はじめに
データ活用の重要性が一段と高まる中、基幹システムとクラウドサービス間の迅速かつ安全な連携は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において欠かせない要件となっています。
本記事では、これまで長年にわたり企業間・システム間ファイル連携のデファクトスタンダードとして信頼されてきた「HULFT」の確実性と安全性を、クラウドネイティブなSaaS環境で実現するHULFT Squareにおける「HULFT」をご紹介します。従来のオンプレミス資産とのスムーズな連携はもちろん、クラウド環境での新たなデータ活用の可能性について、その特徴のご紹介とループバック機能で動作を確認しながら解説いたします。
対象読者
基本的には、HULFTサーバの設計・構築・保守・運用に携わる方々です。下記を検討中の方々には、特に参考になると思います。
・HULFTサーバーの保守終了(EOS)に伴い、システム刷新を検討中の方
・HULFTサーバを含めたシステム全体のクラウドリフト・シフトを検討中の方
・HULFTサーバのマネージドサービスへ移行を検討中の方
パッケージ版HULFTのアーキテクチャ
まず、従来のパッケージ版HULFTのアーキテクチャを構成図から確認しておきます。
シーケンスとしては、よくある一例とはなりますが、Systemwaler等のジョブコントローラーからシェル等を起動して、そのシェル等のスクリプトからHULFTコマンドが実行される流れでした。
HULFT SquareのHULFTとは
一方、HULFT Squareの「HULFT」は、ジョブコントローラーやシェル等のスクリプトをHULFT Square内の「HULFT アプリケーション」で内包しております。
その「HULFT アプリケーション」からHULFTサーバー機能である「HULFT Appサービス」のコマンドを実行するアーキテクチャです。
上述したように、HULFT Square における HULFT は、「HULFT アプリケーション」 と「HULFT Appサービス」 という2つの概念で構成されています。
HULFT アプリケーション
従来のHULFTの機能をHULFT Square上で利用するためのコンポーネントの一つで、上述したように、ファイルトリガー等のトリガーとHULFTのコマンドをコールするスクリプトを内包したコンポーネントです。
HULFT Appサービス
こちらも従来のHULFTの機能をHULFT Square上で利用するためのコンポーネントの一つで、HULFT Square上のHULFTサーバー機能の呼称です。
ループバック転送
ここまでHULFT SquareのHULFTについて、そのアーキテクチャとその構成を見てきましたが、ここからは、実際の動作を確認しながら、理解を深めていきたいと思います。その手段として、ループバック転送を実施します。
ループバック転送のイメージ
ループバック転送とは、同一の物理/仮想サーバーに導入されたHULFT内で、自らを転送先として集配信処理を行う手法です。IPアドレスに 127.0.0.1 や localhost を使用し、外部ネットワークに出ずループバックソケットで高速通信を行います。
利用目的としては、主に開発・検証環境での動作確認です。
対向システムが未構築の環境でも、自サーバー単体でHULFT通信やジョブ連動の検証が可能です。
HULFT SquareのHULFTでループバック転送
HULFT SquareのHULFTにおいても、上述のパッケージ版HULFTと基本的なイメージは変わらないです。
HULFT SquareのHULFTとはの章でお示ししましたが、HULFT Squareでは、シェルスクリプトとトリガーのレイヤーは「HULFT アプリケーション」を利用し、HULFTのサーバ機能は、「HULFT Appサービス」を利用します。
HULFT SquareのHULFT転送設定
HULFT Squareにおける「HULFT アプリケーション」と「HULFT Appアプリ」の設定をループバック転送の例で見ていきましょう。
HULFT アプリケーション
今回利用するHULFT アプリケーション名は、「HULFT アプリケーション TM v1.03」です。
HULFT アプリケーションでは、トリガーとHULFTコマンドをコールするスクリプトを指定します。
トリガーは、「ファイルイベント」を指定してます。
HULFTコマンドコールするスクリプトは、「LoopBack_SND」を指定してます。

このスクリプトは、別途事前にIntegrateサービスからノーコードで作成しておりますが、そのスクリプトは以下になります。
スクリプト名は、「LoopBack_SND」で、そのスクリプトからHULFTの配信機能のアイコンを配置することで配信を実施できます。
ファイルIDは、「TM_LOOPBACK」を指定しております。

監視対象ディレクトリ
HULFT アプリケーションの画面に戻りますが、トリガーの具体的な監視対象先ディレクトリ及びサービスを指定いたします。
この指定は、プロファイル毎に設定する必要があるのですが、この説明は次回以降の投稿で解説予定です。

HULFT Appサービス
続いて、HULFT Appサービス側の設定です。
今回利用するHULFT Appサービス名は、「HULFTAppService_TM」です。
HULFT Appサービスは、これまでのパッケージ版の考え方だとHULFTサーバ機能であることはこれまでも申し上げてきましたが、SaaSサービス特有の設定もありますので、こちらを中心に解説してまいります。
まずは、VPCエンドポイントの設定です。
[ネットワーク]タブから確認出来ます。
HULFT Squareは、AWS上で動作しているサービスでして、そのエンドポイントの設定になります。
インバウンド用のエンドポイント名は、「inbound_loopback」、アウトバウンド用のエンドポイント名は、「outbound_loopback」です。
ループバック転送設定では、アウトバウンド設定の「接続先」にこのHULFT Appサービスで設定したインバウンドバウンドのVPCエンドポイントサービス(inbound_loopback)を指定します。

他、[起動]、[コード変換]、[集配信]等のタブでは、これまでのHULFTと同等の設定ができますが、今回のループバックでは[集配信]タブの自ホスト名のみ変更して、他はデフォルトの設定で確認します。

集配信管理情報
ここでは、例として集信側の設定を確認します。
ファイルIDは、配信のスクリプトでも確認しましたが、「TM_LOOPBACK」です。
集信ファイルは、以下の「ファイル名」のパスに格納される想定です。

設定は、以上となります。
ループバック転送の動作確認
結果を見てみましょう。
監視対象ディレクトリで設定した監視対象のフォルダにファイルを置くと、トリガーが発火して、ループバック転送が実行されます。
集配信どちらとも完了コード「0」で成功していることを確認出来ました。
最後に
本記事では、従来のパッケージ版HULFTとクラウド型iPaaSであるHULFT SquareにおけるHULFT機能のアーキテクチャの違い、そしてHULFT Square上でのループバック設定例について解説してきました。
長年オンプレミス環境のデータ連携を支えてきたパッケージ版HULFTの信頼性と確実性は、HULFT Squareにおいてもクラウドネイティブな形でしっかりと継承されています。一方で、フルマネージド化によるインフラ管理コストの削減や、多様なSaaS・クラウドサービスとの柔軟な連携など、HULFT Squareならではの大きな進化を遂げています。
ループバック転送の検証でも確認した通り、設定のアプローチや構造に違いはあるものの、「確実で安全なデータ転送」という本質は変わりません。既存のHULFT資産や運用ノウハウを活かしつつ、自社のクラウドシフトやデータ活用戦略に合わせて、パッケージ版とHULFT Squareを適切に選択・併用していくことが、現代の柔軟なデータ連携基盤構築への第一歩となります。
次回以降、HULFT SquareのHULFTとパッケージ版のHULFTの差異やパッケージ版HULFTと集配信を行ってみようと思います。







