目次
初めに
今回の主論は、自社のミッションである『期待を超える』を、SESという制約の中でいかに具体化し、体現するかです。
私はこれまで、営業からエンジニアへとキャリアを歩む中で、
「売上を立てた結果として価値が出たといえる」 のではなく、
「価値を提供した結果として売上がついてくる」 という考え方を大切にしてきました。
この考え方を顧客ではなく自社のSES事業に適用したのが今回の施策です。
なぜ「期待の具体化」が必要なのか?
評価軸を明確にし、メンバーと評価者の認識を合わせることは、単なる事務作業ではありません。
下記のようなSES特有の構造的課題を解決するために、「期待の具体化」は必要なのです。
- 案件がメンバーごとに異なるため、出せる成果の質と量に差が生まれやすい
- 会社としては案件成果を社内評価に繋げたいが評価軸が定めづらい
- 結果として評価者のスキルや考え方・他メンバーの案件内容に左右され、正当な評価を受けづらい
また、メンバー向けには『評価が上がりやすい』というメリットを強調して伝えていますが、
中長期的に会社全体の成長につながると考えています。
- モチベーション向上:正当に評価される仕組みが、自律的な学習を促す。
- マッチング精度の向上:スキルの可視化により、より最適な案件へのアサインが可能になる。
- 成長のサイクル:リテンションが向上し、会社が成長することで、さらに優秀な人材が集まる。
本記事では、社内LTの資料をベースに、評価のブレを最小化し、メンバーが主体的に価値を証明するための「土台作り」についてお話しします。
結論
- タスクベースな働き方を逆手に取り、『案件に求められる業務』と『案件の役職が一般的に何を求められるのか』を言語化・要素分解して差分を明確にしよう
- その差分の達成が『期待を超える』そのものである
- 期初の目標設定面談にて何をしたら『期待を超える』を実現できるのか上記をもとにすり合わせ、期末の評価面談で定量的にアピールしよう
発表資料の深堀り
なぜこの話をするのか
『期待を超える』
いいミッションですよね。
顧客が求めている以上の成果を生み出し、その対価として単価アップに繋がるように設計された非常に合理的なミッションだと感じます。
ただ、いざ評価面談の場でこう聞かれたらどう答えるでしょうか。
- 「どのように『期待を超える』を実現しましたか?」
- 「本当に『期待を超える』を実現できたといえる『根拠』は何ですか?」
自発的な動きや顧客からの感謝など、アピール材料はあっても、
それを評価者が納得する「成果」として変換するのは非常に難しいです。
なぜなら、SESでは案件ごとに業務が分かれているからです。
評価者と評価対象者が同じ案件になることは稀であり、案件ごとに成果の粒度も異なるため、
現場の成果を評価に反映させようとしても社内で評価軸が定義できず、
結果なんとなくの相対評価で決まってしまうという課題があります。
この『根拠の示しにくさ』こそが評価のブレを生む原因だと考えています。
今回は、この構造的な壁をボトムアップで突破するために、『期待を超える』の定義をアップデートして根拠を示せるようにする提案をさせていただきます。
『期待を超える』とは何か
アプローチとして、言葉の定義を深ぼっていくことによって『期待を超える』とは何かを言語化し、
共通認識を取ろうと考えました。
『期待』とは何か
業務における『期待』とは何か
『成果』とは何か
『価値』とは何か
これらの定義をまとめると、『期待を超える』とは下記のように定義できると考えています。

業務を通じて、企業が求める価値である
『売上』と『顧客満足度』に寄与する結果を顧客が求めている以上に出すことが
『期待を超える』ことだと定義しました。
どのように『期待を超える』を実現するか
ただし、『売上』や『顧客満足度』に直接関われるのはフロント業務がメインであり、
エンジニアが直接生み出すのは難しいと考えています。
自社開発企業のエンジニアならばフロントに立ちお客様の要望をかなえること、
売上の源泉になっているシステムを作ることで売り上げを立てることができます。
しかしSES企業に属するエンジニアはタスクベースで仕事を進めることがメインであり、
『売上』『顧客満足度』に直接影響を与えづらい構造になっています。
そこで、SESエンジニアでも価値を生み出すために、
