1. はじめに
こんにちは。
最近、ChatGPTと対話しながら、いろいろなものを作っています。直近だと「Security Intelligence Library」というWebサイトを作りました。
サイバーセキュリティ、AIセキュリティ、規制・ガイドラインなどの情報を蓄積し、月次・四半期で振り返れるようにした小さなナレッジベースです。
このWebサイト、最初は単純に「いろんな情報をまとめて見れたら便利だな」ぐらいの感じでした。毎回自分で探すのも面倒なので、良さそうな記事を基に調査・分析した内容をまとめて見られるようにしておきたいな、と。
ChatGPTと少しずつ作っていき、あーでもないこーでもないと進めて、こんな形になりました。生成AIとともに、PDCAを回した感じです。
さて、実際にChatGPTを使ってみて、改めて「自分一人でできること」が増えてきた、と感じています。便利な反面、じゃあSIerとしてはどうなんだろう、と思うようになってきました。
いままではお客様に頼ってもらっていたSIerですが、お客様が(本気で)生成AIをフル活用したら……。
これまで従来型SIerが担ってきた仕事は、本当に(今まで通り)必要なのだろうか?
夏の終わりに、こんなことを思って、記事を書いてみました。
2. 生成AIで「作る」の前提が変わった
生成AIによる開発というと、コード生成に着目すると思います。もちろん、それは主要な生成AIの使い方の一つであると思います。
でも、今回便利だったのは、コードを書いてくれることだけではありませんでした。
Webサイトの構成を相談し、実装し、画面を見て問題点を考え、設計を変え、文章を修正する。「これは違う」「この情報はいらない」「こちらの方が分かりやすい」等々、生成AIと壁打ちし、それをすぐに具現化してもらう、という体験です。
今までだったら(アレコレ理由をつけて言い訳をして)諦めていたことが、できるようになった、気がします。
2.1 昔は「何を作るか」から先に進まなかった
昔々、あるところに、2人の男がいました(急に過去語り)。
1人は私、もう1人は私の親友。2人は、居酒屋で酒を飲みながら「(iPhone)アプリを作って一儲けできないかな」と話していました。
しかし、2人のアイデアは凡庸なもので、さらに彼らはプログラミングができませんでした。酔っぱらいの居酒屋トークです。
当時は、何を作るかを考えるところと、それを実際に作るところの両方に壁がありました。
もし当時、今の生成AIがあったらどうだったのでしょうか?
「こんなアプリはどうだろう」と壁打ちし、似たサービスを整理し、誰が使うのかを考え、必要な機能を絞り、簡単な画面案を作り、そのままプロトタイプまで作る、etc.
もちろん、一儲けできたかどうかは分かりませんし、おそらく一儲けはできなかったでしょう。ただ、少なくとも「何を作ればいいか分からない」「プログラムを書けない」という2つの理由だけで終わることはなかったと思います。
生成AIを使えば、今まで「作れない側」にいた人だけでなく、「何を作ればよいか分からなかった側」の人まで、「まず試してみる側」に移ることができる。それが今の状況です。
3. 生成AIは、従来型SIerの前提を崩す
3.1 お客様が自分で作れる領域が広がる
お客様が生成AIを活用すると、何が起きるでしょう?
