はじめに
日本には電波法1があり、電波を送る無線設備を操作する場合には無線従事者の免許が必要とされています。
ここで、電波法第二条第五号から「無線局」の定義を引用します。1
「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。
つまり、携帯電話や Wi-Fi が使えるコンピュータは無線局であり、FM ラジオは無線局ではありません。
「無線従事者」の定義も見てみます。1
「無線従事者」とは、無線設備の操作又はその監督を行う者であつて、総務大臣の免許を受けたものをいう。
これらの用語だけを見ると、携帯電話の操作にも免許が必要に思えますが、電気通信事業者側で免許に必要な手続きを取っているため、端末の使用者が免許の手続きをする必要はないようです。2
また、Wi-Fi などの利用に関しては、無線設備の製造メーカ側で電波法に関する必要な手続きを行っている機器(技術基準適合証明マークが付いているもの)であれば電波を発射しても問題ありません。2
以上のように、日常生活の範囲では免許が無くても電波を利用することができ、不便を感じる場面も少ないでしょう。
しかし、電波が届かない場所にハイキングへ行き仲間と通信したかったり、災害で携帯電話の基地局が使えない状態で情報交換をしたい場合には、無線局と無線従事者の免許が必要になるでしょう。
実際に、総務省が災害時の通信網復旧を想定した「通信復旧支援士(仮称)」登録制度を創設する動きがあります。3
また、一人称視点の映像を確認しながら操縦するタイプのドローンである「FPV ドローン」を利用する場合に免許が必要になる場合があるようです。4
アマチュア無線従事者
ここまで読んでいただいた方は、無線従事者の免許を取得したくなっているでしょう。無線従事者の資格は、無線設備の操作の範囲によっていくつかの種類に分けられます。5
まだ資格をお持ちでない方は、比較的取得しやすい「アマチュア無線従事者」の免許取得がおすすめです。ただし、「アマチュア業務」6のみ許可されているため、仕事に活かしたい方はこの限りではありません。
アマチュア業務 金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究その他総務大臣が別に告示する業務を行う無線通信業務をいう。
アマチュア無線技士は4つのクラスに分類されています。詳細は以下のリンクを参照してください。
https://www.jarl.org/Japanese/6_Hajimeyo/shikaku.htm 7
資格の取得方法
アマチュア無線技士の資格取得方法は以下の3つに分類されます。
- 国家試験
- 講習会(+修了試験)
- eラーニング(+修了試験)
詳細については、前述のリンク7を見ていただいても問題ありませんが、初見の方はわかりづらいかもしれないので早見表を作成しました。「○」の付いている方法で取得できます。
クラス | 国家試験 | 講習会 | eラーニング |
---|---|---|---|
一級 | ○ | - | - |
二級 | ○ | - | ○$^{\text{※1}}$ |
三級 | ○ | ○$^{\text{※2}}$ | ○ |
四級 | ○ | ○ | - |
※1 受講条件:第三級アマチュア無線技士の免許を持っている方、または、第三級の講習会かeラーニングの修了試験に合格した方8
※2 受講条件:第四級アマチュア無線技士、もしくはそれと同等資格の免許を持っている方、または、第四級の講習会の修了試験に合格した方9
各取得方法の概略を以下に記述します。
国家試験
日本無線協会が実施する国家試験10を受験する方法があります。
受験の条件もなく、すべてのクラスの取得が可能です。費用を抑えたい方はこちらの方法がおすすめです。
第一級の資格はこちらの方法で取得するしかないようです。第三級と第四級の試験は CBT 方式11です。
ちなみに、私は国家試験を受験したことはありませんが、第二級の資格を取得する際は挑戦する予定です。
講習会 (+修了試験)
日本アマチュア無線振興協会(以下、JARD)が実施するオフラインの講習会12です。
全国の会場13で受講します。規定時間の講習を受けた後の修了試験に合格した後、しばらくすると免許が郵送されます。
第三級と第四級で選択可能な取得方法です。第四級は2日間の講習を受け、2日目の最後に修了試験を受けます。第三級は1日間の講習を受け、その日の最後に修了試験を受けます。第三級のみ受講条件があります。9
ちなみに、私はこの方法以外ではアマチュア無線技士の資格を取得したことはありません。
eラーニング (+修了試験)
JARD が主催する通信講座14です。
受講はオンライン、修了試験が CBT 方式なので、まとまった時間が取れない方や近くで講習会が実施されていない場合に選択されるとよろしいのではないでしょうか。
第二級と第三級で選択可能な取得方法です。第二級のみ受講条件があります。
第三級アマチュア無線技士の講習会
