はじめに
2026年8月24日付の Google AI (Gemini API) チェンジログにおいて、ベータ機能一覧から 「Semantic Retriever」 の記載が削除されました。Semantic Retriever は、Gemini API 上でドキュメントやコーパスを管理し、セマンティック検索・RAG(Retrieval-Augmented Generation)を実現するための機能です。
差分としては1行が消えただけの小さな変更に見えますが、RAG構成を Gemini API 純正機能に依存して組んでいる開発者にとっては見過ごせない変更です。本記事では今回の変更内容と、影響を受ける可能性がある人・取るべき対応をまとめます。
📌 影響を受ける人
- Gemini API の
Semantic Retriever/ コーパス管理 API を使って RAG やドキュメント検索機能を実装しているエンジニア- Gemini API のベータ機能を前提に技術選定・設計をしている開発チーム
変更の全体像
今回のチェンジログ差分で「ベータ機能一覧」に何が残り、何が消えたかを整理すると以下の通りです。
このほかチェンジログには以下の記述も含まれていますが、内容自体に変更はありません。
- マルチモーダル対応: Image が新たにサポートされるモダリティとして追加
- 生成候補数の仕様: Gemini モデルは1候補のみを返す
- Safety Settings / SafetyRating カテゴリが従来と異なる
変更内容
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| ベータ機能一覧 | Function Calling / AQA / Semantic Retriever | Function Calling / AQA |
| Semantic Retriever の記載 | あり | 削除 |
| ドキュメント最終更新日 | 2026-08-13 UTC | 2026-08-24 UTC |
⚠️ Breaking Change(可能性あり)
今回の差分から確認できるのは「ドキュメント上の1行が削除された」という事実のみで、Google からの明示的な廃止アナウンスや代替手段の案内は含まれていません。しかし、ベータ機能一覧からの削除は一般的に 提供終了・機能整理の予兆 であるケースが多いため、注意が必要です。
対象の API・モデルは以下の通りです。
- 影響を受けるモデル: Gemini
- 影響を受ける API: Gemini API, Semantic Retriever API
影響と対応
現時点でドキュメントの記載が消えただけで、API自体が即座に使えなくなったという情報ではありません。とはいえ、本番システムで利用している場合は早めの確認・対応をおすすめします。
具体的な確認・対応ステップ:
-
現状確認:
Semantic Retriever/ コーパス管理系エンドポイント(ドキュメント登録・検索)を実際に呼び出し、正常応答するか確認する - 公式情報のウォッチ: Google AI の公式ドキュメント・リリースノートで廃止告知が出ていないか継続的に確認する
-
代替手段の検討: 依存度が高い場合、以下のような代替構成を検討する
- Gemini API の File Search(利用可能な場合)
- Vertex AI Search / Vector Search などの上位サービス
- Pinecone・Weaviate・pgvector 等の自前ベクトルDBを使ったRAG構成
💡 Tips
RAGパイプラインを Semantic Retriever に強く密結合させていると、廃止時の移行コストが大きくなります。ベクトルストアの抽象化レイヤーを設けておくと、将来的なサービス切り替えが容易になります。
コード例
Semantic Retriever を利用したドキュメント検索から、汎用的なベクトルDBベースのRAG構成に切り替える場合のイメージです。
Before: Semantic Retriever を利用したコーパス検索(イメージ)
import google.generativeai as genai
genai.configure(api_key="YOUR_API_KEY")
# コーパスに対してセマンティック検索を実行
corpus = genai.get_corpus(name="corpora/my-corpus")
results = corpus.query(
query="Gemini APIのRAG機能について教えて",
results_count=5,
)
for chunk in results.relevant_chunks:
print(chunk.chunk.data.string_value)
After: 自前ベクトルDB(例: pgvector)を使ったRAG構成
import google.generativeai as genai
from your_vector_store import VectorStoreClient # pgvector等のラッパー
genai.configure(api_key="YOUR_API_KEY")
vector_store = VectorStoreClient(connection_string="postgresql://...")
# 埋め込み生成はGemini APIのEmbeddingモデルを利用
embedding = genai.embed_content(
model="models/text-embedding-004",
content="Gemini APIのRAG機能について教えて",
)["embedding"]
# 自前ベクトルDBで類似検索
results = vector_store.similarity_search(embedding, top_k=5)
for doc in results:
print(doc.text)
このように、埋め込み生成には引き続き Gemini API の Embedding モデルを利用しつつ、検索・保存部分を外部のベクトルDBに切り出すことで、特定のベータ機能への依存を減らすことができます。
まとめ
- Google AI (Gemini API) のチェンジログから、ベータ機能一覧の 「Semantic Retriever」 の記載が削除された
- ベータ機能として残っているのは Function Calling と Attributed Question Answering (AQA) の2つ
- 今回の差分からは明確な廃止理由・代替手段の案内は読み取れないため、利用中の場合は公式ドキュメントで現行の提供状況を要確認
- 依存度が高いプロジェクトでは、File Search や自前ベクトルDBへの移行を見据えた設計にしておくと安全
- その他、チェンジログのドキュメント最終更新日が 2026-08-13 UTC → 2026-08-24 UTC に更新された(実装への影響はなし)
Semantic Retriever を利用しているプロジェクトを持つ方は、この機会に一度APIの動作確認と代替構成の検討を行っておくことをおすすめします。