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オペアンプの現実

Last updated at Posted at 2025-08-26

【OPアンプの基礎知識まとめ】

  1. OPアンプとは
  • operational amplifier の略で、日本では「オペアンプ」と呼ぶ。
  • アナログ回路で非常によく使われるIC。
  • 抵抗やキャパシタと組み合わせて使用するのが基本。
  1. パッケージと種類
  • 一般的には 8ピンICが多い(DIP, SOPパッケージ)。
  • 1回路入りタイプ:特徴的な性能を持つものが多い。
  • 2回路入りタイプ:汎用性が高く、多くの用途に使われる。
  • 例:NJM4558D(新日本無線)、TL072(テキサス・インスツルメンツ)など。
  1. 電源
  • ±15Vが一般的。+5V単電源で動作するタイプもある。
  • アナログ信号を扱うため、+電源と−電源の両方が必要な場合が多い。
  1. 回路図の表記
  • OPアンプの記号には入力端子(反転・非反転)と出力端子が描かれる。
  • 初学者は電源端子も書くと理解しやすい。慣れれば省略することも多い。
  1. デカップリング・キャパシタ(バイパス・キャパシタ)
  • 電源端子と0Vの間に必ず接続する。
  • 電源のノイズ除去と電圧安定化が目的。
  • 一般的な値は 0.1µF(積層セラミック)。「104」と印字される。
  • +15Vと0Vの間、−15Vと0Vの間にそれぞれ接続。
  1. 計算例(キャパシタの表記)
  • 「104」と印字 → 10 × 10^4 pF = 100000 pF = 0.1 µF

【反転アンプの設計と信号源インピーダンスの影響】

  1. 基本式(理想状態)
    反転アンプのゲインは次式で表される:
    Vout = - (R2 / R1) * Vin ...(3)

ここで、
R1 = 入力抵抗
R2 = フィードバック抵抗

  1. 信号源の出力インピーダンス Zo を考慮した場合
    入力側に出力インピーダンス Zo があると、実効入力抵抗は (R1 + Zo) となり、
    Vout = - (R2 / (R1 + Zo)) * Vin ...(10)

つまり Zo が無視できないと、設計通りのゲインが得られない。

  1. 計算例
    ゲイン10倍を目標にした場合:
    R1 = 100Ω, R2 = 1kΩ の設計 → 理想的には
    Vout = - (1000 / 100) * Vin = -10 Vin ...(11)

しかし Zo = 50Ω があると、
Vout = - (1000 / (100 + 50)) * Vin
= - (1000 / 150) * Vin
= -6.67 Vin ...(12)

となり、設計通りの10倍ではなく、約6.67倍に低下する。

  1. 設計のポイント
    入力側の信号源インピーダンス Zo の影響を避けるには:
    R1 >> Zo (少なくとも100倍以上)を満たすようにすること。
    すなわち R1 > 100 * Zo ...(13)

もし条件が満たせない場合は、非反転アンプを使うことも有効。

  1. 応用例:電流入力・電圧出力アンプ
    反転アンプは「電流入力 → 電圧出力」の変換に応用できる。
    フォトダイオードを入力に用いると、光強度に比例した電流 Iin が流れ、
    Vout = - R2 * Iin
    の関係で電圧に変換できる。

例:
フォトダイオード入力電流 Iin を R2 = 200kΩ の抵抗で変換すると、
Iin = 10µA のとき、Vout = - 2.0 V となる。

【非反転アンプの特徴と設計ポイント】

  1. 基本式(理想状態)
    非反転アンプのゲインは次式で表される:
    Vout = (1 + R2 / R1) * Vin ...(A)

例:R1 = 20kΩ, R2 = 180kΩ の場合
Vout = (1 + 180k / 20k) * Vin = (1 + 9) * Vin = 10 Vin

  1. 特徴
  • 入力インピーダンスが非常に高い(数GΩレベル)
  • 信号源インピーダンス Zo の影響を受けにくい
  • 微小な電流出力のセンサの信号増幅に適している
  • 一方で、未接続にすると外部ノイズを拾いやすい
  1. 実験での測定(入力インピーダンス)
    バイアス電流の変化を利用して入力インピーダンス Z_in を測定:
    Z_in = ΔVin / (IB0 - IB10) ...(B)

例:
Vin を 0V → 10V に変化させたとき
IB0 = 18.0 nA, IB10 = 15.1 nA とすると、
Z_in = 10 V / (18.0 nA - 15.1 nA) ≈ 3.45 GΩ

