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OSPF技術メモ

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OSPF 技術メモ(Cisco IOS / IOS XE 想定)

対象は主にCisco IOS / IOS XEのOSPFv2(IPv4)とする。
Cisco IOS XR、NX-OS、ASAではCLI構文や機能差分がある。
router ospf 11 はOSPFプロセスIDであり、ルータ内でのみ有効なローカル識別子である。隣接ルータ間で一致させる必要はない。


1. OSPF概要

OSPF(Open Shortest Path First)は、AS内部で利用するリンクステート型IGPである。

各ルータは接続リンクの状態をLSAとして通知し、エリア内でLSDB(Link-State Database)を同期する。各ルータはLSDBを基にSPF(Dijkstra)アルゴリズムを実行し、最短コストの経路をルーティングテーブルへ登録する。

  • IPv4:OSPFv2
  • IPv6:OSPFv3
  • IPプロトコル番号:89
  • TCP/UDPポートは使用しない
  • メトリック:Cost
  • 最小Costの経路を選択
  • 同一Costの複数経路はECMPとして利用可能
  • ルータID:32ビット値。IPv4アドレス形式で表記する

2. 基本設定例

Cisco IOS / IOS XEでは、OSPFをインターフェース単位で有効化する方法と、networkコマンドで対象インターフェースを指定する方法がある。

現在は、設定対象が明確になるインターフェース単位の設定が推奨されることが多い。

hostname R1

interface Loopback0
 ip address 10.255.0.1 255.255.255.255
 ip ospf 1 area 0

interface GigabitEthernet0/0
 description To-R2
 ip address 10.0.12.1 255.255.255.252
 ip ospf 1 area 0
 ip ospf network point-to-point

router ospf 1
 router-id 10.255.0.1
 passive-interface default
 no passive-interface GigabitEthernet0/0

上記のポイントは以下の通り。

  • router-id は明示設定する
  • Router IDには通常、安定しているLoopbackアドレスを使用する
  • passive-interface default で原則全インターフェースをパッシブにする
  • 隣接ルータと接続するインターフェースだけ no passive-interface で有効化する
  • ルータ間のEthernet接続をポイントツーポイントとして扱う場合、ip ospf network point-to-point を設定する

Router ID変更後は、OSPFプロセス再起動や隣接関係の再確立が必要になる。

clear ip ospf process

このコマンドはOSPF隣接関係を切断するため、運用中の実行には注意が必要である。


3. OSPFの基本動作

OSPFの主な動作は以下の通り。

  1. Helloパケットを送信する
  2. 隣接ルータを発見する
  3. Helloパケットを相互に認識してネイバー関係を作成する
  4. DBD、LSR、LSU、LSAckを使用してLSDBを同期する
  5. SPF計算を実行する
  6. 最短経路をルーティングテーブルへ登録する
  7. リンク障害や経路変更時はLSAを更新し、再計算する

OSPFパケットは以下の5種類である。

パケット種別 用途
Hello 隣接ルータの発見・維持、DR/BDR選出
DBD LSDB内のLSA要約情報を交換
LSR 不足しているLSAを要求
LSU LSAを送信・更新
LSAck LSU / LSAの受信確認

4. Hello、Deadタイマー、マルチキャストアドレス

4.1 Ciscoのデフォルトタイマー

代表的なOSPFネットワークタイプにおけるCisco IOS / IOS XEの一般的なデフォルト値は以下の通り。

ネットワークタイプ Hello Interval Dead Interval DR/BDR
Broadcast 10秒 40秒 あり
Point-to-Point 10秒 40秒 なし
NBMA 30秒 120秒 あり
Point-to-Multipoint 30秒 120秒 なし

Dead Intervalは、Helloを受信できなかった相手をダウンとみなすまでの時間である。一般的なデフォルトではHello Intervalの4倍である。

Hello / Deadタイマーは隣接ルータ間で一致している必要がある。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf hello-interval 5
 ip ospf dead-interval 20

両端ルータで同じ値を設定する。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf hello-interval 5
 ip ospf dead-interval 20

4.2 ネイバー関係形成時に使用するマルチキャストアドレス

OSPFv2では、主に以下のIPv4マルチキャストアドレスを使用する。

宛先アドレス 名称 用途
224.0.0.5 AllSPFRouters OSPFルータ全体宛て
224.0.0.6 AllDRouters DRおよびBDR宛て

