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今は昔、商用UNIXといふものありけり

Last updated at Posted at 2019-10-10

Linuxディストリビューションについて書いたら、商用UNIXの懐かしい想い出が蘇ってきてしまったので昔話を書く。酒のつまみにどうぞ。

筆者が実際に仕事で使ったのは4つくらいしかなく、全体的に興味本位で調べたことや又聞きが多い上に、昔の事なので記憶違いもあると思う。なるべくWikipediaに書いてあるような歴史は書かずに自分の関わった範囲での与太話を書く。なので間違いに気づいたら呑みながら編集リクエストでも送ってくれると大変嬉しい1

Sun Solaris

メインフレームの規模を小さくしたミニコンは、一式揃えると数万ドルから数十万ドルと高価だった。Sunが創立された1986年のドル/円のレートは1$=213円と考えると参考になるでしょう2。ミニコンより小さいものはマイコンと呼ばれていて、まだまだ仕事に使えるレベルのものではなかった。そこに1万ドル程度でワークステーションを投入し、市場を席巻したのがSun Microsystemsだった。OSの名前について詳しくはWikipediaでも読んで欲しいが、だいたいSunOSのバージョン4までがBSDで、それ以降はSolarisという名前でSVR系列だと思っていれば話が通じると思う(たまにややこしい人に絡まれる(心からどうでもいいのに))。

富士通とかにもOEM供給していて、マシンに貼ってあるSunのロゴの上に他社のロゴが貼ってあるやつがあった。伊藤忠テクノのCTCラベルだったかな。そういうのは当然値引きしてもらえるわけで、純正品は憧れの的だった。筆者を含めインターネット老人会の面々が未だにSunが好きなのは若い頃にそういうイメージが刷り込まれたせいだと思う。

デスクトップ環境は最近のしか知らないけど、CDEやJava Desktop Systemが動いていた。x86版が無料で配られるようになって、貧弱なPCに無理やりインストールしたらメモリ足りなすぎてアプリからの応答はすごい待たされたんだけど、それでもマウスカーソルだけはサクサク動いてて、割り込みの扱いがLinuxとは全然違うのかなあとか考えたり考えなかったりした。

このOSをSunがオープンソース化したOpenSolarisプロジェクトは終了したが、illumosに移行して現在も開発が続いている。えらい!
https://github.com/illumos/illumos-gate

実はAppleを買収する合意直前まで行ってた事がある。Appleの株価は4ドルくらいだった気がするので、記事中にある「Appleを1株当たり約5~6ドルで買収する」というのは現実味のある話である。

その後Appleはジョブズを呼び戻し、iMac - iPod - iPhoneと大ヒットを繰り返しとうとう時価総額ではMicrosoftを抜くまでになったが、SunはOracleに買収されて終わってしまった。南ー無ー。

AIX

IBMのPower ArchitectureというCPUシリーズ3向けのUNIX。しかし公式ではPower Systemsソフトウェアとして周辺システム一式で扱われていて、AIXはベースにあるOSの一つという扱いっぽい。一緒に並んでいるのはIBM iやLinuxである。

天下のIBMさんのUNIXだし、そりゃまあ信用はしてるんだけども、IBMからこの辺のシステムを導入するとRDBMSにDB2を使ってくれという話になり、Oracle使いたいからパスで4

z/OS

ずいぶん早いうちにUNIXではないものが来てしまったが、AIXを紹介したついでなので仕方がない。IBMのメインフレーム用OSで、OS/360やOS/390の方が馴染みがある人も多いかも。
たまに個人でz/OSが動くマシンを手に入れる強者がいて話題になる。
https://gigazine.net/news/20180123-boy-buys-ibm-z890/

