はじめに
はじめまして。自分は医療IT企業でエンジニアリングマネージャーをしております。
今回はエンジニアリングマネージャーのように、人のマネジメントをする方で
2年目くらいの方に向けての記事を書いていきます。
「1年目の方に向けて」でない理由が、この記事の肝でもあるのですが
『一見、うまく行っているように思えて、実はマネジメントとして機能していないことがある』 というテーマです。
特にプロジェクトマネジメント(PjM)が得意な人が
ピープルマネジメント(PpM)を担当すると
陥りがちなパターンではないかと思っています。
結論に近いことを書くと、
- プロジェクトは上手くいく
- チームの雰囲気も明るい
でも
- いつまでもマネージャーがリーダーをやっている
- つまり、実はメンバーの能力が成長していない
という状態です。
この傾向に気がつくポイントは
『チームで会話・議論するときに、マネージャーばかり発言している』 です。
それでは本題に入っていきます。
プロマネとピープルマネはパッと見、似ている
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両方とも、集団のリーダーで、プロジェクトの成功に責任を持っているように思えます。
と、思い込みがちです。
しかし実際は、こうです。
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ある一つのプロジェクトのマネジメント担当であるPjMと異なり、
ピープルマネジメントを担当するEMのような役割は、
多くの組織において、いちプロジェクトという短期的な視点の成功だけではなく、
チームメンバーの成長・組織の成長、今後数年のいくつものプロジェクトの成功という
中長期的な視点の成功に対する責任を持っています。
また
・主体的になってもらいたいのではなく、「主体的にさせる責任がある」
・自分がリーダーとしてばを回すのではなく、「チームメンバーに場を回させる」
これらは、あくまでPpMの手段の一つに過ぎないことは事実です。
時にはリーダーとして強肩を振るう瞬間もあるかもしれません。
しかしチームメンバーが主体となり、
いわゆる「自己組織化」を目指すことが
組織の成功のために非常に重要であることは改めて記述しておきます。
なぜ改めて記述するのかというと
「自己組織化が大事」と頭では分かっていた 自分もEMになりたての頃は、
「自分がメンバーを引っ張らなければ」と真逆のことをしていたからです。
PjMとPpMでは、問題に対するスタンスが異なる
プロマネとピープルマネジメントの違い
たくさんあるでしょうが、一言で表現するなら
問題に対する、スタンスが異なるのです。
プロジェクトの阻害要因を
- 率先して取り除くのがプロジェクトマネージャー
- メンバーが自力で取り除く支援をするのがピープルマネージャー
さらに言うなら
メンバーに降りかかるストレスを
- 感じさせないのがプロジェクトマネージャー
- むしろ意識させ、自ら対処する支援をするのがピープルマネージャー
と言ってもいいでしょう。
その違いを理解していないとピープルマネージャーとして、いかに
- 毎週1時間の1on1を実施しようと
- OKRを設定しようと
- 振り返り会を実施しようと
効果はありません。なぜなら目的を勘違いしてしまっているからです。
プロジェクトマネージャーのスタンスだと「問題を解決すること」を目的にメンバーと関わってしまいます。
しかしピープルマネージャーは「メンバーが問題と向き合って、悪戦苦闘しながらも自分で乗り越えること」を目的にしなければいけません。
なぜプロジェクトマネジメントが得意なほど苦戦するのか
良いプロジェクトマネージャー(PjM)はチームにストレスを感じさせません。
チームメンバーは、自らの作業に集中し、
それがいつのまにか、プロジェクト全体の進捗に繋がっていくように、
プロマネが情報の交通整備、タスクの優先順位付け、ディスパッチを先回りして行います。
これを続けていくとメンバーは、作業に集中でき。
「開発」「タスク消化」 というレベルでは、技量が成長していけます。
しかし、エンジニアに必要な能力とはタスク消化だけでしょうか。
エンジニアも、専門職である以前に一人のビジネスマンです。
多くのビジネスマンの仕事とは課題解決です。
課題解決の根幹とは、不確実性を潰すことに他なりません。
つまり、PjMが先回りしていた作業こそが、
本来なら一人ひとりに身につけて欲しい能力なのです。
しかし、プロジェクトマネジメントが得意な人は
もはや意識せずとも、息をするように周りのストレス要因を先回りして解消してしまうのです。
先回りグセがついている、といってもよいでしょう。
ピープルマネジメントは沈黙に耐えねばならない
例えば会議をファシリテートしているとき
チームメンバーの発言が積極的ではなく、
自分が言葉を繋げなければ沈黙の瞬間が訪れるかもしれない、そんな際に
ついつい「気まずい」「良い会議の体裁を整えねば」と思い
自分が発言するのではなく、沈黙の瞬間に耐えなければなりません。
自分が先回りした発言を控えた時に、
メンバーが少し遅れて主体的に発言し始めるかもしれませんし、
もしかしたら、その会議自体がきまずい、大失敗に終わるかもしれません。
しかし、チームメンバーの成長(=組織の成功)という先のゴールにとっては
マネージャーがその一つの会議を成功させるよりも、
チームメンバーにとってはその会議を価値ある時間にできなかったという失敗経験と向き合う方が大切なことかもしれません。
じゃあ、PpMって丸投げでいいの?
もちろんそうではありません。
ピープルマネージャーが注力すべきは、チームメンバーが
適量の負荷がかかる状態にあるか調節することです。
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画像引用: スタートアップはラーニングゾーンを作り続けよう
・チームメンバーが、作業の中の一部であっても
経験したことがないこと(作業・役割・役目)にチャレンジできているのか
・心理的安全性の高い状態で実施できているのか
この二軸を調整し、学習が進む状態「ラーニングゾーン」に入れるよう
環境を整えます。
心理的安全性の具体化
一時期バズワードだった「心理的安全性」ですが、
これが「ぬるま湯」ではないのは今更伝える必要はないでしょう。
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チームに対する心理的安全性は、この単語を知っている人なら意識していると思います。
一方で、チームメンバーのそのタスクに対する心理的安全性はどうでしょうか。
難易度だけでなく、責任範囲を調整することによって
向き合い方が変わることも多々あります。
- 週に1回度の1on1
- 四半期ごとのOKRの設定
- 振り返り会
こういったマネジメントの手法は
この見極めと調整のために、活用する"手段" なのです。
まとめ
プロジェクトの障害を率先して取り除くプロジェクトマネージャー
障害をチームメンバーが取り除けるようになってもらうピープルマネージャー
違いを意識して活動していきましょう!