はじめに
統計検定準1級で出てくる確率分布は、名前だけで覚えるとかなり重いです。
しかし、ポケモンバトルの技に対応させると、かなり整理しやすくなります。
たとえば、
ストーンエッジが当たるか外れるか
→ ベルヌーイ分布
ストーンエッジを10回撃って何回当たるか
→ 二項分布
じわれが初めて当たるまで何回かかるか
→ 幾何分布
エアスラッシュで3回ひるませるまで何回撃つか
→ 負の二項分布
100回攻撃して急所が何回出るか
→ ポアソン分布
ダメージ乱数 85%, 86%, ..., 100%
→ 離散一様分布
平均ダメージのばらつき
→ 正規分布
少ない試行回数で平均ダメージを比較する
→ t分布
理論命中率と実測命中率のズレを見る
→ カイ二乗分布
2つの技のダメージのばらつきを比べる
→ F分布
命中率 p そのものを推定する
→ ベータ分布
このように、分布は「何を見ているか」で決まります。
1回の成功・失敗を見る
→ ベルヌーイ分布
複数回の成功回数を見る
→ 二項分布
初めて成功するまでの回数を見る
→ 幾何分布
r回成功するまでの回数を見る
→ 負の二項分布
まれな事象の回数を見る
→ ポアソン分布
平均や連続値のばらつきを見る
→ 正規分布
標本平均の不確かさを見る
→ t分布
分散の比を見る
→ F分布
度数のズレを見る
→ カイ二乗分布
確率 p 自体を見る
→ ベータ分布
- 先に全体像
確率分布は、大きく2つに分かれます。
離散分布
→ 0回、1回、2回、3回のように数えられる値を扱う
連続分布
→ 120.5ダメージ、命中率0.763、平均値92.5のように連続的な値を扱う
ポケモンバトルで言うと、次のイメージです。
離散分布
→ 技が当たった回数
→ 急所に当たった回数
→ ひるませた回数
→ 初めて当たるまでの回数
連続分布
→ 平均ダメージ
→ 標準化したダメージ
→ 推定された命中率
→ 標本平均
→ 分散比
- ベルヌーイ分布:1回だけ技が当たるか外れるか
1.1 何を表す分布か
ベルヌーイ分布は、結果が2つしかない試行を表します。
ポケモンでいうと、
技が当たる / 外れる
急所に当たる / 当たらない
追加効果が出る / 出ない
まひする / まひしない
のような場面です。
たとえば、命中率80%のストーンエッジを1回撃つとします。
当たる = 1
外れる = 0
と置きます。
このとき、確率変数 X は、
X ~ Bernoulli(p)
と書きます。
ここで、
p = 成功確率
です。
ストーンエッジの命中率を80%とすると、
p = 0.8
です。
1.2 確率の式
ベルヌーイ分布では、
P(X = 1) = p
P(X = 0) = 1 - p
です。
ストーンエッジなら、
P(X = 1) = 0.8
P(X = 0) = 0.2
となります。
つまり、
80%で当たる
20%で外れる
という意味です。
1.3 期待値
期待値は、
E[X] = p
です。
なぜなら、
E[X]
= 1 × P(X = 1) + 0 × P(X = 0)
= 1 × p + 0 × (1 - p)
= p
だからです。
ストーンエッジの場合、
E[X] = 0.8
です。
これは「1回撃ったら0.8回当たる」という意味ではなく、
何度も繰り返したとき、1回あたり平均0.8成功する
という意味です。
1.4 分散
分散は、
Var(X) = p(1 - p)
です。
ストーンエッジなら、
Var(X) = 0.8 × 0.2
= 0.16
です。
分散は「ばらつき」です。
p が 0 または 1 に近いと、結果はほぼ決まります。
p = 0.99
→ ほぼ当たる
→ ばらつきは小さい
p = 0.5
