているのはチャット画面へのコピペだけだ。
実際にやってみた
「エンジニアじゃないと無理でしょ」と思ったなら、それは違う。
私がやったセットアップは以下の4ステップだけだ。
- ObsidianをPCにインストール(obsidian.md から、GUI操作のみで完了)
- Obsidian Web Clipperを入れる(Chrome・Edge・Firefox・Safariなど主要ブラウザ対応の公式拡張。気になった記事をそのままObsidianに保存できる)
- メモを書いたらClaudeのチャット画面に貼り付けて「このメモと関連しそうな他のメモを教えて」と頼む
- Claudeが提案したリンクをObsidianに手動で追記する(提案が外れることもあるので、最終確認は自分でする)
コマンドラインは一切使っていない。プラグインも今のところWeb Clipperだけ。プログラムも書いていない。チャットとコピペだけだ。
GTDを知っている人向けに補足すると、私はGTDとZettelkastenを重ねる形で実験しているが、GitHubのような開発者向けツールは不要だ。Obsidianをメモ帳として使い始めれば十分で、GTDもZettelkastenも後から考えればいい。
使ってみてわかったこと
試してみて、一番刺さった体験は「チャットの返答が消えない」ことだった。
普段、ClaudeやChatGPTに何かを聞くとき、その答えはチャット画面の中にしか存在しない。翌日には流れていて、もう一度同じ文脈で聞き直すには履歴を掘り返すか、ゼロから再現するしかない。そのもどかしさを、ずっと感じていた。
Obsidianと組み合わせることで、AIの返答を「自分のノートの一部」として保存できるようになった。ちょっとした思考のかけらが積み重なって、後で「あのとき考えたこと」として参照できる。これを使い始めてから「AIは思考のパートナーだ」という実感が出てきた。
そしてObsidianを選ぶ理由がもう一つある。保存したメモ同士をリンクでつなげることで、別々に書いたアイデアが後から関係していることに気づける。NotionやGoogleドキュメントにも保存はできるが、ノート間のリンクをグラフとして可視化する機能はObsidianの強みだ。「あのメモとこのメモ、実はつながってた」という発見が、思考の整理という感覚の正体だと思っている。
AIとの対話は、考えを引き出す道具として機能する。一人で頭の中でこねくり回していると煮詰まるが、AIに向かって言語化すると思考が整理される。その整理された文章をObsidianに残す。これが「記憶の外部化装置」という言葉の意味だと思う。
Claude Codeと組み合わせると、作業ログが自動的にブログのネタになる仕組みも作れる。詳しくは「Claude Code との作業ログが勝手にブログのネタになる仕組みを作った」を参照してほしい。
冒頭に紹介したルーマンのZettelkastenも、本質は同じだ。紙のカードで考えを外部化し、カード同士のリンクでネットワークを作る。「自分の外側に、自分の思考を蓄積した知識体系を育てる」という行為は、AI以前から存在していた。AIはその外部化を加速させるツールとして機能している。
AIを「思考のパートナー」として4軸(タスク管理・リサーチ・執筆・発信)で実装した全体像は「タスク管理・リサーチ・記事公開を全部AIに振ったら、人間はどこで判断すればよくなったか」で紹介しています。
試し始めてまだ日が浅いが、少なくとも情報を扱う意識は変わった。「チャットして終わり」ではなく「残して育てる」という感覚が、思考の整理の仕方を変えている実感がある。
まだできていないこと・正直な課題
成功体験だけ書いていては不誠実なので、できていないことも書いておく。
まず、習慣化が始まったばかりで、続くかどうかは正直わからない。試し始めたのはここ数日の話だ。「最初は面白いが徐々に面倒になる」パターンは、メモツール系では何度も経験している。今のところモチベーションは高いが、1か月後に同じことを言えるかは不明だ。
GTD+Zettelkasten統合フローが定着するかも未知数だ。GitHubベースのGTDにZettelkastenを重ねるというアイデアは面白いと思っているが、両方を維持するコストが高くなれば、どちらかが崩れる可能性はある。
グラフビューがどれくらい役に立つかも、まだわからない。ノート間のリンクが増えてネットワークが育ったとき初めて価値が出てくるはずで、今の段階では「きれいだな」で終わっている。
そしてリンクを手動で追記するのが面倒になるかもしれないという懸念がある。今はClaudeに提案してもらいObsidianに貼り付けるという作業が面白い段階だが、それが「義務感」に変わった瞬間に続かなくなりそうだ。
まとめ: まず1ステップで十分
「Obsidian×生成AI」と聞くと、複雑なセットアップや難しい理論が必要そうに見える。試す前の自分もそう思っていた。
実際にやってみると、そうではなかった。Obsidianをインストールして、普通にメモを書き始める。それだけで十分だ。AIとの連携も、チャット画面に貼り付けて「関連しそうなメモある?」と聞くだけでいい。
「第二の脳」とか「Zettelkasten」とか、言葉は大げさだが、中身はシンプルだ。書いたことを消えない場所に置いて、後で参照できるようにする。それだけのことを、少し賢く実践するための組み合わせだと思っている。
流行りに乗ってみた結果、「あ、これ普通に使えるな」という体験があった。同じように二の足を踏んでいる人がいるなら、まずObsidianをメモ帳として使い始めるだけでいい。難しく考えるのは、しばらく使ってからで十分だ。
AIツールを日常に取り込む次のステップとして、Claude Codeの活用事例は「【実例あり】Claude Codeで非エンジニアができること——タスク管理・ブログ・健康管理をAIに任せた」で具体的に紹介しています。
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