ポーラ・オルビスホールディングス(POHD)でのインターンを通して、チームの属人性を下げるために取り組んだこと、その効果、インターンの振り返りをまとめた記事です。
始めに
2025年9月から11月の3ヶ月間、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス(POHD)でインターンをさせていただいた42Tokyoのrikedaです。
インターンではスクラム開発のもと、RAGを用いた社内業務規則を対話形式で検索できるチャットアプリの開発に携わりました。その中で特に意識したテーマが「属人性の低減」でした。
この記事では、属人性を下げるために実施した施策やその効果、学びについてまとめます。
プロダクトの詳細やインターン全体の概要は、別のインターン生の記事をご覧ください。
(関連記事は後日公開予定です。公開され次第、こちらにリンクを追記します)
属人性について考えるきっかけ
過去に参加した数カ月間のハッカソン(他社開催)で、チームメンバー各々が特定の技術領域に専念した結果、誰かが離脱すると開発が止まるという経験をしました。その時はチームメンバーの離脱期間が短かったこともあり、属人性に課題を感じつつも十分な対策を取らないまま終わってしまいました。
今回のインターンでは、初期段階でチームメンバーが数週間休むことになり、そのチームメンバーだけが把握していた情報が十分に共有されておらず、開発に影響の出る場面がありました。この出来事から、属人性がチーム開発において、いかに大きなリスクになるのかを再認識し、「属人性を意識して行動する」ことを自分のテーマに設定しました。
インターン内で行った施策とその効果
開発チーム内で複数の改善施策を実施しました。個人的に意識していたことも含め、特に効果が大きいと感じた取り組みを紹介します。
1. 定時の進捗共有
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背景・課題
- インターンは完全オフライン環境だったが、話しかけることで相手の作業を止めてしまうことが心理的ハードルになっていた
- コミュニケーションの頻度が低く、チームメンバーの作業状況が見えにくいという課題があった
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実施内容
- 業務時間の折り返し時刻である15:00と終業前に、作業内容・進捗・詰まりポイントを共有する
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効果
- 明確に時間を決めたことで話しかけやすい空気が生まれ、心理的安全性が向上した
- 自分では気づかない「沼にハマりかけている」状態を早期発見することができた
- 他のチームメンバーの一言で問題を解決できることが多くあった
- 早い段階で情報共有を行うことで、作業の方向性を早期に修正でき、大きく失敗するリスクを減らせた
2. Backlogのチケットに「雑なメモ」を残す運用
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背景・課題
- タスクの引き継ぎ時にどこまで進んでいるかがわからず、都度担当していたチームメンバーに確認する必要があり、相手の手を止めていた
- 過去に行ったタスクと類似したタスクを行う際、どのような手順で作業したのかを担当したチームメンバーに聞く必要があり、相手の手を止めていた
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実施内容
- Backlogのチケットに、作業内容・参考URL・詰まりポイント等を書き残す
- メモを綺麗に書くことを求めすぎると書く側の心理的ハードル・時間的コストが上がり、継続しづらいので「雑でも良いからメモを残す」ことで情報を残すハードルを下げる
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効果
- タスクの引き継ぎがスムーズになり、作業の重複を減らせた
- 過去のチケットを参照することでスムーズにキャッチアップでき、未知の領域にも取り組みやすくなった
3. 途中でもpushするルール
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背景・課題
- チームメンバーが急に休むと、ローカルの進捗が共有されず作業の重複が発生する
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実施内容
- 終業前には必ずpushする(途中でもOK)
- コミットメッセージは適切に記述する
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効果
- チームメンバーが急に休んだ場合でも、コードの進捗がGitHub上で可視化されているため、タスクの引き継ぎが容易になった
- 作業の重複やロスを抑えることができた
4. タスクの取り方の工夫
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背景・課題
- 同じツールやAWSサービスのタスクを同じ人が連続で担当すると、その領域が属人化してしまう
