プロジェクトマネジメントにおいて、意思決定や方針策定はプロジェクトの成否を左右する重要な要素です。
この意思決定を支えるために、PMBOKといった知識体系・ガイドブックでは、さまざまな手法が整理されています。
一般的にプロジェクトマネジメントでは、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)を軸に目標を設定し、定められた期間内で成果を創出することが求められます。
こうした観点から、意思決定においてもコストや品質といった数値で比較・評価することは非常に有効です。
一方で、これらの数値だけをもとに判断してしまうと、落とし穴があります。
例えば、ある材料の切り替えを検討するケースを考えてみます。*1
A案:現状維持
B案:材料を変更しコスト削減
さて、あなたならどのように判断するでしょうか。
もしB案を選択した場合、材料単価は下がるかもしれません。しかし実際には、以下のような影響が考えられます。
金型の新規立ち上げが必要になる
品質が安定するまでに時間がかかる
検証や調整により納期へ影響が出る
このように考えると、「現状維持の方が合理的」という判断になりがちです。
なぜなら、プロジェクトは期間が決まっているため、どうしても「その時点での最適解」で判断してしまうからです。
これはつまり、「点」で意思決定してしまっている状態です。
将来の変化を十分に織り込まず、結果として先送りになるリスクも含んでいます。
例えば、競合他社がその材料を用いた高い競争力を確立し、結果的に後追いで同じ材料へ切り替えるといったケースも考えられます(極端な例ですが…。)
後追いでも追いつける場合はありますが、少なくとも市場での遅れはリスクになり得ます。
では、どのように考えるべきでしょうか。
ここで重要なのは、「現時点の数値」だけで判断しないことです。
意思決定においては、将来の変化やシナリオも含めて評価する必要があります。
例えば、
B案を選択した場合、3ヶ月後には品質が安定し、コスト削減効果が見込める
仮に問題が発生した場合でも、一定のタイミングまではA案へ戻すことが可能
といったように、「意思決定後の展開」まで含めて設計することが重要です。
もちろん、すべての選択肢でリカバリが可能とは限りません。
しかし少なくとも、
どのようなリスクがあるのか
どの時点で再判断するのか
どこまでが許容範囲なのか
といった点は、意思決定時に明確にしておくべきです。
つまり、意思決定とは「その瞬間の点」で完結するものではありません。
ゴールから逆算し、そこに至るまでの道筋(シナリオ)を描いた上で判断することが重要です。
場当たり的にエイヤ*2で決めて進めるのではなく、未来の変化やリスクを織り込んだ上で意思決定を行う
それこそが、プロジェクトマネジメントにおいて求められる意思決定の要点だと考えます。
*1 本例は説明のための簡略化したケースです。実際には事前検証を踏まえて考えることが普通でしょう。
ここではあえて極端な例え話にしました。
*2 エイヤ:その場の勢いや経験則からくる勘で意思決定すること。場合によっては必要ですが、後から根拠を説明できない場合、技術的負債や判断の不透明性につながるリスクがあります。とはいえプロジェクトでは必ずと言っていいほどこのように決める場面があるのでそれはそれでどう決めるかまた別の形でかけたらと思います。