エンジニアリングマネジャーやプロジェクトマネジャーはチームを円滑に動かしプロジェクト、プロダクトの成功へ導いていくことがミッションの一つです。その文化を醸成する要素として心理的安全性を高くすることが大切だと言われてきました。
心理的安全性とは?
組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態を表す度合いのことです。組織行動学の専門家として知られるエイミー・C・エドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されています。
引用:https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000230/
度々この言葉は日本語の表現のせいか、
誰も怒らない(怒れない)、失敗があってもなぁなぁにしてしまうといったぬるま湯、仲良しモードのものだと言って心理的安全性について否定的な立場を持っている方がいます。
実際言葉の定義上でも「チームの他のメンバーの発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と述べていることからそのようにとらえられることもあると考えます。
そこで今回は、私自身が実務を通して考えてきた「心理的安全性」についての考えを共有します。賛否両論あってよいテーマだと考えていますし、むしろ読者の皆さまの意見も伺えればと思っています。
心理的安全性が低いと何が起こるのか。
私は自動車業界でOEM(いわゆる自動車を製造している会社)、サプライヤ(部品やシステムをOEMに提供する会社)で新卒から働いていますがこの業界では心理的安全性の
低さが引き起こした可能性がある事件が過去に残念ながらいくつも起きています。
極端な例としてあがるのはフォルクスワーゲンの排ガス規制問題です。
これは米国の排ガス規制を逃れるためにディーゼルを制御するソフトウェアにテストモード(デフィートデバイス)を用意し測定時だけその規制におさまるように不正をした事件です。
実環境での走行ではNOxと呼ばれる有害物質がテスト時に比べ40倍排出されることが判明し、そのソフトウェアが使われていたことが世界で1100万台と大きかったため大事件となりました。
詳しくはWikipediaを参照してください。
参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Volkswagen_emissions_scandal
この事件でフォルクスワーゲンは多額の賠償金を科せられ当時世界一位の生産台数を誇る会社でしたがブランドを大きく毀損することになりました。
この事件では心理的安全性の低さについて直接的な言及はありませんがある記事でこの要因として3つあげられています
1.Pressure for Perfection(完璧をもとめるプレッシャー)
2.Authoritarian Leadership Style(権威主義的なリーダシップ)
3.Ignored Whistleblowers and Internal Warnings(無視された内部告発と内部警告)
引用:https://www.thrivingpeople.org/articles/the-vw-diesel-emissions-scandal-a-failure-to-listen
実は事件発覚前にエンジニアから内部通報があったにも関わらず無視されたとされています。
これは心理的安全性のいう「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」とは程遠く結果この事件につながったと思われます。
心理的安全性の必要性とは
少し話が大きくなってしまいましたが自動車開発において心理的安全性がなぜ必要かというとリスクや不具合の芽、不具合の兆候などをすぐに挙げやすい環境が望ましいからです。
自動車開発ではなるべく早い段階でリスクを察知し対処することがコスト削減、品質の良さにつながります。後手に回り後工程になればなるほどモノづくりにおいては取れる対策が限られていきますし変更による工数や規模も大きくなることからです。
心理的安全性が低く声が上げられない空気では後回しになってしまう可能性があります。最悪は先ほど述べたディーゼルゲートのような不正に染めるようなことにもつながりかねません。
また先程挙げた事例では悪い方向を抑える方法ばかり上げましたが逆にこうすれば良いのでは?といったことも上げやすくなります。
代表的な例としてPixarの「Braintrust」と呼ばれるミーティングが有名です。
これは階層を関係なく率直な意見を通じて解決すべき問題を明らかにすることを目的としています。
引用:https://www.businessinsider.jp/article/2503-company-struggle-feedback/
いくつかの仕掛けが必要ですが問題点や改善点に目を向け意見をもらうには心理的安全性が必要でしょう。
以上から心理的安全性を高くすることで不具合の芽や改善点を見つけることができそれがプロジェクトやプロダクトの成功に導けると考えています。
緊張感がある心理的安全性を確保したい
ではなぜタイトルの通り私は緊張感のある心理的安全性を確保したいとしたのでしょうか。
それは今までここで書いた通り、心理的安全性とは決して仲良しクラブの雰囲気を醸成することではありません。繰り返しになってしまいますが率直な意見やフィードバックを挙げられやすい環境がプロジェクト、プロダクトの成功へと導くと考えておりその状況を作るために
心理的安全性が必要なのだと考えています。
プロジェクトやプロダクトを考えたときにチームメンバーそれぞれが率直な意見を言える環境を作るのはマネジメントの仕事です。
一方でチームメンバーはプロジェクト、プロダクト(もしくはチーム)のために意見やフィードバックを言うことを求められています。極端な話、自分に不利な状況や失敗を話す覚悟も必要になるケースがあるでしょう。
仲良くやって失敗を許すだけではただただぬるま湯です。
だからこそチームメンバーにはプロフェッショナルの意識を持ち各々の視点でプロジェクト、プロダクトにとって何が良いか、何が課題かを常に意識して必要であれば意見やフィードバックを言う、そしてエンジニアリングマネジジャーやプロジェクトマネジャーはその率直な意見を受け止める覚悟と姿勢を持つ必要があります。
意見は出しやすいように和やかな雰囲気は望ましいですが一方でそういった厳しい意識や姿勢が必要。それが私が考える緊張感のある心理的安全性です。
そのためにマネジメントとしては相手へのリスペクト、受け止める覚悟、そしてメンバーにはプロフェッショナルとしての姿勢が必要です。
心理的安全性と緊張感は、相反するものではありません。
むしろ、プロフェッショナルなチームにとっては、両立してこそ意味を持つものだと思います。
率直さを恐れず、指摘を歓迎し、成果に向き合い続ける。
そんなチームを目指して、私自身もプロジェクトマネジャーして向き合い続けたいと思います。