おそらく、「SIerに頼まなくてもできることが増える」のではないでしょうか。
部門用のちょっとしたダッシュボード、情報収集用ツール、簡単な業務の自動化、etc. こういうものが欲しいけど、外注すると申請が大変だし、予算もないし、みたいなものが、生成AIを活用することで自分自身で作れるようになる、のではないでしょうか。
McKinseyが2026年に公開した調査では、回答者の32%が、AI Coding Agentを使って社内で構築できるため、ソフトウェア製品や機能の購入を見送った経験があると回答しています。
これはソフトウェア製品についての調査なので、この数字をそのままSI市場に当てはめることはできませんが、「今まで外から買っていたものを、自分たちで作る」という変化が始まっていることは興味深いと思います。
3.2 人月ビジネスとの矛盾
以前から、従来型SIerのビジネスモデルについて感じていたことがあります。それは、SIerは企業なので、売上と利益を伸ばす必要がある、という点です。
お客様側にもさまざまな目的がありますが、同じ成果が得られるのであれば、少ない費用、短い期間で実現できた方がよいはずです。一方、人月を基本とするビジネスでは、売上はおおむね「人数 × 単価 × 期間」に連動します。
ここには構造的な難しさがあります。
SIerが意図的に非効率な仕事をしている、という話ではありません。(お客様のために)生産性を上げて必要な人数や期間を減らすことと、(SIerの)売上を伸ばすことが、同じ方向を向きにくい、という話です。
経済産業省のDX関連資料でも、従来のSIビジネスについて、人月単価や多重下請けを中心とする構造、生産性向上と売上拡大が必ずしも一致しない問題が指摘されています。
生成AIによって、これまで多くの人が必要だった作業を少人数でできるようになれば、本来は大きな生産性向上です。しかし、人月を売っている従来型SIerにとっては、必ずしも歓迎しやすい話ではありません。
(お客様第一を謳っているSIerは、本来歓迎しないといけない話なんでしょうが……)
生成AIの誕生によって、我々SIerは構造的な問題を直視せざるを得ない状況に追い込まれている、といっても過言ではありません。
そもそも、SIerは何を売る会社なのか。
今一度、考え直す必要があるのではないでしょうか。
3.3 大量動員モデルの前提も揺らぐ
日本の大手SIerは、本体だけでなく、子会社、関連会社、多数のパートナー企業を含む大きな供給体制を作ってきています。いわゆる「ITゼネコン」と呼ばれる構造です。
もちろん、これには合理性があったことも事実です。大規模システムを開発するには大量の人材が必要でした。そのため、必要な人を集め、工程を分担し、巨大なプロジェクトを管理する能力そのものが競争力になっていました。
しかし、生成AIによって一案件あたりに必要な人数が減っていけば、この前提も変わる、かもしれません。
開発・構築・実装だけでなく、テスト、調査、ドキュメント作成、レビューなどにもAIが広がれば、「大量の人を集められること」の価値は相対的に下がります。
「案件を増やす → 人を増やす → 組織やパートナー網を広げる → 売上を増やす」という成長モデルが、今後もそのまま続くとは限りません(し、個人的には続かないと思います)。
経済産業省の2024年の資料でも、生成AIによって「決められた仕様をプログラミングする」行為の価値が大きく低下する可能性や、人月という労働力をベースとしたものだけではない契約形態を検討する必要性が指摘されています。
生成AIが変えるのは、開発手法だけではなく、従来型SIerを支えてきた産業構造なのかもしれません。
4. SIそのものの比重も下がるのではないか
ここから先は、私自身の仮説です(もちろん今までの記事も個人の見解です)。
よくある議論では、「単純な開発はAIに任せ、SIerはアーキテクチャやインテグレーションなど、より高度な仕事へ移ればよい」というものです。もちろん、そういう仕事は残ると思いますし、ゼロにはならないでしょう。
特に大規模な基幹システム、社会インフラ、複雑な移行などでは、従来型の大型SIが簡単になくなるとは考えにくいです。
ただ、私はSIという仕事そのものがIT投資全体に占める比重や、一案件あたりに必要な工数は、現在より下がっていく可能性があると思っています。
さらに、AIだけでなく、クラウド(SaaS)、APIなどを組み合わせれば、お客様自身が実現できる範囲は以前より広くなってきていますし、そもそも「システムを新しく作る」という解決策を選ばないケースもあり得ます。
つまり、従来型の人月いくらのSIerの仕事は、そもそも件数が減り、規模も小さくなるのではないか、と私は考えています。
5. システムではなく、課題とリスクから始める
では、従来型SIerはどこへ向かえばよいのでしょうか。
私はまず、お客様と話を始める位置を変える必要があると思います。我々SIerは、システム構築(およびそれに伴う設計や要件定義)が、自分たちの仕事の本丸だと考えている、のではないでしょうか。
まず、ここから考えを改める必要があると思います。
なぜならば、お客様が本当に困っていることは、必ずしも「システムがないこと」ではない、からです。
そもそも何がリスクで、現状のどこに課題があって、どの状態を目指すのか、何を優先するのか、何には投資しないのか、etc. 組織を変えるかもしれない、運用やルールを見直すかもしれない、人材育成かもしれない、SaaSを使うかもしれない、AIで十分かもしれない、etc.
