Appleが発表した新しいSiri AIは、多くのメディアで新機能や性能向上が注目されています。
しかし、今回私が最も注目したのはSiriそのものの進化ではありません。
私が注目したのは、AIがチャット画面の中だけで使われる存在から私たちの日常や仕事の流れそのものを支援する存在へ変わり始めたことです。
この変化は単にApple製品の利便性が向上するという話ではありません。
私はAIとの関わり方そのものが大きく変わる転換点になると考えています。
本記事では、Appleが発表した新しいSiri AIの特徴を整理しながらこの発表から私が読み取った「AI活用の本質的な変化」と、これから企業やビジネスパーソンに求められる視点について考察します。
1. Appleが発表した新しいSiri AIとは
今回Appleが発表した新しいSiri AIでは、これまでのように音声で質問へ答えるだけではなくユーザー一人ひとりの状況や目的を理解しながら日常の操作や仕事を支援する方向性が示されました。
私が今回の発表で特に注目した機能は次の3つです。
① パーソナルコンテキスト
メールやメッセージ、カレンダー、写真など、ユーザー自身の情報をもとに文脈を理解し、一人ひとりに合わせたサポートを行います。
例えば「先週母が送ってくれたレストランの名前を教えて」といった曖昧な依頼にもユーザーの情報をもとに必要な内容を探し出し回答できるようになることが示されています。
② オンスクリーン認識
AIが画面に表示されている内容を理解しその情報をもとに必要な操作や提案を行います。
例えば友人からイベント情報が送られてきた場合、その内容を理解したうえでカレンダーへの登録や関連する操作を支援することが想定されています。
ユーザーが画面の内容を一つひとつ説明しなくても状況を踏まえてサポートできる点が大きな特徴です。
③ アプリ横断操作
複数のアプリを連携させながら一連の作業をAIが支援する方向性も示されました。
これまでは、情報を調べ、別のアプリへ移動し、入力や共有を行うといった作業を自分で繰り返す必要がありました。
一方で今後は、AIがユーザーの目的を理解したうえで必要なアプリを横断しながら一連の作業を支援する世界観が描かれています。
今回の発表は新しい機能が追加されたというだけではありません。
Appleは、AIを「質問に答えるための機能」にとどめず「ユーザーの目的達成を支援する存在」へ発展させる方向性を示しました。
では、この変化は私たちの仕事やAI活用にどのような影響を与えるのでしょうか。
次の章では今回の発表から私が読み取ったAIの役割の変化について考えていきます。
2. AIは答える存在から仕事を進める存在へ
これまでの生成AIは質問への回答や文章・画像の生成など「何かを作ること」が主な役割でした。
もちろん、それだけでも業務効率化には大きく貢献しています。しかし、最終的には人が情報を整理し、複数のアプリやサービスを使いながら判断し、作業を進める必要がありました。
一方で、今回のAppleの発表から私が読み取ったのはAIがその一歩先の役割を担おうとしているという点です。
AIは単に質問へ答えるだけではなく、ユーザーが「何を実現したいのか」を理解し、その目的に向けて必要な作業全体を支援する存在へ進化しようとしていることが分かります。
例えば
-
必要な情報を収集する
-
画面に表示されている内容を理解する
-
複数のアプリを連携しながら操作する
次に取るべき行動を提案する
こうした一連の流れをAIが支援することで、人は情報収集や単純作業に時間を費やすのではなく、意思決定や創造性が求められる仕事へより多くの時間を使えるようになります。
ここで重要なのはこの変化がSiriだけの進化ではないという点です。
私は今回の発表を、新しい音声アシスタントの発表というよりも、AIがチャット画面の中だけで使われる存在から、スマートフォンやパソコン全体の操作を支える仕組みへ入り込み、日常や仕事の流れそのものを支援する存在へ進化し始めた出来事だと捉えています。
つまり、AIは「答えを返すツール」ではなく、「人と一緒に仕事を進める存在」へと役割を広げ始めているのではないでしょうか。
私は、この変化こそが今回の発表の本質的な価値だと考えています。生成AIという枠を超え、人と協働しながら仕事そのものを支援する存在へ進化することで、企業の仕事の進め方や組織の在り方にも大きな変化をもたらしていくでしょう。
次の章ではAIが仕事を支援する存在へ進化することで企業やビジネスパーソンにどのような視点が求められるのかについて考えていきます。
3. これから重要になるのは「AIを使うこと」ではなく「AIと仕事を設計すること」
AIが仕事を進める存在へ進化するほど人に求められる役割も大きく変わっていきます。
これまでは「AIを導入すること」や「AIを使えるようになること」がAI活用の第一歩として注目されてきました。
しかし私がこれから本当に求められると考えているのは、その先にある「仕事の設計」です。
AI活用を考えるうえで大切なのは「AIに何をやらせるか」だけではありません。
企業が本当に考えるべきなのは
