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ラズパイPicoオシロ 発振回路の矩形波を観測する

Last updated at Posted at 2024-03-30

 前回の投稿「ラズパイPicoオシロ 使用前の補正作業」で、ラズパイPicoオシロスコープの使用前の補正作業の仕方を紹介しました。
ラズパイPicoオシロ 使用前の補正作業 (Qiita@pipito-yukio)

 ラズパイPicoオシロの準備作業が完了したのでいよいよ自作した電子回路をオシロスコープで観測してみます。

 観測対象は下記の発振回路の中の「無安定マルチバイブレータ タイマーIC 555」(右下)と呼ばれるものです。この発振回路は下記参考書の「わかる! 電子工作の基本100」を参考にハンダ付けの練習用に作成したものです。

 タイマーIC 555 は簡単な回路で手軽に矩形波を出力することができ、かつ抵抗とコンデンサーの組み合わせにより矩形波のHIGH時間・LOW時間と周波数を計算することができるのでラズパイPicoオシロを使った初めての観測対象としてピッタリです。

OcsillateCircuit_1_overview.jpg

 発振回路中のタイマーIC、トランジスタ、抵抗、コンデンサー類はAmazon購入した中華製のハンダ付け練習キットで揃えることができました。
※青色の抵抗は格安の中華抵抗セット、スイッチ・タクトボタン・ピンソケット・ジャンパーピン類は別途購入しています。

SolderingPracticeKit_amazon.jpg

使用部品

 部品は全てハンダ練習キットに付属していたものなので計算式通りの精度は出ない想定ですが、波形と精度の確認ができればよしとします。

  • タイマーIC 555
  • 抵抗: R1=10 kΩ, R2=10 kΩ
  • 電解コンデンサ: C1=100μF (16V)
  • LED: 仕様不明
    ※1 標準電流 20mA、順方向電圧 Vf=2.1Vと仮定
    ※2 LED用制限抵抗: 220 Ω
  • 外部電源: 4.5V (乾電池 1.5V x 3本)
    OscillatorCircuit_Check_voltage.jpg

 まずは下記 DigiKey さんのサイト 「555タイマカリキュレータ」で概算値を計算し、ラズパイPicoオシロの時間軸設定値の参考にします。

[555タイマ回路計算値]

  • HIGH時間: 1366 ms
  • LOW時間: 693 ms
  • 周波数: 0.48 Hz

※実際の回路は出力端に点滅確認用のLEDを接続しているので計算値は目安とします。

参考書

「わかる!電子工作の基本100」[秀和システム]

以下の項番が回路作成で参考にした箇所

  • Chapter5
    • [056] 便利なタイマーIC555 の便利な使い方は?
  • Chapter6
    • [062] LEDを点滅させるには?
    • [072] マルチバイブレータ (非安定、単安定、双安定)の意味は?
      (2) 単安定マルチバイブレータ: ワンショットマルチバイブレータ
      (4) 非安定マルチバイブレータでシグナルを作る

「オシロスコープ超入門」[株式会社アドウィン]

以下の項番が参考にした箇所

  • 4 構成信号を見てみよう
    • 波形の種類
  • 6 プローブの減衰比
  • 7 プローブの役割と影響
  • 19 トリガの役割
  • 20 各種トリガ設定

トランジスタ技術 2023年8月号「研究!1万円級ポケット測定器」[CQ出版社]

  • 第1部 まずは1台!小型オシロ大研究
    • Appendix1 オシロ選びのためのスペック&性能 ミニ辞典
    • 第7章 回路の波形信号を実際に測る

1. 測定器セット

Probingt_oscillatorCircuit_1_front1.jpg

1-1. プローブの接続箇所

 今回の回路には出力端に LEDが接続されているためグラウンド・リードの接続箇所は注意が必要です。

Probingt_oscillatorCircuit_2_measureihng.jpg

  • プローブ: 倍率 x1
  • 出力端: プローブ フック・チップ
  • GND端: LEDのGND端から少し離れた箇所にプローブのグラウンド・リードを接続
    ※LEDのGND端に繋いだ時の画面キャプチャ。LOW側でノイズが目立っています。

2. 発振回路の波形観測

2-1. ラズパイPicoオシロ側入力レンジの設定

入力レンジを ±8V (真ん中のスイッチ) に設定する
※入力電源が4.5 V, 計算上のデューティ比が 66 %なので出力端の電圧を 3Vと仮定
 [計算式] 出力電圧 = 4.5 x ( 1366 / (1366 + 693)) = 2.97 ≒ 3

2-2. 時間軸変更

想定するHIGH時間が 1366 (ms) なので、オシロの時間レンジを 500 (ms) に設定します。
※この設定によりHIGH時間がほぼ3目盛に収まります。

Scoppy_1_HorizontalSetting_500ms.jpg

こちらが時間軸を 500 (ms) に変更したときの画面キャプチャ
※1 画面左上端のサンプリングレート(-S/s) とメモリ長(0.0pts) のステータスが正しく表示されていません。
※2 さらに次の 2-2 の調整が必要になります。

MeasurePulse_1_8v_prb_x1_trg0v.jpg

2-3. 電圧レンジ・ポジションの調整とトリガ設定

  • 電圧レンジ・ポジション
    • 電圧レンジ: 1目盛り当たり 1.00 V
    • ポジション: 波形を画面の中央(縦軸)によせるため -1.00 V に変更
  • トリガの設定
    • トリガ・レベル: 1.00 V
    • トリガ・タイプ: 立ち上がり (RISING EDGE)
    • トリガ・モード: 自動 (AUTO)

Scoppy_2_Virtical_triggerSetting.jpg

こちらが電圧レンジ・ポジション、トリガを設定したときのの画面キャプチャ

MeasurePulse_1_8v_prb_x1_trg1v_1.jpg

計算値と観測値の比較

MeasurePulse_2_measureSnapShot.jpg

※1 中国製のハンダ練習用キット(粗悪?な部品)から作った回路でしたがそこそこの値になっています。
※2 計算値は [LED+制限抵抗] を考慮してない場合の値です。

観測項目 計算値 観測値
一周期の時間 (ms) 2,059 (1,366 + 693) 2,200
周波数 (Hz) 0.48 0.45

実行中に時間スケールを1秒に変更すると直ちに画面に反映されます。
※1 今回の回路では時間スケールを大きくすると縦線が荒くなりました。
※2 オシロスコープの参考書によると、時間スケールが大きくなるほどサンプリングレートが低くなるとのことなのでその影響が出ているのかもしれません。

MeasurePulse_1_8v_prb_x1_trg1v_2_h_1000mv.jpg

最後に

 今回矩形波の観測に使った発振回路は3年位前にハンダ練習用として作ったものです。そのときはプログラムなしで規則正しくLEDが点滅するのを見てものすごく感動しました。 どのような電子回路でも毎日の生活の一部として使い続けるにはハンダ付けは避けて通れません。

 4千円そこそこで作った簡易オシロスコープでその点滅を実際に矩形波として観測できたことに感激しています。

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