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名詞を「の」で修飾する副詞を探す (BCCWJ と 中納言 と Python)- 前半

Last updated at Posted at 2018-11-23

計量国語学屋さんが使うという『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)を、言語学初心者のぼくも使ってみようと思ってやってみました。
書き言葉を集めたデータベースである BCCWJ を使って、副詞の使われかたを観察します。

前半の今回は、同期と目標、データの取得、解析(前半)について書いていきます。

動機 と 目標

どんな副詞が、〈副詞〉+「の」で 名詞を修飾するのか。疑問が湧いてきました。
副詞というのは、動詞や形容詞を修飾するやつだと言われていますが、オノマトペも副詞だし、なんかいろいろあります。実は、ぼくはまだよく分かっていません。
頭の中で考えていても限界があるので、頭の外のデータを調べてみることにしました。

目標を、次のように設定します。

  1. 副詞を「『の』で名詞を修飾しやすいもの」と「そうでないもの」に分類する
  2. それぞれにはどんな(意味などの)違いがあるか考える

『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)のデータを『中納言』で取得する

『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)からのデータの取得には『中納言』を使用しました。『中納言』では、ぽちぽちっとすると、好きな条件で検索結果を取得することができます。

今回は、
① 〈副詞〉
② 〈副詞〉+「の」+〈名詞〉
という2つの条件で検索しました。

検索

『中納言』の検索画面のスクリーンショットです。
スクリーンショット 2018-11-20 14.46.47.png

ダウンロードする前に、文字コードを指定しましょう(知らなくてちょっと焦りました)。

データ

テキストファイルの1行目は下のような感じです。

サンプル ID     開始位置        連番    前文脈  キー    後文脈  語彙素読み      語彙素  語彙素細分類    語形    品詞    活用型  活用形  書字形  発音形出現形    語種    原文文字列    レジスター      コア    固定長  可変長  執筆者  生年代  性別    ジャンル        書名/出典       副題/分類       巻号    編著者等        出版者  出版年  反転前文脈

検索結果が多い場合には、最終行にこんなことが書いてあります。

100000 件より多くの検索結果が見つかりました。そのうち 100000 件をダウンロードしました。

①〈副詞〉については 100,000 件、②〈副詞〉 + 「の」 + 〈名詞〉については24,073 件のデータを取得することができました。

ところで、この100000 件というのは、ランダムに選ばれたものと考えていいのでしょうか。ちょっと気になりますが、ランダムだと思っておくことにします。

準備

ダウンロードしたテキストファイルは、python で書いたプログラムを使って解析しました。
ヒストグラムと散布図のプロットには、Matplotlib を使用しました。

表記ゆれの統一

ひらがな・漢字・送りがななどの表記違いについて、「語彙素読み_語彙素」が同じものを同じ語としました。

たとえば、
「たいてい」と「大抵」や、「やっぱし」と「やはり」を区別しません。

キー 語彙素読み 語彙素
たいてい タイテイ 大抵
大抵 タイテイ 大抵
キー 語彙素読み 語彙素
やっぱし ヤハリ 矢張り
やはり ヤハリ 矢張り

「まだ」と「いまだ」を区別します。

キー 語彙素読み 語彙素
まだ マダ 未だ
いまだ イマダ 未だ

そして、下記では「語彙素読み_語彙素」が同じものの中で最も多い「キー」を代表として表示しています。

UniDic での副詞

ところで、最初のツイートにある、「もしもの時」の「もしも」や、「いつもの店」の「いつも」は、UniDic では副詞とされていないので、
「もしも」 = 「もし(副詞)」+「も(助詞)」
「いつも」 = 「いつ(代名詞)」+「も(助詞)」
というふうになります。

順位と出現数

足したり引いたりする前に、データの様子を見てみましょう。

① 〈副詞〉

100,000 件の中で、「語彙素読み_語彙素」が異なるものが 1,667 個ありました。上位 10 個は下のようになり、「そうなんですか」の「そう」が一番多かったです。

順位 キー 出現数
1 そう 7415
2 どう 5423
3 もう 3689
4 こう 2758
5 よく 2324
6 また 1987
7 まだ 1984
8 少し 1689
9 すぐ 1511
10 つまり 1390

順位と数のヒストグラムは下のようになりました。
こんなの見たことあるぞ! Zipf の法則ですね。単語全体だけではなく副詞だけでも Zipf の法則に従うんですね。

hist_adverb.png
hist_adverb_log.png

② 〈副詞〉 + 「の」 + 〈名詞〉

24,073 件の中で、「語彙素読み_語彙素」が異なるものが 653 個ありました。上位 10 個と、順位と数のヒストグラムは下のようになりました。
「初めての経験」「かつての教え子」「一番の宝物」「一層のご活躍」…そんな感じです。

順位 キー
1 初めて 2602
2 かつて 1512
3 一番 1443
4 一層 1360
5 たいてい 1108
6 まったく 832
7 数多く 830
8 かなり 823
9 少し 696
10 突然 695

後件を指定した場合でも、Zipf っぽくなりました。

hist_adv+no+noun.png

解析

後件を指定しない ① 〈副詞〉の場合と、「の」で名詞を修飾する ② 〈副詞〉 + 「の」 + 〈名詞〉 について、相関を見ていきます。

相関プロット

①を縦軸、②を横軸にとって両対数でプロットしたのが、下の図になります。

plot_adverb_log.png

上に行くほど、よく使われています。右に行くほど、「の」で名詞を修飾する場合によく使われています。
右下の領域に分布がないのは、「の」で名詞を修飾する場合があるとき、後件を指定しなくてもゼロになることはないからです。

プロット上での例 (いきなり・かなり・まさか・もっと)

最初に考えていた、いきなり・かなり・まさか・もっと の 4 つについて、上の図に、ピンクの三角で示しました。
「まさか」と「いきなり」は、後件を指定しない場合の出現数では同程度ですが、「の」で名詞を修飾する出現数は「まさか」の方が多く、「まさか」のほうが「の」で名詞を修飾しやすいと分かります。

「の」で名詞を修飾する許容度について、順に並べると次のようになると考えられます。
🙅🏻‍♀️ もっとの量 < いきなりの腹痛 < かなりの量・まさかの結果 🙆🏻‍♀️

今後の解析

上の散布図「〈副詞〉 出現数」 対 「〈副詞〉 + 「の」 + 〈名詞〉 出現数」 に条件をかけて、「の」で名詞を修飾するものと、そうでないものを選び出す予定です。

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