こんにちは。VoicyでiOSエンジニアをしているピカソです。
この記事は、Voicy Advent Calendar 2025 6日目の投稿です。
5日目の記事どいちゃんの「【HR×AI】「静かな退職」を防ぐ!データが導く新しい組織エンゲージメントの高め方」は以下よりご確認いただけます!
https://note.com/dd0014/n/n9a5f886f0915
⚠️ 免責事項(最初に必ずお読みください)
本記事は、筆者が趣味で行っているFX手法の研究プロセスと、その効率化のためにAIツール(ChatGPT, Gemini, Claude Codeなど)を利用した体験談を紹介するものです。
- 投資の推奨ではありません。 FX(外国為替証拠金取引)を含む投資・投機には高いリスクが伴い、元本を失う可能性があります。
- 記事で紹介する手法や結果は、特定の状況下での一例であり、将来の利益を保証するものでは一切ありません。
- 投資判断はご自身の責任で行い、本記事の内容を参考に真似することは固くお断りいたします。
はじめに:なぜFX手法の研究にAIを使うのか?
エンジニアとして、自分たちは日々の業務でAIをコード生成やタスク効率化に使っています。この強力なツールは、仕事以外の趣味や研究にも応用できます。
自分の本業はiOSエンジニアですが趣味でFXを行っており、新しい手法を発見したり、既存の手法に改善のアイデアが浮かんだりした際に、その有効性を客観的に評価することを重視しています。
手動バックテストの非効率性
通常、新しい手法の勝率(Win Rate) や平均リスクリワード(Average Risk Reward) を検証するためには、過去1年以上のチャートを遡って手動で検証(バックテスト)する必要があります。
- 課題: 1つの手法を1つの通貨ペア・時間軸で検証するだけでも、莫大な時間がかかり、手間がかかりすぎます。
- 解決策: TradingViewのストラテジーテスターを活用し、検証を自動化します。
TradingViewとは?
TradingViewは、世界中のトレーダーや投資家が利用しているチャート分析プラットフォームです。
- 公式サイト: TradingView 公式サイト
ストラテジーテスターの機能
TradingViewの核となる機能の一つがストラテジーテスターです。
- 概要: Pine Scriptで記述された売買ロジックを、過去のデータに適用し、そのパフォーマンスを瞬時にシミュレーション(自動バックテスト)します。
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確認できる主な指標:
- 勝率 (Win Rate):総トレード数に対する勝ちトレードの割合。
- 純益 (Net Profit):トータルでの利益額。
- プロフィットファクター (Profit Factor):総利益を総損失で割った値。
- 最大ドローダウン (Max Drawdown):資金が一時的に最大でどれだけ減ったか。
- メリット: 複雑な手法でも、手動で何百回ものトレードを検証する必要がなくなり、客観的なデータに基づいた判断が可能になります。
本題:AIとPine Scriptによる自動バックテスト環境の構築
TradingViewで手法を自動検証するには、Pine Scriptでロジックを記述する必要がありますが、ここでAIの出番です。
1. Pine Script生成のためのAI選択と活用法
Pine Scriptの生成には、コード生成能力に優れたモデルが非常に有効です。個人的には、複雑なロジックに対する理解度やコードの正確性からClaude Codeが優れていると感じていますが手法が複雑でないかぎるほとんどのAIで可能です。 (Claude Code、ChatGPT、Geminiなど)
2. AIに伝達すべき「手法」の具体的な説明項目
AIに正確なPine Scriptを生成してもらうためには、手法のロジックを曖昧さなく、極めて細かく説明する必要があります。
| 項目 | 説明すべき具体的な内容 |
|---|---|
| エントリー(買い/売り)条件 | 「MACDがゼロラインを上抜けし、かつRSIが50以上」など、インジケーターやローソク足の確定条件を具体的に。 |
| 利確(Take Profit)条件 | 「エントリー価格から〇〇pips」「直近の高値/安値」「ATRの〇倍」など、絶対値または変動値での基準。 |
| 損切り(Stop Loss)条件 | 「エントリー価格から〇〇pips」「直近の抵抗ラインの少し外側」など、リスク管理の基準。 |
| 設定値の変動化 | 後で調整できるように、利確幅や損切り幅などの具体的な数字をvariable(変数)として定義するよう指示する。 |
3. 【実例】AIへの具体的なプロンプト例
ここでは、非常にシンプルな「移動平均線のクロス」手法をPine Script化する例を紹介します。
⚠️紹介する手法や結果は、特定の状況下での一例であり、将来の利益を保証するものでは一切ありません。
プロンプト例:
あなたはTradingViewのPine Scriptの専門家です。以下の手法をPine Script v5のストラテジーとして記述してください。
手法名: Simple Moving Average Crossover Strategy
1. **インジケーター:** - 期間20の短期移動平均線 (SMA)
- 期間50の長期移動平均線 (SMA)
2. **エントリー条件 (買い):** 短期SMAが長期SMAを上回ってクロスしたとき。
3. **エントリー条件 (売り):** 短期SMAが長期SMAを下回ってクロスしたとき。
4. **決済条件:** - 利確幅はユーザーが設定で変更できるように`input.int`でpips指定 (デフォルト100 pips)。
- 損切り幅はユーザーが設定で変更できるように`input.int`でpips指定 (デフォルト50 pips)。
5. **その他:** 1ロット固定でエントリーしてください。
AIに必要な情報を全て渡してうまく手法を言語化・ロジック化できれば、即座にPine Scriptコードを生成してくれます。

コードにエラーが無ければすぐにバックテストの結果が表示されます。

結論:高速バックテストがもたらす向上
AIを活用してPine Scriptを生成し、TradingViewのストラテジーテスターを使うことで、研究のサイクルが劇的に短縮されます。
圧倒的な時短効果とパラメーター最適化
- 手動検証では数日かかっていた作業が数分に短縮されます。
- またAIに手法の数値などを変数にしてもらうおかげで、コードを書き換えずに、TradingViewの「設定」画面から数字をいじるだけで「利確幅を70pipsにしたら勝率がどう変わるか?」といった様々なパラメーターを素早く試すことができます。
客観的なデータに基づく判断
- レポートには、勝率、プロフィットファクター、ドローダウンなどの重要な指標が明示されます。
- これにより、「感覚」や「過去の経験」ではなく、客観的なデータに基づき、その手法を実運用に移すかどうかの判断を下せます。
継続的な研究を可能に
アイデア出しから検証結果のフィードバックまでのサイクルが短縮されることで、新しい手法の研究や既存手法の改善をストレスなく継続できるようになります。
おわりに
自分たちはエンジニアとして、ツールを使って非効率な作業を自動化することを得意としています。今回はFX手法の研究というニッチな趣味においても、AIを効果的に活用することで、効率化を図れるということをお伝えしました。
あなたの趣味や日々の研究活動でも、AIの力を借りて非効率な部分を自動化できないか、ぜひ考えてみてください。
