0. はじめに — 「丸投げ」ではなく「個人アシスタント」として
大学の課題で生成 AI を使うことには、現在も多くの大学・科目で明確なルールがあります。多くの場合、次のような線引きが行われています。
- NG: 課題の最終成果物(レポート本文・コード・回答)を AI に生成させて、そのまま提出する
- NG: 出典を確認せずに AI が出した内容をコピーする
- OK(多くの場合): 自分の学習を補助する目的で、計画立案・要約・調べ物のとっかかり・コードレビュー的な質問に使う
本記事のテーマは、後者の 「個人アシスタント」としての使い方 です。私が実際に課題を進める際に行っていた Phase 1 — 課題の分解とプロジェクト立ち上げ の手順を紹介します。AI が肩代わりするのは「最終成果物の生成」ではなく、「最終成果物を自分で作るための足場づくり」 です。
注: 実際の運用に当たっては、必ず所属大学・科目のシラバスや AI 利用ポリシーを確認してください。本記事は一般的な「個人学習補助」用途を想定したものです。
1. 全体像 — Phase 1 〜 3 の流れ
私が課題に取り組むときは、大きく次の 3 フェーズに分けます。
- Phase 1: 課題の分解とプロジェクト立ち上げ(本記事)
- Phase 2: 各 TODO の実行(自分で考えて書く・解く・実装する)
- Phase 3: 推敲・提出・振り返り
本記事では、最も AI アシスタントの恩恵が大きい Phase 1 だけを丁寧に扱います。
Phase 1 のゴールは次の 3 つです。
- 課題を 25 分で終わる粒度の TODO に分解する(Divide and Conquer × Pomodoro)
- Google Calendar の空き時間を踏まえて、各 TODO に着手日時を割り当てる
- 作業環境(Overleaf プロジェクト・GitHub リポジトリ・ローカル環境)を整える
2. Step 1 — 課題を 25 分単位の TODO に分解する
なぜ「25 分」か
ポモドーロ・テクニックでおなじみの 25 分は、
- 着手のハードルが低い(「あと 25 分だけ」と思える)
- 集中が切れる前に終わる
- 進捗が可視化しやすい
という点で、課題のような「重く感じるタスク」と特に相性が良い単位です。
AI に分解を手伝ってもらうプロンプト例
課題の PDF やシラバスの該当部分をチャットに貼り付けたうえで、次のような依頼をします。
以下は私が受けている [科目名] の課題です。
- 課題全体を、私が一人で 25 分以内に完了できる粒度の TODO に分解してください。
- 各 TODO には、(a) 目的、(b) 期待される成果物、(c) 完了条件、を 1 行ずつ付けてください。
- 依存関係(順序)が明らかなものは、その順に並べてください。
- 解答そのものは書かないでください。私が自分で取り組むための足場が欲しいだけです。
ここで重要なのは、「解答そのものは書かないでください」と明示している点 です。AI が「親切のつもりで」途中まで解いてしまうのを防ぎます。
出力イメージ
たとえば、次のような TODO リストが返ってきます。
- [ ] (25min) 課題文を一通り読み、提出物の形式と評価基準を箇条書きにする
- [ ] (25min) 関連する講義ノートの該当章をスキャンし、使えそうな式・図に印を付ける
- [ ] (25min) レポートのアウトライン(節構成)を Overleaf に書き出す
- [ ] (25min) 問 1 を自力で解いてみて、詰まった箇所をメモする
- [ ] (25min) 問 1 の詰まった箇所だけ参考書/資料で確認し、清書する
- [ ] (25min) 問 2 ...
