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人間の発言15回、AIの出力約2,000行——Claude Codeで本を書いた2日間の全工程

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Last updated at Posted at 2026-05-02

4/8 22:40 に開始して、4/9 08:33 に終わった。

全11章 + あとがき、約2,000行。人間(自分)の発言は合計約15回。内訳の大半は「次」「はい」「1」の1〜2文字だ。

「AIに本を書かせた」とき、人間は何をしたのか。その全工程を記録する。

今回使ったのは4体のエージェント構成だ。

CEO      — 全体の指示・調整(人間が兼任してもOK)
writer   — 執筆担当
reviewer — ファクトチェック・技術整合性の確認
reader   — ターゲット読者のペルソナを設定して感情面をレビューする(後から追加した)

CEOが各エージェントに指示を出し、結果を受けて次の指示を出す。人間はCEOに方向性を伝えるだけだ。

第1節: まずネタ帳を作った

執筆を始める前に、CEOエージェントがネタ帳(187行)を作成した。10章分の構成案と、各エピソードの出典が明記されたマークダウンファイルだ。

実物を一部抜粋する。

### 第3章: 最初の成功体験
- [ユーザー発言] 「おはよう、今日のタスク見せて」から10分で朝のルーティンが完成
- [内部ログ] GTDの説明を「1分で分かる版」に圧縮

### 第4章: AIチームとの付き合い方
- [内部ログ] CEOエージェントが各担当エージェントに指示を渡す構成
- [エージェント提案] writerが「ここはエピソードより数字で示した方が刺さる」と提案

出典の種類は3つ: [ユーザー発言](自分が実際に言ったこと)、[内部ログ](git logやレポートから確認した事実)、[エージェント提案](エージェントが提案したこと)。これを付けておくことで、後工程のファクトチェックが機能する。

ネタ帳が完成したあと、researcherエージェントに評価を依頼した。初期評価は B+。「タイトルが弱い」「Tips章を独立させる形式を検討せよ」という指摘を受け、修正後に A-(このプロジェクトでの執筆GO水準)まで上がった。書き始める前に構成の弱点を潰すのがこの手順の目的だ。

並行してresearcherに収益化プラットフォームの調査も依頼した。367行のレポートで5プラットフォームを比較した結果、noteが最適という結論が出た。この段階で自分が判断したのは1文: 「noteメインで行こう」

第2節: 11章を一気に書いた

ネタ帳の承認後、執筆が始まった。時系列はこうだ。

時刻 内容 コミットID
23:59 第0〜1章完成 54bd4fe
00:12 reviewer指摘を反映 8973e20
01:10 第2〜3章完成 4dc58f8
01:19 第4章完成 b03f0d2
04:29〜05:14 第5章〜あとがき(6章を45分で)

各章の制作サイクルはこの6ステップで回した。

CEO: ネタ帳の該当章をwriterに渡す
  → writer: 執筆
    → reviewer: ファクトチェック
      → reader: 読者感情の評価
        → writer: 指摘を反映
          → コミット → 「次」で次章へ

自分が各章の間にやったことは「次」の1文字だ。

readerは品質向上のために追加したエージェントで、最初から必須ではない。

1章あたりの平均時間は7〜8分(執筆 + レビュー2回 + 修正込み)。第5章〜あとがきの6章を45分で書いた実績から逆算した数字で、コミットタイムスタンプに裏付けがある。なお、この数字はネタ帳が事前に完成している状態での執筆フェーズのみの時間だ。ネタ帳作成から含めた全工程は後述する。

第3節: 品質を上げた

全章が完成したあと、品質改善フェーズに入った。

まず、reviewerが全章を横断的にファクトチェックした。5件の事実誤りを発見した(コミット 171892d)。どれも執筆段階では見落とされていた、章をまたぐ記述の矛盾だ。

次に、読者ペルソナAIが評価した。初回スコアは 60点。60点は読者ペルソナ(38歳・非エンジニア)による主観評価だ。主な減点は「SE歴26年の人だからできたのでは(-15点)」「セットアップが重い(-8点)」「1週間で6本は嘘くさい(-5点)」。この指摘を受けて全章に失敗談を追加し、「SEスキル不使用」のフォロー文を各所に入れた。修正後に新しいセッションで再評価して、最終スコアは 78点 になった。