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実施内容
- 同じ種類のタスクはなるべく連続で取らないように意識する
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効果
- 特定の人しか把握していない領域を減らし、複数人が対応できる状態を作れた
- これにより、チームメンバー同士が気軽に質問・相談しやすい雰囲気が生まれ、心理的安全性の向上につながった
インターン外で行った勉強会
業務外で週1回の頻度で、インターン生同士の勉強会を実施しました。
勉強会は、属人性の原因となる「特定の人に知識が集中する状態」を解消することを目的としていました。
1. 開催のきっかけ
- チームメンバーの突発的な休みにより属人性のリスクを強く意識したこと
- 人事の方との1on1で属人性についての話になり、「属人化を防ぐために何か行動してみよう!」という提案をいただき、勉強会開催の後押しとなったこと
- チーム内にフロントエンドへの強い関心を持つチームメンバーがおり、チーム全体で学ぶことで理解が深まり、技術的な幅も広がると考えたこと
ちなみに、私は勉強会開催の言い出しっぺであることと、42Tokyoの同期と半年ほど勉強会を行っており、効果の薄い勉強会のパターンは理解していたため、勉強会で使用する資料作りを担当しました。
2. 勉強会の内容(全4回)
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TypeScript: APIレスポンス整形関数の実装
→ 業務で実際に遭遇した型安全なデータ整形処理のより良い実装を習得するため -
Cookie&Session: API サーバ実装を通して理解する
→ チームメンバーから「Cookieまわりの理解を深めたい」という話があったため -
Cookie&Session第2回(もくもく会)
→ 各自が理解を深めたい内容を学習した -
OAuth/OIDC: クイズ形式で学ぶ認証と認可
→ NextAuthを用いて認証機能の実装が直近の業務で必要だったため
3. 意識したこと
- 業務に直結するテーマに限定すること
→ 業務と切り離されたテーマは実務で活かされにくく、学びの継続につながらないため - 1〜2時間以内に収めること
→ 集中を維持できる長さであること、勉強会への参加が負担になりすぎないようにするため
4. 効果
- 個人学習では得られない他者の視点や疑問を共有でき、理解が深まった
- コミュニケーションの場としても機能し、業務内の進捗共有と合わせてチームメンバー間の情報共有が促進された
- 勉強会で認証技術を学んだことで、複数のチームメンバーが認証実装タスクへ対応できるようになり、属人性の低減に繋がった
5. 反省点
- 資料が多すぎて時間内に終わらなかった
→ メリハリをつけた資料作りが必要 - 事前動作確認不足により、勉強会当日にトラブルが発生した
→ 徹底した動作確認が必要 - 勉強会で得た知見共有の時間が不足していた
→ あらかじめ時間を十分に確保すべき
6. 使用した資料のリポジトリ
勉強会で使用した資料は以下のリポジトリにまとめています。
インターンを振り返って
この3ヶ月で、技術面・チーム開発面ともに多くの学びがありました。
インターン開始直後はAWSの知識がほぼなく、ミーティングについていくのも大変でしたが、AmplifyによるCD、APIGateway & LambdaによるAPI実装、KnowledgeBaseを用いたRAGの構築などを通して、クラウド開発の全体像を掴むことができました。
また、認証技術(OAuth / OIDC)の基礎からNextAuthによる実装まで経験でき、確かな理解につながりました。
技術面だけでなく、「チーム開発の価値」に気づけたことも、このインターンに参加して良かったと思える点です。私がこれまでの参加してきたチーム開発では、チームメンバーそれぞれがバラバラの時間に作業し、プロジェクトに取り込んでいくことが多かったため、チームとして連携する感覚が薄かったと感じています。今回のインターンでは、デイリーや15時・終業前の進捗共有によって、詰まりを早期に解消し、大きな失敗のリスクを未然に防ぐことを学びました。また、スプリントゴールを意識しながら、タスクを巻き取る・巻き取ってもらう動きが自然に生まれたことも、チームとして良かった点だと思います。
さらに、コスト試算・技術選定・画面設計・資料作成といった、現場に近い業務に触れたことで、「学びとしての開発」と「仕事としての開発」の違いを理解する非常に良い経験となりました。
反省点も多くあります。
- AWSに関してもっと積極的に質問すべきだった
- Formatter / Linter導入が遅れた
- PoCで作成したフロントエンドプログラムを直接mainに入れてしまった
- インターン生同士でのレビューが不足していた
他にも多くの反省がありますが、これらは次のチーム開発で必ず改善していきます。
最後に、社員の方々には、お忙しい中でもコードレビューの時間をしっかり割いていただいたり、勉強会や食事会、1on1、発表の場など多くの機会をいただき、本当に感謝しています。
このインターンで学んだ「属人性を下げる意識」を今後のチーム開発でも実践し続けます。