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連載の構成
- この記事は、マネジメントについて一人で考える Advent Calendar 2022の連載記事です
- 1記事目から読んでいただいても良いですし、気になる記事から読んでいただいても問題ありません
- 全25回分の構成は、次の通りです
- 第1〜6回:ドラッカーの『マネジメント』を中心に解説します
- 第7〜13回:『図解人材マネジメント入門』を中心に解説します
- 第14〜22回:『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』を中心に解説します
- 第23〜25回:私の経験談を中心に、まとめに入ります
時間の管理
- マネージャーとしてヒト・モノ・カネ・情報をマネジメントしていくにあたり、マネージャー自身がマネジメントしなければならない重要なものはなんでしょうか
- たくさんあるでしょうが、そのうちの1つは『時間』です
- 時間は全世界誰しも平等に、1日24時間で動いています
- そして基本的には社会人であれば、1日8時間の週5日という基準を大きく外れることは稀でしょう
- となると、その限られた時間をいかに扱うかで、マネジメントの成果は大きく変わります
重要度と緊急度
- 重要なのは、流れてきたタスクを頭から逐次こなすのではなく、重要度と緊急度のマトリクスで分類することです
時間管理の究極のツボ、それは「重要と緊急の違いを見抜く」です。技術部長の職務の大半は、「重要」と「緊急」で4つの枠に区切った表のどれかひとつの枠に分類できるものです。
緊急ではない 緊急 重要 必須。時間を作る 明らかにやるべき事 重要ではない 明らかに回避するべき事 ついつい注目しがちな「気の散る要因」
- この考えは何もこの本に限ったことではなく、世界的な名著『7つの習慣』の第3の習慣、「最優先事項を優先する」にも同じことが書かれています
効果的なマネジメントとは、最優先事項を優先することである。リーダーシップの仕事は、「優先すべきこと」は何かを決めることであり、マネジメントは、その大切にすべきことを日々の生活の中で優先して行えるようにすることだ。自分を律して実行することがマネジメントである。
(中略)
このマトリックスを見るとわかるように、活動を決める要因は、緊急度と重要度の二つである。
引用:完訳 7つの習慣 人格主義の回復
やらないことを決めること
- そもそもなぜ時間を浪費してしまうのか?
- いろいろあるでしょうが、『重要度』ではなく『緊急度』に振り回されているのが要因ではないでしょうか
- あらゆるところからの問い合わせや呼ばれた会議全てに自分で出席し、スケジュールでびっちり埋まっているマネージャーは少なくないでしょう
- ここで重要なのは、 "やらないことを決めること" です
- 来る案件全てを自分で対応していたら、時間が無限に消費されていきます
- であるなら、まずはどこまでを自分の範囲とするか?を決める必要があります
- でないと、『緊急だけど重要ではないこと』『緊急ではなく重要でもないこと』に、時間を吸われ続けます
- 本来時間を充てるべきは、
- 『緊急であり重要なこと』
- 『緊急じゃないけど重要なこと』
- です
- 『緊急であり重要なこと』は、たいてい既に時間を充てているはずです
- エンジニアリングマネージャー(EM)であれば、システム障害が起きたので調査と対応・報告指示だったり、このあとすぐある採用面接の準備等です
- 『緊急じゃないけど重要なこと』は、どうしても後回しにされがちです
- 緊急度の高い案件に振り回された末、押し出されて割合が削られてしまうのがこの領域です
- 例えば今期のチーム目標の進捗具合であったり、システムの中長期ロードマップの作成、各メンバーの中長期ビジョンのサポート等です
- ここを疎かにすると直ちに影響は出ないものの、中長期で取り返しのつかない状態になってしまうこともあります
マネジメントの役割
- でも、やらなければいけない仕事がありすぎるから、『緊急じゃないけど重要なこと』に回す余裕なんて無い!と考えてしまうのではないでしょうか
- これこそがマネジメントの役割を発揮するべき時です
- 連載第2回の内容を思い出してみます
辞書を引いてみるとManageはman(手)でage(為る)ことから、馬術、馬を手綱で操ることとあります。そしてmanage to doとは「なんとかして(どうにかして)~する」。自分の手によって困難な状況をなんとかするもの、それがマネジメントの語源です。
引用:図解 人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ
- つまり、マネジメントを『管理』として認識してしまっていると、手元に来た案件を『管理』することに意識が向いてしまいます
- 連載で度々触れてきたように、マネジメントとは"なんとかする"、"どうにかする"ことです
- 手元に来る案件がキャパシティを超えている場合、それこそ"なんとかする"必要があり、その役割を担うのがマネージャーです
断るにはリーダーシップが必要
- なぜ断ることができないのか、それにはリーダーシップが強く関係してきます
建築の世界には、「形態は機能に従う」という言葉がある。これと同じで、マネジメントはリーダーシップに従う。あなたの時間の使い方は、あなたが自分の時間や優先すべきことをどうとらえているかで決まる。原則中心の生き方と個人的なミッションに基づいて物事の優先順位を決め、それがあなたの心と頭に深く根づいているなら、あなたにとって第Ⅱ領域は、自然と喜んで時間をかけたい場所になるはずだ。
自分の中で大きな「イエス」が赤々と燃えていなければ、忙しくしているだけでそれなりの満足を得られる第Ⅲ領域の仕事や、気楽に時間をやり過ごせる第Ⅳ領域に逃げ込む誘惑にきっぱりと「ノー」と言うことはまずできない。自分が持っているプログラムを見つめる自覚があれば、想像力を働かせ、良心に従って、原則中心の新しい、自分だけのプログラムを書くことができる。そのプログラムこそが、あなたにとっての「イエス」となり、それ以外の大切ではない用件に心から微笑んで「ノー」と言える意志の力を持つことになるのだ。
引用:完訳 7つの習慣 人格主義の回復
- 補足ですが、7つの習慣での領域は、次の区分です
- 第I領域
- 緊急&重要
- 第II領域
- 緊急でない&重要
- 第III
- 緊急&重要でない
- 第IV領域
- 緊急でない&重要でない
- 第I領域
- 要するに、マネージャーとして確固たる信念や自分のミッションを明確に持っているならば、その信念やミッション遂行の妨げになることはNoと答えられるということです
- どうしても依頼者にいい顔を見せよう、断って期待を裏切りたくない等の感情は出てきてしまいます
- しかし、その結果として果たすべき使命を果たせない方が、マネージャーとしての責務を全うしていないことになります
- このリーダーシップこそが、不足しがちなマネージャーのスキルの1つではないでしょうか
終わりに
- 今回はマネージャーとして重要な、時間の管理について考えてみました
- 次回は意思決定と委任について考えてみます
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