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Kubernetesの世界的普及状況(2022年以降)調査レポート

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世界におけるKubernetes採用率・導入傾向

急速に主流化するKubernetes: 2022年以降、Kubernetesの採用率は世界的に高水準に達しています。Cloud Native Computing Foundation (CNCF) の調査によれば、2023年時点で回答企業の66%が本番環境でKubernetesを使用し、18%が評価中で合計84%に上りました(2022年は81%) (CNCF Annual Survey 2023 | CNCF) (CNCF Annual Survey 2023 | CNCF)。わずか15%の企業が「Kubernetes導入計画なし」と答えており、ほとんどの企業がKubernetesを何らかの形で利用または検討している状況です (CNCF Annual Survey 2023 | CNCF)。企業規模を問わず利用が広がっており、全世界で5,000万以上のコンテナが稼働しているとも推計されています。

普及の地域差と開発者人口: 地域別では北米がリードしており、Kubernetesユーザー企業の約半数(50%以上)を米国が占めます (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)。欧州やアジアでも採用が拡大しており、例えばイギリスでは約4,000社がKubernetesを導入済みです (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights) (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)。CNCFの報告によれば、世界中でKubernetesを使う開発者は560万人以上に上り、バックエンド開発者の約31%を占めると推定されています (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)。このようにユーザーコミュニティも年々拡大し、KubernetesはLinuxに次ぐ史上最大級のオープンソースプロジェクトへと成長しています (Kubernetesの10年間の歴史 | Kubernetes) (Kubernetesの10年間の歴史 | Kubernetes)。

(Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)図1: Kubernetesユーザー企業の国別分布(2024年時点) – Kubernetes利用企業の地域分布を示す円グラフです。米国が過半を占めているほか、イギリス(約11%)、インド(約10%)、ドイツ・フランスなど欧州各国も一定の割合を占めています (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)。北米に次いで欧州での利用拡大が著しく、アジア太平洋地域もデジタルトランスフォーメーションの一環で導入が進んでいます。

ウェブサービスにおけるKubernetes活用事例

主要ウェブ企業での導入例: 多種多様なウェブサービスがKubernetes上でホストされています。その代表的な事例を以下に挙げます。

これらの例から、大手ウェブサービス各社がKubernetesによって大規模サービスのスケーラビリティとデプロイ効率、安定性を確保していることが分かります。特に急速にユーザが増減するオンラインサービスにおいて、Kubernetesのオートスケーリングや自己修復機能が信頼性確保に寄与している点が共通しています。

Kubernetes導入の主な目的・メリット

Kubernetesがこれほど普及した背景には、クラウドネイティブ時代の要求に合致した可搬性・拡張性・運用効率の高さがあります。各種調査や事例から見える、企業がKubernetesを導入する主な目的・メリットは次の通りです。

以上のようなメリットから、多くの企業が**「可用性やスケーラビリティを強化しつつ、長期的なコスト削減と開発効率化を両立できる基盤」としてKubernetesを選択しています。ある調査ではインフラ抽象化による開発効率向上を目的にKubernetesを採用する企業が全体の48%**に上るとも報告されています (Latest Kubernetes Adoption Statistics: Global Insights)。このようにKubernetes導入は技術的メリットだけでなくビジネス上の効果(素早い市場投入や運用コスト削減)につながる点が評価されています。

世界の主要クラウドベンダーでのKubernetes活用状況

クラウド上への移行傾向: Kubernetesクラスタのデプロイ場所を見ると、近年はクラウド上で稼働するケースが急増しています。Dynatraceの調査によれば、クラウドホスティングのKubernetesクラスタ数は2022年に前年比127%増と急成長し、クラウド上のクラスタ比率は2021年の31%から2022年には45%に達しました (Kubernetes in the Wild report 2023)。2023年にはクラウド上のクラスタ数がオンプレミスを逆転したとみられており、企業は従来のデータセンターからクラウド(パブリック/プライベート)へKubernetes基盤をシフトしつつあります。

(Kubernetes in the Wild report 2023)図2: クラウド vs オンプレミスのKubernetesクラスタ比率(2021年→2022年) – Kubernetesクラスタ設置場所の構成比推移を示した図です。青がクラウド上、緑がオンプレミス上の割合を表します。2021年にはクラウド31%・オンプレ69%でしたが、わずか1年でクラウド45%・オンプレ55%とクラウド比率が大きく伸びています (Kubernetes in the Wild report 2023)。クラウド上のクラスタ増加率(+127%)はオンプレミス(+27%)を大きく上回り、クラウドへの急速な集約が進行していることが分かります。

マネージドKubernetesサービスの台頭: クラウド上でKubernetesを運用する形態としては、各クラウドプロバイダが提供するマネージドKubernetesサービス(AWSのEKS、AzureのAKS、Google CloudのGKEなど)が主流です。実際、クラウド上のKubernetesクラスタのうち約73%がAWS/Azure/GCPのマネージドサービス上に構築されており、残り27%のみがユーザー自身で仮想マシン上にセットアップしたクラスタでした (Kubernetes in the Wild report 2023)。マネージドサービスはセットアップやアップグレードが自動化され運用負荷が低いため、採用が拡大しています。各サービスのシェアを見ると、ある推計ではGoogle Kubernetes Engine (GKE) が40%でトップ、次いでAmazon Elastic Kubernetes Service (EKS) が30%、Azure Kubernetes Service (AKS) が20%程度とされています (EKS vs. AKS vs. GKE: Choosing the Ideal Kubernetes Platform) (EKS vs. AKS vs. GKE: Choosing the Ideal Kubernetes Platform)。GKEはKubernetes発祥のGoogleによるサービスで充実した機能を強みにシェアを伸ばし、EKSとAKSも自社クラウドとの親和性の高さから多くのユーザーに利用されています。

