はじめに
Power BI をAIエージェントで分析する際に、どの方式がよいのかを判断するため、同じ質問に対してどのような違いが出るのかを確かめます。
2026/6月時点の情報です。
また、本記事はAIの動作について検証していますが、AIの動作は様々な理由でぶれるので、本検証の結果は参考情報程度のものとしてご参照ください。
TL;DR(AI要約)
- 複雑な要因分析では、今回の検証範囲では Power BI MCP / Fabric IQ MCP が強く見えました。
- ただし、MCP 系はいずれもプレビュー機能であり、仕様変更や運用面のリスクがあります。
- 業務ユーザー向けに安定展開するなら、一般提供済みの Fabric データエージェント が第一候補です。
- 分析性能を重視する場合は、データエージェントだけでなく MCP 系も比較対象にするのがよさそうです。
- どの方式でも、Power BI セマンティックモデルを使うなら Prep for AI の整備が重要です。
方式一覧
おおまかな構成イメージです。
レポートに含まれる Power BI Copilot
レポート画面に付属している、サイドカーチャットなCopilotです。
Power BI の Copilot では、対応できる質問の高度さに制限があります。
Copilot は、異常検出、予測、主要なインフルエンサーの検索など、新しい分析情報を生成する必要がある質問には現在回答できません。 処理できる具体的な質問は、モデルとレポートのビジュアルによって異なります。
引用:https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/create-reports/copilot-ask-data-question#unsupported-question-types
Fabric データエージェント
Fabricで分析エージェントを作成する場合にはこちらを使用します。一般提供済みで、プレビュー機能としてコードインタープリターや、インタラクティブビジュアルなどが控えています。Foundry などのMicrosoft提供のエージェントサービスはこちらに接続する構成がドキュメントでは多く登場します。
スタンドアロンのPower BI Copilot
Fabricのポータル上で単独で使用できるCopilotです。回答を生成するための情報源となるデータエージェント、レポート、セマンティックモデルの検索から実行してくれるので、アイテムの存在がわからなくてもアクセス権に従って探してくれます。
MCPサーバー(Power BI MCP)
Power BI をAIエージェントに分析させるためのMCPサーバーです。
ツールはPower BI を扱うための情報取得、DAX生成、DAX実行が含まれています。

MCPサーバー(Fabric IQ MCPのPower BI Endpoint)
最新のFabric IQエンドポイントを使用するMCPサーバーです。ドキュメントでは、オントロジーやデータエージェントも含めてルーティングするとか書いてますが現時点ではエンドポイントは分かれていおり、今のところルーティング機能はないようです。
ツールを見てみるとスタンドアロンのPower BI Copilot がもつ検索と回答生成をシンプルに備えているようです。