→ 当たるか外れるか半々
→ ばらつきは大きい
ベルヌーイ分布では、p = 0.5 のときに分散が最大になります。
- 二項分布:n回中何回当たるか
2.1 何を表す分布か
二項分布は、ベルヌーイ試行を n 回繰り返したときの成功回数を表します。
ポケモンでいうと、
ストーンエッジを10回撃って何回当たるか
10回攻撃して何回急所に当たるか
10回エアスラッシュを撃って何回ひるませるか
です。
1回ごとの結果は、
当たる = 1
外れる = 0
ですが、二項分布ではそれを n 回足し合わせます。
X = 成功回数
とすると、
X ~ Binomial(n, p)
と書きます。
2.2 確率の式
二項分布の確率は、
P(X = k) = nCk p^k (1 - p)^(n-k)
です。
記号の意味は次の通りです。
n = 試行回数
k = 成功回数
p = 成功確率
1 - p = 失敗確率
nCk = n回のうち、どのk回が成功するかの組合せ
2.3 式の意味
たとえば、ストーンエッジを10回撃って、8回当たる確率を考えます。
n = 10
k = 8
p = 0.8
なので、
P(X = 8) = 10C8 × 0.8^8 × 0.2^2
です。
この式は、次の3つの部品からできています。
0.8^8
→ 8回当たる確率
0.2^2
→ 2回外れる確率
10C8
→ 10回のうち、どの8回が当たるかの並び方
たとえば、
当 当 当 当 当 当 当 当 外 外
という並びもあれば、
当 外 当 当 当 外 当 当 当 当
という並びもあります。
「8回当たって2回外れる」という結果は同じでも、順番は複数あります。
その順番の数が、
10C8
です。
2.4 期待値
二項分布の期待値は、
E[X] = np
です。
ストーンエッジを10回撃つなら、
E[X] = 10 × 0.8
= 8
です。
意味は、
10回撃つと、平均して8回当たる
です。
2.5 分散
二項分布の分散は、
Var(X) = np(1 - p)
です。
ストーンエッジなら、
Var(X) = 10 × 0.8 × 0.2
= 1.6
標準偏差は、
SD(X) = √Var(X)
= √1.6
≒ 1.26
です。
つまり、10回撃ったときの命中回数は、平均8回を中心に、だいたい1〜2回くらい上下するイメージです。
- 幾何分布:初めて当たるまで何回か
3.1 何を表す分布か
幾何分布は、
初めて成功するまでの試行回数
を表します。
ポケモンでいうと、
じわれが初めて当たるまで何回撃つか
きあいだまが初めて当たるまで何回撃つか
エアスラッシュで初めてひるませるまで何回撃つか
です。
たとえば、じわれの命中率を30%とします。
p = 0.3
初めて当たるまでの回数を X とすると、
X ~ Geometric(p)
です。
3.2 確率の式
幾何分布では、
P(X = k) = (1 - p)^(k - 1) p
です。
記号の意味は、
k = 初めて成功する試行回数
p = 成功確率
1 - p = 失敗確率
です。
3.3 式の意味
たとえば、じわれが3回目で初めて当たる確率を考えます。
3回目で初めて当たるということは、
1回目:外れる
2回目:外れる
3回目:当たる
です。
だから、
P(X = 3) = 0.7 × 0.7 × 0.3
= 0.7^2 × 0.3
です。
一般に、k回目で初めて当たるなら、
最初の k - 1 回は失敗
最後の 1 回で成功
なので、
P(X = k) = (1 - p)^(k - 1) p
になります。
3.4 期待値
幾何分布の期待値は、
E[X] = 1 / p
です。
じわれなら、
E[X] = 1 / 0.3
= 3.333...
