今回はロバスト制御のお気持ちについて簡単に説明したいと思います。
ロバスト制御とは
多くの制御理論では、制御対象を数式で表現するモデリングを行う。
現実の制御対象を正確にモデリングできていれば、設計時に要求した性能通りの挙動を示すことになるはずである。
ただし実際には、完全に正確にモデリングすることは不可能である。必ずモデル化に伴う誤差やモデル化ができない外乱や観測誤差などによりモデルと制御対象の間には乖離が生じてしまう。
そこで、制御対象の不確かさや変動に対しても強い、ロバストな制御のことをロバスト制御という。
そもそもロバストって?
ロバストネス
頑強性(がんきょうせい)や頑健性(がんけんせい)やロバストネス(英: robustness)やロバスト性とは、ある系が応力や環境の変化といった外乱の影響によって変化することを阻止する内的な仕組み、または性質のこと。
(引用元:Wikipedia)
なぜロバスト制御をする必要があるのか
前々項でも説明した通り、制御対象のモデルには必ず誤差や外乱が付きまとうからである。
制御対象の経年による劣化や環境による性能の変動、モデル化の際に行なった近似や仮定などがモデルの誤差となる(制御対象のもつ不確かさや変動のことを摂動という)。
そのほかにも、制御器によってモデル化の際に近似などによってモデルに含まれなくなった共振モードなどを励起してしまう現象(スピルオーバー)や、制御器のゲインを上げることで外乱や観測誤差による影響が大きくなってしまったり、そもそも制御対象が応答できる周波数を超えてしまったりなどの問題が挙げられる。
以上の問題を制御対象のモデリングの際に考慮に入れることで、具体的にはモデルを変動や不確かさを持った集合として取り扱うことによって、摂動による影響がなるべく出ないような制御系設計を行うことで解決する(逆に確定的なものとしてモデリングしたものをのみなるモデルという)。
簡単に言い換えると、モデルにばらつきがあっても性能が出るように設計するということである。
もうちょっと詳しく
ロバスト制御の代表的な手法として、主に二つ、$H_\infty$制御と$\mu$設計法を取り上げる。
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$H_\infty$制御
- 設計者が決めた外部入力から制御量までの$H_\infty$ノルムが小さくなるように制御系を設計する
- $H_\infty$ノルムは1入出力伝達関数ならばゲインの最大値に相当する
- 摂動があっても制御系の内部安定性が必ず満たされるような設計問題(ロバスト安定化問題)を取り扱うことができる
- ただし、制御系の性能自体は摂動によって変動しうるノミナル性能しか取り扱えない
- 設計者が決めた外部入力から制御量までの$H_\infty$ノルムが小さくなるように制御系を設計する
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$\mu$設計法
- $H_\infty$制御と異なり摂動による影響を抑える、ロバスト性能問題を取り扱うことができる
- ただし、設計手順が複雑な上に制御器の次元が上がってしまう傾向にある
設計手順とそれに対応する性能のコスパの高さから、$H_\infty$制御が使われることが多いよう。
まとめ
ロバスト制御のお気持ちについて軽くまとめてみました。
もう少し踏み込んだ内容は後日シミュレーションとともに投稿しようと思ってます。
ご質問、ご指摘等あればコメントお願いします。