はじめに
AWSでAIを使おうとすると、サービス名が多くて最初に迷いやすいです。
- Amazon BedrockとAmazon SageMaker AIは何が違うのか
- Amazon Qはアプリ開発に使うものなのか、社内FAQに使うものなのか
- Textract、Rekognition、Transcribe、PollyのようなAIサービスは、生成AIとどう使い分けるのか
- AWS Certified AI Practitionerなどの資格学習では、どの粒度で覚えればよいのか
この記事では、AWSのAI関連サービスを、サービス名の暗記ではなく 「何をしたいときに何を選ぶか」 で整理します。
分類をすばやく見分けられるよう、表や見出しでは絵文字を説明用アイコンとして使います。Amazon Bedrock、Amazon Q、Amazon SageMaker AIの解説と、目的別AIサービスの比較表には、AWS公式のアーキテクチャアイコンも併記します。
公式アイコンは、2026年4月30日版のAWS Architecture Iconsから取得しています。Amazon Q BusinessとAmazon Q Developerには、共通のAmazon Q公式アイコンを使います。
この記事でわかること
- AWSのAIサービスを大きく分類する考え方
- Amazon Bedrock、Amazon SageMaker AI、Amazon Qの使い分け
- 画像、音声、文書、翻訳、検索、レコメンド系AIサービスの役割
- AWS AIサービスを選ぶときの判断表
- 最小構成でAmazon Bedrockを試すCLI例
先に結論
AWSのAIサービスは、まず次の5つに分けると理解しやすいです。
| アイコン | 分類 | 代表サービス | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| 🤖 | 生成AIアプリを作る | Amazon Bedrock | チャット、RAG、AIエージェント、文章生成、要約 |
| 🧑💻 | 開発者をAIで支援する | Amazon Q Developer | コード生成、AWS相談、脆弱性確認、運用支援 |
| 🏢 | 社内データに聞けるAIを作る | Amazon Q Business | 社内FAQ、ドキュメント検索、業務チャット |
| 🧪 | 自分でMLモデルを作る | Amazon SageMaker AI | 学習、チューニング、推論エンドポイント、MLOps |
| 🧰 | 特定機能をAPIで使う | Textract、Rekognition、Transcribeなど | OCR、画像認識、音声認識、翻訳、音声合成 |
迷ったら、最初に次の判断で分けます。
| やりたいこと | 最初に見るサービス |
|---|---|
| 生成AIアプリを作りたい | 🤖 Amazon Bedrock |
| 社内文書をもとに回答する業務AIを早く作りたい | 🏢 Amazon Q Business |
| コーディングやAWS作業をAIに手伝ってほしい | 🧑💻 Amazon Q Developer |
| 独自データでモデルを学習、評価、デプロイしたい | 🧪 Amazon SageMaker AI |
| 画像、PDF、音声、翻訳などの単機能APIがほしい | 🧰 目的別AIサービス |
前提
- 対象読者: AWSのAIサービスをこれから整理したい人、AWS資格学習中の人、AI機能をAWS上で検討しているエンジニア
- 確認日: 2026-08-13
- 扱う範囲: AWSの主要AIサービスの役割、使い分け、最初の検証観点
- 扱わない範囲: 料金の詳細比較、全リージョン対応状況、全モデル一覧、モデル性能ベンチマーク
- 注意: 料金、リージョン、利用可能モデル、サービス名、UIは変わるため、実際に使う前にAWS公式ドキュメントを確認してください
用語の短い説明
| 用語 | 短い説明 |
|---|---|
| AI | 人間の判断や作業の一部を、モデルやアルゴリズムで支援する技術の総称 |
| ML | Machine Learningの略。データからパターンを学習し、予測や分類に使う技術 |
| 生成AI | 文章、画像、コード、要約など、新しい出力を生成するAI |
| FM | Foundation Modelの略。多くのデータで事前学習された基盤モデル |
| RAG | Retrieval-Augmented Generationの略。社内文書などを検索して、その結果をもとに生成AIへ回答させる構成 |
| エージェント | AIが手順を考え、必要に応じてツールやAPIを呼び出して作業する仕組み |
| OCR | 画像やPDFから文字を読み取る技術 |
| 推論 | 学習済みモデルに入力を渡し、予測や生成結果を得ること |
AWS AIサービスの全体像
AWSのAIは、1つの巨大なサービスではありません。
用途ごとに分かれています。