です。
意味は、
平均すると約3.33回で1回当たる
です。
3.5 分散
幾何分布の分散は、
Var(X) = (1 - p) / p^2
です。
じわれなら、
Var(X) = 0.7 / 0.3^2
= 0.7 / 0.09
≒ 7.78
標準偏差は、
SD(X) = √7.78
≒ 2.79
です。
つまり、平均は3.33回ですが、実際には1回で当たることもあれば、かなり長く外れ続けることもあります。
- 負の二項分布:r回成功するまで何回か
4.1 何を表す分布か
負の二項分布は、幾何分布の発展形です。
幾何分布
→ 1回成功するまでの試行回数
負の二項分布
→ r回成功するまでの試行回数
ポケモンでいうと、
エアスラッシュで3回ひるませるまでに何回撃つか
じわれを2回当てるまでに何回撃つか
10まんボルトで2回まひを引くまでに何回撃つか
です。
成功確率を p、成功回数の目標を r とすると、
X ~ NegativeBinomial(r, p)
です。
4.2 確率の式
X を「r回成功するまでの総試行回数」とすると、
P(X = k) = C(k - 1, r - 1) p^r (1 - p)^(k - r)
です。
記号の意味は、
r = 目標成功回数
k = r回成功するまでにかかった総試行回数
p = 成功確率
C(k - 1, r - 1) = k - 1回目までに r - 1回成功している並び方
4.3 式の意味
たとえば、3回ひるませるまでに5回エアスラッシュを撃つ場合を考えます。
これは、
5回目で3回目のひるみが発生する
という意味です。
つまり、
最初の4回の中で2回ひるむ
5回目でひるむ
必要があります。
だから、
P(X = 5)
= C(4, 2) p^3 (1 - p)^2
です。
ここで、
C(4, 2)
は、最初の4回のうち、どの2回でひるみが起きるかを表します。
4.4 期待値
負の二項分布の期待値は、
E[X] = r / p
です。
たとえば、ひるみ確率を30%、3回ひるませたいなら、
r = 3
p = 0.3
なので、
E[X] = 3 / 0.3
= 10
です。
意味は、
3回ひるませるには、平均して10回撃つ必要がある
です。
- ポアソン分布:まれな事象が何回起きるか
5.1 何を表す分布か
ポアソン分布は、
一定の範囲内で、まれな事象が何回起きるか
を表します。
ポケモンでいうと、
100回攻撃して急所が何回出るか
100ターン中、追加効果が何回出るか
大量の試行で、低確率イベントが何回起きるか
です。
平均発生回数を λ とすると、
X ~ Poisson(λ)
です。
5.2 確率の式
ポアソン分布の確率は、
P(X = k) = e^(-λ) λ^k / k!
です。
記号の意味は、
λ = 平均発生回数
k = 実際に起きた回数
e = ネイピア数 2.718...
k! = kの階乗
5.3 ポケモン例
急所率を仮に 1/24 とします。
100回攻撃すると、平均急所回数は、
λ = 100 × 1/24
≒ 4.17
です。
このとき、
X = 100回攻撃したときの急所回数
とすると、
X ~ Poisson(4.17)
と近似できます。
5.4 期待値と分散
ポアソン分布では、
E[X] = λ
Var(X) = λ
です。
ここが特徴です。
平均と分散が同じです。
X ~ Poisson(4.17)
E[X] = 4.17
Var(X) = 4.17
つまり、
100回攻撃したら、平均して約4.17回急所に当たる
という意味です。
- 離散一様分布:ダメージ乱数
6.1 何を表す分布か
離散一様分布は、有限個の値がすべて同じ確率で出る分布です。
ポケモンのダメージ乱数は、典型例として使えます。
85%, 86%, 87%, ..., 100%
の16個の値が同じ確率で出ると考えると、
X ~ DiscreteUniform{85, 86, ..., 100}
です。
6.2 確率の式
値が16個あるので、
P(X = x) = 1 / 16
です。
ここで、
x = 85, 86, 87, ..., 100
です。
6.3 期待値
離散一様分布の平均は、最小値と最大値の真ん中です。
E[X] = (85 + 100) / 2
= 92.5
つまり、平均的には最大ダメージの92.5%が出る、という意味です。
