キャリア

プログラミングが大好きなWeb系エンジニアの50代以降のキャリアに関する考察

先日、サイバーエージェントさんの「身に着けた技術をいかに捨てられるか。エンジニア歴39年、今でもエンジニアで居続ける理由。」という記事が大変話題になりました。

プログラミングやテクノロジーが大好きでWeb業界で働いているエンジニアの方の多くは、「可能であれば50代以降も現場で"手を動かすエンジニア"として働きたい」と考えてらっしゃると思いますが、平松さんのような方はかなり例外的で、Web業界で多数の現場を経験してきた私でも、50代以上の現役エンジニアの方とご一緒にお仕事をさせて頂いた経験は残念ながら一度もありません。

私は現在、雑食系エンジニアTVというYoutubeチャンネルで、Web系エンジニアのキャリアに関する情報を色々と発信させて頂いているのですが、視聴者の方から「Web系エンジニアの50代以降のキャリア」に関してご質問頂いても、完全に未知の領域になる&ロールモデルとなる方があまりにも少ないため今までは漠然とした回答しか出来なかったのですが、平松さんの記事を拝見して色々と思うところがありましたので、

テクノロジーやプログラミングが大好きだが、能力もスキルも経験値も平均的なWeb系エンジニアが、50代以降も現役エンジニアとして働いていくための、再現性の高い"ほぼほぼベスト"で"ごくごくシンプル"なキャリアプラン

について、自分の経験や知見を元に考察してみました。

こちらの記事では、現時点において私が「ほぼほぼベスト」と考えているプランとその理由に関して説明したいと思います。

結論

  • 30代中盤くらいまではリスクを度外視して好きなことに好きなだけチャレンジして問題ない。
    (Matzさんのように「新しい言語を作る」でも「起業する」でも「個人開発のサービスで一発当てる」でも何でもよい)

  • 30代中盤までにチャレンジが成功して十分な金融資産を築けた場合

    • その後も好きなようにやればよい。
  • 30代中盤までに十分な金融資産を築けなかった場合

    • リスクを度外視したチャレンジは卒業する。
    • 40代後半までの10年間程度の間に毎年数百万程度の貯金&資産運用をして数千万円程度の金融資産を築いておく
    • 50代以降は「低単価でも技術的に面白い仕事」を中心に、「主役」である若い人達を支える「良質な脇役」としてチームや企業に貢献していく.

説明

50代以降は単価が下がることを許容する

求人情報や現場の実態を見れば明らかな通り、50代になるとWeb系エンジニアに限らず求人は激減しますので、今までは簡単に獲得出来ていた案件でも、書類選考の段階で除外されてしまう可能性が非常に高くなります。(求人における年齢制限は法律的には禁止されていますが、実際には厳然とした年齢差別が存在します。特にテック系スタートアップは若い人を好みますのでその傾向が顕著です)

この状況でも「平均レベルのエンジニア」が「技術的に面白い案件」をゲットする手段はたった一つで、それは「単価が下がることを許容する」ということです。

極端な例ですが、例えば「このポジションで30代中盤くらいのWeb系エンジニアを雇うには100万円必要だが、50代のWeb系エンジニアであれば同レベルの人が50万円で雇える」ということであれば、案件によっては採用される可能性は十分にあります。

一般に「年齢と共に単価は上がるもの」「スキルも経験も以前より高くなっているのに単価が上がらないなんておかしい」「若い頃より単価が下がるなんて"負け組"のようで悔しい」みたいなことを考える方がおられるかもしれませんが、そういった「つまらないプライド」に囚われてしまうと「やりたくもないマネジメントの仕事」や「誰もやりたがらないハイプレッシャーでハイノルマでやたらと責任が重い仕事」等をやらざるを得なくなってしまいますし、そもそも単価というのは基本的に「需要と供給のバランス」で決まるものなので、「労働市場における高齢者への需要が極端に低い」日本という国においては、50代になった時点で若い頃よりも単価が下がることはむしろ自然です。

単価が下がることを許容することで「技術的に面白い案件」に携わり続けることが出来て、その方が毎日楽しい気持ちで働けるのであれば、それは「敗北」ではなく「十分に合理的な選択」だと思います。

(経験の長いエンジニアが低単価を許容すると全体の単価相場を下げてしまう or 若い人の仕事を奪ってしまうというご意見もあるかもしれませんが、高齢者の単価相場と若い人の単価相場は全く異なる基準で形成されると思いますし、若い人は他にいくらでも魅力的な候補案件がありますので大きな問題ではないと考えます)