- [ ] (25min) 全体読み直しと typo チェック
このリストは Phase 1 の 「成果物」 であり、これがあると Phase 2 で迷子になりにくくなります。
3. Step 2 — Google Calendar を読ませてスケジュールに落とす
TODO 一覧ができても、実際にいつ着手するかが決まらないと進みません。ここで Google Calendar 連携の出番です。
やっていること
最近の LLM クライアントは、Model Context Protocol (MCP) などの仕組みを通じて Google Calendar の空き時間を読めるものが増えています。私はチャットに次のように依頼しています。
今日から [提出期限] までの私の Google Calendar を確認してください。
- 30 分以上連続して空いている時間帯を平日 8:00〜22:00 の範囲で列挙してください。
- 上で作成した TODO リスト(依存順)を、空き時間に 25 分 + 5 分休憩 の Pomodoro 単位で前から順に割り当ててください。
- 1 日あたり最大 4 ポモドーロまでにしてください(過密スケジュールを避けるため)。
- 既存の予定とは絶対に重複させないでください。
出力イメージ
- 5/28 (木) 09:00–09:25 課題文を一通り読む
- 5/28 (木) 09:30–09:55 関連する講義ノートをスキャン
- 5/28 (木) 13:30–13:55 アウトラインを Overleaf に書き出す
- 5/29 (金) 10:00–10:25 問 1 を自力で解く
- 5/29 (金) 10:30–10:55 問 1 の詰まり解消と清書
...
ここでも AI は 「いつ何をやるかの草案」を出すだけ で、最終的にカレンダーに登録するかどうかは自分で判断します。家族の予定や体調など、AI からは見えない要素が必ずあるためです。
効果
- 「課題が終わらない」という抽象的な不安が、「明日の 9 時から 25 分やる」という具体的な行動に変わる
- 提出期限から逆算した現実的な負荷感が見える(足りなければ TODO を削るか、早く始める判断ができる)
- 開始のハードルが下がる(カレンダー通知で勝手に始まる)
4. Step 3 — プロジェクト & GitHub リポジトリのセットアップ
TODO とスケジュールが決まったら、最後に作業環境を整えます。レポート系課題で私が定型的に行っている手順は次の通りです。
Phase 1: Project & Repository Setup(チェックリスト)
-
Overleaf プロジェクトを作成: 課題用に新規の LaTeX プロジェクトを初期化する
-
GitHub リポジトリを作成: 命名規則は
[CourseNumber]_[HW_Number](例:CS101_HW3) -
Overleaf と GitHub を連携: Overleaf の GitHub 連携機能で双方向同期を有効化する
-
ローカルにクローン:
cd ~ git clone [Your_Repository_URL] -
課題 PDF を配置: クローンしたディレクトリ直下に、課題本体の PDF を保存する
なぜこの順序か
- Overleaf を先に作る: 提出物が LaTeX レポートの場合、執筆環境を最初に確定させることで、TODO 実行時に「環境構築でつまずく」事故を防げます
-
GitHub を
[CourseNumber]_[HW_Number]で命名: 学期が進むとリポジトリが増えるので、命名規則を最初に決めておくと検索性が上がります(例:CS101_HW1,CS101_HW2,MATH204_HW1…) - Overleaf ↔ GitHub の連携: ブラウザで書いた内容がそのまま Git 履歴に残るため、「いつ何を書いたか」が後から辿れます。提出後の振り返りにも有用です
- ローカルクローン: 図表やデータの前処理を手元のツールで行うとき、ローカルにファイルがあるほうが圧倒的に楽です
- 課題 PDF を同じディレクトリに: 課題文と作業ファイルを 1 か所にまとめることで、コンテキストスイッチを最小化できます。AI チャットに課題文を貼るときも、ファイルを探さずに済みます
AI に手伝ってもらえる部分
-
.gitignoreの雛形提案(LaTeX 用 + OS ノイズ除去) - リポジトリの
README.md初版(課題名・提出期限・参考資料リンクなど) - Overleaf プロジェクトの章立てテンプレート
ここでも、AI は「決まりきった雛形を素早く出す」役で、内容そのものは自分で決めます。
5. まとめ
Phase 1 でやったことをまとめると次の通りです。
- 課題を 25 分単位の TODO に分解する(AI は「足場づくり」のみ、解答は書かせない)
- Google Calendar の空き時間を読ませて、各 TODO に 具体的な着手日時 を割り当てる
- Overleaf + GitHub + ローカル環境を チェックリストに従って一気に整える
ここまでで、Phase 2(実際に問題を解く・書く)に入る前の 「迷いどころ」がほぼ消えます。AI が肩代わりしているのはあくまで段取り部分で、課題そのものに対する思考は依然として自分の手元にあります。
参考リンク
- Overleaf: https://www.overleaf.com/
- Overleaf ↔ GitHub Integration: https://www.overleaf.com/learn/how-to/GitHub_Synchronization
- Model Context Protocol: https://modelcontextprotocol.io/
- Google Calendar: https://calendar.google.com/