「AIと人がそれぞれの強みを活かしながら、どのように役割分担をするのか」
という視点です。
例えば、AIは情報収集や市場調査、データの整理・比較、資料のたたき台作成など大量の情報を短時間で処理する業務を得意としています。
一方で、人はその情報をもとに意思決定を行い、相手との信頼関係を築き、新しい価値を生み出すことを得意としています。
つまり、AIが人の仕事を代替するのではなくそれぞれの得意分野を活かしながら協働することで、これまで以上に高い成果を生み出せる可能性が広がっています。
私は、企業の競争力を左右するのは「どれだけ多くの業務へAIを導入したか」ではないと考えています。
求められるのは
「どの業務へAIを組み込み、どのような成果を生み出したいのか」を明確にし、人とAIが最も価値を発揮できる仕事を設計することです。
AIを導入すること自体が目的ではありません。
AIによって業務の質やスピードを高め、人は本来価値を発揮すべき仕事へ集中できる環境をつくることこそが本当のAI活用だと私は考えています。
そして、AI活用の成果はAIの性能だけで決まるものではありません。
人とAI、それぞれの役割をどれだけ適切に設計できるか。
その違いが、組織全体の生産性や付加価値、さらには企業競争力にも大きな差を生み出していくのではないでしょうか。
私は、この「AIと人が協働する仕事の設計力」こそがこれからの企業に求められる重要な力になると考えています。
長野陸が目指すAI活用
ここまでお伝えしてきたように、私は今回のAppleの発表を単なるSiri AIのアップデートではなく、AIを経営や業務へ自然に組み込み、人と協働しながら価値を生み出す時代の始まりを示した発表だと捉えています。
これから企業に求められるのは新しいAIを知ることではありません。
AIをどのように活用すれば、自社の課題を解決し、組織全体の成果につなげられるのか。
その視点を持つことが、これからのAI時代においてより重要になっていくと私は考えています。
AIツールをご紹介することを目的としていません。
私たちが大切にしているのは企業ごとの経営課題や業務フローを整理し
「どこにAIを取り入れれば、組織全体の成果につながるのか」
を企業ごとに考え、実際の業務へ落とし込むことです。
企業によって事業内容や組織体制、目指す姿は異なります。
そのため、同じAIを導入したとしても成果が大きく表れる企業もあれば、期待した成果につながらない企業もあります。
私はこれまで多くの企業とAI活用についてお話しする中で
「AIを導入したい」
というご相談よりも
「何から始めれば成果につながるのか分からない」
という悩みを抱える経営者やマネジメント層の方々が非常に多いことを実感してきました。
だからこそ私たちがご支援しているのは、AIを導入することではなく企業ごとの課題や業務に合わせてAI活用を設計し、それを組織へ定着させることです。
私は
「AIを知ること」と「AIで成果を出すこと」はまったく別のことだと考えています。
AIは導入しただけで成果が生まれるものではありません。
企業ごとの課題や目的に合わせて活用方法を考え、人とAIがそれぞれの強みを活かせる環境をつくって初めて、本来の価値を発揮します。
私は、その間を埋めるパートナーとして、AI活用の企画・設計だけでなく実装・定着まで伴走しています。
Appleが示した未来は決して遠い未来の話ではありません。
AIと協働しながら仕事を進める時代はすでに始まりつつあります。
その変化を一時的な流行で終わらせるのではなく企業の競争力へと変えていくこと。
それが、私、長野陸が目指すAI活用です。
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長野陸
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大学を主席かつ飛び級で卒業後、ITやAIをさらに極めるために大学院に入学。大学院卒業後、ソフトバンクグループ株式会社に入社し、CEO室にて孫正義のもと成長戦略の立案に従事。経営中枢における戦略策定業務を通じ、事業拡大および意思決定プロセスに深く関与する。続いてアクセンチュア株式会社に参画し、AIおよびWeb3領域における事業戦略の立案を担当。先端技術とビジネスを融合した戦略構築に従事するなど、実務面においても高い専門性を有する。
2023年には、経済産業省が選定する高度IT人材として石川県加賀市のDX推進プロジェクトに参画し、地域のデジタル変革を支援。さらに、第11期ソフトバンクアカデミア生に選抜されるほか、総務省主催の高度人材育成プログラム「SecHack365」、経済産業省の実践型AI人材育成プログラム「AI Quest」にも参画するなど、官公庁および民間双方において高い評価を受けている。
2025年には初の著書、これからのAI時代を生き抜くための『戦略の教科書』として「DeepSeek革命」を出版
長野陸(2025.5.15)『DeepSeek革命―オープンソースAIが世界を変える』池田書店.
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