ポイントは、Bedrock、SageMaker AI、Amazon Qを同じ箱に入れて考えないことです。
- Bedrockは、生成AIアプリを作るための基盤
- SageMaker AIは、MLモデルを作る、学習する、運用するための基盤
- Amazon Qは、ユーザーや開発者がAIアシスタントとして使うサービス
- 目的別AIサービスは、OCRや音声認識のような機能をAPIで使うサービス
🤖 Amazon Bedrock
Amazon Bedrockは、生成AIアプリケーションを作るためのマネージドサービスです。
基盤モデルを選び、APIから呼び出して、文章生成、要約、分類、チャット、RAG、エージェントなどを作れます。
Bedrockでできること
| 使い方 | 説明 |
|---|---|
| チャット | ユーザーの質問に対して自然文で回答する |
| 要約 | 長い文書、議事録、問い合わせ履歴を短くまとめる |
| 分類 | 問い合わせ内容をカテゴリ分けする |
| RAG | 社内文書やFAQを検索し、その内容をもとに回答する |
| エージェント | APIやツールを呼び出しながら複数ステップの作業を進める |
Bedrockを選ぶ場面
- 自社アプリに生成AI機能を組み込みたい
- モデルを直接管理せず、APIとして使いたい
- 複数の基盤モデルを比較して選びたい
- 社内文書をもとに回答するRAGを作りたい
- 生成AIエージェントをAWS上で作りたい
Bedrockを使う場合でも、モデルアクセス、リージョン、IAM権限、データの扱い、料金は必ず確認します。
「生成AIだから何でもできる」と考えるより、入力、参照データ、出力確認、人間のレビュー範囲を先に決める方が安全です。
🏢 Amazon Q Business
Amazon Q Businessは、企業や組織のデータをもとに回答する生成AIアシスタントを作るサービスです。
Bedrockで一からアプリを作るよりも、社内FAQ、社内規程、手順書、ドキュメント検索のような用途に寄せて使いやすい位置づけです。
Q Businessを選ぶ場面
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 社内文書を横断検索したい | ドキュメントや業務データをもとに回答させやすい |
| ユーザーごとの権限を考慮したい | 権限に応じてアクセスできる情報を制御する設計にしやすい |
| Slack、Teams、社内ポータルにAIを入れたい | 業務ユーザーが使う導線に寄せやすい |
| まず業務利用を早く試したい | 生成AIアプリを一から作るより始めやすい |
Bedrockとの違い
| 観点 | Amazon Q Business | Amazon Bedrock |
|---|---|---|
| 主な用途 | 社内ナレッジAI、業務アシスタント | 生成AIアプリ開発基盤 |
| 利用者 | 業務ユーザー、社内利用者 | 開発者、アプリ利用者 |
| 作り込み | 既定機能を活用しやすい | アプリ側で自由に設計しやすい |
| 向いている例 | 社内FAQ、社内文書検索 | 独自チャット、RAG、AIエージェント、業務アプリ組み込み |
🧑💻 Amazon Q Developer
Amazon Q Developerは、開発者やAWS運用者向けの生成AIアシスタントです。
コード生成、コード説明、リファクタリング、セキュリティスキャン、AWSリソースの相談、CLI支援などに使います。
Q Developerを選ぶ場面
- IDEでコード補完やコード生成を使いたい
- AWS構成やベストプラクティスを相談したい
- 既存コードを説明してほしい
- 単体テストやドキュメント作成を支援してほしい
- AWS CLIや運用作業のコマンドを確認したい
Amazon CodeWhispererの機能はAmazon Q Developerへ移行しています。
古い資料でCodeWhispererと書かれている場合は、現在のAmazon Q Developerドキュメントを確認すると整理しやすいです。
🧪 Amazon SageMaker AI
Amazon SageMaker AIは、機械学習モデルを作る、学習する、評価する、本番環境へデプロイするためのマネージドサービスです。
Bedrockが「既存の基盤モデルをAPIとして使う」方向に近いのに対して、SageMaker AIは「自分たちのデータとMLワークフローを使ってモデルを作る、運用する」方向に強いです。
SageMaker AIを選ぶ場面
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 独自データでモデルを学習したい | 学習ジョブ、実験、評価、デプロイの流れを作れる |
| 予測、分類、異常検知などのMLを作りたい | 生成AI以外の機械学習にも対応しやすい |
| モデルの評価、監視、MLOpsを整えたい | MLワークフローを運用に乗せやすい |
