はじめに

先日、実務でHyper-V上のOracle LinuxにPostgreSQLのリストアをしていたところ、ルートボリュームのディスク容量が枯渇するという事態に見舞われました
今回は、その際に実施したルートボリュームのオンライン拡張手順を備忘録としてまとめます。

執筆時の環境

仮想化環境: Hyper-V
OS: Oracle Linux
ボリューム管理: LVM

前提知識のクイックレビュー

手順に入る前に、今回の作業で登場する重要な概念を簡単におさらいします。

ディスクとパーティション

Linuxでは、ハードウェアはすべてファイルとして扱われ、/devディレクトリにまとめられています。

/dev/sda: 1台目のストレージデバイス（ハードディスクやSSD）全体を表します。
/dev/sda1, /dev/sda2: /dev/sdaを分割した個々の領域（パーティション）です。

パーティションテーブル (GPT vs MBR)

パーティションの情報を管理する形式には、主に2つの種類があります。

MBR (Master Boot Record): 古くから使われている形式。最大2TBまでのディスク、最大4つのプライマリパーティションという制限があります。
GPT (GUID Partition Table): 新しい形式。事実上、容量やパーティション数の制限はありません。

自分のディスクがどちらの形式か確認するには、以下のコマンドを実行します。
出力の Disklabel type: の部分が dos ならMBR、gpt ならGPTです。

sudo fdisk -l /dev/sda

ファイルシステム

パーティションで区切っただけでは、まだデータを保存することはできません。
ファイルシステムを作成（フォーマット）することで、初めてファイルの保存や管理ができるようになります。

ファイルシステムは、データの保存場所を管理したり（アドレッシング）、ファイル名やサイズといったメタデータを保持したりする「ルール」のようなものです。

主なファイルシステムの種類
- ext4: Linuxの標準的なファイルシステム。
- xfs: 大規模なファイルシステムや高いパフォーマンスが求められる場面で使われます。
- btrfs: スナップショットやコピーオンライトなど、多機能で新しいファイルシステム。

LVM (Logical Volume Manager)

LVMは、複数の物理的なディスクやパーティションをまとめて、一つの大きな仮想的なディスク（ボリュームグループ）として扱えるようにする仕組みです。
そして、その仮想ディスクを必要なサイズに切り出して（論理ボリューム）、OSに提供します。

PV (Physical Volume / 物理ボリューム): /dev/sda4 のような物理パーティションのこと。LVMの管理下に置かれたもの。
VG (Volume Group / ボリュームグループ): 複数のPVをまとめたグループ。
LV (Logical Volume / 論理ボリューム): VGから切り出して作成される、OSが実際にマウントして使用する領域。

今回の環境では、/dev/mapper/ol-root という名前が使われていました。これは、

ol: Oracle Linuxのインストーラーがデフォルトで作成したボリュームグループ (VG)
root: そのVG内に作られた、ルートファイルシステム / 用の論理ボリューム (LV)

を意味しています。/dev/mapper/ は、このLVMの仕組み（Device Mapper）によって作られた論理ボリュームであることを示しています。

ルートボリュームのオンライン拡張手順

それでは、実際にルートボリュームを拡張していきます。OSを停止させる必要のないオンラインでの拡張手順です。

Step 1: Hyper-Vで仮想ディスクを拡張する

まず、仮想マシンが使用している仮想ハードディスク（.vhdx）のサイズを大きくします。

対象の仮想マシンをシャットダウンします。
Hyper-Vマネージャーで、仮想マシンの「設定」を開きます。
「ハードウェア」から「SCSIコントローラー」>「ハードドライブ」を選択します。
仮想ハードディスクの「編集」ボタンをクリックします。
ウィザードが起動したら、「拡張」を選択し、希望のサイズ（今回は64GBから100GBへ）に変更します。
完了後、仮想マシンを起動します。

Step 2: OS側でディスクの認識状況を確認する

OSを起動したら、SSHなどでログインし、ディスクの状況を確認します。

sudo lsblk

sdaのサイズがHyper-Vで設定した100GBになっている一方で、パーティション（sda1, sda2, sda3）の合計が元のサイズのままであることが確認できます。ここに新しいパーティションを追加していきます。

Step 3: 新しいパーティションを作成する (`fdisk`)

fdiskコマンドを使い、ディスクの空き領域に新しいパーティションを作成します。

sudo fdisk /dev/sda

fdiskの対話モードが起動したら、以下の順でコマンドを入力していきます。

n を入力してEnter（新しいパーティションを作成）
p を入力してEnter（プライマリパーティションを選択）
パーティション番号を 4 にしてEnter（sda1,2,3があるので次は4）
First sector, Last sector はそのままEnter（自動で最大サイズが選択される）
t を入力してEnter（パーティションのタイプを変更）
パーティション番号を 4 にしてEnter
Hex code (L to list all codes) に 31 を入力してEnter（Linux LVM のタイプコード）
w を入力してEnter（変更内容をディスクに書き込んで終了）

これで、/dev/sda4 というLVM用のパーティションが作成されました。

Step 4: 物理ボリューム (PV) を作成する (`pvcreate`)

次に、作成したパーティション /dev/sda4 をLVMが管理できる「物理ボリューム(PV)」に変換します。

sudo pvcreate /dev/sda4

Physical volume "/dev/sda4" successfully created と表示されれば成功です。

Step 5: ボリュームグループ (VG) を拡張する (`vgextend`)

新しく作成したPV (/dev/sda4) を、既存のボリュームグループ ol に追加して、VG全体のサイズを大きくします。

sudo vgextend ol /dev/sda4

Volume group "ol" successfully extended と表示されれば成功です。

Tips: 自分のボリュームグループ(VG)名は vgdisplay コマンドで確認できます。

Step 6: 論理ボリューム (LV) を拡張する (`lvextend`)

ボリュームグループが大きくなったので、その増えた分の領域をルート用の論理ボリューム /dev/mapper/ol-root に割り当てます。

# VG内の全ての空き容量をLVに割り当てる
sudo lvextend -l +100%FREE /dev/mapper/ol-root

-l +100%FREE は、「ボリュームグループ内の空き領域を100%すべて割り当てる」という意味の便利なオプションです。

Step 7: ファイルシステムを拡張する

最後に、論理ボリュームのサイズに合わせてファイルシステムのサイズも拡張します。これにより、OSが拡張されたディスク領域を実際に認識できるようになります。

使用しているファイルシステムによってコマンドが異なります。df -Th などで確認しましょう。

ext4 の場合:
```
sudo resize2fs /dev/mapper/ol-root
```
xfs の場合:
```
sudo xfs_growfs /
```

コマンドを実行すると、自動的にファイルシステムが拡張されます。

Step 8: 最終確認

df -h コマンドを実行して、ルート (/) のサイズが増えていることを確認しましょう！

df -h

Size の項目が100GB近くになっていれば、すべての作業は完了です。お疲れ様でした！

まとめ

今回は、Hyper-V上のOracle LinuxでLVMを利用してルートボリュームをオンラインで拡張する手順をまとめました。

Hyper-V で仮想ディスクのサイズを拡張
fdisk で空き領域に新しいパーティションを作成 (Type: Linux LVM)
pvcreate でパーティションを物理ボリューム (PV) に変換
vgextend で既存のボリュームグループ (VG) にPVを追加
lvextend で論理ボリューム (LV) を拡張
resize2fs / xfs_growfs でファイルシステムを拡張

LVMを使っていると、このようにOSを止めずに柔軟なディスク管理ができるので非常に便利ですね。
この記事が誰かのお役に立てれば嬉しいです。