エミュレータがある。あんたも好きねえ。
http://www.hercules-390.eu/

hp-ux

Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/HP-UX
筆者が最初に触ったUNIX。デスクトップ環境はCDEだった。当時まだプロプライエタリだったMotifの分厚いMotifプログラミング・マニュアルと格闘していた気がするが定かではない。

hpe(hpのenterprise部門)がまだ生きてるのでhp-uxもまだ生きとる。コンピュータグラフィックスの王者SGIもスーパーコンピューターの雄Crayも紆余曲折を経てhpeに買収されてしまった。1998年にCOMPAQDECを買収し、2002年にhpがCOMPAQを買収したため、DECが持っていたAlphaというCPUが入ってきた。hp社内ではすでにItaniumに舵取りされており、PA-RISCも作っており、Alphaは終了させたが開発メンバーがItaniumに移ったと聞いた。Alphaは評判良かったし、Intelはx86に代わる位置づけの64bitプロセッサになると豪語していたので否が応でもItaniumへの期待は高まった。結局AMD64の互換CPUを作らざるを得ないという辱めにあったけど。PA-RISC版hp-uxの後継という位置づけでItanium版のhp-uxがあった。あったけど、Itaniumが市場に出てきたのは結局Pentium4が3GHzに到達しようとしているときで、ItaをDBサーバーとして評価したけどx86より遅いし値段は何倍もするし、評価機がhp-ux(販売されたのはlinuxもあった)なので速度評価したいのにhp-uxに習熟したメンバーがいないから本題じゃないところで躓くし、まったくいい思い出がない。順調に死んだようでなにより。

俺がお世話になった某グループの某社では、遅いシステムの速度向上を狙ってでhpのsuperdome(Windows)を何千万だか億だかで買ったものの、移行スケジュールがうまくワークしてなくて結局ただのファイルサーバーとして2年くらい稼働しているらしい。アホか。いやここはhp-uxの話だからWindowsの話は関係なかった。

NeXTSTEP

ジョン・スカリーにAppleを追い出されたジョブズが設立したNeXTのOS。スカリーのWikipediaはジャン=ルイ・ガセー(後のBeOS開発者)も絡んだ追放劇が書いてあり面白い。

WWW(およびhtml, Mosaic)の生みの親として、またMacOSXのベースとして有名。JavaでいうところのJSFのようなコンポーネントベースのWeb開発環境の元祖WebObjectsの発祥元でもあり、そのUI設計ツールが後のInterface Builderであり今のXcodeのストーリーボードへと受け継がれている5

NeXTは途中でハードウェア屋であることをやめ、OpenStepとしてSolarisやWindows NT向けにデスクトップ環境を売り出した。月刊sofmap world6でたしか16万とかそんな値段で売られていた気がする。記憶違いかもしれない。なにするソフトかよくわからんけどなんか基本部分だけでそんなするの?すごい!っていうイメージだけ持っていた。

筆者はLinuxでWindow Makerというウィンドウマネージャを使っていたが、これがNeXTSTEPを目指してるっていうのを後から知った。当時はまだdockが一般的でなく、メニューから選択する方式が多かったので純粋に使いやすくかつ無駄がなくて好きだったのである。

A/UX

Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/A/UX
Macintosh上で動いていたApple謹製のUNIX。ほぼ同じ時期にAppleがIBMのAIXを搭載したサーバーを発売したこともあり非常に混乱した7。もちろん使ったことはない。

ログイン画面の画像などがここで確認できる: http://toastytech.com/guis/aux.html

BeOS

元Appleのハードウエア担当上級副社長8だったジャン=ルイ・ガセーがApple退社後に作ったOS。Dual CPUのLEDインジケータがついたBeBoxをひっさげて颯爽と登場した。当時MacintoshではPowerPC603は遅い9と言われていたが、ガセーは「MacOSが過去のしがらみのせいで重くなっているだけ、603は十分速い」と言っていたのが印象深かった。実際店頭で触ってみてキビキビ動いてるなと思った。

日立からBeOSプリインストール機が発売された。BeBoxはあの時代にDual CPUかつCPU連動のLEDインジケータがあったからそそられたのであって、日立のPentium機に入ってても「なら自分のPCに入れるわ、拝承」という気持ちしかない。しかしこの企画を通した人は賞賛したい、アッパレ!
あとこの時代の日立の公式(だよな?)ページが個人制作感があってmarqueeしてて大変良いので必見である。
http://web.archive.org/web/19980416084833/http://floracity.hitachi.co.jp/go/index.htm

開発者の一人のblog。秋葉っぽい写真もある。
http://www.josephpalmer.com/BeBox/BeBox.shtml

超漢字/BTRON

俺が買ったときはまだB-right/Vっていう名前だった気がする。Linuxブームが来てて差別化のためか「何万文字もの漢字がが使える」とか言い出して「超漢字」になって超ダサイ感じになった。Libretto70に入れたけど、2秒で起動するのでびっくらこいた。デバイスドライバの読み込みどうなってんの!?

