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スペシャリストとマネージャーにまつわる誤解3選

Last updated at Posted at 2021-12-07

この記事はAteam Brides Inc. Advent Calendar 2021の7日目です。

はじめに

この記事は、私が

  • エンジニアリングマネージャーを約4年
  • その後テックリードを約1年

経験した上で感じたことを書いています1

本記事においては特に言及がない限り

  • スペシャリスト(テックリードを含む)
    • 高い技術や豊富な知識を元に成果を出すエンジニア
  • マネージャー(エンジニアリングマネージャーを含む)
    • 部下を持つエンジニア組織の長

に表記と定義を統一します。
一般的な用語のニュアンスと少々異なる場合もあるかもしれませんが、同一のものとして読んでください。

よくある誤解3選

  1. キャリアパスはとにかくじっくりどちらかをよく考えて選ばなければならない
  2. コミュ障だからマネージャーは向いていない
  3. スペシャリストはマネージャーに従って業務を遂行しなければならない

「1. キャリアパスはどちらかをよく考えて選ばなければならない」という誤解

就活中の学生と話したり、社歴の浅いエンジニアメンバーと会話しているとよく出る話題
「スペシャリストかマネージャー、どっちにするか決めかねている」

私の意見としては
今の時点で近い/目指したいと思える方向を目指せばいい。進む中で「ちょっと違うな」と思ったら変えればいい

「キャリアパス」とか「将来のビジョン」と言うと仰々しいですが、一度決めたら変えれない・変えづらいという印象が持たれがちに思います。
どちらのキャリアも少しずつ歩んでみた身としては、学校の教科ぐらいの差と捉えています。

今のフェーズは"数学を学ぶか?" or "物理を学ぶか?" ぐらいの差で、
この1年/3年はこっちを勉強しよう、ぐらいに切り替えて良いと考えています。

数学と物理に例えたように、物理を学ぶ上では数学の基礎が必要になったり、その逆もしかり。
より高い次元に至るためにどちらの経験も活きたりするので、無理に片方を選ばなければならない理由もありません。
それぞれの役割で、見えてくる景色も大きく違います。

逆に、キャリアを延々と悩み続けてその場で足踏みを続ける方がもったいないです。2
1〜2年経験を積んだら、今興味を持てそうな方向がどちらか、決めてみることをオススメします。

「2. コミュ障だからマネージャーは向いていない」という誤解

これはエンジニアに限らずですが、"自称コミュ障"があまりにも溢れかえっている状態です。
「コミュニケーションが強みです」と言える人間はそもそも限られた一部であり、エンジニア内だと余計に少数派の印象です。
そのため、普通に人と会話ができるのであれば、大きな問題にはならないでしょう。

では、マネージャーに必須の素質は何でしょう?
約半世紀前(1973年著)と古典ではあるもの、マネジメントの父、ピーター・ドラッカーの著書"マネジメント"から引用します。

 マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。

引用:『マネジメント[エッセンシャル版]』(P F ドラッカー, 上田 惇生 著)より

上記の通り、何より真摯さが求められます。
経営や組織、チームメンバー一人ひとりの成長に真摯に向き合うことが難しい場合、向いていないと言えるかもしれません。

ただ、「コミュニケーションが苦手だからスペシャリスト」、逆に「技術の勉強がしんどいからマネジメント」と消去法的な発想のみで役割を全うしながら成長し続けるのは難しいです。
少なくともエンジニアという職種である限り、新たな知識を学ぶ姿勢もコミュニケーション力も、常に求め続けられるためです。

「3. スペシャリストはマネージャーに従って業務を遂行しなければならない」という誤解

もちろん、「組織の目標と関係なく、好き勝手なことを進めていい」というわけではありません。

意図としては、スペシャリストなら言われることをやっていくだけではなく、自ら高い専門性を以って課題を発見し、推進していく力が問われるということです。

スペシャリストとマネージャーの関係性を考える上の参考資料を、再びドラッカーのマネジメントから引用します。
エンジニアを想定して書かれた文章ではないですが、専門家をスペシャリストと読み替えていただけると近いかと思います。

 専門家にはマネジャーが必要である。自らの知識と能力を全体の成果に結びつけることこそ、専門家にとって最大の問題である。専門家にとってはコミュニケーションが問題である。自らのアウトプットが他の者のインプットにならないかぎり、成果はあがらない。専門家のアウトプットとは知識であり情報である。彼ら専門家のアウトプットを使うべき者が、彼らの言おうとしていること、行おうとしていることを理解しなければならない。
 専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。ところが、彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在となる。彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要とするものを供給しなければならない。
 このことを専門家に認識させることがマネジャーの仕事である。組織の目標を専門家の用語に翻訳してやり、逆に専門家のアウトプットをその顧客の言葉に翻訳してやることもマネジャーの仕事である。言い換えると、専門家が自らのアウトプットを他の人間の仕事と統合するうえで頼りにすべき者がマネジャーである。専門家が効果的であるためには、マネジャーの助けを必要とする。マネジャーは専門家のボスではない。道具、ガイド、マーケティング・エージェントである。
 逆に専門家は、マネジャーの上司となりうるし、上司とならなければならない。教師であり教育者でなければならない。自らの属するマネジメントを導き、新しい機会、分野、基準を示すことが専門家の仕事である。この意味において、彼らは自らのマネジャーよりも、さらには組織内のあらゆるマネジャーよりも高い立場に立つ。

引用:『マネジメント[エッセンシャル版]』(P F ドラッカー, 上田 惇生 著)より

特に最後の一文、

 逆に専門家は、マネジャーの上司となりうるし、上司とならなければならない。教師であり教育者でなければならない。自らの属するマネジメントを導き、新しい機会、分野、基準を示すことが専門家の仕事である。この意味において、彼らは自らのマネジャーよりも、さらには組織内のあらゆるマネジャーよりも高い立場に立つ。

ここが超重要で、新たな課題発見やシーズ志向で価値提供をしていく必要があります。
そのためには高い論理的思考力やコミュニケーション力が要求されます。

まとめ

  • キャリアパスはどちらかをよく考えて選ばなければならないという誤解
    • エンジニアとしての働き方が分かってきたら、とりあえずこっちを伸ばそうと決めてみることをオススメ
  • コミュ障だからマネージャーは向いていないという誤解
    • 高度なコミュニケーション能力が必須ではない。求められるのは真摯さ
  • スペシャリストはマネージャーに従って業務を遂行しなければならないという誤解
    • 言われたことをただやるだけでなく、新しい機会、分野、基準を示すことが仕事

Ateam Brides Inc. Advent Calendar 2021の8日目は、
@takaHALがお送りします!!ITP対策の続きのようなので楽しみです。

  1. 社内での呼び方は少し違いますが、一般的な呼称に合わせています

  2. どうしても自分のできないことに目が行きがちで、このパターンにハマるケースが非常に多い感覚があります

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