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クラウドエンジニアが「さくらのクラウド」のメリットと課題を考えてみる

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Last updated at Posted at 2026-04-01

はじめに

「クラウドといえば Azure か AWS、GoogleCloud(以下、ハイパースケーラー)」――多くのエンジニアにとって暗黙の前提ではないでしょうか。

筆者も Azure を中心にクラウドシフト、クラウドリフト案件に携わってきましたが、最近「さくらのクラウド」を改めて調べる機会がありました。ガバメントクラウド(以下、ガバクラ)認定や ISMAP 登録など新たなポジションを築く一方、ハイパースケーラーとの差も見えてきました。

本記事では、さくらのクラウドのメリットと限界をフラットに整理します。クラウド選定の判断材料としてお読みください。

第1章 国産クラウドの特徴とそのトレードオフ

データセンターが日本国内にあることの意味

Azure や AWS にも東日本・西日本リージョンはありますが、運営主体が海外企業である点は、官公庁・金融機関のプロジェクトで議論になることがあります。

さくらインターネットは石狩データセンターをはじめ、設計・建設・運用をすべて自社で国内完結しています。これにより以下のメリットがあります。

  • 米国のCLOUD法の回避: 米国のCLOUD法の影響を受けない。例えば、「海外政府からのデータ開示要求リスクをゼロにしたい」という自治体、官公庁、医療機関、または厳格なポリシーを持つ国内企業にとっては、さくらのクラウドのような純国産クラウドが強く推奨されます
  • 日本語による一次サポート: 障害時に英語翻訳を介さず迅速に対応してもらえます。実際にMicrosoftのサポートチームとのやり取りも日本語ではできますが、開発チームが米本土にあるため時間がかかったり、組織や国の隔たりから情報を提供してもらえないことも多いです

国益・経済安全保障の視点

技術的なメリットとは別に、国内産業への投資という視点も無視できません。

  • IT投資の国内還流: 海外クラウドへの支出は外貨流出になるが、国産クラウドへの支出は国内の雇用・技術開発に直結する。2023年時点では国内に5.5兆円もの赤字
  • 経済安全保障: 2022年施行の経済安全保障推進法でも、基幹インフラのサプライチェーン安定化が求められている。国産クラウドの選択肢を維持すること自体が国のレジリエンスに寄与する

もちろん、国産だから無条件に選ぶべきという話ではありません。ただ、クラウド選定の評価軸に「国内産業への貢献」を加えることは合理的です。

参考:デジタル赤字拡大は悪いことなのか?(MRI)

国産クラウドを選ぶ際に考慮すべき点

一方で、課題もあります。

  • リージョンの限定: グローバル展開には海外リージョンがないことがボトルネック
  • エコシステムの規模: マネージドサービスやサードパーティ連携はハイパースケーラーに差がある
  • 情報量の差: コミュニティやナレッジベースはハイパースケーラーが圧倒的に充実

調べたところ、いくつかの手段で上記の欠点をさくらのクラウドは補おうと試みています。ただし「国産だから安心」ではなく、要件に照らして有利かどうかを見極めることが重要です。

第2章 コストの透明性――円安時代に効くメリット

クラウドコストの大半はComputeとStorage

クラウド費用の内訳を見ると、仮想マシン(Compute)とストレージが全体の7〜8割を占めるケースが一般的です。さくらのクラウドは転送量課金が無料なので話題になることもありますが、実際のインパクトはComputeやStorageほどではありません。

そこで、費用の大部分を占めるこの2領域を中心に比較します。

項目 ハイパースケーラー(Azure/AWS) さくらのクラウド
通貨建て 米ドル建て(為替変動リスクあり) 日本円建て(為替影響なし)
Compute(仮想マシン) 従量課金が基本。RI/Savings Plan で割引可能だが、1〜3年のコミットが必要 月額固定が基本。スペック単位の明瞭な料金体系
Storage 階層型の従量課金(Hot/Cool/Archive等)。最適化には設計が必要 シンプルな容量課金。階層設計の手間が少ない