6.4 連続一様分布との違い
本来のダメージ乱数は、
85, 86, 87, ..., 100
の16通りなので離散です。
しかし、計算を簡単にするために、
0.85 から 1.00 の間の連続値
として近似することがあります。
この場合は、
X ~ Uniform(0.85, 1.00)
となり、連続一様分布になります。
- 正規分布:平均ダメージ・能力値・合計値のばらつき
7.1 何を表す分布か
正規分布は、平均のまわりに値が集まり、平均から離れるほど起こりにくくなる分布です。
ポケモンでいうと、
ダメージの平均値のばらつき
複数回攻撃した合計ダメージ
大量試行したときの命中回数の近似
能力値のばらつき
などに使えます。
確率変数 X が平均 μ、分散 σ^2 の正規分布に従うとき、
X ~ N(μ, σ^2)
と書きます。
7.2 記号の意味
μ = 平均
σ^2 = 分散
σ = 標準偏差
たとえば、
X ~ N(120, 10^2)
なら、
平均 μ = 120
標準偏差 σ = 10
分散 σ^2 = 100
です。
7.3 ポケモン例
ある技のダメージを連続値として近似して、
平均ダメージ μ = 120
標準偏差 σ = 10
とします。
このとき、
X ~ N(120, 100)
または、
X ~ N(120, 10^2)
です。
意味は、
ダメージは120前後に出やすい
130や110もそこそこ出る
150や90はかなり出にくい
です。
7.4 正規分布の密度関数
正規分布の確率密度関数は、
f(x) = 1 / √(2πσ^2) × exp{ - (x - μ)^2 / (2σ^2) }
です。
この式は見た目が重いですが、意味は次の通りです。
x = 実際の値
μ = 平均
σ^2 = 分散
(x - μ)^2 = 平均からどれくらい離れたか
exp{ - (x - μ)^2 / (2σ^2) } = 平均から離れるほど小さくなる部分
つまり、正規分布の中心は μ です。
x = μ
のとき、最も値が大きくなります。
平均から離れると、
(x - μ)^2
が大きくなるので、密度は小さくなります。
- 標準正規分布:Z値に変換する
8.1 何をする操作か
正規分布は、平均 μ と標準偏差 σ によって形が変わります。
そこで、どんな正規分布でも、
平均0
分散1
標準偏差1
の正規分布に変換します。
これを標準化といいます。
標準化の式は、
Z = (X - μ) / σ
です。
このとき、
Z ~ N(0, 1)
になります。
8.2 式の意味
X - μ
は、平均からどれだけ離れているかです。
(X - μ) / σ
は、標準偏差何個分だけ離れているかです。
つまり Z 値は、
平均から何標準偏差分ズレているか
を表します。
8.3 ポケモン例
平均ダメージが120、標準偏差が10の技があるとします。
μ = 120
σ = 10
実際に135ダメージが出たとします。
X = 135
このとき、
Z = (135 - 120) / 10
= 15 / 10
= 1.5
です。
意味は、
135ダメージは、平均より1.5標準偏差だけ高い
です。
逆に、100ダメージなら、
Z = (100 - 120) / 10
= -20 / 10
= -2
です。
意味は、
100ダメージは、平均より2標準偏差だけ低い
です。
- 指数分布:次にイベントが起こるまでの待ち時間
9.1 何を表す分布か
指数分布は、
次にイベントが起きるまでの待ち時間
を表します。
ポケモンでは、ターン数は本来離散的ですが、連続近似として考えると使えます。
次に急所が出るまでの時間
次に追加効果が出るまでの時間
次に相手が技を外すまでの時間
です。
発生率を λ とすると、
X ~ Exponential(λ)
です。
9.2 密度関数
指数分布の確率密度関数は、
f(x) = λe^(-λx) (x >= 0)
です。
記号の意味は、
λ = 発生率
x = 待ち時間
です。
9.3 式の意味
e^(-λx)
があるので、x が大きくなるほど値は小さくなります。
つまり、
すぐ起こる確率は比較的大きい
長く待つ確率はだんだん小さくなる
という形です。
9.4 期待値と分散
指数分布では、
E[X] = 1 / λ
Var(X) = 1 / λ^2
