2024/10/18、Linux Foundation社員・カーネル開発者であるGreg Kroah-HartmanによってLinuxコアにひとつのcommitが入りました。
Remove some entries due to various compliance requirements
Remove some entries due to various compliance requirements.
They can come back in the future if sufficient documentation is provided.
MAINTAINERSからメールアドレスがxx.ruの開発者が合計11名削除されました。
もちろん一部界隈で大騒ぎになりました。
「コンプライアンスの諸事情って何よ。ドキュメントもっとはっきり書けや。」
「オープンソースの黎明と終焉がひとつのプロジェクトで見れるとはね。」
「冷戦の再来である。」
「邪悪なクレジットを消したのに邪悪なソースコードを消さないのはなんで？」
「恥を知れ」
「オープンソースの精神()」
「Linux Foundationは、中立的で信頼できる組織です()」
「おいまだ足りないぞ。中国とイランとシリアとイエメンとイラクとアルジェリアとアフガニスタンとパキスタンとヨルダンとエジプトとリベリアとキューバとベネズエラも排除しないと。」
一部開発者の暴走かと思いきや、残念ながらLinusもこのcommitに同意しています。
このcommitをrevertするパッチに対して、Linusは2024/10/23に意見表明しました。
Re: [PATCH] Revert "MAINTAINERS: Remove some entries due to various compliance requirements."
Ok, lots of Russian trolls out and about.
It's entirely clear why the change was done, it's not getting reverted, and using multiple random anonymous accounts to try to "grass root" it by Russian troll factories isn't going to change anything.
And FYI for the actual innocent bystanders who aren't troll farm accounts - the "various compliance requirements" are not just a US thing.
If you haven't heard of Russian sanctions yet, you should try to read the news some day. And by "news", I don't mean Russian state-sponsored spam.
As to sending me a revert patch - please use whatever mush you call brains.
I'm Finnish.
Did you think I'd be supporting Russian aggression?
Apparently it's not just lack of real news, it's lack of history knowledge too.
ロシアの工作員がたくさん出てきたぞ。
変更が行われた理由は明らかであり、元に戻されることはない。
ロシアのトロール工場で作った匿名アカウントで世論を傾けようとしても無駄だ。
また、偽アカウントではない無実の傍観者のために伝えておくと、この「様々なコンプライアンス要件」はアメリカだけのものではない。
ロシアへの制裁をまだ知らないというのであれば、いくつかニュースを読んでみよう。
ロシアが垂れ流しているフェイクニュースのことではないぞ。
revertパッチを私に送る前に、あなたの首の上にくっついているそれを使ってくれ。
私はフィンランド人だ。
私がロシアの侵略を支持しているとでも思ったのか？
どうやら現在の知識だけではなく、歴史の知識も持っていないようだ。
ちょっとニュアンスがよくわからないところもあるんだけど、なんか見るかぎりではだいぶ陰謀論に片足突っ込んでいるようにも見えます。
大丈夫かLinus？
ソースコードは残っている
開発者リストから削除するのであればコードも削除するのが筋というものですが、コメントにもあるようにコードは残っています。
というか変更されたファイルがMAINTAINERSだけですからね、コードに変更がないのは明らかです。
普段から激しい言葉遣いで賛否両論になることも多いLinusですが、さすがに今回に限っては否が圧倒的です。
また、このcommitは通常のレビュープロセスを経たものではないらしく、その点からも批判が上がっています。
これはいったいなに？
はっきりと断言したわけではありませんが、もちろんアメリカ政府によるロシアへの制裁の一環でしょう。
しかし、その手段が『ロシアでは使えなくする』とか『ロシアからのcontributeは今後受け付けない』とかではなく『貢献者リストからロシア人を削除する』というのは意味がわからないしたいへんみみっちいですね。
PHPはどうなの？
私がこれを知ったのはPHPのメーリングリストなわけですが、こちらでは単純に切り捨てられていました。
The notion that just because Putin engages in war, his countrymen cannot contribute to FOSS is totally absurd.
Linus and the US can sanction whomsoever they wish but that has no bearing on what PHP does or must do.
プーチンが戦争しているからといって、国民がFOSSに参加できないなどといった考えは馬鹿げています。
Linusやアメリカが誰かを制裁したからといって、それはPHPには全く無関係です。
そりゃそうだ。
感想
万一のことを考えて今後の新規開発者を受け入れない、あるいはcontributeを受け付けないということであれば、まあ理解できます。
また消すにしても、これまでのcontributeも含めてすべて取り消すというのであれば、納得はしませんがまだわからないこともないです。
しかし、contributeはそのままでクレジットだけ削除するというのは理解できないですね。
あと、なんというかセコい。
このcommitはLinusが許可、どころか積極的に支持しているため、取り消される可能性は低いでしょう。
この変更自体はただのドキュメント変更であり、ソースコードには全く影響ありませんが、この変更が周囲に及ぼす影響は非常に大きくなるのではないかと思います。
さすがにforkがメインになって本家を乗っ取るほどコミュニティが分離するとまでは思いませんが、主要開発者の一部が離反したりとかはありそうですね。
はてさて今後どうなっていくことでしょうか。