十分な金融資産を築いておく

現役引退後つまり老後のことを考えると、蓄えがない状態での低単価を50代の時点で許容することは、収入を公的年金のみに頼らざるを得なくなった場合に非常にリスクがありますし、50代以降は「自身の健康問題」や「家族の介護問題」等が発生する可能性が高くなりますので、想定通りの収入が得られる可能性は、40代以前の若い頃と比べるとどんどん低くなっていきます。

つまり、前項で述べたように、「能力的に平均レベルの高齢エンジニアが技術的に面白い単価をゲットしたければ"低単価を許容する"ことが条件になる」が、老後のことを考えると、その条件を許容するためには「50代になる前に十分な金融資産を蓄えておくことが必須である」ということになります。

「能力的に平均レベルのWeb系エンジニアが、40代後半までに数千万円程度の金融資産を築くなんて本当に可能なのだろうか?」と疑問を持たれる方が多いと思いますが、かなりの高確度でそれを実現可能なワークスタイルがIT業界には存在します。

それが「東京近辺でフリーランスエンジニアとして働くこと」です。

既に東京近辺のWeb業界でフリーランスエンジニアとして活動されている方は実感されていると思いますが、平均レベルのエンジニアが「本当に自分のスキルでこんな単価を貰ってしまって良いのだろうか?」というような案件がゴロゴロしていますし、どこかのWeb系企業さんで年収600万円程度を得ている方がフリーランスエンジニアになると、初年度から年収(売上)が1000万円前後になるというケースは全く珍しくありません。

一昔前は、フリーランス案件を探すのにも大変苦労しましたが、現在は「フリーランスエンジニア専門のエージェント」が豊富に存在しますので、40代までの平均的エンジニアの方であれば案件探しはかなり簡単になりましたし、エージェント経由で10%〜20%程度中抜きされても月単価が80万円という案件はいくらでもあります。(80万円という単価も「上」ではなく「中の上」程度の単価です)

年収が1000万円程度あると、多少趣味等にお金を使う方でも年間300万円程度の貯金は十分に可能ですし、あまりお金を使わない方であれば年間500万円以上の貯金も可能だと思います。

その状態を10年程度継続すれば、数千万円程度の金融資産は普通に蓄えられますし、40代までであれば「月単価が最低でも80万円」の状況を10年間キープすることの難易度はそれほど高くありませんので、過度な贅沢をせずに普通に働いて普通に貯金していれば、かなりの確率で40代後半までに十分な金融資産を蓄えられると思います。

FXや仮想通貨で一発当てようとか、アフィカスみたいなことをやる必要は全くありません

(ちなみに地方と東京ではフリーランスエンジニアの求人数にも単価にも大きな格差が存在するため、東京近辺以外で大きく稼ぐのはなかなか難しいかもしれません)

「主役」ではなく「良質な脇役」にポジションチェンジする

例えば新規サービスを先頭に立って開発するであるとか、新技術をいち早く導入して外部にアピールするであるとか、40代までであればそういった「主役」としての役割を当然のように企業や取引先から任されるケースも多いと思いますが、50代以降のエンジニアというのは、例え正社員というポジションであっても、会社にとってもはや「主役」ではありません。

会社側にとっての「主役」はやはり「若いエンジニアの方たち」なので、そういった若いエンジニアさんの「技術的な成長」や「モチベーションの向上」に貢献すること、つまり「主役を輝かせる脇役」としての働きが求められることになります。

具体的には、例えば私は現在某社様の機械学習チームで「MLOpsエンジニア」的なポジションを担当させて頂いているのですが、チームの「主役」は当然のことながら「若くて優秀な機械学習エンジニアの方たち」で、その方たちが苦手とする(というかあまり強い関心をお持ちになっていない)インフラやワークフロー周りの運用整備等を私は担当させて頂いているのですが、こういった

「主役」が最も得意とする領域に集中して存分に力を発揮出来るようにしっかりと「脇を固める」

という役割が、高齢者になるほどより一層強く求められるようになると思います。

(「マネジメントをやれ」とか「つまらない仕事でも引き受けろ」という意味ではありません。「その時代やそのチームの"花形"となるポジション以外での役割を受け入れる」 という意味ですが、例えば私は機械学習以外の「マイクロサービス化」や「デプロイ自動化」といったタスクも大好物なので、現在の案件では機械学習部分をあまり担当できなくても十分に楽しくやっています)

30代中盤までは好きなようにやる

前項までのことはあくまでも「30代中盤以降」の話です。金融資産は「東京近辺でフリーランスエンジニアになって10年間ちゃんと高単価で働いてしっかり貯金すれば高確度で蓄えられる」ので、30代中盤まではある程度大きめのリスクを負ったとしても好きなようにやればいいと思います。

