はじめに
『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ』
という書籍をじっくり読みました。
リモートワークでのコミュニケーションにおいて有用だと思った内容、具体的には本の中で登場した4つの「〇〇コミュニケーション」を中心にまとめます。
読んだきっかけ
本を手に取ったきっかけは、海外メンバーを含むチームに配属されたことです。
同時期に同チームの配属になった読書家のメンバー M さんが過去に読んだ本で、自分たちの置かれた現状の課題に合ってそうな本としてオススメしてくれました。
本を手に取った当時のチームの課題としては、コミュニケーションやドキュメント管理に課題があると感じていました。
そのため、そういったコミュニケーション中心の課題に対して何か参考になることがないか、という観点で主に読み進めました。
私の所属チーム
私の所属するチームは、POSレジ(スマレジ)と API 連携する Web アプリの新規開発のチームです。
- チームは、海外メンバーもいて、日本メンバーも複数拠点にいる
- フルリモート勤務ではないが、チームメンバーが散り散りなので、実質リモート組織
- チーム内の開発に関するコミュニケーション、ドキュメントの整備はあまりうまくいってない
目次
どんな本か について簡単に触れて、
本の中で登場した、以下の4つの「〇〇コミュニケーション」について、順番に触れていきます。
どんな本?
『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』は、以下の内容の本です。
- オフィスを持たず、全世界のメンバーが分散して働く GitLab 社の「信頼できる唯一の情報源(SSoT)」である GitLab Handbook の内容をまとめたもの
- 価値観、働き方、コミュニケーション手法、組織運営の仕組みまで、幅広く解説している
今回の記事ではコミュニケーションについて書いていますが、本では仕事全般について幅広く書いてあります。
リモートワークの導入を検討している企業の人が読むとジャストフィットなのかもしれませんが、リモート組織で働く人にとっても為になる本かと思います。
GitLab Handbook
この GitLab Handbook が最高に役立つ!
GitLab Handbook は、
- 社内のあらゆるルール、プロセス、価値観、FAQ を公開しているマニュアル
- 誰でも閲覧可能
- カルチャー/採用/インフラ/開発/セキュリティ/法務など、3000 ページ以上(本執筆された当時のページ数)のドキュメントで構成
- 「成果」「透明性」「効率性」などの GitLab Value (価値観)を体現
この GitLab Handbook という膨大なページ数の内容を 300 ページほどにギュッとまとめた本であるため、本の内容は広く浅くなってはいます。
ただ、詳しく知りたければ誰でも閲覧可能な GitLab Handbook を見たら大丈夫なので、 GitLab Handbook の存在と内容の概要を知れたことだけでも、この本は読んで良かったと思います。
GitLab Value
GitLab 社が大切にする6つのバリューは以下のとおりです。
-
コラボレーション(🤝 Collaboration)
誰もがどのトピックにも自由に意見を出し合い、責任者はそのすべての提案に真摯に耳を傾け、実装可否について説明することで、相互に助け合いながら効果的に成果を上げることが求められます。
-
あらゆる活動を顧客の成功に奉仕するものと位置づけ、顧客が成果を得ることを最優先に置くことでビジネス全体の成長と価値創出を実現します。
-
効率性(⏱️ Efficiency)
資源・時間・エネルギーを無駄にせず成果を出すことを効率性と定義し、組織全体にとって最適なソリューションを優先的に追求します。
-
ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング(🌐 Diversity, Inclusion & Belonging)
多様性と包括性を事業の成功に不可欠と捉え、あらゆる背景や事情を持つメンバーが安心して貢献できる環境をデザインします。
-
イテレーション(👣 Iteration)
最小単位の価値ある変更を迅速に反復的にリリースし、早期にフィードバックを得ながら効率的に目標に到達することを重視します。
-
透明性(👁️ Transparency)
可能な限り情報をパブリックに公開することで貢献のハードルを下げ、誰でもアクセスできる単一の情報源を実現し、オープンなコラボレーションを促進します。
本でもまとめられていましたが、6つの GitLab Value それぞれの行動の指針ももちろん GitLab Handbook で公開されています。
〇〇コミュニケーション
続いて本の中で登場した、4つの「〇〇コミュニケーション」について、順番に触れていきます。
なお、GitLab Handbook でコミュニケーションについては以下のページでまとめられています。
1. 非同期コミュニケーション
一つ目のコミュニケーションは、「非同期コミュニケーション」です。
非同期コミュニケーションとは、本では具体例として、Slackなどでのテキストコミュニケーション、会議の録画や議事録などのドキュメンテーションが挙げられています。
同期コミュニケーションは、電話、オンラインミーティングなど2人以上が同期的にコミュニケーションをとっているものです。
非同期コミュニケーションを優先する
非同期コミュニケーションを優先する
(p133)
非同期コミュニケーションを優先する目的は、GitLab Value の一つに掲げている「ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング」を実現するためで、Handbook に記した行動指針の一つとしています。
ダイバーシティは実際に組織に多様性が存在していること、インクルージョンは所属しているすべての従業員が活躍できるという方針の確約、ビロンギングはその結果として従業員に生まれるもの