今年の中旬に第四級の資格を講習会で取得していたので、先日、第三級の講習会を受講しました。修了試験から1週間ほどで合否結果速報を確認でき、正式な合格通知も届いたので、免許の到着を楽しみに待っている状態です。
第三級から欧文(英数字+記号)のモールス符号の問題が出題されるのですが、中々覚えられませんでした。講習会の当日に覚え方を閃いたので、その方法を共有したいと思います。
モールス符号
モールス符号15は、短点(・)と長点(-)を組み合わせて文字を表現するものです。
数字に関しては規則性があるのですが、A-Z のアルファベットには規則性がないので覚えるのが大変です。英文で多様される E, T, A, N, I, M に短い符号が割り当てられています。
アルファベットの符号の覚え方
基本的なアイディアは、
- アルファベットを符号の長さで4つのグループに分類し、
- 短点を0, 長点を1に変換し、2進数として捉えて小さい順に並び替え、
- 語呂合わせなどで覚える、
というものです。
符号長1のグループ
0 | 1 |
---|---|
・ | - |
E | T |
- 覚え方
- 未知との遭遇
符号長2のグループ
0 | 1 | 2 | 3 |
---|---|---|---|
・・ | ・- | -・ | -- |
I | A | N | M |
- 覚え方
- Internet Assigned Numbers Authority (IANA),
- をベースにするが、
A
が2つ出現しているから、N
の1つ後のA
は、N
に1画足したM
符号長3のグループ
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
・・・ | ・・- | ・-・ | ・-- | -・・ | -・- | --・ | --- |
S | U | R | W | D | K | G | O |
- 覚え方
- 前半:サーw
- 後半:配管工の恋人をさらうゴリラ、Go!
符号長4のグループ
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
・・・・ | ・・・- | ・・-・ | ・-・・ | ・--・ | ||
H | V | F | - | L | - | P |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
---|---|---|---|---|---|---|
・--- | -・・・ | -・・- | -・-・ | -・-- | --・・ | --・- |
J | B | X | C | Y | Z | Q |
- 覚え方
- 5つのキーワードを覚える
- 2つの略符号20を覚える
- CQ:CQ 符号、各局あて一般呼び出し(符号:-・-・ --・-)
- $\overline{\text{HH}}$:欧文の訂正符号(符号:・・・・・・・・)
- 7列の表を2つ上下に並べ、キーワードのアルファベットを順番に配置する
- キーワード 1, 2 は上の表に配置する
- キーワード 3, 4, 5 は下の表に配置する
- 以下のルールに従って、アルファベットの並び替え・シフトを実施する
- 訂正符号 $\overline{\text{HH}}$(符号:・・・・・・・・)より、
H
が 0 に相当するのは明らかなので、V
とH
を入れ替える - 3, 5 は欠番なので、
L
とP
をそれぞれ上の表の空いている 4 と 6 にシフトする - CQ 符号(符号:-・-・ --・-)より、
Q
が 13 に相当するのは明らかなので、Q
を下の表の最後に移動し、Y
とZ
をそれぞれ1つずつ左にシフトする
- 訂正符号 $\overline{\text{HH}}$(符号:・・・・・・・・)より、
おわりに
紹介した覚え方は個人的には覚えやすく、修了試験から半月ほど経過した時点でも思い出すことができました。
覚え方は1つの例ですので、もっと覚えやすい語呂合わせなどがあればコメントいただけると嬉しいです。
-
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/law_honbun/72001000.html ↩ ↩2 ↩3
-
https://www.hamlife.jp/2024/08/28/yomiuri-tsushinban-dmat/ ↩
-
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/operator/operat/index.htm ↩
-
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/law_honbun/72002000.html ↩
-
https://www.jard.or.jp/eln-center/2nd-class/2nd-class_guide.html ↩