私自身もそうでしたが、勢いがあってイケイケ状態の20代とか30代前半くらいの時期に「将来のことを考えてきちんと貯蓄や資産運用を始めましょう」と言われても貸す耳を持っていない人がほとんどだと思いますし、ある程度無茶な生き方をしても「30代中盤からフリーランスエンジニアでしっかり稼げる」という「セーフティネット」的なワークスタイルが存在しているので、この時期は「リスクはあまり考えず、やりたいことをやりたいようにやる」で良いのではないかと思います。

(ちなみに私は、主にエンジニア業務以外のこと、例えば「ストリートダンスをかなり長い期間続けてダンスバトル等に出場」したり、「近未来バイオレンス小説を書いて"小説家になろう"に投稿」したりという「クリエイティブ方面のチャレンジ」を一生懸命やっていました。全然成功はしませんでしたが、自分で決めてやったことですし十分に楽しんだのでこれに関しては後悔はありません)

こういったチャレンジがうまくいって、副産物として十分な金融資産を築けたなら、その後も引き続き自由に好きなことをやればいいと思います。

ただし、十分な金融資産を築けていない場合は、そういったチャレンジからは卒業もしくは一旦距離を置いて、50代以降に必ず訪れる「求人市場における需要の激減という大災害」に備えるための、前項までに書いたような作業に注力していく必要がある、ということになります。

一応のまとめ

平松さんのような例外的な方は別として、現時点で「50代以降のWeb系エンジニアへの需要はほとんど無い」というのが実情であり、さらに「加齢」から逃れることは誰にも出来ません。

「人生100年時代」と言われて久しいですが、労働市場ではその半分程度の「50歳」で需要が激減してしまうというのが現実で、さらに50代以降の「健康問題」の発生率等も考慮すると、この年齢までに十分な金融資産を蓄えておかないと、残りの50年をハッピーに過ごすことが非常に難しくなってしまいます。

この記事で提案したプランはあくまでも私の個人的見解に基づくものですが、「40代後半までに十分な金融資産を蓄えておく必要がある」「フリーランスエンジニアとして高単価案件に10年間携わり続けることの難易度は高くない」といった辺りの主張には十分に合理性があると思いますので、皆さんが今後のキャリアプランを考える上での一つの材料になれば幸いです。

最後に、アリババ創業者のジャック・マーさんの言葉を引用しておきたいと思います。

就活で30社落ちた中国のアリババ会長が、ダボス会議で語った意外な成功論

20歳〜30歳の時は、良いボスについていきなさい。良い会社に入って、物事をきちんとやる方法を学びなさい。

30歳〜40歳になって、もし自分一人で何かをしたい場合は、とにかくやりなさい。まだ、何かを失ったり、失敗したりする余裕があるからです。

でも、40歳〜50歳になった場合は、得意とすることをやり遂げることを私は提案します。これは新しい、面白そうだ、とチャレンジするのはおすすめしません。若い頃と比べたら危険だからです。

50歳〜60歳になったら、若い次世代の人々のトレーニングや育成に時間を費やしなさい。

60歳を超えたら、孫との時間を過ごしなさい。

全員には当てはまりませんが、多くの人にはそう言えると思います。

長めの補足

この記事は「単身者」もしくは「お子さんのいない方」向けです。

お子さんがいらっしゃる方は教育費等で莫大な出費が必要になると思いますので、フリーランスエンジニアとして高単価案件に携わり続けたとしても、一人の力で40代後半までに数千万円の貯金を蓄えるというのは少々難しいかもしれません。そこら辺は配偶者の方にも一緒に頑張ってもらう必要があると思います。

なぜこのプランが「ほぼほぼベスト」なのか

既に説明した通り、東京近辺の平均レベルのフリーランスWeb系エンジニアが、エージェント経由の案件で「月単価80万円」を稼ぐことの難易度は高くないですし、この価格帯のポジションに関しては、例えばこの記事をお読みになった方が1000人とか2000人、一気にフリーランスエンジニア市場に流れ込んできたとしても、まだ十分に空きがあると思われます。

「難易度が高くないこと」および「ポジションの空き状況」を考えると、「30代中盤以降はフリーランスエンジニアで10年程度働くことで数千万程度の金融資産を作る」ことの再現性はかなり高いと考えて良いと思いますので、「50代以降の急激な需要減」に備える上では、このプランが「ほぼほぼベスト」であると考えて差し支えないというのが私の意見になります。

「年齢は記号に過ぎない」は気休めに過ぎない。人材価値のピークは30代〜40代

「能力」を伸ばすことは何歳になっても可能だと思いますが、「人材価値」は「需要と供給のバランス」によって決まりますので、能力をどんなに高めても、「50代以降の求人数の急激な減少」に抗うことは容易ではありません。