(p133)
ビロンギングとは、自己の貢献や評価を実感し、「ここが自分の居場所だ」と感じられる帰属意識です。
用語を使うなら「会社に駒のように扱われて、ビロンギングがなくなってきている」と使う感じでしょうか(あくまで例文です)。
非同期コミュニケーションを優先することで、どんなチームメンバーがいつ働いても、同等の情報を受け取れて疎外感なくコミュニケーションをとって働ける、ということですね。
タイムゾーンが違わないにしても、休みを取ったり、フレックスで出退勤、休憩がずれているなど、常に同じ時間に働いているわけでないですし、お互い業務中であったとしても、非同期コミュニケーションであれば、人の手を無闇に止めさせないことに繋がります。
そのため、非同期コミュニケーションを優先することは仕事の効率を高める行動であるとイメージできます。
GitLab Handbook では非同期コミュニケーションについて、以下のページでフォーカスされています。
非同期コミュニケーションを優先することで、「ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング」を実現することのほか、以下のメリットがあるとしています。
- 自律性、主体性をもたらす
- 効率を高め、生産性を向上させる
- ストレスを軽減する
- 深く考えられる
- ドキュメント化により知識が共有される
詳しくは GitLab Handbook をご覧ください。
2. テキストコミュニケーション
続いて、テキストコミュニケーションについてです。
非同期コミュニケーションを基本とすると、テキストコミュニケーションに大きく依存することになり、リモート組織では核となるコミュニケーション手段です。
テキストコミュニケーション大事、ライティングスキルは習得可能
GitLab Handbook では、テキストコミュニケーションについて、以下のページでまとめられています。
- Communicating effectively and responsibly through text(テキストを通じた効果的かつ責任あるコミュニケーション)
- The importance of a handbook-first approach to communication(ハンドブックファーストのコミュニケーションアプローチの重要性)
- The GitLab Content Style Guide(GitLabコンテンツスタイルガイド)
テキストコミュニケーション、ドキュメンテーションが大事であるという価値観、ライティングについてのヒントなどの実践の仕方、詳細な内容が GitLab Handbook にまとめられています。
ミーティングもテキストメイン
GitLab では、ミーティングについてもテキストコミュニケーション、ドキュメンテーションを余すことなく取り入れています。
カレンダーはGoogle Docsで議事録をあらかじめ添付しておき、アジェンダや論点を会議前に整理し、全員が一通り目を通した状態で会議に臨むようにします。会議をしながらGoogle Docsの議事録にリアルタイムで記録を行い、会議に参加できないメンバーがいつでも確認できるようにしておきます。
(p76)
私の経験では、定例ミーティングが議題を決められずに始まり、とりあえず進捗報告、思い出した疑問を共有、何もなければ 5 分で終わる、ということがありましたが、経験したことのあることは多いのではないかと思います。
事前共有されている Google ドキュメントに事前にアジェンダを書き込んでおくこと自体はすぐに始められることなので、意識的に取り組んでいきたいと思います。
また、議事録については、「どうしてこの仕様にしたんだっけ?議事録に残ってるかな」と、後日読み返すことがあったときに、結論だけ書いてあって根拠や理由などの経緯が書いてない…ということも過去によくありました。
この点については、GitLab Handbook では、複数の参加者によるリアルタイムのメモ取りが推奨されています。
本や GitLab Handbook では触れていませんでしたが、所属組織で Google Workspace、 Gemini AI を利用している場合は、Google Meet で Gemini にメモを自動作成してもらうのも手段の一つかと思います。
先日、所属会社でメモの自動作成ができるようになったので試してみたら、最高でした!話したことは漏れなくまとまっていて驚きました。
ローコンテクストコミュニケーション
次は、「ローコンテクストコミュニケーション」です。
リモート環境で効率よく非同期業務を進めたり、多様な価値観が存在したりする中で円滑なコミュニケーションを取るために重要なポイントが「ローコンテクストコミュニケーション」です。
(p169)
と本の中では書かれており、ローコンテクストコミュニケーションは、
- 全く違う国で育った 10 歳の子供にも正確な意図が伝わるようなコミュニケーション
- 「配慮」が鍵である
- 相手がこの文章を受け取ったときにどう感じるであろうかと想像し、理解できる文章や情報を用いる
という内容の説明がされています。
ローコンテキストコミュニケーションの重要な原則
GitLab Handbook では、ローコンテキストコミュニケーションの重要な原則として、「Say Why, not just What」(「何を」だけでなく「なぜ」を述べる)を掲げています。
「なぜ」を常に伝えられることで仕事がとてもしやすくなるのは常日頃感じることであるため、自分が伝えるときにも配慮して伝えるようにしていきます。
余談ですが、噂に聞いた話で、オフショア開発で実装者である海外メンバーに、「なぜ」作るかを伝えても、全く違う仕様の機能が出来上がって、どう伝えたら良いのかもうわからなくなった、という話を聞いたことがあります。
自分の目の前に同じ課題が立ちはだかったとき、どう解決するのか、GitLab Handbook の知恵を持って解決できるものなのか、イメージを持っておきたいところです。
(オフショア開発を経験したことのある方に聞いてみたい...)