BroadcastおよびPoint-to-Pointネットワークでは、OSPFルータは通常、Helloパケットを224.0.0.5へ送信する。

ネイバー関係形成までの流れは以下の通り。

  1. R1がHelloパケットを224.0.0.5へ送信する
  2. R2がHelloパケットを受信し、R1をネイバー候補として認識する
  3. R2のHelloパケット内にR1のRouter IDが記載される
  4. R1がR2のHello内で自分のRouter IDを確認する
  5. 双方向通信が確認され、2-Way状態になる
  6. Point-to-Point環境ではLSDB同期を開始し、Full状態へ遷移する
  7. Broadcast環境ではDR/BDR選出後、DR/BDRとの間でFull状態になる

224.0.0.6は主にBroadcast / NBMA環境において、DROtherルータがDRおよびBDRへLSUを送信する場合などに使用される。

NBMA環境ではマルチキャストを使用できない、または使用しないことがある。その場合、ネイバーを明示的に指定してユニキャスト通信を行う。

interface Serial0/0
 ip address 10.0.12.1 255.255.255.0
 ip ospf 1 area 0
 ip ospf network non-broadcast

router ospf 1
 neighbor 10.0.12.2
 neighbor 10.0.12.3

OSPFv3では以下のIPv6リンクローカルスコープマルチキャストを使用する。

宛先アドレス 名称
FF02::5 AllSPFRouters
FF02::6 AllDRouters

5. ネイバー状態

OSPFのネイバー状態は以下の通り。

状態 内容
Down Helloを受信していない状態
Init 相手のHelloを受信した状態
2-Way 双方向にHelloを確認した状態
ExStart DBD交換の主従関係を決定する状態
Exchange DBDでLSA要約情報を交換する状態
Loading 不足LSAをLSR / LSUで取得する状態
Full LSDB同期完了状態

確認コマンドは以下。

show ip ospf neighbor

例:

R1# show ip ospf neighbor

Neighbor ID     Pri   State           Dead Time   Address         Interface
10.255.0.2        1   FULL/ -        00:00:35    10.0.12.2       GigabitEthernet0/0

BroadcastネットワークでDROther同士が2-Wayとなるのは正常である。

Neighbor ID     Pri   State           Dead Time   Address         Interface
10.255.0.2        1   FULL/DR         00:00:33   10.0.12.2       GigabitEthernet0/0
10.255.0.3        1   2WAY/DROTHER    00:00:36   10.0.12.3       GigabitEthernet0/0

6. OSPFネットワークタイプ

ネットワークタイプ DR/BDR 主な用途
Broadcast あり Ethernet LAN
Point-to-Point なし ルータ間接続、トンネル、専用線
NBMA あり Frame Relay、DMVPNの一部構成など
Point-to-Multipoint なし ハブ&スポーク環境

Broadcast

Ethernetインターフェースでは通常、Broadcastがデフォルトとなる。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf network broadcast

Point-to-Point

ルータ間のEthernet直結などでDR/BDR選出を不要にしたい場合に使用する。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf network point-to-point

NBMA

interface Serial0/0
 ip ospf network non-broadcast

NBMAでは、必要に応じてネイバーを手動定義する。

router ospf 1
 neighbor 10.0.12.2

Point-to-Multipoint

interface Tunnel0
 ip ospf network point-to-multipoint

ネットワークタイプ不一致は、隣接関係の不成立や経路不安定化の原因になる。


7. DR / BDR

BroadcastおよびNBMAネットワークでは、LSDB同期のメッシュ化を抑制するためにDRとBDRを選出する。

役割 説明
DR マルチアクセスセグメント上のLSA同期の中心
BDR DR障害時のバックアップ
DROther DRでもBDRでもないルータ

DR / BDR選出基準は以下の通り。

  1. OSPF Interface Priorityが大きいルータ
  2. Priorityが同じ場合、Router IDが大きいルータ

Priorityのデフォルトは1である。Priority 0のルータはDR / BDRにならない。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf priority 100

DR / BDR選出対象から除外する例。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf priority 0