です。
たとえば、平均して5ターンに1回イベントが起きるなら、
λ = 1 / 5 = 0.2
です。
このとき、
E[X] = 1 / 0.2
= 5
です。
意味は、
次のイベントまで平均5ターン
です。
- ガンマ分布:r回目のイベントまでの待ち時間
10.1 何を表す分布か
ガンマ分布は、指数分布の発展形です。
指数分布
→ 1回目のイベントまでの待ち時間
ガンマ分布
→ r回目のイベントまでの待ち時間
ポケモンでいうと、
3回目の急所が出るまでの時間
2回目の追加効果が出るまでの時間
5回目の命中までの時間
です。
10.2 書き方
ガンマ分布は、形状母数 α、尺度母数 θ を使って、
X ~ Gamma(α, θ)
と書きます。
別の流儀では、率母数 β を使って、
X ~ Gamma(α, β)
と書くこともあります。
ここでは、尺度母数 θ で説明します。
α = 何回目のイベントか
θ = 1回あたりの待ち時間スケール
10.3 期待値と分散
尺度母数 θ を使う場合、
E[X] = αθ
Var(X) = αθ^2
です。
たとえば、平均5ターンに1回急所が出るとして、3回目の急所までの時間を考えるなら、
α = 3
θ = 5
なので、
E[X] = 3 × 5
= 15
です。
意味は、
3回目の急所までは平均15ターン
です。
- カイ二乗分布:理論値と観測値のズレを見る
11.1 何を表す分布か
カイ二乗分布は、統計検定準1級で非常に重要です。
主な用途は、
適合度検定
独立性の検定
母分散の推定
です。
ポケモンでいうと、
ストーンエッジの命中率は本当に80%か
急所率は理論通りか
状態異常の発生率は理論通りか
を調べる場面です。
11.2 カイ二乗統計量
適合度検定で使う基本式は、
χ^2 = Σ (観測度数 - 期待度数)^2 / 期待度数
です。
記号の意味は、
観測度数 = 実際に観測された回数
期待度数 = 理論上期待される回数
Σ = 全カテゴリについて足し合わせる
11.3 ポケモン例
ストーンエッジの命中率を80%とします。
100回撃ったら、理論上は、
命中:80回
外れ:20回
が期待されます。
しかし、実測では、
命中:72回
外れ:28回
だったとします。
このとき、
χ^2
= (72 - 80)^2 / 80 + (28 - 20)^2 / 20
です。
計算すると、
χ^2
= (-8)^2 / 80 + 8^2 / 20
= 64 / 80 + 64 / 20
= 0.8 + 3.2
= 4.0
です。
11.4 式の意味
(観測度数 - 期待度数)^2
は、ズレの大きさです。
2乗しているので、プラス方向のズレもマイナス方向のズレも正の値になります。
/ 期待度数
で割るのは、期待度数が大きいカテゴリと小さいカテゴリを公平に比較するためです。
たとえば、80回期待されるところで8回ズレるのと、20回期待されるところで8回ズレるのでは、後者のほうが相対的に大きなズレです。
だから、
64 / 80 = 0.8
64 / 20 = 3.2
となり、外れ回数側のズレのほうが大きく評価されます。
- t分布:少ないデータで平均を推定する
12.1 何を表す分布か
t分布は、標本数が少なく、母分散がわからないときに平均を扱う分布です。
ポケモンでいうと、
技Aの平均ダメージを少ない試行で推定する
技Aと技Bの平均ダメージに差があるか調べる
5回しか試していないダメージ平均を評価する
場面です。
12.2 t統計量
基本形は、
T = (標本平均 - 母平均) / (標本標準偏差 / √n)
です。
記号の意味は、
標本平均 = 実際に取ったデータの平均
母平均 = 理論上または仮説上の平均
標本標準偏差 = データから計算した標準偏差
n = データ数
√n = 標本数による平均の安定化
12.3 式の意味
分子は、
標本平均 - 母平均
です。
これは、
観測された平均が、仮説の平均からどれくらいズレたか
を表します。
分母は、
標本標準偏差 / √n
です。
これは、
標本平均そのもののばらつき
です。
つまり t 値は、
平均のズレが、標本平均のばらつき何個分か
を表します。
12.4 ポケモン例
ある技の理論平均ダメージを120とします。
実際に5回試して、
標本平均 = 128
