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量子化学入門 Roothaan SCF計算(続報2)

Last updated at Posted at 2021-04-26

前回の『量子化学入門 Roothaan SCF計算(続報)』の続報2です。
SCF計算の非経験的な解法(ab initio 法)でプログラムに組み込むために、解法ページ(2.4)のMyLibraryのガウス型への変更を、少し試行してみました。一方、半経験的な解法でのプログラムは前々回の『量子化学入門 Roothaan SCF計算』です。

非経験的な解法のガウス型関数を具体的に次のように置きます。

φ_{A1}φ_{A1} = φ_{P1} = cαe^{-αr_{A1}^2} \\
φ_{B2}φ_{B2} = φ_{Q2} = c'α'e^{-α'r_{B2}^2}
\iintφ_{A1}φ_{A1}\frac{1}{r_{12}}φ_{B2}φ_{B2} \, dτ_1dτ_2 
= \iintφ_{P1}\frac{1}{r_{12}}φ_{Q2} \, dτ_1dτ_2 = \\
\intφ_{Q2}\left(\intφ_{P1}\frac{1}{r_{12}}dτ_1\right) \, dτ_2 = I
J=\intφ_{P1}\frac{1}{r_{12}}dτ_1

ここで、$c,,α,,c’,,α’,$は定数です。そして$α>0,,α’>0$。$r_{A1}$は核Aと電子1の距離、$r_{B2}$は核Bと電子2の距離、$r_{12}$は電子1と電子2の距離です。この3個は変数です。そして$r_{A1}>0,,r_{B2}>0,,r_{12}>0$。

最初に、この$J$、電子1の積分を求めます。まずガウス型関数P1を代入します。

φ_{A1}φ_{A1} = φ_{P1} = cαe^{-αr_{A1}^2} \\
J=\int cαe^{-αr_{A1}^2}\frac{1}{r_{12}}dτ_1

$r_{A1}, r_{12}$を代入します。解法ページ(2.4)の座標系A1をそのまま使えます(この座標系A1では$r_{A2}$を定数と置くことが1つのポイントです)。

r_{A1}=(coshμ_1-cosν_1)\frac{r_{A2}}{2} \\
r_{12}=(coshμ_1+cosν_1)\frac{r_{A2}}{2} \\
J=cα\int e^{-\frac{1}{4}αr_{A2}^2(coshμ_1-cosν_1)^2}\frac{1}{(coshμ_1+cosν_1)\frac{r_{A2}}{2}}dτ_1

体積素片$,dτ_1,$を代入します。

dτ_1=(\frac{r_{A2}}{2})^3sinhμ_1sinν_1(cosh^2μ_1-cos^2ν_1) \, dμ_1dν_1dφ_1 \\
J=cα\int_0^{2π} \int_0^π \int_0^∞  e^{-\frac{1}{4}αr_{A2}^2(coshμ_1-cosν_1)^2}\frac{1}{(coshμ_1+cosν_1)\frac{r_{A2}}{2}} \\
(\frac{r_{A2}}{2})^3sinhμ_1sinν_1(cosh^2μ_1-cos^2ν_1) \, dμ_1dν_1dφ_1

整理すると

J= \\
\frac{1}{4}cαr_{A2}^2\int_0^{2π} \int_0^π \int_0^∞  e^{-\frac{1}{4}αr_{A2}^2(coshμ_1-cosν_1)^2}
sinhμ_1sinν_1(coshμ_1-cosν_1) \, dμ_1dν_1dφ_1

ここでβを置きます。

β= \frac{1}{4}αr_{A2}^2 \,\,(\,> 0)\\
J= \\
cβ\int_0^{2π} \int_0^π \int_0^∞ e^{-β(coshμ_1-cosν_1)^2}
sinhμ_1sinν_1(coshμ_1-cosν_1) \, dμ_1dν_1dφ_1

変数$ν_1$だけの積分を分けると

J= \\
cβ\int_0^{2π} dφ_1\int_0^∞ sinhμ_1 \left\{\int_0^π e^{-β(coshμ_1-cosν_1)^2}sinν_1(coshμ_1-cosν_1) \, dν_1\right\} dμ_1

変数$ν_1$だけの積分を求めます。

\int_0^π e^{-β(coshμ_1-cosν_1)^2}sinν_1(coshμ_1-cosν_1) \, dν_1

この0からπの積分は、数少ない不定積分が可能なガウス型関数の1つです。指数部分を微分してみると求まります。

\int e^{-β(coshμ-cosν)^2}sinν(coshμ-cosν) \, dν \\
=-\frac{1}{2β}e^{-β(coshμ-cosν)^2}+C