DR / BDR選出は通常、非プリエンプティブである。後からPriorityの高いルータが起動しても、既存のDRが直ちに交代するわけではない。


8. Cost

8.1 Costの概要

OSPFはCostが小さい経路を優先する。宛先までの総Costは、経由するリンクのCostを加算して算出する。

Cisco IOS / IOS XEでは、OSPF Costは通常以下の考え方で自動計算される。

Cost = 参照帯域幅 ÷ インターフェース帯域幅

小数点以下は切り捨てられ、最小値は1となる。

CiscoのOSPF参照帯域幅のデフォルトは、一般に100Mbpsである。

router ospf 1
 auto-cost reference-bandwidth 100

auto-cost reference-bandwidth の単位はMbpsである。


8.2 デフォルト参照帯域幅100Mbps時のCost

リンク速度 自動Cost
10Mbps 10
100Mbps 1
1Gbps 1
10Gbps 1
25Gbps 1
40Gbps 1
100Gbps 1

デフォルトの100Mbps基準では、FastEthernet以上がすべてCost 1になる。そのため、Gigabit Ethernet、10Gigabit Ethernet、100Gigabit Ethernetを区別できない。


8.3 100Gbpsを基準としたCost例

100Gbpsまでの回線速度を区別したい場合、全OSPFルータで参照帯域幅を100000Mbpsに統一する。

router ospf 1
 auto-cost reference-bandwidth 100000

この場合のCost例は以下の通り。

リンク速度 Cost
10Mbps 10000
100Mbps 1000
1Gbps 100
10Gbps 10
25Gbps 4
40Gbps 2
100Gbps 1

参照帯域幅の設定は、OSPFドメイン内のすべてのルータで統一する必要がある。不統一の場合、ルータごとに異なるSPF計算結果となり、意図しない経路や非対称経路が発生する可能性がある。


8.4 bandwidthと実リンク速度

Ciscoでは、bandwidthコマンドがOSPFの自動Cost計算に影響する。

interface GigabitEthernet0/0
 bandwidth 100000

上記の単位はKbpsであり、100000は100Mbpsを意味する。

ただし、bandwidthコマンドは通常、物理インターフェースの実際のリンク速度を変更しない。OSPF、QoS、EIGRPなどの計算用帯域値を変更する設定である。

実際のリンクアップ速度は以下で確認する。

show interfaces GigabitEthernet0/0

設定帯域幅と実リンク速度を意図せず乖離させると、OSPF Cost計算が実回線能力と一致しなくなる。


8.5 ip ospf costによる明示設定

インターフェース単位でCostを直接指定できる。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf cost 10

CLIヘルプの例は以下。

R1(config-if)# ip ospf cost ?
  <1-65535>  Cost

ip ospf costを設定した場合、自動計算されたCostより明示設定値が優先される。

主回線を優先し、バックアップ回線を待機系にする例。

interface GigabitEthernet0/0
 description Primary-Link
 ip ospf cost 10

interface GigabitEthernet0/1
 description Backup-Link
 ip ospf cost 100

ECMPを意図的に利用する例。

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf cost 10

interface GigabitEthernet0/1
 ip ospf cost 10

確認コマンド:

show ip ospf interface GigabitEthernet0/0

出力例:

Process ID 1, Router ID 10.255.0.1, Network Type POINT_TO_POINT, Cost: 10

9. LSAタイプとCostの扱い

LSAはOSPFのトポロジー情報であり、LSDBに保存される。OSPFv2で実運用上重要なLSAは以下の通り。

Type LSA名 主な生成者 概要
1 Router LSA 各ルータ ルータ自身のリンク情報
2 Network LSA DR マルチアクセスネットワーク情報
3 Summary LSA ABR エリア間ネットワーク情報
4 ASBR Summary LSA ABR ASBRへの到達性
5 AS External LSA ASBR OSPF外部経路
7 NSSA External LSA NSSA内ASBR NSSA内の外部経路

LSA Type 6はMOSPF用であり、通常のユニキャストIPルーティングでは利用しない。


9.1 Type 1 Router LSAとCost

Type 1 LSAには、ルータ自身が接続する各リンクのCostが含まれる。

ルータから宛先までのIntra-Area経路では、経由リンクのCostが加算される。

例:

R1 --- Cost 10 --- R2 --- Cost 20 --- R3

R1からR3までの総Costは以下となる。

10 + 20 = 30

インターフェースCostの設定例:

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf cost 10

interface GigabitEthernet0/1
 ip ospf cost 20

9.2 Type 2 Network LSAとCost

Type 2 LSAはDRが生成する。Ethernetなどのマルチアクセスネットワークを、SPF計算上の擬似ノードとして表現する。

Type 2 LSA自体が新たなリンクCostを加算するものではない。ルータからネットワーク擬似ノードまでのCostは、各ルータのType 1 Router LSA内にあるインターフェースCostが使用される。

つまり、Type 2 LSAは「どのルータが同じセグメントに接続しているか」を表すための情報であり、ルータ間のCostは主にType 1のインターフェースCostによって決まる。


