人間がコードを書く時代は終わったのか? ハッカソンで「Manus」を実戦投入したら、開発体験が別次元だった
はじめに
「ハッカソンで即席チームを組む」。
この言葉を聞いて、多くのエンジニアが想像するのは 「環境構築の地獄」 ではないでしょうか。
先日、Findy主催の「業務改善ハッカソン」に参加してきました。
そこで私は、当日出会ったフリーランスの猛者、実務経験の浅い若手、そして私という、バックグラウンドも開発環境もバラバラな3人でチームを組むことになりました。
通常であれば、「言語は何にする?」「Dockerが立ち上がらない」「Gitの権限が...」という調整だけで午前中が溶けるパターンです。
しかし、私たちは今回、ある「禁じ手」 を使いました。
話題のAIエージェント 「Manus」 です。
結論から言います。
私たちはコードをほぼ書きませんでした。それでも、30分でサービスが完成しました。
これは、その戦慄(と歓喜)の記録です。
1. 戦場(ハッカソン)の状況
周りのチームは精鋭揃いでした。
- ソースコード内の英語を自動翻訳するVS Code拡張機能
- 表情でプロジェクトの進捗を可視化する高度なシステム
そんな「ガチ開発」が進む中、僕たちのチームの会話は異質でした。
- 「よし、Manusに投げよう」
- 「見てるだけでいいのかな?」
- 「...あ、もう終わったっぽいですね」
2. 開発したサービス:「 爆速Score エンジニアスキル可視化ツール 」
今回作ったのは、「 爆速Score: エンジニアのスキルを定量化し、グラフ化するサービス」 です。
- 機能: CSVなどで定量データをインポートし、レーダーチャート等のグラフで可視化する。
- 開発時間: 約30分
- 開発者: Manus(監修:人間3名)
入力データ グーグルカレンダーから抽出した適当な定量データ 200行
日付,タスク名,使用技術,作業時間(h),難易度(1-5)
2026-03-01,ログのリアルタイム表示の組込,Docker,3,5
2025-11-12,ログ <-> Firestore データ同期のバグ修正,"Inertia.js, Docker",4.5,3
2026-03-11,ユーザー認証のジョブの組込,"Docker, PHPUnit",8,5
2025-11-21,管理画面 <-> Firestore データ同期のバグ修正,"Sanctum, Laravel",7,5
2025-10-04,予約確定時のメール通知ジョブ実装,"Queue, Docker",8,3
2026-02-22,決済関連のデータの実装,"Laravel, Sanctum, PHPUnit",4,5
2026-03-23,予約確定時のメール通知ジョブ実装,"MySQL, Firestore, PHPUnit",5.5,1
2025-10-01,ファイル DB 削除ロジック,"Sanctum, Queue",4.5,2
2026-01-20,設定関連のリアルタイム表示の実装,"MySQL, Firestore, Pest, PHPUnit",3,4
2025-11-20,決済 (ジョブ) 組込,"Laravel, PHPUnit, Pest, Firebase Auth",6,3
2025-11-11,ユーザー認証関連のデータのリファクタリング,"Sanctum, Queue",3.5,1
2025-11-17,ビジネスロジック データ 削除実装,"Docker, Firestore, PHPUnit, MySQL",3,4
2026-01-29,決済のロジックの更新,"Sanctum, Queue, Firebase Auth, Pest",7,4
2026-03-17,設定 ジョブ 実装ロジック,"Tailwind CSS, Firebase Auth",3.5,3
2025-12-22,設定 データ 更新ロジック,Laravel,6,5
2025-10-18,予約確定時のメール通知ジョブ実装,"PHPUnit, Docker, Sanctum",8,5
2026-01-16,ログ関連のリアルタイム表示のリファクタリング,Firestore,7,2
2026-03-19,決済 ジョブ 削除実装,"Firestore, MySQL",8,2
・
・
従来のハッカソンなら...
即席チームでこれをやる場合、以下のような「泥臭い作業」が発生します。
- リポジトリ作成と招待
- フロントエンドの選定(React? Vue?)
- グラフライブラリの選定(Recharts? Chart.js?)