0からπの定積分は

\int_0^π e^{-β(coshμ_1-cosν_1)^2}sinν_1(coshμ_1-cosν_1) \, dν_1 \\
=-\frac{1}{2β} \left[ e^{-β(coshμ_1-cosν_1)^2} \right]_0^π \\
=-\frac{1}{2β} \left( e^{-β(coshμ_1+1)^2}-e^{-β(coshμ_1-1)^2}\right)

変数$ν_1$だけの積分結果を、元の式に代入すると

J=2πcβ \int_0^∞ sinhμ_1 \left\{ -\frac{1}{2β} \left( e^{-β(coshμ_1+1)^2}-e^{-β(coshμ_1-1)^2}\right) \right\} dμ_1 \\

整理して次の$,J,$が得られます。

J =-πc \int_0^∞ sinhμ_1 \left\{ e^{-β(coshμ_1+1)^2}-e^{-β(coshμ_1-1)^2} \right\} dμ_1

 
さらに色々と試行してみます。

J \\
=-πc \int_0^∞ sinhμ_1 \left\{ e^{-β(cosh^2μ_1+2coshμ_1+1)}-e^{-β(cosh^2μ_1-2coshμ_1+1)} \right\} dμ_1 \\
=πc \int_0^∞ sinhμ_1 \left\{ e^{-βcosh^2μ_1}e^{2βcoshμ_1}e^{-β}-e^{-βcosh^2μ_1}e^{-2βcoshμ_1}e^{-β} \right\} dμ_1 \\
=2πce^{-β} \int_0^∞ e^{-βcosh^2μ_1} \left\{ \frac{e^{2βcoshμ_1}-e^{-2βcoshμ_1}}{2} \right\} sinhμ_1 \, dμ_1 \\
sinhχ=\frac{e^{χ}-e^{-χ}}{2}

さらに hyperbolic関数 $sinh,χ$ を考えると、$J$は次のようにも書き換えられます。

J =2πce^{-β} \int_0^∞ e^{-βcosh^2μ_1} sinh(2βcoshμ_1) sinhμ_1 \, dμ_1

積分部分だけを求めます。

\int_0^∞ e^{-βcosh^2μ} sinh(2βcoshμ) sinhμ \, dμ

さらに$ξ=coshμ$と置くと、$dξ=sinhμ , dμ$

\int e^{-βξ^2} sinh(2βξ) \, dξ \\

難解になってきました・・・・

以上、ガウス型で少し試行しました。スレーター型で解いてある解法ページ(2.4)は、よく知られた解であり、解に間違いはありません。しかし hyperbolic関数で解いてあるのは初めて見ました。それゆえ解法ページ(2.4)のMyLibraryをガウス型に変更するのは難解です。非経験的な解法のプログラムに組み込みたかったのですが。

※ 追記
シンプルに、$ξ=coshμ ,$と置き、$dξ=sinhμ , dμ,$を代入して、

J = -πc \int_0^∞ sinhμ_1 \left\{ e^{-β(coshμ_1+1)^2}-e^{-β(coshμ_1-1)^2} \right\} dμ_1 \\
=-πc \int e^{-β(ξ+1)^2} dξ +πc \int e^{-β(ξ-1)^2} dξ.

不定積分できないガウス積分ですが、区間を分けてガウス関数を数値積分すると解けそうです。

電子2の積分:

\intφ_{Q2}\left( \frac{a}{\sqrt{β}} \right) \, dτ_2 = 
\intφ_{Q2}\left( \frac{a}{\sqrt{\frac{1}{4}αr_{A2}^2}} \right) \, dτ_2 \\
= \frac{2a}{\sqrt{α}} \intφ_{Q2} \frac{1}{r_{A2}} \, dτ_2 \\
(a:constant)

括弧内は数値積分で得られる数値です( $β$ をある区間の数値として係数補正)。解法ページ(2.4)の電子1の座標系 A1では$r{A2}$は定数として扱うことができましたが、電子2の座標系 Original 2 では$r{A2}$は変数です。電子2の積分は、解法ページ(2.4)の下側の座標系 Original 2 ($r_{AB}$定数)を使います。まずガウス型関数Q2を代入します。__

φ_{B2}φ_{B2} = φ_{Q2} = c'α'e^{-α'r_{B2}^2}

そして座標系 Original 2 の $r{A2},,r{B2}$ さらに$,dτ_2,$を代入します。簡単なガウス関数の積分になります。__

突然ですが、このシリーズは今回で最終回です。短い間でしたが、最後までご覧いただきありがとうございました。

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