はじめに
以下の疑問をお持ちの方に共感いただける記事になっております。
- なぜデータ分析が現代社会に必要なのか?
- データサイエンティストの役割とは?
- データ分析は経営の問題解決にどう関連するのか?
- 様々な技術・概念があるのは理解しているが、それがどのように経営につながるのか?
- データサイエンティストとして経営における意思決定をどのように実施することができるのか?
筆者プロフィール
- 情報システム部としてコーポレートエンジニア(3社に渡り約15年)
- データサイエンティスト/AIに興味があり、独学で試行錯誤中
- ポートフォリオ
経営は何を決めたいのか
大きく以下の3点に分解することができる。
〔1〕どこに「ヒト・モノ・カネ」の資源を配分するか
例:
- どの事業に投資するか
- どの顧客層を取りに行くか
- 採用を増やすか・抑えるか
〔2〕何をやめるか
例:
- 利益率の悪い施策を止める
- 効果の薄い広告を切る
- 維持コストの高い機能を縮小する
〔3〕どれくらいリスクを取るか
- 値上げしても離脱しないか
- 新機能投入で既存売上が落ちないか
- 在庫を増やして欠品を防ぐべきか
2. データサイエンティストは何をつなぐのか
データサイエンティストの役割は、単なる集計ではなく、経営の問いを分析可能な問いに翻訳することです。
たとえば、経営が「売上を伸ばしたい」
と言っても、そのままだと分析できません。
これを分解していきます。
分解例
売上 = 客数 × 単価 × 継続率
- 客数を増やすには何が効くのか
- 単価を上げても離脱しないのはどの顧客か
- 継続率が落ちている原因はどこか
ここで初めて、
- どのデータを見るか
- どの指標を置くか
- どんな分析をするか
が決まります。
つまりDSは、「経営のふわっとした期待を、測れる構造に変える人」です。
実際にどう意思決定につなぐのか
以下のステップで分け、考察していきます。
〔Step 1〕経営課題をKPIに落とす
例:
「利益を伸ばしたい」
これを分解すると、
- 売上高
- 粗利率
- CAC
- LTV
- 解約率
- リピート率
になります。
ここで大事なのは、
- 見やすい数字ではなく、経営が動ける数字を選ぶこと
たとえばPVが増えても利益につながらないなら、経営指標としては弱いです。
〔Step 2〕現状把握
- 何が起きているのか
- どこに異常があるのか
- どこに伸びしろがあるのか
を見ます。
例:
- 新規獲得は増えているのに利益が伸びない
- 特定チャネルだけCPAが悪化している
- 継続率が3か月目で急落している
- 上位顧客のLTVが極端に高い
この段階では、「問題の所在を特定する」のが役割です。
〔Step 3〕原因仮説を立てる
ここが集計担当とDSの差が出やすいところです。
- 3か月目で解約が増えるのはオンボーディング不足ではないか
- CPA悪化は広告媒体ではなく訴求のズレではないか
- 高LTV顧客は特定導線から来ているのではないか
ここで、
- 回帰分析
- クラスタリング
- コホート分析
- 因果推論
- A/Bテスト
- 需要予測
などデータサイエンティストの専門知識が活きてきます。
分析手法は
「目的ではなく、経営判断の精度を上げるための道具」
です。
〔Step 4〕意思決定の選択肢抽出
経営に本当に必要なのは、グラフではなく選択肢です。
悪い例:
- 解約率は3.8%です
- 20代男性の離脱が多いです
これだけだと、経営は動けません。
良い例:
- 初回7日間の利用率が継続率に強く相関している
- したがって、オンボーディング改善を優先すべき
- 改善案Aは低コストですぐ試せる
- 改善案Bは開発工数がかかるが効果が大きい見込み
- それぞれの期待効果はこれくらい
ここで初めて、分析結果が経営会議で使える材料になります。
〔Step 5〕実行後の検証
意思決定は「決めて終わり」ではありません。
- 施策前後でKPIはどう変わったか
- 想定通りの効果が出たか
- 予想が外れたなら何が違ったか
ここまで回して、
「意思決定の学習サイクル」
を作ります。
具体例での紹介
上記を踏まえ、具体的にいくつか例を出してみました。
ex1) EC
経営者の問い
「広告費を増やすべきか?」
DSのつなぎこみ
- 顧客獲得単価とLTVを算出
- チャネル別に回収可能性を比較
- 新規顧客の質を分析
- どの広告が短期売上だけでなく継続利益を生むかを見る
- 「このチャネルには投資継続、これは停止」と提言する
ex2) SaaS
経営者の問い
「解約率を下げたい。どこに投資すべきか?」
DSのつなぎこみ
- 解約顧客の共通パターンを分析
- 利用ログから離脱前兆を検出
- 継続顧客との違いを比較
- 改善余地の大きい体験ポイントを特定
- カスタマーサクセス強化か、プロダクト改善かを判断材料として出す
ex3)人事
経営者の問い
「採用を増やすべきか、既存社員の定着改善を優先すべきか?」
DSのつなぎこみ
- 採用コスト
- 立ち上がりまでの期間
- 離職率
- ハイパフォーマーの特徴
- 定着施策のROI
上記を比較して、採用強化と定着投資のどちらが合理的かを示します。
5. 重要なのは「分析力」だけではない
データサイエンティストが経営につながるには、技術だけでは足りません。
必要なのはこの3つです。
〔1〕事業理解
- 会社はどこで儲けているか
- どこがボトルネックか
- 何が経営にとって痛いのか
〔2〕問いの設計力
- 何を明らかにすれば意思決定できるのか
- どの粒度なら動けるのか
〔3〕伝える力
- 難しい分析を簡単に言う
- 結論を先に言う
- 選択肢と優先順位を示す
経営に刺さるのは、
精密なモデルそのものではなく
「で、結局どうするの?」に答えられることです。
まとめ
データサイエンティストは、「過去を説明する人ではなく、次の一手の確率を上げる人」です。
完全に別職種の感覚というより、現場改善を、より定量的・経営的に扱う力とも言えます。
経営とのつなぎこみは、
- 経営課題を理解する
- 分析できる問いに変える
- 意思決定の選択肢に落とす
- 実行後に検証する
の4点です。
最後までご覧いただきありがとうございました。