はじめに
ChatGPTをはじめとして、生成AIを日常的に使う機会がかなり増えてきました。
その中で、
- 「ローカルLLMって何?」
- 「ChatGPTとは何が違うの?」
- 「会社のデータをChatGPTに入力して大丈夫?」
- 「ローカルで動かすと何がうれしいの?」
といった疑問を持つことがあります。
この記事では、LLMを使い始めた人向けに、ローカルLLMとクローズドLLMの違いを整理してみます。
※厳密には「ローカル」と「クローズド」は対になる概念ではありません。この点についても後ほど説明します。
そもそもLLMとは?
LLMは Large Language Model(大規模言語モデル) の略です。
大量のテキストデータをもとに学習し、入力された文章に対して、続く可能性の高い単語(正確にはトークン)を予測することで文章を生成します。
代表的なLLMを利用したサービスには、
- ChatGPT
- Claude
- Gemini
などがあります。
質問への回答だけでなく、
- 文章の作成・要約
- プログラミング
- 翻訳
- アイデア出し
- 情報整理
など、さまざまな用途で利用されています。
クローズドLLMとは?
クローズドLLMとは、一般的にモデルの内部情報や重みなどが公開されておらず、提供企業のサービスやAPIを通して利用するLLMを指します。
代表例として、
- OpenAIのGPTシリーズ
- AnthropicのClaude
- GoogleのGemini
などがあります。
ChatGPTを利用する場合を考えてみます。
自分のPC
↓
インターネット
↓
OpenAIなどのサーバー
↓
LLMが処理
↓
回答が返ってくる
基本的には、自分のPC上でLLMそのものを動かしているわけではありません。
提供元が管理している環境上のモデルを、WebサービスやAPI経由で利用しています。
メリット
クローズドLLMの大きなメリットは、利用者側で大規模な計算環境を用意しなくても、高性能なモデルを利用できることです。
ブラウザからサービスにアクセスするだけで利用できるものも多く、モデルのセットアップやGPUの準備などを意識する必要がありません。
また、モデルの更新やインフラ管理も基本的に提供企業側が行います。
デメリット
一方で、外部サービスを利用する以上、入力したデータが自分のPCや組織の外に送信される場合があります。
そのため、
社外秘資料
個人情報
顧客情報
未公開のソースコード
などを扱う場合には、利用しているサービスの規約や組織のルールを確認する必要があります。
また、APIを大量に利用する場合は利用料金も考える必要があります。
ローカルLLMとは?
ローカルLLMは、その名前の通り、自分のPCや自社サーバーなど、自分たちが管理する環境で動かすLLMを指します。
イメージとしては、
自分のPC
↓
PC内のLLM
↓
回答
となります。
環境によっては、推論時にインターネットへ接続せずに利用することもできます。
ローカルで実行可能なモデルとしては、Llama、Gemma、Qwenなどさまざまなモデルがあります。
また、OllamaやLM Studioなどを利用することで、ローカルLLMを比較的簡単に試すこともできます。
ローカルLLMのメリット
1. データを外部へ送信せずに処理できる
ローカルLLMの大きなメリットです。
例えば、
社内文書
↓
社内サーバー上のLLM
↓
回答
という構成にすれば、データを外部のLLMサービスへ送信せずに処理できる環境を構築できます。
機密性の高い情報を扱うシステムでは、大きなメリットになる場合があります。
ただし、ローカルLLMを使えば自動的に安全になるわけではありません。
アクセス制御、ログ管理、モデルやソフトウェアの脆弱性対策など、別のセキュリティ対策は必要です。
2. オフライン環境でも利用できる
モデルや必要なソフトウェアを事前に用意しておけば、インターネットに接続できない環境でも利用できます。
外部ネットワークへの接続が制限されている環境では有効です。
3. 自由度が高い
モデルによっては、自分の用途に合わせて環境やパラメータを調整できます。
どのモデルを使用するかも自分で選択できます。
ローカルLLMのデメリット
1. PC・GPUの性能が必要
LLMは非常に多くのパラメータを持っています。
モデルが大きくなるほど、
- RAM
- VRAM
- GPU性能