セットアップ
検証で使用するデータ、Power BI レポートは以下の構成で作成しました。
- 環境:VS Code
- エージェント構成:
- GitHub Copilot CLI
- GPT-5.4
- Skill for Fabric - powerbi-authoringをインストール
リポジトリ
以下のリポジトリにpbipファイルと、データを含めました。
Power Queryパラメータをgit cloneしたディレクトリのdataフォルダに向けると使えます。
データセットについて
日本の IT 製品販売会社を想定したサンプルデータです。
主に、次の観点の検証を目的とした内容としています。
- 基本指標: 売上、粗利、粗利率、予算達成率を正しく扱えるか
- 期間解釈: 「今月」「今期」「前年同月比」を正しく解釈できるか
- 分解分析: 地域別・商品カテゴリ別に業績を分解できるか
- 要因分析: 悪化要因を適切な粒度で段階的に分析できるか
- ガードレール: 存在しない指標を推測で補完しないか
- RLS: ユーザーごとの参照可能地域を制御できるか
テーブル構成
| テーブル | 内容 | 粒度 |
|---|---|---|
fact_sales |
売上実績。売上金額、原価、粗利を保持 | 日次 × 商品 × 顧客 × 地域 |
fact_budget |
売上・粗利の予算 | 月次 × 地域 × 商品カテゴリ |
dim_date |
日付、年月、会計年度、今月・今期フラグ | 日次 |
dim_region |
地域マスタ | 地域 |
dim_product |
商品マスタ。商品カテゴリを含む | 商品 |
dim_customer |
顧客マスタ。顧客属性と所属地域を含む | 顧客 |
rls_user_region |
RLS 検証用のユーザー・地域対応 | ユーザー × 地域 |
AI による要因分析を検証しやすいように、2026年6月に意図的な業績変化を埋め込んでいます。
- 2026年6月の売上は前年同月比で悪化
- 主な悪化要因は
関東 x ノートPCと関西 x 周辺機器 -
関西 x 周辺機器は粗利率も悪化 -
九州 x サービスは売上が伸びる一方で粗利率が低下 - NPS や顧客満足度スコアは含めていない
Power BIのPrep for AIの構成について
Power BI のエージェント利用では、Prep for AIを構成することがベストプラクティスの1つとされています。
最良の結果を得るには、モデル所有者は、使用する前に 、AI のセマンティック モデルを準備する 必要があります。
引用:https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/create-reports/copilot-introduction
(推奨)最適化されたモデル - クエリ生成の品質を向上させるために AI のセマンティック モデルを準備する
引用:https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/developer/mcp/remote-mcp-server-get-started
その他参考:データ エージェントのセマンティック モデルのベスト プラクティス
本リポジトリでは、エージェントがセマンティックモデルを作成する際に入力される項目の説明とシノニムに加えて、以下のPrep for AI設定を構成しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| AI 指示 | 指標の使い分け、期間解釈、要因分析の手順、存在しない項目の扱いを定義 |
| データスキーマ | テーブル、列、メジャーの表示状態や同義語を定義 |
| 確認済み回答 | 特定の質問に対して、期待するビジュアル・集計内容を固定 |
データスキーマは非表示列と制御テーブル以外を表示対象としています。
AI 指示では、たとえば次のようなルールを定義しています。
- 「今月」「今期」「今四半期」といった条件をどの列・メジャーで解釈するか
- 「利益」は粗利として扱うこと
- NPS や顧客満足度スコアは存在しないため、推測で回答しないこと
- 予算は月次 × 地域 × 商品カテゴリ粒度で扱うこと
- 前年同月比の悪化分析では、
売上前年比と売上前年差を使い分けること - 要因分析では、複数ステップの分析を行うこと
確認済み回答は、再現性を確認したい代表的な質問に対して用意しています。このサンプルでは、以下のような質問を対象にしています。
- 月次売上と予算を見せて
- 地域別の売上と粗利を見せて
- カテゴリ別・地域別の売上マトリクスを見せて
Copilot Studio について
検証ではCopilot Studioを使用してMCPの検証を行います。
MCP登録方法の参考:
Copilot Studio の エージェント用 LLM は「Claude Opus 4.7」
ちなみに Copilot Studio で GPT 4.1 を選択すると回答自体にたどりつけないなど、かなり厳しい状態でした。そこまで賢くないわけではないはずですが、指示の不足は補えないということでしょう
MCP接続用のサービスプリンシパル構成
必要そうなものに委任アクセスをつけています。たぶん Fabirc Core MCP もあわせて使えるはず。
MCP 登録構成
MCP登録はこのような形をそれぞれのエンドポイントで構成
Power BI Remote MCP サーバー
- エンドポイント:https://api.fabric.microsoft.com/v1/mcp/powerbi
- MCPツール説明:データのクエリを実行し、既存のモデルから分析情報を生成します
- スコープ:https://analysis.windows.net/powerbi/api/.default,offline_access
- エージェントの指示
Fabric IQ MCP サーバー
- エンドポイント:https://api.fabric.microsoft.com/v1/mcp/fabricaihub/integrations/m365
- MCPツール説明:セマンティックモデルの測定や階層をクエリして分析結果を返します。
- スコープ:https://analysis.windows.net/powerbi/api/.default,offline_access
- エージェントの指示
その他の構成
セマンティックモデル設定で、Copilot用に承認済みを有効化
データエージェントはコードインタープリター追加
検証
検証は、次の内容で実施します。
- 簡単な質問
- 「今月の売上を教えて。」
- 「今期の達成率を教えて。」
- 「地域別の売上を要約してください。」
- 「地域別の売上と粗利を見せて」※検証済みの回答に設定したフレーズ
- 複雑な質問
- 簡単な質問をまとめて一度に聞く
- 「前年同月比で売上比率が最も下がった年月と地域の上位5件を抽出し、それぞれの地域での悪化の主要因つきで教えてください。」(※本来複数ステップの分析を一文で。)
- 「前年同月比で売上比率が最も下がった年月と地域の上位5件を抽出してください。そのあと、それぞれの地域での悪化の主要因つきで教えてください」
簡単な質問を回答できるように作成した概要レポートは次のようになっています。
複雑な結果は、2026年の関東、関西の順に悪く、関東の悪化主要因はノートPCであることを期待します。
また、ひっかけポイントとして、単純に地域、年月、カテゴリの粒度で分析すると、2026年の関西の周辺機器がワーストであるという特徴も存在しているため、プロンプト品質に対するAI側の解釈力も試されます。
なお、それぞれの質問は毎回チャット履歴をクリアしてから実行し、セッション内の情報を再利用できるか、という観点については検証しません。
簡単な質問「今月の売上を教えて。」
当月フィルタが必要な質問です。レポートの折れ線グラフか、モデル上のメジャーを使用することが期待されます。
-
レポートに含まれる Power BI Copilot(Power BI Desktopでテスト)
レポートを引用したわかりやすい回答