ファイルシステムに仮身・実身システムというのがあり、インターネットのWWWじゃなくてもハイパーリンクできるよ的なウリ文句があった気がする。どっちかっていうとUNIXのシンボリックリンクとかハードリンクとかに近かったかなあ。なんせLibrettoの時代だからなあ、もう曖昧。

TRONは日本国産OSとして、当時国家プロジェクトで教育用に採用しようという動きがあったが、日米貿易摩擦で揉めていたやりとりのなかでTRONが貿易障壁としてあがった事があり(国家全体でTRON OSに切り替えられたら米のソフトウェアの入る余地がなくなるかも、という懸念)、アメリカに潰されたなどと噂された。しかし現実はどうも複雑なようで、どの説もこれと言った決め手がなく単にWindowsに比べて不便だったから淘汰されたのでは、という感じがする

SCO UNIX

Linux界隈はみんな大嫌いなSCO。SCOは自分で作ったわけでもなくUNIXの権利を買っただけなのに、LinuxにUNIXのコードが含まれているから違反だとしてライセンス料を要求、裁判に発展した。UNIX界隈のソフトウェアには「フリーで公開してみなで幸せになろうぜ」的なカルチャーがあり、SCOのこの行動は完全なコピーライトトロールとして全世界のUnix/Linuxユーザーから非難を受けた。

NEC EWS

筆者が一番長く使った商用UNIX。CPUはMIPS R3000とかだったかなあ。NECの製品なので、商用UNIXのくせにFDDが1.2MBで98とFDを共用できる。他社やDOS/V(PC/AT)は1.4MB。後に日本ではMITSUMIの3mode FDDが大量に出回って自作PC界隈ではどっちも読めるのが普通になったが、昔は1.2MBと1.4MBに互換性がなかった。最悪フォーマットし直して使っていたような気もする。

当時はMS-DOSマシンで開発を行い、FDDに入れてフロアに数台あるEWSで読み込ませてコンパイルしていた。高価なUNIX機は台数が少なく順番で使う必要があり、かつ自席のPCはネットワークに参加していないかったからだ。Windows95でTCP/IPがOSに付属するようになり(当初はWindowsアプリの追加と削除で追加する必要があったが、OSR2から標準になった)、PCにNICが標準搭載で売られるようになってやっと社内LANが構築されるようになったのである。

CGMTというVHSビデオカセットくらいの巨大なテープに300MBのデータを30分とか40分とかtarコマンドで固めて、手に持って南武線に乗って工場に行ってた。

Sony NEWS

当時世界でもイケてる企業あつかいだったと思われるSonyからも商用UNIXのNEWSが出ていた。触ったことないので詳細は例のごとく編集リクエストお待ちしております。

XENIX

Microsoft製、なんかPC-9801シリーズ用があった気がする。PC-UXというのがそれかもしれない。

関連リンク

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情

ロードマップ、つまり未来の話だったのに途中からネタ切れしたのか昔話をするようになったが、これが面白いのでこの記事をここまで読んでしまうようなあなたにはオススメ。

  1. なお筆者は酒が呑めない、日本酒を美味しく呑めるようになりたい

  2. 世界まるごとHOWマッチ

  3. Macに載ってたPowerPCもこのシリーズ

  4. 昔話であり、2019年現在Oracleを使いたいわけではない

  5. 合ってる?

  6. ソフマップ店頭で無料配布していたフリーマガジン。ハード・ソフトの価格はもちろん中古の買取り価格や連載記事もあり読むだけで楽しかった。

  7. 音声入出力端子のAUXもPCの文脈ででてくるので混乱が加速する

  8. この辺表記ゆれ(「製品担当社長」とか)があるが、そもそも日本の役職と米の役職がマッチしてないからなので気にしないで欲しい。「Vice President」を文字通り訳して副社長にする人もいるけど、立場的には日本でいう部長とか本部長にあたるのでそう意訳する人もいるから表記ゆれが起こる、というだけの話。

  9. MacではメインストリームにPowerPC604を採用し、Performaシリーズなどの廉価版にPowerPC603を採用しており、603採用機は動きがもっさりする、というのが当時のMacユーザーの間での評価だった。

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