標本標準偏差 = 10
n = 5
だったとします。
このとき、
T = (128 - 120) / (10 / √5)
です。
計算すると、
T = 8 / (10 / 2.236)
= 8 / 4.472
≒ 1.79
です。
意味は、
観測平均128は、理論平均120から見て、標本平均のばらつき約1.79個分だけ高い
です。
- F分布:2つの分散を比較する
13.1 何を表す分布か
F分布は、2つの分散の比を扱います。
ポケモンでいうと、
技Aと技Bのダメージのばらつきに差があるか
命中不安技と安定技の結果の不安定さを比べる
複数グループの平均差を分散分析で調べる
場面です。
13.2 F統計量
基本形は、
F = S1^2 / S2^2
です。
記号の意味は、
S1^2 = 1つ目の標本分散
S2^2 = 2つ目の標本分散
です。
13.3 式の意味
F値は、
片方のばらつきが、もう片方の何倍か
を表します。
たとえば、
S1^2 = 100
S2^2 = 25
なら、
F = 100 / 25
= 4
です。
意味は、
技Aのダメージ分散は、技Bの4倍
です。
13.4 ポケモン例
技Aのダメージデータが、
100, 140, 90, 150, 120
のように大きくばらつくとします。
技Bのダメージデータが、
118, 121, 120, 119, 122
のように安定しているとします。
このとき、
技Aの分散 > 技Bの分散
なので、
F = 技Aの分散 / 技Bの分散
は大きくなります。
F分布は、この比が偶然として自然か、それとも大きすぎるかを判断するために使います。
- ベータ分布:命中率 p そのものを推定する
14.1 何を表す分布か
ベータ分布は、0から1の間の確率を表す分布です。
ポケモンでいうと、
未知の技の命中率 p
追加効果の発生率 p
急所率 p
ひるみ確率 p
そのものを推定するときに使えます。
確率 p は、
0 <= p <= 1
なので、ベータ分布と相性がよいです。
14.2 書き方
ベータ分布は、
p ~ Beta(α, β)
と書きます。
記号の意味は、
α = 成功側の強さ
β = 失敗側の強さ
です。
14.3 ベイズ更新での使い方
最初に何も知らないとき、
p ~ Beta(1, 1)
とします。
これは、0から1まで一様にあり得る、という意味です。
その後、技を20回使って、
命中:16回
外れ:4回
だったとします。
このとき、更新後は、
p ~ Beta(1 + 16, 1 + 4)
つまり、
p ~ Beta(17, 5)
です。
14.4 式の意味
α = 17
β = 5
なので、成功側にかなり寄っています。
ベータ分布の平均は、
E[p] = α / (α + β)
です。
したがって、
E[p] = 17 / (17 + 5)
= 17 / 22
≒ 0.773
です。
意味は、
このデータから見ると、命中率はだいたい77.3%くらいと推定される
です。
単純な観測割合は、
16 / 20 = 0.8
ですが、ベータ分布では事前分布も入るので、
17 / 22 ≒ 0.773
になります。
- 連続一様分布:ダメージ乱数を連続近似する
15.1 何を表す分布か
連続一様分布は、ある区間の中の値がすべて同じように起こる分布です。
ポケモンのダメージ乱数を本来は離散ではなく、
0.85 から 1.00 までの連続値
として近似すると、
X ~ Uniform(0.85, 1.00)
です。
15.2 密度関数
連続一様分布の密度関数は、
f(x) = 1 / (b - a) (a <= x <= b)
です。
ここで、
a = 最小値
b = 最大値
です。
ダメージ乱数なら、
a = 0.85
b = 1.00
なので、
f(x) = 1 / (1.00 - 0.85)
= 1 / 0.15
です。
15.3 期待値と分散
連続一様分布では、
E[X] = (a + b) / 2
Var(X) = (b - a)^2 / 12
です。
ダメージ乱数なら、
E[X] = (0.85 + 1.00) / 2
= 0.925
です。
分散は、
Var(X) = (1.00 - 0.85)^2 / 12
= 0.15^2 / 12
= 0.0225 / 12
= 0.001875
です。
- 統計検定準1級向けの重要対応表