そうしたことを整理した結果の一部として、システム構築がある、はずです。場合によっては、何もしないという判断もあるかもしれません。
つまりシステムは、課題を解決するための選択肢の一つにすぎない、はずです。
ここまで来ると、System Integratorという役割そのものを見直す必要が出てくるのでは、という疑問が出てきます。
6. System IntegratorからStrategic Integratorへ
従来型SIerが、高度化することで生き残る、という選択肢もあると思います。でも、私は別の道を考えてみたいと思います。
それが、「Strategic Integrator」です。
「Strategic Integrator」という言葉自体は新しいものではありませんが、生成AI時代のSIerの将来像として、次のような意味で使おうと思います。
Strategic Integrator
お客様の経営課題やリスクを起点に、現状を分析し、あるべき姿とロードマップを一緒に考える。そのうえで、組織、プロセス、人材、AI、SaaS、システムなどの選択肢から、お客様にとって妥当な方法を選び、実行にも継続的に伴走する存在。
従来型SIerがシステムの設計・構築を中心に価値を提供してきたとすれば、Strategic Integratorはシステムの手前から価値を提供する、とお考えください。つまり、経営課題、リスク、業務、組織、人、そしてテクノロジーを横断して考える存在です。
大事なのは、システムを受注することを最初から目的にしないことです。
「これは作らなくてもよいのではないか」「SaaSを使った方がよい」「ここはお客様で内製できる」「これは当社に発注しない方がよい」。
こういうことが言える存在、それが「Strategic Integrator」です。
こう書くと、従来の人月ビジネスとはとても相性が悪い、と言えるでしょう。ですので、単に従来型SIerのエンジニアを「上流工程」に移せば済む話ではありません。収益モデルまで含めた転換になるでしょう。
「その内容だと何人月だからいくら」という収益モデルではなく、何かほかの新しい収益モデルが必要となります。
経済産業省のレガシーシステムモダン化に関する2025年の総括でも、ベンダー企業にユーザー企業の内製化への「支援・伴走」が求められています。
個人的には、その先まで行く必要があると思っています。
内製化だけを支援するのではなく、お客様が何をすべきかを一緒に考え続ける存在。ある意味、お客様よりもお客様のことを理解し、お客様のためにいろいろできる存在。
「お客様のために作る」から、「お客様と一緒に考え、決め、進める」へ。
そこがStrategic Integratorの主戦場になるのではないでしょうか。
7. SIerで働く私たちは、どう変わるべきか
ここまで、従来型のSystem IntegratorからStrategic Integratorへの転換について考えてきました。
では、現在SIerで働いている私たちはどうすればよいのでしょうか。
いきなり全員がStrategicな役割を担えるわけではない、と思います。私は、キャリアの段階によって少しずつ重心を変えていくことがいい、と考えています。
若手はSIを学び、中堅はSI作業の一部を生成AIへ委任・支援させながらStrategicな領域へ広げ、シニアは経験とAIを使ってお客様の意思決定に伴走する、という変化です。
7.1 若手:まずはSIの基礎を身につける
若手については、まず従来型SIで必要とされてきたスキルを身につけることが優先だと思います。
要件を読み解き、設計し、コーディング、テスト、障害調査、運用検討、etc. ネットワーク、データベース、クラウド、セキュリティといった基礎も必要になります。