| 推論エンドポイントを本番運用したい | モデルをAPIとしてデプロイできる |
BedrockとSageMaker AIの使い分け
| 判断 | Bedrock | SageMaker AI |
|---|---|---|
| まず生成AIをアプリに入れたい | 向いている | 場合による |
| 基盤モデルをAPIで使いたい | 向いている | 場合による |
| 独自MLモデルを学習したい | 場合による | 向いている |
| MLの学習、評価、デプロイを管理したい | 場合による | 向いている |
| RAGやエージェントを早く作りたい | 向いている | 補助的に使うことがある |
🧰 目的別AIサービス
生成AIだけでなく、画像、音声、文書、翻訳などの処理は、目的別AIサービスを使う方がシンプルなことがあります。
目的別AIサービスは、生成AIよりも「入力と出力」がはっきりしています。
たとえば、PDFから文字を取り出すだけならBedrockではなくTextractが候補になります。
音声を文字にするだけならTranscribeが候補です。
一方で、取り出した文字を要約したり、分類したり、自然文で回答したりする場合は、BedrockやComprehendと組み合わせると使いやすくなります。
よくある組み合わせ
社内FAQ・規程検索
判断:
- 社内ナレッジAIを早く使いたいならAmazon Q Business
- 自社アプリへ細かく組み込みたいならAmazon Bedrock
- 既存の検索基盤や文書検索が中心ならAmazon Kendraも候補
帳票読み取りと要約
判断:
- 文字や表の抽出はTextract
- 抽出後の要約や自然文説明はBedrock
- ルールベースで十分なら、Bedrockを使わずLambdaやStep Functionsで処理する
音声問い合わせの分析
判断:
- 音声を文字にするのはTranscribe
- 感情やキーフレーズ抽出はComprehend
- 対応履歴の要約や次アクション案はBedrock
まず試すならAmazon Bedrockの最小確認
生成AIアプリの入口としては、Bedrock RuntimeのConverse APIを使うと考え方を掴みやすいです。
以下は概念例です。
実行にはAWS CLI、利用するリージョン、Bedrockのモデルアクセス、IAM権限、利用可能なモデルIDの確認が必要です。
モデルIDはリージョンやアカウントの設定で変わるため、固定値をそのまま使わず、自分の環境で確認してください。
利用できるモデルIDを確認する
# Bedrockで利用可能な基盤モデルのIDを確認する
# リージョンは自分が使う環境に合わせて変更する
aws bedrock list-foundation-models \
--region ap-northeast-1 \
--query 'modelSummaries[].{modelId:modelId, provider:providerName, name:modelName}' \
--output table
メッセージをJSONで用意する
[
{
"role": "user",
"content": [
{
"text": "AWSのAIサービスを、初心者向けに3分類で説明してください。"
}
]
}
]
Converse APIで呼び出す
# 事前に list-foundation-models などで確認したモデルIDを設定する
MODEL_ID="your-model-id"
# Bedrock Runtimeにメッセージを送り、応答本文だけを表示する
aws bedrock-runtime converse \
--region ap-northeast-1 \
--model-id "$MODEL_ID" \
--messages file://messages.json \
--query 'output.message.content[0].text' \
--output text
うまくいかないときの確認
| 症状 | 確認すること |
|---|---|
| モデルが見つからない | リージョン、モデルID、モデルアクセスの有効化 |
| AccessDeniedになる | IAM権限、利用しているAWSプロファイル |
| 応答が期待と違う | プロンプト、入力データ、モデルの向き不向き |
| 料金が不安 | トークン数、リクエスト数、リージョン、モデル別料金 |
| 社内文書に答えられない | RAG構成、Knowledge Bases、Q Businessの利用を検討 |
サービス選定の実務チェックリスト
AWS AIサービスを選ぶときは、サービス名から入るより、次の順で確認すると判断しやすいです。
| 確認項目 | 見ること |
|---|---|
| 目的 | 生成、検索、分類、OCR、音声、翻訳、レコメンドのどれか |
| 入力データ | テキスト、PDF、画像、音声、ログ、商品データ、社内文書 |