9.3 Type 3 Summary LSAとCost

Type 3 LSAはABRが生成するエリア間経路情報である。

Type 3は、広告元ABRから宛先ネットワークまでのCostを持つ。受信側ルータは、広告元ABRまでの自分自身の内部Costを加算して最終Costを決定する。

R1 --- Cost 10 --- ABR1 --- Area 10内の宛先まで Cost 20

ABR1がType 3 LSAで広告するメトリックが20の場合、R1から見た宛先Costは以下となる。

R1からABR1までのCost 10 + Type 3のメトリック 20 = 30

ABRでの経路集約設定例:

router ospf 1
 area 10 range 10.10.0.0 255.255.0.0

9.4 Type 4 ASBR Summary LSAとCost

Type 4 LSAは、外部経路をOSPFへ注入するASBRへの到達性を他エリアへ通知するためのLSAである。

Type 4 LSAのメトリックは、ABRからASBRまでのCostを表す。外部経路を利用するルータは、ASBRへ到達する内部Costを考慮して、最終的な外部経路の到達性を判断する。

Type 4そのものは外部ネットワークを表すLSAではなく、外部経路の出口であるASBRを探すための情報である。


9.5 Type 5 External LSAとE1 / E2

Type 5 LSAは、Static、BGP、RIPなどのOSPF外部経路をASBRが広告するために使用する。

外部経路にはE1とE2がある。

種別 計算方法 特徴
E1 外部メトリック + ASBRまでの内部OSPF Cost 近いASBRを選びやすい
E2 外部メトリックを主に比較 ASBRまでの内部Costは主比較対象ではない

E1の例:

R1からASBRまでのCost:20
ASBRが広告する外部メトリック:10

総Cost:20 + 10 = 30

E2の例:

R1からASBRまでのCost:20
ASBRが広告する外部メトリック:10

OSPF外部メトリックとしては主に10で比較する

E2では、複数の経路の外部メトリックが同値だった場合に、ASBRまでの内部Costが比較材料となる。

Static routeをE1としてOSPFへ再配送する例:

ip route 192.0.2.0 255.255.255.0 Null0

router ospf 1
 redistribute static subnets metric 20 metric-type 1

Static routeをE2としてOSPFへ再配送する例:

ip route 192.0.2.0 255.255.255.0 Null0

router ospf 1
 redistribute static subnets metric 20 metric-type 2

Cisco IOSでは、再配送時のデフォルトは一般にE2である。意図を明確にするため、metric-type 1またはmetric-type 2を明示設定することが望ましい。


9.6 Type 7 NSSA External LSAとN1 / N2

Type 7 LSAはNSSA内部で外部経路を広告するために利用する。

NSSA内ではType 5 LSAを使用できないため、ASBRは外部経路をType 7として広告する。NSSAに接続するABRが、必要に応じてType 7をType 5へ変換し、他エリアへ広告する。

Type 7外部経路にもN1 / N2がある。

種別 E1 / E2との対応 Costの扱い
N1 E1相当 外部メトリックとASBRまでの内部Costを加算
N2 E2相当 外部メトリックを主に比較

NSSA内でStatic routeを再配送する例:

router ospf 1
 area 20 nssa
 redistribute static subnets metric 20 metric-type 1

この場合、NSSA内ではType 7 / N1として広告される。


10. エリア設計

OSPFではネットワークをAreaに分割する。エリア分割の主目的は以下である。

  • LSAフラッディング範囲の削減
  • SPF計算負荷の削減
  • 障害影響範囲の局所化
  • ルーティング情報の集約

Area 0はOSPFバックボーンエリアである。非バックボーンエリア間の通信は、原則としてArea 0を経由する。

役割 説明
Internal Router 単一エリアにのみ属するルータ
Backbone Router Area 0に接続するルータ
ABR 複数エリアに接続するルータ
ASBR OSPF外部経路を注入するルータ

ABRの設定例:

interface GigabitEthernet0/0
 description Area-0
 ip address 10.0.12.1 255.255.255.252
 ip ospf 1 area 0

interface GigabitEthernet0/1
 description Area-10
 ip address 10.0.23.1 255.255.255.252
 ip ospf 1 area 10

router ospf 1
 router-id 10.255.0.1

11. Stub Area、Totally Stubby Area、NSSA

エリア種別 Type 5 Type 7 外部経路再配送
Normal Area 受信する 使用しない 可能
Stub Area 受信しない 使用しない 不可
Totally Stubby Area 受信しない 使用しない 不可
NSSA 受信しない 使用する 可能
Totally NSSA 受信しない 使用する 可能

