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連載の構成
- この記事は、マネジメントについて一人で考える Advent Calendar 2022の連載記事です
- 1記事目から読んでいただいても良いですし、気になる記事から読んでいただいても問題ありません
- 全25回分の構成は、次の通りです
- 第1〜6回:ドラッカーの『マネジメント』を中心に解説します
- 第7〜13回:『図解人材マネジメント入門』を中心に解説します
- 第14〜22回:『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』を中心に解説します
- 第23〜25回:私の経験談を中心に、まとめに入ります
マネージャーの後継者問題
- マネージャーを担っていると常に頭を悩ませるのは、後継者問題ではないでしょうか
- そもそもITエンジニアからマネージャーになりたい人材は少ないと感じています
- 理由は以前なぜIT技術者でマネジメントのキャリアパスを目指す人は少ないのかという記事を書いていますので、そちらをご覧ください
マネージャーに必要な資質とは
- では仮にマネージャーを志望するメンバーがいたとして、本人の意向だけで新任マネージャーに推薦しても良いのでしょうか?
- そもそも、マネージャーに必要な資質とは何でしょうか?
- 専門スキル?
- コミュニケーション力?
- 調整力?
- リーダーシップ?
- もちろんこういったものもあればベストですが、ドラッカーのマネジメントにおいてはこう書かれています。
真摯さ
マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。
引用:マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
- ドラッカー著作の中では、この"真摯さ"(Integrity)という表現がよく出てきます
- これだけ読むと「あー、大事だよね」という感想に留まりがちです
- しかし、果たしてこれがどれだけ重視できているか?をよく考える必要があります
真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。
引用:マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
マネージャーに推薦すべきでない人材とは
- 真摯さと一言で言っても、どういう言動が真摯か?は主観も入り難しいものです
- そのためドラッカーは真摯さの"欠如"について言及しています
- 要するに真摯さ足りうる許可リスト(ホワイトリスト)ではなく、拒否リスト(ブラックリスト)ですね
真摯さの定義は難しい。だが、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない。
引用:マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
- マネージャー失格である真摯さの欠如は、次の5つが挙げられています
- 強みより弱みに目を向ける
- 何が正しいかより、誰が正しいかに関心を持つ
- 真摯さよりも頭の良さを重視する
- 部下に脅威を感じる
- 自らの仕事に高い基準を設定しない
- 原文も引用しておきます
①強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
②何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、やがては組織全体を堕落させる。
③真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。
④部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い。
⑤自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。そのような者をマネジャーにすることは、やがてマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。
引用:マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
- 実際マネジメント業務をしていると、どれも陥りがちな思考ではないでしょうか
- エンジニアリングマネージャーに当てはめてみると、こんなこと無いですか?
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人事評価で、"できていなかったこと"を中心に話しがち
- できなかったことを触れること自体は悪くないでしょう
- しかし、強みやできるようになったこともしっかり触れていきましょう
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人間は権威バイアスに陥りやすく、「CTOが言っているなら正しい」と考えがち
- 確かに役職や肩書は過去の貢献やスキルという裏付けがあるので、正しい可能性は高いことも多いでしょう
- ですが必ず自身の頭で考え、意見があれば恐れず具申をしましょう
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技術力や発信力に優れているけれど、HRTを大切にしないITエンジニアを昇進させてしまう
- HRTとは、Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかという名著で触れられている概念です
- Humility(謙虚)
- Respect(尊敬)
- Trust(信頼)
- これらを大切にすることが重要です
- ITエンジニアに限りませんが、これは一番起きがちですし、組織全体に悪影響が及ぶことになります
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若手を侮り、昔とった杵柄ばかり自慢する
- 若手エンジニアの技術力や知識を侮っていませんか?
- モダンな技術を持っている若手に嫉妬したり「楽しやがって」と否定するのではなく、後輩から学ぶ謙虚な姿勢が必要です
- インターネット老人会も良いですが、「今の子はこんな苦労も知らないで」といった否定口調は避けましょう
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マネジメントについて学ばず、経験と勘で乗り切ろうとしている
- これは非常にありがちです
- 技術者として駆け出しの頃は可読性や保守性を重視してリーダブルコード等の書籍を読んだりしませんでしたか?
- しかしマネジメントに関して、どれだけ謙虚に学ぶ姿勢を示せていますか?
- 自らの仕事に高い基準を設けるためには、それ相応の知識も必要になります
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人事評価で、"できていなかったこと"を中心に話しがち
おまけ・孫子の兵法
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優れたリーダー・マネージャーに不可欠な5要素【孫子の兵法】という記事を以前書きました
- その記事では孫子の兵法を引用し、今から2,500年も前にどんなことが言われていたか?を解説していますので、併せてご覧いただけると嬉しいです
終わりに
- 次回は引き続きドラッカーの『マネジメント』から、マネージャーの仕事について考えます
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