-
Copilot Studio (Fabric IQ MCP)
ASK Power BI という形で質問への回答が一本化されているようです。Foundry IQのAgentic RAGみたいに回答までを一気通貫で行うMCPエンドポイントのようですね

簡単な質問「今期の達成率を教えて。」
FY2026でのフィルタが必要な質問です。
簡単な質問「地域別の売上を要約してください。」
簡単な質問「地域別の売上と粗利を見せて」
検証済み回答のトリガーフレーズです。
-
Copilot Studio (Fabric IQ MCP)
まるでレポートを見てきたかの回答です。

まさに検証済み回答の可視化表現を基に応答している旨が記載されています。これはいいですね

複雑な質問 まとめて聞く
-
レポートに含まれる Power BI Copilot(Power BI Desktopでテスト)
複数の分析は不可のようです。一問一答。

複雑な質問 「前年同月比で売上比率が最も下がった年月と地域の上位5件を抽出し、それぞれの地域での悪化の主要因つきで教えてください。」
-
レポートに含まれる Power BI Copilot(Power BI Desktopでテスト)
やはり複数ステップの分析は不可

-
Copilot Studio (Power BI MCP)
カスタムインストラクションという呼称で、Prep for AIの情報が使えていました。どのように分析を行ったかの報告があるのは強い。
ひっかけにもひっかかっていません。


複雑な質問 「前年同月比で売上比率が最も下がった年月と地域の上位5件を抽出してください。そのあと、それぞれの地域での悪化の主要因つきで教えてください」
MCP セキュリティ検証
データエージェントやCopilotは閲覧ユーザーの権限に確実に基づいてアクセス制御がかかる仕組みになっています。
MCPではどうなるかを念のため確認してみます。
関西のデータだけが表示されるようにロールを設定します。
データエージェント
以下の権限を付与します。
データエージェントのアクセス権(組織内ユーザー全員アクセス可能なリンクで共有)

RLSが正常に動作します。
Power BI MCP サーバー
ドキュメントにこんな文言があるので特に気になったのがきっかけです。
行レベルのセキュリティ (RLS): 現在、サービス プリンシパル認証を使用する場合は適用されません。 サービス プリンシパルは、クエリを実行するときに、プリンシパルがアクセスを許可されているすべてのデータにアクセスできます。 サービス プリンシパルで認証されたエージェントをエンド ユーザーに公開する前に、セキュリティへの影響を慎重に確認してください。
引用:https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/developer/mcp/remote-mcp-server-get-started#limitations-and-considerations
MCPの利用では、セマンティックモデルのビルド権限(レポートを作成したりする権限)が追加で必要です。

また、レポートへの権限も付与しておきます。
権限反映がしばらくかかり、エラーがたくさん出ましたが、RLSが効いていました。
このトラブルシュートはちょっと大変かも

