はじめに
OneNoteに蓄積したメモをLLMへ渡したとき、内容は書いてあるはずなのに、意図した関係まで伝わらないことはないでしょうか。
OneNoteでは、文字、画像、手書きなどを同じページに配置できます。人がページ全体を見れば理解できる一方で、位置や大きさに持たせた意味は、テキストだけでは残りません。
この記事では、OneNoteのメモをLLMからも扱いやすくするために、Markdownへ段階的に移行する考え方を整理します。すべてを一度に変換するのではなく、再利用したい情報から移す方針を決めることがゴールです。
対象読者
- OneNoteに仕事や学習のメモを蓄積している方
- 保存したメモをLLMで検索、要約、再構成したい方
- Markdownを使ったナレッジ管理を検討している方
問題はメモの内容ではなく、構造の伝わり方にある
OneNoteでは、ページ上の好きな場所に文字を書き、画像や手書きの情報と組み合わせられます。この自由さは、考えながら情報を置いていくときに便利です。
ただし、次のような意味を配置だけで表すと、テキストとして取り出したときに関係が欠けることがあります。
- 画像の横にある文章が、その画像の説明である
- 矢印で結んだ要素に、処理の順序や依存関係がある
- 近くに置いた複数の要素が、一つのグループである
- 文字の大きさや場所が、情報の重要度を表している
画像を扱えるLLMへページ全体を渡す方法もあります。しかし、読み取り結果は、画像の品質、ページの複雑さ、利用するモデルなどの条件に左右されます。大量のメモを継続して再利用するなら、関係を毎回推測させるのではなく、見出しや箇条書きとして構造を明示する方法も選択肢になります。
OneNoteが不向きなのではありません。人が自由に記録する用途と、LLMを含む別の仕組みが再利用する用途では、扱いやすい形式が異なるという話です。
Markdownにすると構造を文字で残せる
Markdownでは、見出し、箇条書き、表、コードブロック、リンクなどを記号で表現します。見た目の自由度はOneNoteほど高くありませんが、文書の構造がプレーンテキストに残ります。
例えば、作業手順を次のように整理できます。
# バックアップ手順
## 前提
- 対象: サンプル環境
- 実行前に空き容量を確認する
## 手順
1. 対象を確認する
2. バックアップを実行する
3. 出力ファイルを確認する
この例では、前提と手順の境界、項目の並列関係、実行順序が文字として残っています。LLMが常に正しく解釈する保証はありませんが、位置関係だけに意味を持たせる場合より、関係を入力データとして渡しやすくなります。
OneNoteとMarkdownの違い
今回の移行目的に絞ると、両者の違いは次のように整理できます。
| 観点 | OneNote | Markdown |
|---|---|---|
| 記録のしやすさ | 文字、画像、手書きなどを自由に配置できる | 見出しや箇条書きなど、決めた構造に沿って書く |
| 関係の表し方 | 位置、大きさ、図形でも表現できる | 見出し、リスト、リンクなどを文字で表す |
| LLMへ渡すとき | 配置や図の解釈が必要になる場合がある | 文書構造をテキストとして渡せる |
| 変更の確認 | ノートとページを中心に管理する | Gitを併用すれば行単位の差分を確認できる |
| 得意な用途 | 自由なメモ、手書き、視覚的な整理 | 再利用する文書、手順、コードを含む資料 |
どちらか一方に統一する必要はありません。考え始めのメモはOneNoteに残し、繰り返し参照する内容だけをMarkdownへ移す運用もできます。
図は複雑さに応じて表現を選ぶ
図をすべて文章へ置き換えると、人にとっての読みやすさが下がる場合があります。そこで、図の複雑さに応じてMermaidとdraw.ioを使い分けます。
単純な流れや関係はMermaidで書く
Mermaidは、テキストの定義から図を生成します。処理の流れや要素同士の単純な関係であれば、図の元となる情報をMarkdown内に残せます。
Mermaidの表示可否や対応する記法は、Markdownを表示する環境によって異なります。利用先で表示できることを確認してから採用します。
複雑な構成はdraw.ioで作る
