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【徹底比較】ドルコスト平均法越えのアルゴリズム開発!?S&P 500の株価推移で実力を検証してみた【第二回】

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はじめに

こんにちは!今回は、筆者が個人的に考案・検証を進めている新しい投資アプローチ「AAVC(Asymmetric Average Volatility Cost)」について、その実力を検証してみたいと思います。

AAVCとは基準価格に応じて積立金額を動的に変化させる戦略です。

この記事では、AAVCのロジックを 「基準価格を固定する」 という最もシンプルな形で紹介し、代表的な投資手法である「ドルコスト平均法(DCA)」および「一括投資(Buy & Hold)」とパフォーマンスを比較します。

比較の舞台は、S&P 500の過去データから切り出した「上昇相場」「横ばい相場」「下落相場」の3つの特徴的なシナリオです。どの相場で、どの戦略が輝くのか、ぜひご覧ください!

AAVCとは?(簡易版)

AAVCの核心的なアイデアは、「株価が”基準”より安いときに多く買い、高いときには少なく買う」というものです。

今回はこの”基準”となる価格(基準価格)を、シミュレーション期間の開始日の株価に固定した AAVC_static という戦略で検証します。これにより、投資額は以下の非常にシンプルな考え方で決まります。

  • 現在の株価が基準価格より安い → いつもより多めに投資
  • 現在の株価が基準価格より高い → いつもより少なめに投資(または投資しない)

下落局面で積極的に買い向かい、高値掴みを避ける、という合理的な投資行動を自動的に行うのがAAVCの狙いです。

AAVCの計算式

AAVCにおける投資額 I は、以下の数式で計算されます。

まず、価格の乖離率やボラティリティを考慮した「投資調整率」を計算します。

  1. 価格乖離率 (R_price): 基準価格から現在の価格がどれだけ離れているかを示します。
    $$
    R_{price} = \frac{P_{ref} - P_t}{P_{ref}}
    $$

  2. ボラティリティ調整係数 (F_vol): ボラティリティ(価格変動の激しさ)が高いほど、投資額を増減させる効果を強めます。
    $$
    F_{vol} = 1 + \frac{V_t}{0.01}
    $$

  3. 投資調整率 (A_rate): 上記2つと、投資額の反応度を調整する非対称性係数 C を使って計算します。
    $$
    A_{rate} = C \times R_{price} \times F_{vol}
    $$

最終的な投資額 I は、基準投資額 B にこの投資調整率を加味して決定されます。

$$
I = B \times (1 + A_{rate})
$$

【数式の変数】

  • I: 最終的な投資額
  • B: 基準投資額(例: 毎月1万円など)
  • P_t: 現在の株価
  • P_ref: 基準価格(今回はシミュレーション開始時の価格に固定)
  • V_t: 直近のボラティリティ(日々の価格変動率の平均値)
  • C: 非対称性係数(価格が安いときに、どれだけ積極的に多く投資するかを決める係数)

※計算結果がマイナスになる場合は投資額を0とし、投資額が 基準投資額 × 最大投資倍率 を超える場合は、その上限額に制限されます。

シミュレーションの条件

  • 対象銘柄: S&P 500 (^GSPC)
  • 投資戦略:
    1. AAVC_static: 毎月投資。基準価格は各シナリオの開始価格に固定。
    2. ドルコスト平均法 (DCA): 毎月、固定額を投資。
    3. 一括投資 (Buy & Hold): シナリオ開始日に、DCAの総投資額と同額を一括で投資。
  • 市場シナリオ:
    • 上昇相場: 2016年1月1日 〜 2019年12月31日
    • 横ばい相場: 2015年1月1日 〜 2016年6月30日
    • 下落相場: 2007年10月1日 〜 2009年3月31日 (リーマンショック期)

結果と考察

それでは、早速結果を見ていきましょう。

シナリオ1: 上昇相場 (2016-2019)

Strategy Final Value Total Invested Ann. Return Final Multiplier
aavc_static $22,930 $15,461 10.39% 1.48x
dca $61,941 $48,000 6.61% 1.29x
buy_and_hold $76,825 $48,000 12.52% 1.60x

考察:
一貫して株価が上昇し続ける相場では、最初に全額を投じる Buy & Hold が最強という結果になりました。AAVCは、株価が基準価格を上回り続けるため投資機会が少なくなり、機会損失が発生してしまいました。しかし、投資額に対するリターン効率(Final Multiplier)ではDCAを上回っており、健闘しています。
上昇局面では早めに資金を投入する一括投資が一番なのは仕方のないことだと思います。
AAVCは年利比較では、DCAに比べて約4%弱上回っています。

uptrend_market.png

シナリオ2: 横ばい相場 (2015-2016)

Strategy Final Value Total Invested Ann. Return Final Multiplier
aavc_static $18,590 $18,308 1.03% 1.02x
dca $18,212 $18,000 0.79% 1.01x
buy_and_hold $18,110 $18,000 0.41% 1.01x

考察:
方向感のないレンジ相場では、AAVC_static が最も優れたパフォーマンスを発揮しました。基準価格を下回ったタイミングで安く買い、高値では投資を控えるというAAVCのロジックが、このシナリオで最も効果的に機能したことを示しています。

sideways_market.png

シナリオ3: 下落相場 (2007-2009)

Strategy Final Value Total Invested Ann. Return Final Multiplier
aavc_static $25,012 $33,703 -18.09% 0.74x
dca $12,203 $18,000 -22.89% 0.68x
buy_and_hold $9,163 $18,000 -36.34% 0.51x

考察:
リーマンショックの暴落局面では、全戦略がマイナスリターンとなりましたが、AAVC_static が最も損失を抑えることに成功しました。下落すればするほど積極的に買い増し、平均取得単価を効果的に引き下げたことが、下落耐性の強さとして表れています。最高値で一括投資した Buy & Hold は最も大きなダメージを受けました。

downtrend_market.png

まとめ

今回のシミュレーションから、各戦略の得意な相場が見えてきました。

  • Buy & Hold: 長期的な上昇相場に圧倒的に強い。
  • DCA: コツコツ積み立てる、精神的に楽な王道戦略。
  • AAVC: 横ばいや下落相場で強さを発揮する、合理的な逆張り戦略。

特に、AAVCが下落相場での損失を抑えつつ、横ばい相場ではリターンを狙えるという点は、非常に魅力的ではないでしょうか。
ただし、長期的な上昇トレンドでは投資額が半減するところは調整の必要がありそうです。

今回は基準価格を固定したAAVCで検証しましたが、基準価格を動的に変更する、より進んだAAVC戦略も現在検証を進めています。
次の記事では、基準価格の決定方法の紹介と比較をしていこうと思います。

第一回の記事

Github


免責事項 : 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資を推奨するものではありません。投資の最終的な判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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