分布名 種類 ポケモンでの対応
ベルヌーイ分布 離散 技が1回当たるか外れるか
二項分布 離散 n回中何回当たるか
幾何分布 離散 初めて当たるまで何回か
負の二項分布 離散 r回成功するまで何回か
ポアソン分布 離散 急所のような低確率イベントが何回起きるか
離散一様分布 離散 ダメージ乱数 85, 86, ..., 100
連続一様分布 連続 ダメージ乱数を0.85〜1.00で連続近似
正規分布 連続 平均ダメージや標本平均のばらつき
標準正規分布 連続 Z値に変換して比較する
指数分布 連続 次のイベントまでの待ち時間
ガンマ分布 連続 r回目のイベントまでの待ち時間
カイ二乗分布 連続 観測度数と期待度数のズレ
t分布 連続 少ないデータで平均を評価する
F分布 連続 2つの分散を比較する
ベータ分布 連続 命中率 p そのものを推定する
- 式で覚えるまとめ
ベルヌーイ分布
X ~ Bernoulli(p)
P(X = 1) = p
P(X = 0) = 1 - p
E[X] = p
Var(X) = p(1 - p)
二項分布
X ~ Binomial(n, p)
P(X = k) = nCk p^k (1 - p)^(n-k)
E[X] = np
Var(X) = np(1 - p)
幾何分布
X ~ Geometric(p)
P(X = k) = (1 - p)^(k - 1)p
E[X] = 1 / p
Var(X) = (1 - p) / p^2
負の二項分布
X ~ NegativeBinomial(r, p)
P(X = k) = C(k - 1, r - 1)p^r(1 - p)^(k-r)
E[X] = r / p
ポアソン分布
X ~ Poisson(λ)
P(X = k) = e^(-λ)λ^k / k!
E[X] = λ
Var(X) = λ
正規分布
X ~ N(μ, σ^2)
f(x) = 1 / √(2πσ^2) × exp{ - (x - μ)^2 / (2σ^2) }
標準化
Z = (X - μ) / σ
Z ~ N(0, 1)
指数分布
X ~ Exponential(λ)
f(x) = λe^(-λx)
E[X] = 1 / λ
Var(X) = 1 / λ^2
カイ二乗統計量
χ^2 = Σ (観測度数 - 期待度数)^2 / 期待度数
t統計量
T = (標本平均 - 母平均) / (標本標準偏差 / √n)
F統計量
F = S1^2 / S2^2
ベータ分布
p ~ Beta(α, β)
E[p] = α / (α + β)
- 最低限覚えたいこと
1回の成功失敗
→ ベルヌーイ分布
n回中の成功回数
→ 二項分布
初めて成功するまで
→ 幾何分布
r回成功するまで
→ 負の二項分布
まれなイベントの回数
→ ポアソン分布
平均まわりのばらつき
→ 正規分布
標準偏差何個分か
→ 標準正規分布
次のイベントまでの待ち時間
→ 指数分布
r回目のイベントまでの待ち時間
→ ガンマ分布
理論値と観測値のズレ
→ カイ二乗分布
少ない標本で平均を見る
→ t分布
分散の比を見る
→ F分布
確率pそのものを見る
→ ベータ分布
- まとめ
統計検定準1級の確率分布は、ポケモンバトルに対応させると次のように整理できます。
当たるか外れるか
→ ベルヌーイ分布
何回当たるか
→ 二項分布
初めて当たるまで何回か
→ 幾何分布
何回成功するまで何回か
→ 負の二項分布
急所のような低確率イベントが何回起きるか
→ ポアソン分布
ダメージ乱数
→ 一様分布
平均ダメージ
→ 正規分布
標本平均の評価
→ t分布
ダメージのばらつき比較
→ F分布
理論命中率と実測命中率のズレ
→ カイ二乗分布
命中率pの推定
→ ベータ分布
重要なのは、分布名を暗記することではなく、
何を数えているのか
何を待っているのか
何を比較しているのか
何を推定しているのか
を判断することです。
統計検定準1級では、問題文を読んだときに、
これは成功回数だから二項分布
これは初成功までだから幾何分布
これは低確率イベントの回数だからポアソン分布
これは平均の比較だからt分布
これは分散の比較だからF分布
これは度数のズレだからカイ二乗分布
これは確率pの推定だからベータ分布
と変換できるようにすると、かなり解きやすくなります。