インフォーマルコミュニケーション
続いて、「インフォーマルコミュニケーション」です。
GitLab Handbook だとこちらのページで書かれています。
インフォーマルコミュニケーションとは、業務とは関係のない非公式なコミュニケーションのことで、同僚間で仕事以外のことについて話したりすることです。
趣味や休日の過ごし方を話し合ったり、冗談を言って笑い合う、というような人間関係を築くことをインフォーマルコミュニケーション、としています。
業務とは直接関係のないコミュニケーションのことまで GitLab Handbook には書かれているのかと思いましたが、業務に影響があるから書かれているということですね。
インフォーマルコミュニケーションを設計する
インフォーマルコミュニケーションを設計する
(p80)
この章で、インフォーマルコミュニケーションを必要とする重要な理由について、以下の2つを挙げられています。
- インフォーマルコミュニケーションが従業員のパフォーマンスを上げるため
- メンタルヘルスの問題を避けるためにインフォーマルコミュニケーションが重要な役割を果たすため
パフォーマンスについてですが、業務外のことを知らなさすぎると、業務上でも気を使いすぎて何か本音を出し合えないときがあるのは経験としてある人は少なくないと思います。
そうなると円滑に仕事を進められないシーンが出てきてしまいます。
インフォーマルコミュニケーション施策
GitLab Handbook の該当ページでは、インフォーマルコミュニケーションを促進する方法が 20 種類以上書かれています。
GitLabでは、1 on 1 で雑談をするコーヒーチャットやゲーム、ヘルスケア、家族などのテーマに関して雑談し合うソーシャルコール、(中略)など、さまざまなインフォーマルコミュニケーション施策が行われています。
私の場合は、目の前の仕事を定時で完了させるには、今は雑談すら余裕がない!、と話しかけないでオーラを出してインフォーマルコミュニケーションをできる機会を逃してしまうことが少なくなく改善したいことだと日々思っています。
ただでさえおじさんという属性の私は普通に過ごしているだけでは話しかけにくい存在であるという自覚はあるので、インフォーマルコミュニケーションをとって、接しやすいおじさんで在ることが今後のキャリアでも大事なスキルの一つであると考えています。
幸い、私の所属会社には、オフラインシャッフルランチ会、ボードゲーム会などのサークル活動はよく開催されています。リモート組織の話とは全くかけ離れますが、そういった機会は大事にしていこうと思いました。
そのほか考えたこと
ふと考えたことを一つ。
AI に質問する際に GitLab Handbook の内容を踏まえた回答をもらえる
GitLab Handbook 自体が公開されているということは、リモート組織のつくりかたに関連した問題について、ChatGPT などの AI に質問する際に GitLab Handbook の内容をもとに回答を得られるってコト?
ということで、ローコンテクストコミュニケーションのところで書いたオフショア開発のケースについて質問してみました。
オフショア開発で実装者である海外メンバーに、「なぜ」作るかを伝えても、全く違う仕様の機能が出来上がって、どう伝えたら良いのかもうわからなくなりました。どう解決するのか、GitLab Handbook の内容から、解決できる考え方、手段をまとめて回答してください。
と ChatGPT(o4-mini-high)に質問したところ、まとまった良い回答が返ってきたので、この手はとても使えると予感しています。
おわりに
コミュニケーションにフォーカスを当て、本の中で登場した4つの「〇〇コミュニケーション」について、まとめました。
本自体の感想としては、GitLab Handbook の膨大なページ数の内容を 300 ページほどにギュッとまとめた本であるため、内容は広く浅くなっているもののとてもわかりやすくまとめられていました。
今後詳しく知りたければ GitLab Handbook を見たら大丈夫なので、GitLab Handbook の概要を知る機会となった点でとても良い本でした。
次は「ドキュメント作成」「テキストコミュニケーション」に特化した書籍『GitLabに学ぶ パフォーマンスを最大化させるドキュメンテーション技術 数千ページにもわたるハンドブックを活用したテキストコミュニケーションの作法』を読んでいこうと思います。
先日、所属会社の社内書籍制度で買ってもらったので、読んだらまた投稿します。
ありがとうございました。