もちろんそういった「急激な需要減」を上回るほどのペースで自分を高め続けられる稀有な能力の持ち主は存在すると思いますが、そういった「平均レベルを極端に上回る超人」を、自らのキャリアのベンチマークにするのは非常にリスクが高いと思います。

「年齢は記号に過ぎない」と思うのは自由ですが、労働市場における「年齢」とは、その人の市場価値を決定付ける「最重要変数」の一つであり、それを超越出来る方はごく一握りというのが現実です。

フリーランスエンジニアになることは難しくないし十分に稼げます

フリーランスエンジニアになることをお薦めすると「誰にでもなれるものではない」「向き不向きがある」「フリーランスになったことを後悔している人もたくさんいる」という反応がよくあるのですが、こういった反応をする方のほとんどは「フリーランスエンジニアとして数年間働いてみたことのない人達」で、単なる「食わず嫌い」というのが私の印象です。

もちろん向き不向きやメリット・デメリットはありますが、正社員としてWeb系エンジニアの平均レベルの業務をこなせている方であればほぼ誰でもフリーランスエンジニアになれると思いますし、もし「東京近辺でフリーランスのWeb系エンジニアになったが全然稼げなくてやめた。誰でも稼げるなんて嘘だった」という方がいらっしゃる場合、言葉は悪いですがそういった方は「平均レベル以下のエンジニアさん」だったか、あるいは「要領の悪すぎる情弱エンジニアさん」のどちらかだと思います。

残念ながらそういった「平均レベル以下のエンジニア」の方にはこの記事の内容は役に立たないと思いますし、そもそもWeb業界でエンジニアをやること自体が向いていないと思いますので、大手SIerさん等でエンジニア以外のなんらかのポジションにしがみつく道を探した方が良いと思われます。

50代以降も可のWeb系エンジニア求人が増える可能性はある

そもそも日本で「Webサービスの開発」という業務が発展し始めたのは20年ほど前からですし、「スマホアプリの開発」に至ってはまだ10年程度の歴史しかありません。

つまり、「Web系エンジニア」という職種の歴史自体が非常に浅いので、まだ50歳に達していない方が多く、また現在50代の方でも「モダンなスキルを身につける前に現場から離れてしまった」という方が多いので、「今も現場の最前線でプログラミングをしている50代現役Web系エンジニア」というロールモデルが非常に少ないわけです。

しかし、これから5年・10年と経っていくと、モダンなスキルを持った「手を動かせる」Web系エンジニアで50代に達する方たちが続々と出てきますので、求人の状況が変わってくる可能性は十分にあります。

資産運用

私は「iDeCo」「NISA」「小規模企業共済」をそれぞれ基本的に自動引き落としで満額支払っていますが、この場合年間で約300万円程度の積立金額になります。(iDeCoとNISAの運用先は全てインデックスファンドです)

このくらい支払っても、フリーランスエンジニアとして十分に稼いでいるので余裕のある生活をしていますし、プラスアルファでさらに貯金も可能、という感じです。

ちなみに「iDeCo」「NISA」「インデックスファンド」等の用語が分からない方は、下記の書籍がマンガ形式で読みやすいのでお薦めです。

山崎先生、将来、お金に困らない方法を教えてください! | 山崎 元, 金子 マヲ | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

で、あなたは50代になったらどうするの?

私の個人的な「50代以降のキャリア戦略」は、

・40代後半までに十分な金融資産を確保する。
・50代以降は単価を下げて「週3程度」で「モダンなスキルに継続的にキャッチアップ可能な案件」に参画し、「手を動かすエンジニア」として楽しくハッピーに働きつつスキルを高め続ける。
・そのスキルをうまく活用して、週2〜週3程度で「高単価のスポット的な案件(執筆活動等のエンジニアリング以外の業務も含む)」を手がけつつ、収益を度外視した社会貢献活動も行い、出来る限り長く働く。

というシンプルなものです。

山崎元さんという著名な経済評論家の方が、「楽天証券」に研究員として週3日で勤めて最新の現場情報にキャッチアップしつつ、それ以外の日は「執筆」や「講演」等の個人的なビジネスを行っておられるという手法を参考にさせて頂いておりまして、最近積極的にYoutubeチャンネルやTwitter等で発信しているのも「50代以降のワークスタイルへの準備の一環」でもあります。

最後に

本文中で何度か紹介させて頂きましたが、Youtubeの方で、Web系エンジニアやWeb系エンジニアに興味のある方たち向けの雑食系エンジニアTVというチャンネルをやっています。もしご興味ございましたらチャンネル登録してみて頂けると大変嬉しいです(^.^)