Stub Area

Area 10内の全OSPFルータで設定する。

router ospf 1
 area 10 stub

ABRでは外部経路の代わりにデフォルトルートを広告する。

デフォルトCostを変更する例:

router ospf 1
 area 10 default-cost 100

Totally Stubby Area

Cisco拡張機能である。ABRでのみno-summaryを追加する。

ABR:

router ospf 1
 area 10 stub no-summary

Area 10内部ルータ:

router ospf 1
 area 10 stub

NSSA

Area 20内部ルータおよびABRで設定する。

router ospf 1
 area 20 nssa

Totally NSSAのABR設定例:

router ospf 1
 area 20 nssa no-summary

12. 経路種別とAD

12.1 OSPF内の経路種別

Ciscoのルーティングテーブルでは、OSPF経路は以下のように表示される。

表示 種別
O Intra-Area Route
O IA Inter-Area Route
O E1 External Type 1
O E2 External Type 2
O N1 NSSA External Type 1
O N2 NSSA External Type 2

確認コマンド:

show ip route ospf

例:

O        10.10.1.0/24 [110/20] via 10.0.12.2, 00:01:23, GigabitEthernet0/0
O IA     10.20.1.0/24 [110/30] via 10.0.12.2, 00:01:23, GigabitEthernet0/0
O E1     192.0.2.0/24 [110/50] via 10.0.12.2, 00:01:23, GigabitEthernet0/0
O E2     198.51.100.0/24 [110/20] via 10.0.12.2, 00:01:23, GigabitEthernet0/0

[110/20]の意味は以下の通り。

[Administrative Distance / Metric]

12.2 Administrative Distance(AD)

ADは、異なるルーティング情報源から同一宛先への経路を学習した場合に、どの情報源を優先するかを決めるCiscoローカルの優先度である。

値が小さいほど優先される。

代表的なCiscoデフォルトADは以下。

経路情報源 AD
Connected 0
Static 1
eBGP 20
EIGRP Internal 90
OSPF 110
IS-IS 115
RIP 120
EIGRP External 170
iBGP 200

たとえば、同一プレフィックスをStatic routeとOSPFの両方で学習している場合、AD 1のStatic routeが優先される。

Static:AD 1
OSPF:AD 110

→ Static routeがルーティングテーブルへ登録される

ADはOSPF LSAでネットワーク全体に広告される値ではない。各ルータがローカルで使用する経路選択パラメータである。

OSPFのADを変更する例:

router ospf 1
 distance ospf intra-area 110
 distance ospf inter-area 110
 distance ospf external 150

この例では、OSPF外部経路だけADを150へ変更している。

通常、ADの変更は慎重に行う。安易な変更は、Static、BGP、OSPFなどの間で意図しない経路選択を起こす原因になる。


13. 再配送

OSPFには以下の経路を再配送できる。

  • Static route
  • Connected route
  • BGP
  • RIP
  • EIGRP
  • IS-IS
  • 別OSPFプロセス

Static route再配送例:

ip route 192.0.2.0 255.255.255.0 Null0

router ospf 1
 redistribute static subnets metric 20 metric-type 1

Connected route再配送例:

router ospf 1
 redistribute connected subnets metric 20 metric-type 1

BGP再配送例:

router ospf 1
 redistribute bgp 65000 subnets metric 50 metric-type 1

再配送では、以下を必ず検討する。

  • 再配送対象プレフィックスのフィルタリング
  • E1 / E2の選択
  • メトリックの明示設定
  • タグによる再配送ループ防止
  • 集約の実施
  • デフォルトルートの扱い

タグ付き再配送の例:

route-map STATIC-TO-OSPF permit 10
 set tag 110

router ospf 1
 redistribute static subnets metric 20 metric-type 1 route-map STATIC-TO-OSPF

14. デフォルトルート広告

既存のデフォルトルートがルーティングテーブルに存在する場合、以下でOSPFへデフォルトルートを広告できる。

router ospf 1
 default-information originate

強制的に広告する例:

router ospf 1
 default-information originate always

E1として広告する例:

router ospf 1
 default-information originate metric 10 metric-type 1

default-information originateで通常エリアへ広告されるデフォルトルートは、AS External LSA Type 5となる。NSSAではType 7として扱われる。