ここで「従来型SIを学ぶ」と言っているのは、従来のビジネスモデルをそのまま維持すべきという意味ではありません。システムがどう作られ、どう運用され、どこで壊れ、なぜプロジェクトが失敗するのかを知ることが、その後のStrategicな判断の土台になるからです。
生成AIがあっても、こうしたスキルは不要になるわけではありません。お客様と会話するためにも、生成AIが作ったものを評価するためにも必要になります。
いきなり「お客様の経営課題を考えよう」「ロードマップを作ろう」と言っても、システムの現実を知らなければ、実効性のある助言は難しいでしょう。
だから若手は、生成AIを積極的に使いながら、SIの基礎をできるだけ速く、深く学ぶべきです。
7.2 中堅:SI作業をAIで圧縮し、Strategicな領域へ時間を移す
中堅は、生成AIの影響を最も直接受ける層かもしれません。
設計書作成、コードレビュー、テストケース立案、障害調査、etc. これまで中堅が多くの時間を使ってきた仕事の一部を、生成AIが支援・代替するようになってきました。
ここで重要なのは、AIを使って同じ仕事をより多くこなすことだけを目標にしないことです。
例えば、これまで8時間かかっていた仕事が4時間で済むようになったとします。空いた4時間でさらに同じ作業をもう一件こなす、という選択肢もありますが、それだと人月ビジネスの延長線上です。
むしろ、その時間をお客様の業務理解、現状分析、リスク整理、アーキテクチャ、要件そのものの妥当性確認、ロードマップ策定などに振り向けるべきです。
従来型SIの作業を生成AIで圧縮し、自分はStrategicな仕事へ重心を移すこと。
これが重要です。
もちろん、SIのスキルを捨てる必要はありません。自分が理解しているからこそ、AIへ適切に任せられるし、出てきた成果物も評価できます。
SIの経験を土台に、その上へStrategicな能力を積み上げる。そんなイメージです。
7.3 シニア:経験とAIを使い、お客様の意思決定に伴走する
シニアがStrategicな領域へ移るためには、これまでのSI経験に、お客様との関係と生成AIの活用を組み合わせること、になるでしょう。
7.3.1 お客様が悩みを話してくれる関係を作る
Strategic Integratorとして価値を出すには、要件が決まってRFPが出てから呼ばれるのでは遅すぎます。この時点で、だいぶ負け戦です。
「来年度、何を優先すべきか迷っている」「経営からAI活用を求められているが、何から始めればよいか分からない」「このリスクに、どこまで投資すべきなのか判断できない」。
そうした、まだ案件にも要件にもなっていない段階で相談される必要があります。
つまり、お客様と仲良くなっておく必要がある、ということです。しかし、単なる人脈づくりではありません。(飲み会に誘われる関係、ではありません)
お客様が本当の悩みを話してくれる関係を作る、という意味です。
案件を取りに行くときだけ話すのではなく、普段からお客様の業務、経営課題、組織事情、過去の失敗、今後の方向性を理解しておき、いつでも相談できる。
相談相手として真っ先に顔が浮かぶ、そんな存在になる必要があります。
もちろん、そのような存在は、ときには自社にとって都合の悪い助言もする必要があります。
「これは新しいシステムを作る必要はないと思います」「その予算なら、別のリスクへ使った方がよいと思います」「この領域は、当社ではなく別の会社に頼んだ方がよいです」。
そういうことを言えるようになれば、単なるベンダーではなく、本当の意味での相談相手(伴走者)になれます。
7.3.2 生成AIで作業を減らし、お客様との時間を増やす
もう一つ重要なのが、生成AIの活用です。
シニアになるほど、調査、資料作成、会議準備、情報整理などに時間を取られやすいと思います。業界動向を整理する、関連リスクを洗い出す、選択肢を比較する、論点を構造化する、ロードマップのたたき台を作る、etc.