| 出力 | 自然文回答、JSON、分類結果、文字起こし、音声、検索結果 |
| 利用者 | 開発者、社内ユーザー、顧客、運用担当者 |
| データ保護 | 個人情報、顧客情報、社内文書、権限管理 |
| 運用 | 監視、ログ、評価、誤回答時の対応、再学習要否 |
| 費用 | リクエスト単位、トークン単位、文字数、音声時間、推論エンドポイント |
判断を間違えやすいポイント
BedrockとQ Businessを混同しない
社内FAQを作る場合、Bedrockでも作れます。
ただし、業務ユーザー向けの社内ナレッジAIとして早く形にしたいなら、Q Businessの方が合うことがあります。
逆に、既存アプリに細かく組み込みたい、UIやAPI連携を自由に設計したい場合はBedrockを検討します。
BedrockとSageMaker AIを混同しない
生成AIアプリを作りたいだけなら、最初からSageMaker AIでモデル学習を始める必要はないことが多いです。
まずBedrockで検証し、既存の基盤モデルで足りない理由が明確になってから、SageMaker AIでの学習、チューニング、独自MLを検討します。
目的別AIサービスを軽視しない
PDFから表を取りたい、音声を文字にしたい、翻訳したい、画像からラベルを取りたい。
このように入力と出力が明確な処理は、目的別AIサービスの方が設計しやすいことがあります。
生成AIは便利ですが、すべてを生成AIに任せる必要はありません。
AI出力の確認工程を設計する
AIサービスを入れるときは、機能が動くことだけでなく、出力が間違ったときの扱いを先に決めます。
- 誰が結果を確認するか
- どの出力をログに残すか
- ユーザーへAI生成であることをどう伝えるか
- 個人情報や機密情報を入力してよいか
- 誤回答が業務判断に影響する場合、どこで人間が確認するか
APIキー、パスワード、顧客情報、個人情報、社内限定資料を、検証目的でそのままAIサービスへ入れないでください。
検証ではサンプルデータ、マスキング済みデータ、公開可能なデータを使います。
AWS資格学習での覚え方
AWS Certified AI Practitionerなどの資格学習では、細かいAPI名を暗記するより、次の対応関係を先に押さえると整理しやすいです。
関連記事
参考・確認先
- AI services - Artificial Intelligence Products - AWS
- Choosing an AWS machine learning service - AWS Decision Guides
- Choosing an AWS generative AI service - AWS Documentation
- Amazon Bedrock - AWS
- Amazon Bedrock Knowledge Bases - AWS Documentation
- Amazon Bedrock Agents - AWS Documentation
- What is Amazon SageMaker AI? - AWS Documentation
- Amazon Q Documentation - AWS Documentation
- What is Amazon Q Business? - AWS Documentation
- Amazon Q Developer - AWS
- CodeWhisperer is becoming a part of Amazon Q Developer - AWS Documentation
- AWS Architecture Icons - AWS
- What is Amazon Kendra? - AWS Documentation
- What is Amazon Personalize? - AWS Documentation
確認日: 2026-08-13
まとめ
- AWSのAIサービスは、生成AI、開発者支援、業務AI、独自ML、目的別AI APIに分けると整理しやすい
- 生成AIアプリはAmazon Bedrock、社内ナレッジAIはAmazon Q Business、開発者支援はAmazon Q Developerを最初に見る
- 独自MLの学習やMLOpsが必要ならAmazon SageMaker AIを検討する
- OCR、画像認識、音声認識、翻訳、音声合成などは目的別AIサービスを使う方がシンプルなことがある
- AIサービスを選ぶときは、入力、出力、利用者、データ保護、運用、費用を先に確認する
おわりに
AWSのAIサービスは、サービス名を暗記するより、使いたい業務フローから逆算すると選びやすくなります。
Wealthy Designでは、Webシステム開発、クラウド活用、AIを使った業務改善に取り組んでいます。
会社の取り組みは、会社サイトにまとめています。
https://wealthy-design.com/