Stub Areaでは、ABRがType 3のデフォルト経路を広告する。


15. OSPFv2認証

OSPFv2では、隣接ルータ間で認証を設定できる。

MD5認証設定例:

interface GigabitEthernet0/0
 ip ospf authentication message-digest
 ip ospf message-digest-key 1 md5 OSPF-SECRET

エリア単位で認証を必須化する例:

router ospf 1
 area 0 authentication message-digest

認証設定は隣接ルータ間で以下を一致させる必要がある。

  • 認証方式
  • Key ID
  • 認証鍵
  • 対象インターフェースまたは対象エリア

MD5は古い方式であり、現在の利用可否やより強い認証方式への対応は、Cisco IOS / IOS XEのバージョン、機種、セキュリティポリシーに依存する。実装が対応する場合は、キーチェーンおよびより強い暗号アルゴリズムの利用を検討する。


16. OSPFv3基本設定例

OSPFv3はIPv6用OSPFである。OSPFv3の隣接関係は主にIPv6リンクローカルアドレスを用いて形成される。

ipv6 unicast-routing

interface Loopback0
 ipv6 address 2001:db8:255::1/128
 ipv6 ospf 1 area 0

interface GigabitEthernet0/0
 ipv6 address 2001:db8:12::1/64
 ipv6 ospf 1 area 0
 ipv6 ospf network point-to-point

ipv6 router ospf 1
 router-id 10.255.0.1
 passive-interface default
 no passive-interface GigabitEthernet0/0

OSPFv3のCost設定例:

interface GigabitEthernet0/0
 ipv6 ospf cost 10

OSPFv3のHello / Deadタイマー設定例:

interface GigabitEthernet0/0
 ipv6 ospf hello-interval 5
 ipv6 ospf dead-interval 20

17. 障害時の確認コマンド

ネイバー状態

show ip ospf neighbor
show ip ospf neighbor detail

インターフェース設定、Cost、タイマー、ネットワークタイプ

show ip ospf interface
show ip ospf interface GigabitEthernet0/0

OSPFプロセス全体

show ip ospf
show ip protocols

LSDB確認

show ip ospf database
show ip ospf database router
show ip ospf database network
show ip ospf database summary
show ip ospf database external
show ip ospf database nssa-external

ルーティングテーブル

show ip route ospf
show ip route 10.10.10.0

OSPF関連のログ確認

show logging

必要に応じてデバッグを使用する。

debug ip ospf adj
debug ip ospf hello

ただし、debugはCPU負荷やログ出力を増加させるため、本番環境では慎重に使用する。


18. 代表的な障害原因

症状 主な原因
Downのまま OSPF未有効、L1/L2障害、IP設定誤り、パッシブ設定
Initで停止 一方向通信、マルチキャスト到達性問題、ACL、Hello片方向受信
2-Wayで停止 Broadcast環境のDROther同士なら正常
ExStart / Exchangeで停止 MTU不一致、Router ID重複、DBD交換異常
Fullにならない Area ID、認証、Hello/Dead、ネットワークタイプ不一致
Fullだが経路がない Area種別、LSAフィルタ、集約、再配送、AD、別プロトコル優先
意図しない経路を選択 Cost不統一、E1/E2設定、参照帯域幅不統一、Static route優先
隣接が断続的に切断 回線品質、CPU負荷、Hello/Dead設定、BFD設定、マルチキャスト問題

特にMTU不一致は、Hello通信および2-Way状態までは問題なく進行するが、ExStartまたはExchangeで停止する典型的な原因である。

MTU確認例:

show interfaces GigabitEthernet0/0 | include MTU
show ip ospf interface GigabitEthernet0/0

19. 設計・運用上の要点

  • Router IDはLoopbackアドレスなどの安定した値を明示設定する
  • Area 0を中心に階層化する
  • 大規模構成ではエリア分割と経路集約を実施する
  • OSPF参照帯域幅は全ルータで統一する
  • 高速リンクではauto-cost reference-bandwidthまたはip ospf costを設計する
  • ルータ間接続以外は原則passive-interfaceとする
  • OSPF認証を有効化する
  • 再配送は最小限とし、フィルタ、タグ、集約を使用する
  • E1 / E2を意図的に選択する
  • Stub / NSSAを活用して拠点エリアのLSDBを縮小する
  • Static route、BGP、OSPF間のADを理解して経路選択を設計する
  • BFDなどを使用する場合は、OSPF Hello / Deadとの役割分担を明確にする
  • clear ip ospf processは隣接関係を切断するため、保守時間帯などで実施する

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