- CSVパーサーの実装
- そして発生する「環境構築エラー」と「バージョンの不整合」
Manusを使った場合
私たちがやったことは、これだけです。
プロンプト(指示):
csvにエンジニアの開発データがあるからそのcsvを1ファイル以上読み込みできるような画面を作成して、その後そのデータを分析して、グラフなどで定量化するwebアプリを作成して
#利用ケースの例
csvから取得した日単位の実装工数をaiが読み込み、
エンジニアの月単位での実装時間など、、
#注意点
・取り込まれるcsvのデータのフォーマットは決まっていないため、内部でaiが利用しやすいように整形して、結果をai側で自由に解釈して表示できるようにしててください
#目的
エンジニアのスキルを定量化するのって作るのめんどくさいよね、これをaiで分析、定量化をしてもらったらありがたいなあと
このプロンプトの恐ろしいところは、「CSVのフォーマットが決まっていない」という無茶振りを許容している点です。 人間相手なら「仕様を決めてください」と怒られるところですが、Manusは文句ひとつ言わず、内部でデータを整形して実装を進めてくれました。
3. 実録:人間、やることなし
当初は「フリーランスの方がバリバリ書いて、若手の方がそれをサポートして...」という役割分担を想定していました。
しかし、Manusが爆速で実装を進めるため、人間側が介入する余地がほとんどありませんでした。
「あ、エラー出た...あ、Manusが勝手に直した」
「次はグラフの描画...あ、もう終わってる」
若手エンジニアの方が何かを学ぶ暇もなく、フリーランスの方が腕を振るう暇もない。
AIは「メンター」でも「ライバル」でもなく、 「優秀すぎて人間から仕事を奪い尽くすマシーン」 でした。
あとは、画面の中でManusがブラウザを操作し、ドキュメントを読み、コードを書き、デバッグする様子を 「呆然と眺める」 だけでした。
結果、余った時間でお菓子を食べながら優雅に会話することしかできませんでした。ハッカソンとは一体...。
「人間がコードを書く時代は終わったのか?」
そんな高揚感と、一抹の寂しさを感じていました。――表彰式までは。
4. 圧倒的な優勝チームの正体
私たちが「AIすげー!」とキャッキャしている横で、静かに、しかし凄まじいクオリティのプロダクトを作っていたチームがありました。
彼らが作ったのは 「ソースコード内の英語を自動翻訳するVS Code拡張機能」 。
技術的な難易度もさることながら、実装の堅牢さ、デモの完成度が頭一つ抜けており、文句なしの優勝でした。
「すごい人がいるもんだなあ」と感心していたのですが、表彰式の後、Twitter(X)を見ていて衝撃の事実に気づきました。
優勝チームのリーダーの方、(@eycjurさん)。
実はこの方、最近エンジニア界隈で 「神本」と話題になっていた技術書の著者 だったのです。
伏線回収:『先輩データサイエンティストからの指南書』
みなさん、この本をご存知でしょうか?
『先輩データサイエンティストからの指南書 -実務で生き抜くためのエンジニアリングスキル』
最近、Twitterのタイムラインで 「データサイエンティストに限らず、全エンジニアが読むべき」「ITエンジニア本大賞に投票した」 といった感想をよく見かけていました。
まさか、「Twitterで話題の本の著者」 が、同じ会場でコードを書いていたとは。
私たちがAIエージェントに頼って「環境構築めんどくさい」とスキップしていた部分を、 「実務で生き抜くためのエンジニアリングスキル」 として体系化して本に書いている人が、相手だったわけです。
そりゃ勝てないよ。(清々しい敗北感)
5. 考察:AIと「強い人間」の共存
今回のハッカソンは、図らずも 「AIエージェントを使い倒すチーム(私たち)」と「圧倒的なエンジニアリング力を持つ人間(著者チーム)」 の対比を実感しました。
Manusを使った私たちは、確かに爆速で動くものを作れました。これは「0を1にする」ハードルが劇的に下がったことを意味します。
しかし、優勝した (@eycjurさん) のチームのような 「深い知見に基づいた、痒い所に手が届くツール」 の凄みを見ると、やはりまだ人間の「経験」や「思想」には価値があるのだと痛感させられます。
- Manus: 誰でも平均点以上のものを爆速で作れる武器
- 指南書(エンジニアリングスキル): その武器を正しく扱い、さらに高みを目指すための地図
この2つは対立するものではなく、「AIで楽をしつつ、浮いた時間で『指南書』のような深い知識を学ぶ」 のが、これからのエンジニアの生存戦略なのかもしれません。
おまけ:Findyの「DevRel」について
最後に、このような「AIの衝撃」と「トップエンジニアとの遭遇」を同時に体験させてくれたFindyのイベントについて。
主催者の北川さんのNoteにもある通り、Findyは 「DevRel(Developer Relations)」 を大切にしています。
単に開発するだけでなく、こうした出会いや発見があるのがオフラインイベント(ハッカソン)の醍醐味ですね。
新しい技術(Manus)と、それを試せる場(Findyハッカソン)。 この2つが揃ったことで、最高の週末になりました。
AIで開発が楽になった分、これからは 「人に会いに行く」「すごい人の話を聞く」 ためにハッカソンに参加しようと思います。
教訓:
ハッカソン会場に著者がいたら、サインペンを持って話しかけに行こう。
(そして開発はManusに任せよう)
Twitterハッシュタグ #hackathon_findy