細かな配置が必要な構成図まで、無理にMermaidへ変換する必要はありません。その場合はdraw.ioで編集可能な元データを保存し、書き出した画像をMarkdownから参照します。
画像だけに意味を持たせず、次の内容を本文または代替テキストでも補足します。
- 図の目的
- 主な要素
- 要素同士の関係
- 図から読み取ってほしい結論
この補足は、LLMのためだけではありません。画像を表示できない環境や、図の前提を知らない読者にも役立ちます。
移行対象は再利用価値で決める
メモが多いほど、最初に移行対象を絞ることが重要です。古いページから順番に変換するより、今後使う可能性から判断します。
優先しやすいのは、次のようなメモです。
- 繰り返し参照している作業手順
- 複数のメモから何度も探し直している情報
- 他の人へ説明する機会がある知識
- 今後も更新する予定がある調査結果
- 記事や手順書の材料にしたい記録
反対に、期限が切れた一時メモや、画像として保管すること自体に意味がある資料は、すぐに移さなくても構いません。
一つのメモから段階的に移行する
実際の移行は、次の流れで進めます。
1. 用途を一文で決める
「障害対応時に確認する手順」「新人へ共有する用語集」のように、誰が何のために使うメモかを決めます。用途が決まると、残す情報と見出しを判断しやすくなります。
2. 文字と添付物を分けて取り出す
本文、画像、ファイル、リンクを確認します。この段階では、元のOneNoteを削除せず、移行元として残します。
3. 配置が表していた意味を言葉にする
画像の横にある説明には見出しを付け、矢印には「参照する」「先に実行する」などの関係を書きます。見た目だけで伝えていた意味を、文章、箇条書き、表へ置き換えます。
4. 必要な図だけ作り直す
単純な流れはMermaid、複雑な図はdraw.ioを候補にします。図を残す場合も、要点を文章で説明します。
5. 人が元のメモと照合する
LLMで変換を補助した場合は、特に次の点を確認します。
- 数値、固有名詞、URLが元のメモと一致しているか
- 画像や図の関係を取り違えていないか
- 元のメモにない説明を事実として追加していないか
- APIキー、メールアドレス、社内URLなどが含まれていないか
- Markdownを表示したときに見出し、表、コードブロックが崩れていないか
変換後のMarkdownは完成品ではなく、確認対象の初稿として扱います。
Markdownにも向かない場面がある
Markdownに移せば、すべてのメモが使いやすくなるわけではありません。
手書きで考えを広げたい場面や、ページ全体の位置関係を見ながら整理したい場面では、OneNoteのほうが使いやすいことがあります。また、複雑な図を文章だけで再現すると、作成にも読解にも時間がかかります。
そこで、次のような役割分担から始めます。
- 考え始めの自由なメモはOneNoteに残す
- 再利用する文章や手順はMarkdownへ移す
- 単純なフローはMermaidで記述する
- 複雑な図はdraw.ioの元データと表示用画像を残す
- 図の結論は文章でも説明する
移行の目的は、すべてを文字にすることではありません。人とLLMの双方が再利用できる形に、必要な情報だけを整えることです。
まとめ
OneNoteの自由な配置は、人が考えを記録し、視覚的に理解する場面で役立ちます。一方、配置に持たせた意味は、別の仕組みで再利用するときに伝わりにくい場合があります。
Markdownへ移すと、見出し、順序、並列関係をテキストとして残せます。ただし、すべてを移す必要はありません。用途を決め、繰り返し使うメモから一つずつ移すのが現実的です。
まずは、今月二回以上開いたOneNoteのページを一つ選び、「誰が、何のために使うか」を一文で書くところから始めてみてください。
参考資料
- Take and format notes - Microsoft Support(参照日: 2026-08-11)
- About Mermaid(参照日: 2026-08-11)
- Save a diagram in various formats - draw.io(参照日: 2026-08-11)
- About Git(参照日: 2026-08-11)