主要クラウドベンダーでの採用動向: AWS・Azure・GCPの3社はいずれも2017~2018年頃にマネージドKubernetesサービスを開始して以来、機能強化と地域展開を進めています。AWS EKSは他サービスとの統合やFargate(サーバーレス実行)対応で企業利用を拡大し、200万以上の顧客が利用するまで成長しています (EKS vs. AKS vs. GKE: Choosing the Ideal Kubernetes Platform)。Azure AKSもDevOpsツールとの連携やサーバーレスKubernetes機能で差別化し、150万ユーザー規模のサービスに発展しました (EKS vs. AKS vs. GKE: Choosing the Ideal Kubernetes Platform)。GCPのGKEはマルチクラウド対応基盤のAnthos提供など先進機能で評価され、300万ユーザー超が利用しています (EKS vs. AKS vs. GKE: Choosing the Ideal Kubernetes Platform)。またIBMやOracle、VMwareなど他ベンダーも独自の商用Kubernetesサービス/ディストリビューションを展開しており、エンタープライズ向け機能やサポートを付加する形で市場を競っています。

日本国内のKubernetes導入状況と具体事例

国内普及率の推移: 日本におけるKubernetes導入も加速していますが、北米に比べると立ち上がりはやや遅れたと指摘されています (コンテナの利用、日本は5年遅れている? ~IDC Japan「コンテナの導入状況に関するユーザー調査結果」とCNCF調査から - アイマガジン|i Magazine|IS magazine)。IDC Japanの調査(2021年2月実施)によると、日本企業のコンテナ技術導入率は**本番環境利用が16.9%、テスト・検証段階が23.3%**で、両者を合わせると約40%の企業がコンテナ(およびKubernetes)を導入済みまたは導入に着手していました (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)。この値は前年(2020年)から5ポイント以上上昇しており、2020年代前半にかけて国内でもコンテナ利用が本格的な普及期に入ったことが伺えます (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)。もっとも、裏を返せば2021年時点で6割弱の企業が未導入であり、日本は米国に比べ数年遅れで普及が進むとの見方もありました (コンテナの利用、日本は5年遅れている? ~IDC Japan「コンテナの導入状況に関するユーザー調査結果」とCNCF調査から - アイマガジン|i Magazine|IS magazine)。しかし近年はデジタルトランスフォーメーションの潮流に乗って金融・製造など従来型産業でも採用が増え、遅れていた分野が追いつきつつあります (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)。

国内企業の利用形態: 日本企業におけるKubernetes利用形態を見ると、コミュニティ版(オープンソース版)Kubernetesをそのまま利用しているケースが32.0%で最多ですが、この割合は前年より減少傾向にあります (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)。代わって、ベンダー提供のKubernetesディストリビューションやクラウドのマネージドサービスを利用する企業が増加しています。商用版を選ぶ理由としては「導入・運用のしやすさ」「ベンダーサポートへの期待」が挙げられ (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)、実際にオンプレミス型ディストリビューションではRed Hat OpenShiftの採用率が特に高く、クラウド管理型ではAWSのEKSが国内利用率トップだったと報告されています (コンテナが国内で本格普及期に、4割の企業が導入済みか構築・テスト中─IDC | IT Leaders)。この傾向から、国内でも運用負荷軽減やサポート体制を重視してKubernetesを活用する企業が多いことがわかります。

日本企業の導入事例: 国内でもインターネット企業を中心にKubernetes導入事例が増えています。代表例として、フリマアプリ大手のメルカリはマイクロサービス化に合わせて2017年前後からKubernetesを本格導入しました。同社SREによれば「Kubernetesはコンテナのdesired stateを自律的に保ってくれるため、インフラに煩わされずに開発を開始でき、開発スピードが飛躍的に向上した」とされています (株式会社メルカリの導入事例:Kubernetes を駆使したマイクロサービス化でグローバルサービスの開発効率を劇的に向上 | Google Cloud 公式ブログ) (株式会社メルカリの導入事例:Kubernetes を駆使したマイクロサービス化でグローバルサービスの開発効率を劇的に向上 | Google Cloud 公式ブログ)。実際、メルカリ米国展開時にはインフラ専任エンジニア不在でもKubernetes上でサービス立ち上げに成功し、数か月での迅速なリリースを実現しました (株式会社メルカリの導入事例:Kubernetes を駆使したマイクロサービス化でグローバルサービスの開発効率を劇的に向上 | Google Cloud 公式ブログ)。またメルカリでは社内プラットフォームチームが開発者向けにツール整備を進め、Kubernetes環境上で多数のサービスを効率よく運用しています (株式会社メルカリの導入事例:Kubernetes を駆使したマイクロサービス化でグローバルサービスの開発効率を劇的に向上 | Google Cloud 公式ブログ) (株式会社メルカリの導入事例:Kubernetes を駆使したマイクロサービス化でグローバルサービスの開発効率を劇的に向上 | Google Cloud 公式ブログ)。

他にも、ヤフー株式会社やLINE株式会社、金融機関、大手製造業などがKubernetes導入を公表・推進しています。日本国内向けクラウドサービスを提供する事業者(例: NTTドコモ、IDCフロンティアなど)もマネージドKubernetesサービスを展開し、企業の利用を後押ししています。総じて日本においてもKubernetesはクラウドネイティブインフラの中核技術として定着しつつあり、今後さらに幅広い業種で採用が進むと見られます。

注意

この調査は正確性を保証するものではありませんでの、鵜呑みにしないようにしてください。

参考文献

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