読者ペルソナによる批評がどのように機能するか(ペルソナ定義・批判的モード・指摘の粒度)については、AIにAIの書いた文章を批評させたら60点だった話で詳しく書いている。

そして自分が全章を通読して、20件のフィードバックを出した。

「CLAUDE.mdって読者に伝わらない。『AIへの指示メモ』に統一して」
「CEOって書いてあるけどマネージャーにして」
「フロントマター全章から削除して」

これらはどれも「判断」だ。用語をどう統一するか、読者に何を見せて何を隠すかを決めた。修正の実行はwriterエージェントが一括でやった。

reviewerの最終チェックはA判定(公開可)が出た。その後、この通読フィードバック20件をwriterが反映した後の再レビューでB判定に下がったため全件修正して、改めてA判定を取った。

第4節: タイトルを変えた

当初のタイトル案には「SE歴26年」が入っていた。researcherに市場調査を依頼し、10案以上の候補が出た。自分は「B2ベースで、SE歴は入れない」という方針と候補選択の2回の判断で確定させた。タイトル決定に使った自分の発言は3文だ。

方針は2つだった。「2日間で本を書いた」という事実を前面に出すこと、「SE歴26年」は入れないこと。後者はターゲットをエンジニアに絞らないための判断だ。

第5節: 人間は何をしたのか

全工程を振り返ると、自分がやったことは7つある。

  1. テーマの方向性(「noteで非エンジニア向けの本を書きたい」)
  2. プラットフォーム選定(「noteメインで行こう」)
  3. 事実確認(ネタ帳の出典が正しいか検証)
  4. 進行指示(「次」など)
  5. 通読フィードバック(20件の用語・表現指示)
  6. レビュー指摘の取捨選択(「1削除、2対応」「3-7対応」)
  7. タイトル選定(「B2ベースでSE歴は入れない」)

共通点がある。全て「判断」と「選択」だ。実行は1行もやっていない。

本の中に「何をやらないかを決めるのが人間の仕事」という一節を書いた。書きながらそれが体現されていた。

第6節: このプロセスを再現するには

ここからはClaude Codeを実際に使う人向けの再現手順です。仕組みの面白さだけ知りたい方はまとめへどうぞ。

まず3体から始めればいい。

  • CEO(自分が兼任しても可)
  • writer
  • reviewer

readerは品質をさらに上げたくなったタイミングで追加すればいい。writerとreviewerの2体だけでも本は書ける。

Claude Code の動かし方をより体系的に学びたい場合は、技術評論社の実践Claude Code入門が参考になる。エージェント定義の設計からスペック駆動開発まで網羅されている。

ディレクトリ構成はシンプルだ。

.claude/
├── agents/
│   ├── writer.md      # 執筆担当の定義
│   ├── reviewer.md    # レビュー担当の定義
│   └── reader.md      # 読者ペルソナ(後から追加)
└── CLAUDE.md          # プロジェクト全体の指示
drafts/
└── ネタ帳.md          # 出典付きで構成を書く

ネタ帳は出典付きで書くのがポイントだ。初期設定はCLAUDE.mdと.claude/agents/にファイルを数個置く程度で済む。コードは不要で、所要時間は30分〜1時間だ。

各エージェント定義の最小サンプルはこうだ。

# writer.md の最小サンプル(5行)
name: writer
description: 記事・ドキュメントの執筆担当
tools: Read, Grep, Glob, Write, Edit
ネタ帳に従って記事を執筆する。文体はターゲット読者に合わせる。
# reviewer.md の最小サンプル(5行)
name: reviewer
description: ファクトチェック・技術整合性の確認
tools: Read, Grep, Glob, WebSearch
記事のファクト・整合性・法的リスクをチェックする。指摘は必須/推奨/任意の3段階。

この2ファイルを .claude/agents/ に置くだけで、writerとreviewerが使えるようになる。CLAUDE.mdには次のように書けばいい。

# CLAUDE.md の最小サンプル
記事を書くときはwriterエージェントに依頼する。
完成したらreviewerエージェントにファクトチェックを依頼する。
コーディング知識は不要。日本語の指示だけで動く。
### 第1章: タイトル
- [ユーザー発言] 実際にあったこと・言ったこと
- [内部ログ] ファイルや履歴から確認できる事実
- [エージェント提案] エージェントが提案したこと