結果
委任APIアクセス許可によりサービスプリンシパルを使用してる場合にはRLSはきちんと働くようで安心しました。
Fabric IQ MCP サーバー
こちらも権限反映がしばらくかかりましたが、RLSが効いていました。
結果
まとめ
いくつかの角度でまとめてみます。
方式別所感
| 方式 | 得意なこと | 注意点・不安点 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| レポートに含まれる Power BI Copilot | 既存レポート上のビジュアルを使った説明 | 複数ステップの分析や自由な深掘りは苦手 | レポート利用者向けの補助 |
| スタンドアロン Power BI Copilot | アクセス可能なレポートやモデルを探して回答できる | 対象アイテムの選択や回答の安定性にぶれがある | Fabric ポータル上での探索的な分析 |
| Fabric データエージェント | 業務ユーザー向けの自然言語分析、Fabric 連携、シンプルな運用 | 第一候補ではあるものの、やや性能に不安があり、高度分析は聞き方やPrep for AI の依存度高め | Fabricの分析エージェントの第一候補 |
| Copilot Studio + Power BI MCP | DAX 生成・実行を使った深い分析、分析手順の説明 | プレビュー のため、ツール定義・要求/応答形式・接続仕様の変更リスクがある。Build 権限必要かつサービスプリンシパル運用が必要。Fabric IQ MCP に統合される可能性も。 | 開発者向け、検証用途、制御したいカスタム分析 |
| Copilot Studio + Fabric IQ MCP | 検索から回答生成まで一体化した自然な分析体験 | Power BI MCP のリスクに加えて、登場から日が浅く、まだ本番に置くには慎重な位置 | 将来的なエージェント連携の有力候補、先行検証 |
観点別
| 観点 | よかった方式 | コメント |
|---|---|---|
| 簡単な質問への回答 | ほぼ全方式 | 「今月の売上」程度なら大きな差は出にくい |
| Power BI レポート・ビジュアルを活かした回答 | レポート Copilot / スタンドアロン Copilot / Fabric IQ MCP | 既存レポートのビジュアルや可視化表現を踏まえた回答が得意 |
| Prep for AI との相性 | レポート Copilot / スタンドアロン Copilot / データエージェント / Fabric IQ MCP | AI 指示、データスキーマ、確認済み回答が回答品質に影響する。特にデータエージェントでは、確認済み回答のメタデータや可視化意図を踏まえたようなチャート作成が確認できた |
| 複雑な要因分析 | Power BI MCP / Fabric IQ MCP | 複数条件を組み合わせた分析や、分析手順の説明に強い |
| 導入・運用のしやすさ | データエージェント | Copilot Studio や Foundry との接続先として扱いやすい。Read 権限のみで利用でき、一般提供済みなのも安心 |
ユースケース別
| やりたいこと | 推奨 |
|---|---|
| レポート利用者が、その場でレポートの表示を基に内容を確認したい | レポートに含まれる Power BI Copilot |
| Fabric ポータル上で、アクセス可能なデータを横断的に探したい | スタンドアロン Power BI Copilot |
| 業務ユーザー向けに手軽に分析エージェントを作りたい | Fabric データエージェント |
| Copilot Studio から高度な分析をさせたい | Fabric IQ MCP (または Power BI MCP) |
| セマンティックモデルだけでなく、Fabric 全体の分析エージェントとして育てたい | Fabric データエージェント |
私見:Power BI MCPとFabric IQ MCP
個人的な考えですが、今後は Fabric IQ MCP サーバーがFabric 外のAIによるデータ消費の主軸になるのではと感じました。(Fabric内では引き続きデータエージェントとCopilotが主役と思いたい)
現状では、M365 統合も含め、次の図のような接続まわりがやや煩雑な状況となっているように思います。

今回の結果でも Fabric IQ は Foundry IQ (というか Azure AI Search)の、 エージェンティックRAGのように、回答をダイレクトに得るためのエンドポイントになっています。
また、Fabric IQ を Foundry から使用するドキュメントにおいても興味深い記述がありました。
Fabric IQ はリクエストを処理します — Fabric IQ は自然言語クエリを受け取り、対象アイテムの種類に基づいて振り分けます。
これらを考慮して、今後のFabricのエージェント分析における状況は次のようになるのではと感じています。
実際のところどうなるかはMicrosoft次第ですが、Fabric IQ のMCPエンドポイントの統合には期待です。
おわりに
MCP 経由の方式は、今回の検証では分析性能が高く、特に複雑な質問や段階的な要因分析では非常に有望に見えました。
一方で、これらの MCP サーバーはいずれもプレビュー機能であり、ツール定義、パラメータ、接続設定などが今後変わる可能性があります。
データエージェントは一般提供済みで、様々なドキュメントで構成に据えられていますが、今回の結果からすると、分析性能ではMCP×高性能LLMに一歩譲っている状況です。
安定運用を優先するのか、現時点での分析性能を優先するのか。どちらに比重を置くかによって、導入判断は分かれそうです。
以上、お役に立てば幸いです。
































