- ストレージ容量
などが必要になります。
量子化された小さめのモデルであれば一般的なPCでも動かせる場合がありますが、大規模なモデルを快適に動かすには相応のハードウェアが必要です。
2. 自分で環境を管理する必要がある
クラウドサービスでは提供企業が行っていた、
- モデルの管理
- ソフトウェアの更新
- セキュリティ対策
- 障害対応
- ハードウェア管理
などを、自分または組織側で考える必要があります。
「無料のモデルだから無料で運用できる」とは限らない点には注意が必要です。
3. モデルによって性能差が大きい
ローカルで動かせるモデルも急速に高性能化していますが、モデルサイズや用途によって性能は大きく異なります。
単純に、
ローカルLLM = ChatGPTを完全無料で自分のPCに入れたもの
と考えるのは少し違います。
比較してみる
| 項目 | ローカルLLM | クローズドLLM |
|---|---|---|
| 実行環境 | 自分のPC・自社サーバーなど | 提供企業のサーバーなど |
| 導入 | 環境構築が必要 | 比較的簡単 |
| ハードウェア | 自分で用意 | 基本的に不要 |
| データ管理 | 自分で管理しやすい | 外部送信を伴う場合がある |
| オフライン利用 | 可能な構成あり | 基本的にネット接続が必要 |
| モデルの自由度 | 高い | 提供元の範囲内 |
| 運用管理 | 自分で行う | 提供企業側が担当する部分が多い |
| コスト | ハードウェア・電気代など | サブスク・API料金など |
| 性能 | モデル・環境による | 高性能モデルを手軽に利用しやすい |
「ローカルLLM」と「オープンソースLLM」は同じ?
ここは少し注意が必要です。
よく、
ローカルLLM VS クローズドLLM
という表現を見かけますが、厳密には比較している軸が違います。
ローカル / クラウド
は「どこで実行するか」という話です。
一方で、
オープン / クローズド
は「モデルの重みやソースコードなどが、どの範囲まで公開されているか」という話です。
さらに「オープンソース」という言葉も、モデルによってライセンスや公開範囲が異なるため注意が必要です。
そのため、
ローカルで動かせるモデル = 必ず完全なオープンソース
というわけではありません。
この記事では分かりやすさのために「ローカルLLMとクローズドLLM」という表現を使っていますが、本来は別の軸であることを覚えておくとよいと思います。
結局どちらを使えばいい?
どちらが優れているというより、用途によって使い分けることが重要です。
例えば、
手軽に高性能なAIを使いたい
→ ChatGPTやClaudeなどのサービス
環境構築の手間が少なく、高性能なモデルをすぐ利用できます。
外部に出したくないデータを扱いたい
→ ローカルLLMを検討
自分たちが管理する環境内で処理を完結させる構成を検討できます。
AIについて勉強したい
→ ローカルLLMも面白い
モデルサイズ、量子化、GPU、推論速度など、普段ChatGPTを使っているだけでは意識しないLLMの仕組みに触れられます。
実際のシステムに組み込みたい
この場合は、
性能
コスト
セキュリティ
レスポンス速度
運用負荷
ライセンス
などを比較して決める必要があります。
ローカルLLMとクラウド上のLLMを組み合わせる構成も考えられるため、必ずどちらか一方に統一する必要もありません。
まとめ
今回は、ローカルLLMとクローズドLLMの違いについて整理しました。
ざっくりイメージするなら、
ローカルLLM
→ 自分たちで環境を用意して、自分たちで管理する
ChatGPTなどのサービス
→ 提供企業の環境にある高性能なLLMを利用する
という違いがあります。
ローカルLLMはデータ管理や自由度に強みがありますが、ハードウェアや運用について考える必要があります。
一方、ChatGPTなどのサービスは手軽に高性能なモデルを利用できますが、外部サービスを利用する以上、データの取り扱いや料金などについて確認する必要があります。
そして重要なのが、
「ローカル」と「クローズド」は厳密には対になる言葉ではない
という点です。
生成AIを利用するときは「どのモデルが一番強いか」だけではなく、
どこで動かすのか、データをどこまで外部に出せるのか、誰が運用するのか
まで含めて考えることが大切だと思います。