これがあると、reviewerのファクトチェックが機能する。出典なしで書くと、ファクトチェックは文体のチェックにしか使えない。

時間のROIはこうだ。

方法 1章あたり(執筆フェーズのみ) 備考
手動(筆者の過去実績) 2〜4時間 調査+構成+執筆+推敲(全工程)
このフロー(執筆フェーズのみ) 7〜8分 ネタ帳完成後の執筆+レビュー+修正のみ
このフロー(ネタ帳込み・全工程) 約25分 ネタ帳作成+評価+執筆+レビュー

ネタ帳の作成と評価を含めると、1章あたり約25分(全11章を約5時間で完成)。「7〜8分」はネタ帳が揃った状態での執筆フェーズのみの数字だ。公正に比較するなら25分の方を使うべきだが、それでも手動の2〜4時間に対して大幅な短縮になる。手動なら数週間のスパンになる作業量だ。

うまくいかなかったことも書いておく。

readerの初期評価が60点だったのは予想外だった。reviewerがA判定を出した後でも、読者視点では60点だった。「技術的に正確」と「読者に刺さる」は別の軸だ、というのが身に染みた。

reviewerのA判定が覆ったケースもあった。reviewerがA判定(公開可)を出した後、ユーザーが再レビューを指示した。するとch01に「画像も作れます」というファクト誤りが見つかった。Claude Codeは単体で画像生成できないのに、「話しかけるだけで画像も作れます」と書いていた。reviewerが見逃し、再レビューで発見された。セクションごと削除して対応した。

ネタ帳の出典管理も最初は甘かった。ネタ帳に書いたエピソードの出典が曖昧で、執筆後のファクトチェックで5件の修正が必要になった。出典を3種類(ユーザー発言・内部ログ・エージェント提案)に分けたのはこの失敗から生まれた運用だ。

品質改善フェーズ全体で約2時間かかった。執筆5時間に対して4割近い時間を修正に費やした計算になる。品質は一度の評価で固定されない。

今後の改善候補は、readerペルソナを複数化すること(現在は1ペルソナ)と、ネタ帳段階でreaderにレビューさせること(構成の問題を執筆前に潰す)の2点だ。

実際にこのプロセスで出来上がった書籍については、コードを書けない私が、AIに「チーム」を持たせるまで——Zenn Books ローンチ告知で紹介している。

まとめ

2日間で本を書いた。数字をまとめる。

項目 数値
人間の発言回数 約15回
AIの出力行数 約2,000行
レビュー回数 30回以上
調査レポート 3本(うちプラットフォーム比較367行)
タイトル候補 10案以上
人間の最長発言 20件のフィードバック(通読後)

AIチームがやったこと: 執筆、レビュー、調査、候補生成。人間がやったこと: 方向性の判断、選択、事実確認。

「AIに仕事を任せる」の最も純粋な形は、判断と選択に集中することだと今は思っている。

同じ書籍制作の舞台裏を、36時間の時系列で語った姉妹記事もある。→ 9体のAIエージェントと電子書籍を2日で作った話

なお、この作業はClaude Code の Max Plan以上のプランで実施した。プラン別のコスト感は別記事(claude-code-ai-editorial-team)で触れている。

なお、このプロセスはSEのスキルや開発経験がなくても再現できる。実際に自分がClaude Codeを使うときはコードを1行も書いていない。エージェント定義ファイル(.claude/agents/*.md)はMarkdownで書いた日本語の指示書で、Pythonの知識もターミナル操作の習熟も不要だ。Claude Codeを日本語指示だけで使う入門ガイド(公開準備中)では、ゼロからのセットアップ手順を詳しく書いた。

Claude Code を本格的にプロジェクトへ導入したい場合は、実践Claude Code入門(技術評論社)の紙書籍版も参考になる。マルチエージェント運用の設計パターンが詳しく解説されている。


この記事の実践例を一冊にまとめました。

コードを書けない私が、AIに「チーム」を持たせるまで(Zenn Books)

この記事は はてなブログ からのクロスポストです。


はてなブログ版: https://saitoko.hatenablog.com/entry/2026/04/24/153331

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