参考:ご利用料金の計算方法(さくらのクラウド)

円安がプロジェクト予算を直撃する

2022年以降の円安で、ドル建てのクラウド費用が膨張し年間数百万円の予算超過が発生したケースは珍しくありません。Compute・Storageが費用の大半を占めるため、為替の影響額も大きくなります。

さくらのクラウドは日本円建てのため、為替リスクを排除できます。単なる「安さ」ではなく、予算の予測可能性という経営的な価値です。

ハイパースケーラーのコスト最適化には専門知識が要る

Azure や AWS でコストを抑えるには、RI(予約インスタンス)やSavings Plan の選定、ストレージ階層の設計、未使用リソースの棚卸しなど継続的な最適化運用が必要です。実際に私も何度も苦労してきて「え?ここに料金かかるの?」って後悔は多いです。

さくらのクラウドは月額固定ベースのシンプルな体系で、こうした最適化コスト自体を抑えられる点がメリットといえます。ただし、大規模なリソースの動的スケーリングが求められるケースでは、従量課金の柔軟性が有利に働く場面もあります。

第3章 ガバメントクラウドとISMAP――エンタープライズ品質の証明

この章はAzureやAWSもクリアしているので、両者の比較差分とはなりません。

ガバメントクラウドとは何か

さくらのクラウドが認定されているガバメントクラウド(ガバクラ)は、デジタル庁が推進する政府共通のクラウド利用環境です。
認定には以下の厳格な基準をクリアする必要があります。

  • ISMAP への登録
  • データの国内保存の保証
  • 可用性・信頼性に関する SLA の提供
  • 政府調達に耐えうるセキュリティ統制

ISMAP登録が意味すること

ISMAP は政府機関がクラウドを安全に調達するための評価制度で、第三者監査によりセキュリティ水準が客観的に証明されます。民間企業にとっても以下の点で有効です。

  • セキュリティ審査の工数削減: 社内セキュリティ部門への説明材料に活用可能
  • 顧客提案時の信頼獲得: 官公庁・金融機関向けではISMAP登録が前提条件になるケースも多い
  • コンプライアンス対応の簡素化: 第三者監査済みのため独自監査コストを削減

ガバメントクラウド知見の民間活用

ガバクラで培われた運用知見やセキュリティプラクティスは、民間システムにも適用可能です。自治体向けのセキュリティ要件は金融・医療業界の水準と多くが重なるため、ガバクラレベルの基盤上にシステムを構築できる点は大きな利点です。

参考資料:ガバメントクラウド(デジタル庁)

第4章 Azureとの比較で見える「使いどころ」

さくらのクラウドが向いているケース

さくらのクラウドがあらゆる場面で優れるわけではありません。大切なのは適材適所です。

< ユースケース > < さくらのクラウドの優位性 >
データの国内閉じ込めが必須 運営主体・データセンターとも日本国内で完結
コスト管理をシンプルにしたい 月額固定・日本円建てで予算が立てやすい
海外のクラウド法回避 で、海外政府の開示要求リスクがゼロ

Azure が向いているケース

一方で、以下のケースでは Azure が有力です。

< ユースケース > < Azureの優位性 >
グローバル展開 世界60以上のリージョンを持つインフラ
Microsoft 製品との統合 M365 や Entra ID 連携が前提のシステム
サービスの豊富さ CosmosDBやAzure OpenAI Service 等のマネージドサービスが豊富

「どちらか」ではなく「組み合わせ」という発想

実務ではマルチクラウド戦略も有効です。

  • データ主権が問われる領域はさくらのクラウドに配置
  • Azure OpenAI等の高度なマネージドサービスが必要な領域は Azure を活用
  • さくらプライベートクラウドをクラウド間の通信を安全にルーティング

技術リーダーに求められるのは、要件に最適なクラウドを選定できる引き出しを持つことです。

おわりに

「クラウド=ハイパースケーラー」という固定観念を外し、フラットに選択肢を見直してみてください。次の提案書にもう1つの選択肢を加えてみてはいかがでしょうか。

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