→ 非常に高い入力インピーダンスであることが確認できる。

  1. 実用上の注意
  • 未接続入力では AC100V などの商用ノイズを拾うことがある
  • 入力端子に 100kΩ~1MΩ の抵抗(プルダウン抵抗 R3)を接続すると安定
  • 過大入力保護には直列抵抗 R4 とダイオード D1・D2(1N4148 など)を利用
  1. 反転アンプとの比較
  • 反転アンプ:入力インピーダンス = R1 → Zo が大きいとゲイン低下
  • 非反転アンプ:入力インピーダンス ≫ Zo → ゲイン安定
  • 微小信号やセンサ出力を扱うときは非反転アンプが有利

【OPアンプ回路における抵抗とオフセット電圧のまとめ】

  1. ゲインの決定
    反転アンプ:
    Vout = - (R2 / R1) * Vin ...(1)

非反転アンプ:
Vout = (1 + R2 / R1) * Vin ...(2)

→ 抵抗 R1, R2 の比率がゲインを決める


  1. 抵抗の誤差
    ・実際の抵抗は ±1%, ±0.5%, ±0.1% などの誤差を持つ
    ・誤差が大きいとゲインもズレる
    例: ゲイン10倍の設計で ±1%抵抗を使うと誤差 ≈ ±0.24%

・推奨: 金属被膜抵抗 (metal film resistors, 誤差1%以下, TCR 50 ppm/℃)


  1. オフセット電圧 (offset voltage)
    入力 Vin = 0V でも出力 Vout に直流電圧が出る現象
    定義:
    Voffset = Vout * R1 / (R1 + R2) ...(3)

例: R1 = 20kΩ, R2 = 180kΩ (ゲイン10倍)
Vout = 4.2 mV → Voffset = 0.42 mV


  1. オフセット電圧を含む出力電圧
    反転アンプ:
    Vout = - (R2 / R1) * Vin ± Voffset * (R1 + R2) / R1 ...(4)

非反転アンプ:
Vout = (1 + R2 / R1) * Vin ± Voffset * (1 + R2 / R1) ...(5)


  1. ゲインとオフセットの影響
    例: Voffset = 0.42 mV の場合
    ゲイン10倍 → 出力誤差 4.2 mV
    ゲイン50倍 → 出力誤差 21 mV
    ゲイン100倍 → 出力誤差 42 mV
    → ゲインが大きいほど誤差の影響も増大

  1. 高精度化の方法
    (1) 高精度抵抗
    • ネットワーク抵抗 (SM, SLD, MUシリーズ)
    • 誤差0.1%以下, TCR 5 ppm/℃以下
    • R1, R2 の比を正確に維持できる

(2) 高精度OPアンプ

  • 例: OPA2277PA (Texas Instruments)
  • オフセット電圧最大 50 µV
  • 温度変化 0.25 µV/℃

実験例:
入力 Vin = 0V → Vout = 0.1 mV
→ Voffset = 0.01 mV = 10 µV (非常に小さい)


【結論】
・通常用途 → 誤差1%の金属被膜抵抗で十分
・高精度用途 → ネットワーク抵抗 + 高精度OPアンプでゲイン誤差・オフセット誤差を最小化できる
【非反転アンプのゲインとオープン・ループ・ゲイン】

  1. 非反転アンプの理想ゲイン
    Vout = (1 + R2 / R1) * Vin ...(1)

    → 条件: OPアンプのオープン・ループ・ゲイン A が十分に大きい
    → すなわち 1/A ≈ 0 と見なせる


  1. OPアンプのオープン・ループ・ゲイン (Open-loop gain A)
    ・NJM4558D (新日本無線) の例

    • 低周波 (10 Hz 以下): 約 105 dB ≈ 177,828 倍
    • 3 kHz: 約 60 dB ≈ 1000 倍
    • 50 kHz: 約 38 dB ≈ 79 倍
    • 3 MHz 付近: 0 dB (利得 = 1)

    → 周波数が高くなるほどゲイン A は減少する


  1. 周波数による影響
    • 低周波では A が十分大きいので「2本の抵抗で決まる理想ゲイン」が成立
    • 100 kHz 以上になると A が小さくなり、位相遅れやゲイン低下が発生
    • GBW (Gain Bandwidth Product) で性能の限界が決まる
      NJM4558D: GBW ≈ 3 MHz
      AD828AN (高速OPアンプ): GBW ≈ 200 MHz

  1. 設定ゲインと必要なオープン・ループ・ゲイン
    ・ゲイン = 10 倍のとき
    必要な A ≧ 100 倍 (40 dB 以上)

    ・ゲイン = 100 倍のとき
    必要な A ≧ 1000 倍 (60 dB 以上)

    条件: (R1 / (R1 + R2)) >> 1/A


  1. 設計上の注意点
    • 高ゲインを 1 段で実現すると周波数帯域が狭くなる
    • 実用的には 20~30 倍以下にして、多段で構成するのが望ましい
    • 高周波を扱う場合は GBW の大きい高速OPアンプを選ぶ
    • 高精度を求める場合は抵抗誤差だけでなく OPアンプの A の周波数特性を確認する必要がある
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