はじめに
事業部MVPを取った優秀な後輩から
「もしかして、たった2つの記事でギブアップですか?」
的な圧を感じたので記事を書いたのですが、
今度は
「ぼくの倍以上の社会人歴ですよね?仕事してたら記事書けますよね?記事書けないとか今まで寝てたんですか?」
という新しい圧を感じたので、寝てないことの証明でもう一記事書くことにしました。
顧客の声を聞くことと、顧客の声を聴くことの違いについてのお話。
こんなことありませんか?
「お客様との商談でこの機能がないと導入できないって言われました!」
「定期フォローの時、〇〇をできるようにしてほしいって言われました!」
こういう開発要望をセールスやCSから共有受けることよくありませんか?
でも、ときどき、なんとなく、胸の奥がザワつくことがあるんです。
「あれ? それって“聞いた”だけなんじゃないかな・・・」
「本当にそれを開発して、売上って上がるのかな・・・」
って。

プロダクトを成長させていく上で、顧客の声って、ただ受け取るだけでは足りないことがあるんですよね。
相手の言葉の“奥”にある背景や動機、つまり「なぜそう言ったのか?」まで感じ取りにいかないと、
作っても使われないプロダクト ができてしまいます。
この文章では、
「顧客の声を聞く(=ヒアリング)」 ことと、
「顧客の声を聴く(=インタビュー)」 ことの違いについて、
プロダクトマネジメントの経験から、モヤモヤが少しだけ晴れるといいな〜と思っています。
ざっくり、ふんわり、言葉の持つ雰囲気をまとめてみる
用語 | 意図や雰囲気 |
---|---|
ユーザーヒアリング | 相手の言葉を受け取る(受信重視) |
ユーザーインタビュー | 相手の意図を掘り下げる(探索重視) |

フォードの逸話に学ぶ「聞く」ことの限界と可能性
プロダクトマネジメントの勉強をしているとよく出てくる話として、
ヘンリー・フォード逸話があります。
ヘンリー・フォード:
アメリカの実業家で、フォード・モーター創業者。
工業製品の製造におけるライン生産方式による大量生産技術開発の後援者である。
自動車王と称えられた。
「もし顧客に何が欲しいかを尋ねていたら、彼らは“もっと速い馬”と答えていただろう」
当時、移動手段といえば馬車。
道が悪く、時間がかかり、手間もかかる。
それでも「もっと速く移動したい」というニーズは確かにあったはずです。でも、そのときの顧客の“言葉”として出てきたのは「もっと速い馬がほしい」だった。
※諸説ありますが、プロダクトマネジメントの文脈ではよく聞くエピソードです。
この逸話が教えてくれるのは、
「顧客は“自分の本当の欲しいもの”を、言語化できるとは限らない」
ということです。
「聞く」という行為は、ユーザーが語った言葉をそのまま受け取るもの。
でも「聴く」という行為は、その言葉の裏にある意図や文脈、背景に 耳と心を傾ける こと。
たとえば、こんなイメージです。
-
聞く:
顧客「もっと速い馬がほしい」
→ PdM「なるほど、馬の強化が必要かも!」 -
聴く:
顧客「もっと速い馬がほしい」
→ PdM「なぜ速い馬が欲しいんだろう?“移動が不便”って思ってるのかな?本質的には“時間短縮”がしたいのかもしれない!」
つまり、「聞く」は .顧客の考え を収集する行為、
「聴く」は 考えの背景にあるニーズや目的 を汲み取る行為だと理解しています。
フォードの逸話を通じて見えてくるのは、
ユーザーの声を“聴ける”かどうかが、 プロダクト成長の角度 を大きく左右するということ。
そのため、単に「聞いて終わる」のではなく、
“何を本当に欲しているのか”を聴くために想像力をもって迫ること
が求められているのかもしれません。
それでは、"聴く"ことに集中して、"聞く"ことをやめよう!

いやいやいや、少しお待ちいただきたい。
"聞く"ことも大切ではあるんです。
どっちが良い悪いじゃないんです。
要は、使い分ける必要があるというだけです。
ちょっと雰囲気で分類してみましょうか。
項目 | ヒアリング | インタビュー |
---|---|---|
主体 | 相手中心 | わたしたち中心(聞き出す側) |
目的 | 情報収集 | 仮説検証・動機の理解 |
深さ | 広く浅く | 狭く深く |
効果的なタイミング | 営業活動(提案・導入)・細かな改善箇所を知りたい時 | 初期のニーズ検証フェーズ・プロダクトの価値向上のための課題探索 |
なんとなく、こんな感じだと思っています。
ユーザーインタビューで顧客の声を聴いてみよう
まだまだPdMとしても試行錯誤中ですが、ユーザーインタビューについての経験をまとめてみます。
うまくいかなかった経験

-
「言われたこと」を鵜呑みにして終わる
- 例:「検索ボタンが小さいです」→「じゃあ大きくしますね!」で終わる
- → 背景にある“探す行動自体が面倒”を見逃してしまう
-
質問リストを“消化”することが目的化している
- 全部聞けたけど、心の距離は近づかなかった
- → 質問すること ≠ 相手を理解すること (わたしたち聞き手の姿勢が大切)
-
“感想集め”に終始している
- 「この機能どうでした?」→「まあまあでした」→「(なるほど・・・)」で終了
- → 本当に知りたいのは“なぜそう感じたか”の方
-
観察をしない/ユーザーの文脈を見落とす
- ユーザーの表情や操作の詰まりに無関心
- → インタビューが“チャット”のようになってしまう
-
仮説を持たずに臨んでしまう
- 闇雲に話を聞いて「で、どう活かすんだっけ・・・?」となる
- → 仮説があるから、発見にも意味が出る
気をつけていること
-
目的を“明確に”してから臨む
- 行動の動機を知りたいのか?業務の流れを知りたいのか?仮説を検証したいのか?
- → 目的が曖昧だと、質問もフワッとしがち
-
“聞きたいこと”より、“語ってもらう空気”を大事にする
- 正直、最初の5分はどうでもいい雑談でもいい
- → 信頼の上に、本音は宿る
-
「なぜ?」を掘りすぎない、“なぜ疲れ”への配慮
- 「なぜですか?」の連発は詰問っぽくなる
- → 「どんな場面でしたか?」「覚えていることありますか?」の方が自然に深まる
-
答えを急がない、“間”を尊重する
- 沈黙=次の言葉が生まれる前兆。焦って次の質問に飛ばない。
- → 深い話は、静けさからやってくることもある
-
“仮説”は持つが、“正しさ”は押しつけない
- インタビューの場は検証であって、説得ではない
- → こちらの意図は下げ、相手の経験に委ねる
-
最後まで「人と人」として接する
- 質問者と回答者ではなく、興味を持って話を聞く“対話の相手”として向き合う
- なんなら、教えを乞う立場の意識を持って臨む

おわりに
繰り返しになりますが、 聞く と 聴く のどちらが正しくてどちらが間違っているということを言いたいわけではないです。
違いを理解して使い分けしたいな〜と気を付けていて、思考の再整理のためにまとめてみました。
ちなみに、私が好きなインタビュー項目は
「このプロダクトにキャッチコピーをつけるとしたら、何てつけますか?」
です。
担当プロダクトがどのように認知されているかを知る機会になって、様々なインサイトを得られます。
FYI
私のバイブル
私の学びの場
プロダクト筋トレコミュニティ
(いつも勉強させていただいています。ありがとうございます。)