はじめに
- この記事で言うIT技術者とは、ITエンジニア・デザイナー全般を指します
- そして、それら職種でのマネジメント経験者は 「後継者が少ない」 という悩みを抱えている方が多い印象です
- この記事では、なぜそうなりがちなのか考えてみます
キャリアパスについて
- 考えるにあたって、まずはマネジメントとそれ以外のキャリアパスについて触れます
- 組織によって異なりますが、キャリアパスは大別すると2種類に分かれます
- ヒト・モノ・カネのマネジメントを担う:マネジメント
- 技術に特化した役割を担う:スペシャリスト
- そして、現在それら役割は担っていない人はだいたい3種類に分けられると考えています
- どちらかのキャリアを目指し、邁進している人
- どちらのキャリアも目指さず、現状維持で満足している人
- どちらかのキャリアもイメージが湧かず、目指せると思っていない人or悩んでいる人
- 経験上、最も多くを占めるのは3つ目の どちらかのキャリアもイメージが湧かず、目指せると思っていない人or悩んでいる人
- この人たちへのヒントや、あるいはそういったメンバーが多いマネージャーに向けて書いてみます
なぜ目指す人が少ないのか
コミュニケーション力に対する恐れ
- マネジメントキャリアパスについて聞いた時、否定的な反応の中だと コミュニケーション力 への自信の無さが特に多いと感じます
- コミュ障だから、コミュ力低いから、リーダー経験無いから、etc...
- マネジメントとスペシャリストの選択になると、
- マネジメントはコミュニケーション力
- スペシャリストは技術力
- に対して、過度な期待と恐れがある印象を受けます
- もちろんどちらも重要な要素ですが、それだけで全て決定するわけでもありません
- そもそもコミュニケーション力に自信のある人間は稀ですし、技術者ともなると、自信のある人間はさらに限られます
- ドラッカー曰く、マネージャーに最も必要なものは 真摯さ
- 仕事や人に対し真摯に向き合えるのであれば、あとのスキルはなんとかなることが多いです
- また、役割次第ではあるものの、スペシャリストも大いにコミュニケーション力は必要とされます
- 例)技術選定でメリットデメリットを分かりやすく周囲に伝える際や、技術面談をする際など
- つまり成長したり役割を大きくしたり給与を上げたいのであれば、コミュニケーション力は不可欠です
責任の重さに対する恐れ
- 役職が付いて決裁権が強くなると、それに伴う責任の重さも増します
- これに対して恐れを持っているケースもあります
- これもコミュニケーション力と同様、マネジメントに限らず、スペシャリストも無関係ではありません
- スペシャリストが行うシステムの意思決定によっては、今後数年、数十年の未来を左右することも少なくないです
未経験分野に対する恐れ
- スペシャリストのキャリアパスに比べて、マネジメントはジョブチェンジに近い役割変更になります
- それまでいち技術者として培ってきたスキルや知識の延長線上に無い要素を多く求められます
- 技術が好きで、技術のことを学び続けることで目指すイメージが付きやすいスペシャリストに比べ、マネジメントは何が必要か、自分にその役割が向いているか分かりづらい印象があります
- ポジティブに捉えれば、技術一本で生きていくよりは潰しがきく、広い経験とスキルが身につきます
- マネジメントの役割から外れた際も経験が活きることが増えます
- 将来に対する選択肢が増えるので、世の中の需要や自身の人生プラン変化にも強くなります
戻る場所を失う恐れ
- 例えば一度マネジメントを選んだら、いちプレイヤーに戻れないと感じてしまう環境になっているかもしれません
- 給与や待遇で、プレイヤーに戻れる状況が保証されていないかもしれません
- 万が一マネジメントというキャリアが自分に合わなかった場合、給与が下がったり、プレイヤーに戻らせてくれないのでは
- 実際マネジメントとスペシャリストを数年スパンで交代している実例が身近にあるだけでも、言葉の保証より安心できると思います
チームや周りの人の成果や成長に貢献することに対し、やりがいを感じない
- 技術者であれば、基本的に黙々と作業することで一定の成果を挙げたり貢献ができます
- しかしマネジメントとなると話は別です
- やりがいを感じないのは、そもそもその経験が無い/少ないのか、多いけれど感じないのかによっても異なります
- 経験が無かったり少ないなら、そういった場や役割を、まずはやってみることから始めることになります
結局メリットを感じない
- スキルや知識、経験等に触れてきましたが、給与面にも触れます
- 資本主義において、価格は需要と供給で決まります
- マネジメントに携わりたいと思う人が少ないのであれば、需要の高さに対して供給が足りていないのに、不当に価格(給与)が低い側面もあるかもしれません
- 世の中で言われるのは、名ばかり管理職になって残業代が付かなくなり、給与が下がるという例
- こういった状況が仮にあるのであれば、その仕組みから変える必要があります
そもそもマネジメントする人は必要なのか
- ここまで、"なぜ目指す人が少ないか"を書いてきましたが、そもそもマネジメントする人は必要なのかを考えてみます
-
統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール) という考えがあり、管理者1人に対する部下の人数は限りがあります
- ジェフ・ベゾスの2枚のピザ理論も近い考えで、だいたい6〜8人が上限でしょう
- フラット型組織等もあるのでやりようはありますが、基本的に上限があることと、人数が増えると"難易度が上がる"認識は持っておいた方が良いです
- つまりその規模にチームを分割するなら、その結節点となる人が必要となります
技術者の管理者は技術者じゃないといけないのか
- 必ずしもそうではないけれど、これも"難易度が上がる"でしょう
- 人事評価や配置の際に、妥当性の高い判断が難しくなります
- 成し遂げた成果に対して、その領域の知見が無い場合、過小評価や過大評価が増えます
- すると評価や決定される給与に納得感が下がり、モチベーション低下や離職に繋がる可能性が増えます
- 評価に限らず、日々のコミュニケーションにおいても苦労が多いです
- メンバーとのコミュニケーション時に用語の翻訳が必要だったり、エンジニア/デザイナー組織の方針を伝えるにも、技術に対するバックグラウンドが無いと伝えることが難しくなります
最後に
- じゃあ結論どうすればいいのか?となると、一番早いのはマネジメント志望の方を採用すること
- でも、なかなかそううまくはいかないものです
- 無理に全員をマネジメントの道に誘導する必要はありません
- 例えば真摯さに欠ける方や、周囲への貢献意欲に乏しい方を無理に任命することで、組織が崩壊することもあります
- 結局のところ、マネジメントに携わる人たち自身が魅力的な働き方や環境・待遇を整備して、"目指してみようかな"と思ってもらえる状態にしていくことが不可欠なのではないでしょうか