この記事はリンクアンドモチベーション Advent Calendar 2025の12日目の記事です。
目次
- はじめに
- 1. “AIにどこまで任せられるか” が分からなかった
- 2. どの作業をAIに任せる? ── 最初の一歩は「優先度の可視化」から
- 3. 小さく試してみる! ── n8n × GPT で文章作成プロセスを部分的にAI化
- 4. “より重い作業”をAIに任せられるか? ── Devinの活用
- 5. AIに仕事を任せるための3つのポイント
- 6. AI活用で見えてきたUXWチームの強み
- おわりに
はじめに
2025年4月にエンジニアとして UX ライティング(UXW)チームにジョインしました。
UXWチームは、主にプロダクトのデリバリーやヘルプサイトの保守・運用をしています。
それらの業務に、AI(主に GPT / Devin / n8n )を取り入れた結果、業務工数を約 30% 削減することができました。
この記事では、
「個人ではAIを触っていたものの、チームとしては活用が点在し、業務改善につながっていなかったUXWチームが、どのように “AIに任せられる範囲” を見極め、協働へ進化していったのか」
その実践プロセスを紹介します。
1. “AIにどこまで任せられるか” が分からなかった
2. どの作業をAIに任せる? ── 最初の一歩は「優先度の可視化」から
AI活用の難しさは 「そもそもどこにAIを使えばよいか?」 という判断です。
そこで業務を 「コスト(負荷)」×「効果(インパクト)」 の2軸で整理しました。
このマトリクスから、右上に位置する
- 導入コストが低い
- 効果が高い
タスクを初手に選びました。
選ばれたのがこちら:
- リリースメール作成
- リリースノート作成
いずれも「型」があり、情報整理が中心のタスクで、 AIと特に相性が良い領域でした。
3. 小さく試してみる! ── n8n × GPT で文章作成プロセスを“部分的にAI化”
これらのタスクは、文章構造が比較的定型なため、
n8n × GPT を用いたフロー自動化が効果的でした。
処理の流れ
- PdM が Slack に草案を投稿
- n8n が情報を取得し ChatGPTに渡し、一次作成を行う
- UXライターがレビューし、PdMへ最終レビュー依頼
UXライターは、
- 表現の調整
- 読者視点での整合性チェック
- 最終レビュー
に集中するだけでよくなりました。
これが最初の「AIに任せられる範囲」が明確に見えた瞬間でした。
4. “より重い作業”をAIに任せられるか?── Devinの活用
リリースノート作成を任せられたことで、
AIに任せられる範囲をさらに拡張できるのでは?という問いが生まれました。
そこで次に挑戦したのが:
- Zendeskヘルプ記事の作成・更新
- コード変更に伴うヘルプページの影響範囲調査
いずれも手作業だと半日以上かかる作業です。
ここで登場したのが AIエージェント Devinです。
4-1. AIに任せるための基盤づくり(GitHub化)
Zendeskの記事はそのままではAIが扱いにくいため、
記事データを GitHub に整理し、構造化されたファイルとして管理しました。
こうすることで Devin は、
HTML構造・CSSクラス・更新履歴・差分 などを読み取り、
- 何が変わるべきか
- どこを更新すべきか
を推論しやすくなりました。
AIに任せるには、AIが読み取れる構造を用意することが重要だと学びました。
4-2. Playbook を作り、AIに渡す「仕事の期待値」を明確化
Devin に丸投げすると品質が安定しないため、
タスクの進め方を Playbook(手順書) として明文化しました。
Playbookをslackからワークフローで呼び出すことで、安定した結果を得られるようになりました。
プロンプトの内容の一部を抽象化すると:
- 必要情報の整理方法(設計書・対象機能・読者など)
- 既存記事の分析(構造・差分の把握)
- HTML生成ルール(タグ、構造、画像扱いなど)
- 更新範囲の切り分け
- GitHub運用ルール(命名規則・PR作成など)
- レビュー時の報告フォーマット
これにより Devin は 「何を・どこまで・どの基準で」 作ればいいか迷わなくなりました。
AIに任せるには、
“指示”ではなく“仕事の定義” を渡すことが大事という学びがありました。
4-3. 影響範囲調査もAIに任せられるように「工程を分解」
もうひとつの重い作業が コード変更に伴うヘルプページへの影響調査。
これも工程書として次のようなプロセスをAIに渡しました。
- 対象機能・関連リポジトリの把握
- キーワード検索で候補記事を抽出
- 関連度(高/中/低)の分類
- 該当箇所の特定と影響内容の整理
- 優先度別のURLリスト生成
- 判定理由のレポート化
これにより Devin は、 人が2〜4時間かける作業を短時間で再現できるように。
5. AIに仕事を任せるための3つのポイント
Step1. 小さく始める — 最初は、工程だけAI化する
このフェーズでは、小さな成功をつくり、AIを使うと「なんだか良さそう」を生み出す
Step2. AIと人の役割を設計する — 書く/考える を分ける
ここは、AIに任せよう!
ここからは、人がやろう!と納得感を醸成する。
Step3. 成功体験を共有する — 心理的障壁が薄くなり、文化になる
AIを使わないと業務が成り立たない!を作れる。
行動変容モデルの文脈で整理すると、
このプロセスは、態度変容の代表モデル
Unfreeze → Change → Refreeze
の流れに近いと言えます。
裏側にある“態度変容の技術”の詳細はこちら
コラム 〜Tipsの裏側にある態度変容の技術〜
6. AI活用で見えてきたUXWチームの強み
- 情報構造化能力
- 読者視点の判断力
- 曖昧な内容を整理する言語化能力
これらは、
AIとの協働によってむしろ強みとして拡張される
ことが分かりました。
おわりに
AI活用とは単なる技術導入ではなく、
「チームが、AIと協働できる新しい働き方を身につけていくプロセス」
だと感じました。
この記事が、
「AIにどこまで任せていいのか分からない」
「まず何から始めればいいのか迷っている」
というチームのヒントになれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


