3行まとめ
- 2026年1月、Cursorが「Agent Trace」というオープン仕様(RFC)を公開
- AIが書いたコードと人間が書いたコードを行レベルで追跡できるJSON形式の標準
- Google、Vercel、Cloudflare、Cognition等が支持を表明
「このコード、誰が書いた?」に答えられない問題
コードレビューで聞かれて困ったことはないでしょうか。
「この関数、なんでこう書いたの?」
「……Claude Codeが書きました」
「中身わかる?」
「……」
2026年、コードベースの中でAIが書いた部分と人間が書いた部分の区別がつかなくなっています。git blameは「コミットした人」を記録しますが、「AIが生成してコミットした」のか「人間が書いてコミットした」のかは区別しません。
Agent Traceは、この問題を解決するオープン仕様です。
Agent Traceとは何か
2026年1月にCursorがRFC(仕様提案)として公開。GitHubリポジトリ(cursor/agent-trace)で管理されています。
ひとことで言うと: AIと人間のコード貢献を、ファイル・行レベルで記録するベンダー中立のJSON仕様。
JSON形式の中身
Agent Traceの基本構造:
{
"version": "0.1.0",
"id": "550e8400-e29b-41d4-a716-446655440000",
"timestamp": "2026-01-25T10:00:00Z",
"tool": {
"name": "cursor",
"version": "0.48.0"
},
"files": [
{
"path": "src/app.ts",
"conversations": [
{
"contributor": { "type": "ai", "model": "claude-sonnet-4-6" },
"ranges": [{ "start_line": 1, "end_line": 50 }]
},
{
"contributor": { "type": "human" },
"ranges": [{ "start_line": 51, "end_line": 80 }]
},
{
"contributor": { "type": "mixed" },
"ranges": [{ "start_line": 81, "end_line": 95 }]
}
]
}
]
}
4つのcontributor type:
| type | 意味 |
|---|---|
human |
人間が直接書いた |
ai |
AIが生成した |
mixed |
人間がAI出力を編集、またはその逆 |
unknown |
出所不明 |
なぜこれが必要か
理由1: コードレビューの優先度が変わる
AIが書いた行と人間が書いた行で、レビューの注意度を変えられます。
-
ai行: ハルシネーション・パターン不一致に注意 -
human行: 意図の確認に集中 -
mixed行: AIの出力を人間がどう修正したかを確認
理由2: セキュリティ監査の効率化
セキュリティインシデントが起きたとき、「この脆弱性はAIが生成したコードか、人間が書いたコードか」を即座に判別できる。原因分析の速度が変わります。
理由3: 「理解負債」の可視化
前述の「理解負債」問題に対して、Agent Traceは「どの部分が理解されていないか(=AIが書いて誰もレビューしていない部分)」を可視化する手段になります。
注意: Agent Traceが追跡しないもの
- 法的な所有権・著作権 → 追跡しない
- AIの学習データの影響 → 追跡しない
- AI貢献の品質評価 → しない
あくまで「誰が書いたか」の記録であり、「良いか悪いか」の判断は含みません。
支持している企業・プロジェクト
AIコーディングツールの主要プレイヤーが軒並み支持。事実上の標準になりつつあります。
今できること
Agent Traceは現時点ではCursorが先行実装していますが、仕様自体はオープンなので他のツールでも実装可能です。
今日からできること:
- PRのdescriptionに「AI生成部分」を手動で記録する(Agent Trace普及までの暫定措置)
-
cursor/agent-traceリポジトリをウォッチして仕様の進化を追う - 自社のコードレビュー基準に「AI生成コードの扱い」を追加する
【結論】git blameの次が来た
git blameが「誰がコミットしたか」を記録する仕組みだったように、Agent Traceは「AIが書いたか人間が書いたか」を記録する仕組みです。
コードの50%以上をAIが書く時代に、この区別ができないことはセキュリティリスクであり、品質管理の盲点です。
Agent Traceはまだ仕様策定段階ですが、Google・Vercel・Cloudflareが支持している以上、近い将来のデファクトスタンダードになる可能性が高い。今のうちに知っておいて損はありません。
参考:
- GitHub「cursor/agent-trace」
- InfoQ「Agent Trace: Cursor Proposes an Open Specification for AI Code Attribution」(2026年2月)
- Cognition Blog「Agent Trace: Capturing the Context Graph of Code」
- agent-trace.dev(公式サイト)