自分が入っているポジションに課せられた『役割』を言語化し、『期待』を具体化することによって、
プラスで何をすれば『期待を超える』を実現できるか言語化しよう、というのがこのアプローチです。
SESのタスクベースな働き方を逆手にとって、今の案件に求められている業務内容と、
一般にそのポジションに求められている役割を言語化・要素化することで差分をあぶりだし、
それを達成することによって『期待を超える』が実現できる、というものです。
具体例として今私が入っているMLOps案件を上げています。
案件で求められている役割は『既存モデルの運用と保守』だったため、それを『期待内』とし、
それ以外の業務を『期待外』と分類。
一般にMLOpsに求められる能力はモデルを壊さず継続的に運用・改善することだと考えたので、
$MLOpsの価値 = 非破壊性 × 改善幅 × 継続期間$
と定義し、案件の役割と照らし合わせることによって、モデルを壊さず運用しながら
モデルの改善を実施出来たら『期待を超える』が実現できたといえる、と結論付けました。
これらをやるメリット
役割を要素分解し期待を言語化すると、
- やることが明確になって生産性が向上
- 自分が何をなしたのかが具体化され可視性が向上
- 何を・なぜ成したのかの説明が容易になり転職にも効く説明可能性が向上
というようなメリットがあると考えています。
実際、これらを言語化してからどう動けばいいのかが明確化されて、
500万以上のコンピュートコスト削減などに繋がったなと考えています。
https://zenn.dev/zenn_mita/articles/bd54d81c4dab31
また、企業のミッションを達成したことによって社内の評価も当然上がりやすくなります。
課題にあった、SESの構造から発生する評価のブレを最小化し、
定量的な評価を得ることができるのが、この言語化だと考えています。
なぜこんな発表をしているのか
私が実現したいことは下記の2つです。
- 報酬体系の改善
- 案件ガチャの軽減
上記は下請け構造にあるSES業界全般に言えることで、いくら商流が浅くても単価には限界があり、
社員が獲得できる単価にぶれがある以上給与もあげづらく、案件が時運にかかっているので
キャリア形成がうまくできないという課題があります。
今回の取り組みをメンバー全員が実施することで、ボトムアップ的に評価軸を定義し、
評価の均一化を図ります。
中長期的に、組織に根付いた評価軸を用いることで給与の底上げと、
実績を出している人材が明確化するため、リテンションの意味も込めて希望の案件にアサインしやすい環境を作りたいです。
結局それらを実現することで定着率の向上とハイポテンシャルな未経験者が入りたいと思える会社になり、企業の成長につながると考えています。
仕組みを作るような権限はないのですが、企業文化はトップダウンだけでは定着せず、
社員のコミットが必須だと考えているので、
メンバーである私が下から基盤を整えられたらと考えています。
『評価の均一化』という価値を生み出した結果として『報酬体系の改善』『案件ガチャの軽減』を実現したいと考えています。
感想
最初は顧客価値の最大化を目指して色々やってきましたが、
だんだんと『価値』の定義が広がっていき、結果として自分にできることが広がっている感覚があります。
最近、仕事をしていくうえで大事なことは『自分なりの意見』なのではないかと考えています。
AIが環境を大きく変えていき、調べれば何でも答えが手に入るようになりました。
その中で、人間が生み出す価値は何か。
- 知識の正当性を保証すること?
- 欲しい結果を得るために方向性付けてAIに聞くこと?
- 顧客折衝すること?
それぞれ正しいと思っていますが、
それだけだとAIに価値の主体がある感じがして個人的に嫌だなと漠然と感じています。
なので、できる限り価値の主体を自分に戻すために必要な要素として
『自分なりの意見』を持つことが大切だと思っています。
この記事を読んで、正しくあること、独自性があること、インパクトがあること...じゃなくても
『自分なりの意見』ってこんなのでいいのかという参考になれば幸いです。
これからも自社と案件先の企業に価値を提供し続け、より大きなインパクトを生み出せるように動いていきたいと思います。











