この記事では社内で日々発生する様々な課題をヒアリングし、ITやAIを活用して解決策に落とし込む中で得た「実務のリアルな知見」をまとめました!めちゃくちゃ現場感がある内容になっていると思います。
単にシステムを作るだけでなく、「どう全体最適化するか」「いかに現場に使ってもらうか」に悩むDX担当者や社内PMの方々の参考になれば幸いです。
1. 「要望」を鵜呑みにしない 全体最適と現場深掘りの二軸
会社の規模が大きくなると、社内からは無限に課題や要望が出てきます。ここで最も注意すべきなのは、「現場一つひとつの要望をそのまま叶えても、会社全体の最適化にはならない」という点です。
① 横展開できる汎用課題にプライオリティを置く
例えば「経理申請」や「経費精算」のような業務は、事業部を問わず全社で共通のボトルネックになりやすいテーマです。こうした「誰もが困っている課題」に対して、横展開を見据えた戦略的アプローチを優先して組みます。
② ヒアリングは「現場目線」であることを前提に捉える
課題解決においてヒアリングは最も重要なステップですが、注意が必要です。現場から出されるアイデアは、あくまで「その現場の枠組みの中で最も都合が良い解決策」です。開発者側は、以下の2つの視点を使い分ける必要があります。
| 視点 | アプローチ | 狙い |
|---|---|---|
| 広い視点(プロの抽象化) | 個別の要望を全社視点で抽象化し、よりインパクトの高い解決策を模索する。 | 重複投資を防ぎ、全社の共通基盤として大きな効果を生む。 |
| 深い視点(現場への潜入) | 課題感が特に強い現場にはじっくり入り込み、根深い構造課題を一緒に紐解く。 | 表面的なSaaS導入等では解決しない本質的な課題を特定する。 |
SaaSや外部ツールの導入だけで解決しないケースや、そもそもIT以外の運用・組織体制に根本原因があるケースも多いため、徹底的なヒアリングと視点の使い分けが不可欠です。
2. 浸透フェーズの攻略:「徐々に説明」と「一気にリード」
社内システム開発において、最も難易度が高いのは開発後の「浸透フェーズ」です。これまでの業務フローを変えることは、現場にとって一定の混乱や抵抗を生みます。
この変化へのアレルギーを最小限にし、スムーズに移行してもらうためには、相反するような2つの軸を同時に走らせる必要があります。
- 丁寧な説明(グラデーション): なぜ変えるのか、どう便利になるのかを少しずつ開示し、心の準備と理解を促す。
- 強力な牽引(イニシアチブ): 移行期には「ここからは新しいやり方に統一する」という強いリーダーシップで一気に引っ張る。
3. 社内カルチャーと「好み・嫌い」の言語化
どのような組織にも固有の「カルチャー」が存在します。社員の声を丁寧に集めていくと、実は全社共通の「好み」や「苦手なUI/UX」が浮かび上がってきます。
- 好まれる傾向(例): チャット文化が根付いている組織なら、チャットUI上でのやり取りの自動化や、スマホから手軽に業務が完結する仕組みが強く好まれます。
- 嫌われる傾向: 逆に「操作ステップが多い」「直感的でない」「入力項目が無駄に多い」といった嫌いなUI/UXの感覚も、全社で驚くほど共通しています。
ユーザー(社員)の好みとアレルギー反応を事前に把握しておくことで、使われないシステムを作ってしまうリスクを激減させることができます。
4. 仲間(ファン)を作って巻き込むプロモーション戦略
プロダクトの浸透率を高める最強の施策は、「他部署の人を巻き込んで作ること」です。
開発段階から現場のキーマンを巻き込み、「一緒に作り上げた」という当事者意識(オーナーシップ)を持ってもらうことで、彼らが自部署に戻った際に「この便利なシステムをみんなに使ってほしい!」と自発的に広報・サポートしてくれるエバンジェリストになってくれます。
また、日常的に社内のメンバーとコミュニケーションを取ったり飲みに行ったりして、人間性や業務背景を知ることも大切です。相手の顔や好みを解像度高く想像できるようになることで、本当に喜ばれる細やかなインターフェースや体験設計(UX)が可能になります。
5. AI時代のプロダクト開発と「社内向けエンジニアリング」の魅力
現在では生成AIなどの利活用により、プロトタイプやシステムの構築自体はかつてないスピードで行えるようになりました。つまり、「技術的な実装」よりも「相手の好みと真のニーズをどれだけ深く知っているか」がプロダクトの価値を左右する時代になっています。
toC SaaSと社内システムの違い・魅力
toCサービス開発では顧客の顔が直接見えにくいことが多いですが、社内システム開発には「ユーザーの顔が直接見え、ダイレクトに『ありがとう』『業務が楽になった』と言ってもらえる」という素晴らしい体験があります。
身近な人の好みや課題に寄り添って改善を回す体験は、マーケティングで市場全体を俯瞰する観察眼と深く類似しています。社内システム開発は、自らのユーザー体験(UX)に対する感度を飛躍的に高めてくれる、極めてクリエイティブで楽しい領域です。
まとめ
- 現場の要望は「全社的な横展開」の視点で抽象化して捉える。
- 浸透フェーズは丁寧な開示と強いリードの二軸で動かす。
- 社内のカルチャーやUI/UXの「好み・嫌い」を深く把握する。
- 他部署を開発段階から巻き込み、広報大使になってもらう。
- ユーザーの顔が見える環境を活かし、UX感度とプロダクト価値を高める。
AIで誰もが素早く形にできる時代だからこそ、こうした「人間理解」と「社内コミュニケーション」を軸にしたプロダクトマネジメントが、企業DXの成否を分けるカギになると感じています。