こうした部分は、生成AIをかなり活用できるはずです。
そして大事なのは、そこで空いた時間をさらに資料を作ることに使うこと、ではありません。
お客様と話す、現場を見る、仮説を考える、お客様と議論する、etc. 生成AIを自分の調査・分析チームのように使い、人間にしかできない対話と判断へ時間を振り向けること。そこに長年のSI経験を組み合わせること。それが重要です。
「技術的には可能だが、今回はやらない方がよい」「このリスクは現場ではなく経営が判断すべきだ」「このロードマップでは、先に組織と運用を変えた方がよい」。
お客様との対話に時間を割き、お客様と一緒に考える。
Strategicな仕事とは、大きな構想図を書くことでも、難しい経営用語を使うことでもありません。お客様の状況を理解したうえで、何をするべきか、何をしないべきかを一緒に判断すること、です。
シニアは、「詳しいベテラン」から、「何をすべきか迷ったときに相談される人」へ移っていく必要があるのではないでしょうか。
7.4 キャリアとして考える
こう考えると、生成AI時代のSIer人材のキャリアは、次のように整理できます。
若手
- SIを学ぶ
- 生成AIを使って学習速度を上げる
中堅
- SI作業の一部を生成AIで圧縮する
- 空いた時間を課題分析、リスク、アーキテクチャ、ロードマップへ移す
シニア
- SIで得た経験と生成AIを使い、お客様との対話、判断、伴走へ時間を移す
Strategic Integratorになるために、SIを否定する必要はありません。
若手の頃に身につけたSIの力を、中堅でAIによって拡張し、シニアではお客様の意思決定を支える価値へ変えていくのです。
8. そして、自分自身も変わる
ここまで、SIerという業界と、その将来像について書いてきました。(それはもう、好き勝手に)
しかし、当然ですが、この話は自分自身にもそのまま返ってきます。
「従来型SIerは変わらないといけない」と言いながら、自分自身が昔と同じ仕事の仕方を続けていたら意味がない、ですよね。
昔、親友とiPhoneアプリを作ろうとした頃は、アイデアを具体化することも、それを実装することもできませんでした。
でも、今は違う(違うはずだ、きっと違う)。
Security Intelligence Libraryもその一例で、自分が得意でないものでも、生成AIと壁打ちしながらアイデアを整理し、実際に形にできる範囲がかなり広がったと感じています。
やればできる。
「自分は開発者ではないから」「これは専門外だから」「何を作ればよいか分からないから」という理由だけで諦める必要は、以前より少なくなっています。
逆に言えば、環境が変わっているのに自分だけが変わらなければ、相対的には後退します。(みんなが前に進めば、止まっている自分は相対的に後退します)
生成AIを使って何ができるのか。自分の経験をどう組み合わせるのか。どんな価値を提供できる人になるのか。
SIerという会社だけではなく、そこで働く自分自身も考え直す必要があると思っています。(試行錯誤しながら模索中です)
9. 結論:生成AIはSIerを不要にするのか?
ここまで書いてきて、最初の問いに戻ります。
生成AIはSIerを不要にするのでしょうか?
私は、「SIerそのものが不要になるわけではない」と考えています。
大規模な基幹システム、社会インフラ、複雑なシステム連携、移行、運用など、人の経験や高度な技術力が必要なSIは、これからも残るでしょう。生成AIが進化したからといって、明日からすべての企業がSIerなしでシステムを作れるようになる、とも思いません。
ただし、従来型SIerが、今までと同じ役割のまま必要とされ続けるかというと、私はそうは思いません。
お客様自身が生成AIを使えるようになる、今まで外注していたものを自分で作れるようになる、システムを作らなくてもSaaSやAIで解決できることが増える、SIそのものも生成AIによって少人数・短期間で実現できるようになる、etc。
そうなれば、「大量の人を集めて、人月でシステムを作る」ことの価値は、相対的に下がっていくはずです。
つまり、生成AIが不要にする可能性があるのは、SIerという存在そのものではなく、「システムを作ることを中心に価値を提供する従来型SIer」なのではないでしょうか?
では、何が必要になるのか。
私は、そこにStrategic Integratorという役割があると思っています。
お客様から「このシステムを作ってください」と言われるのを待つのではなく、「そもそも何に困っているのか」「何がリスクなのか」「どこを目指すのか」「何を優先するのか」「本当にシステムを作る必要があるのか」というところから、お客様と一緒に考える存在。
その結果、システムを作ることもある、SaaSを選ぶこともある、生成AIを使うこともある、お客様自身で内製することもある、何もしないという判断もある、必要であれば実行まで伴走する、etc。
これが、私の考えるStrategic Integratorです。
したがって、タイトルの問いに対する今の私の答えは、次の通りです。
生成AIはSIerを不要にはしない。しかし、SIerに「変わること」を強く求める。
System IntegratorからStrategic Integratorへ。
SIを捨てるのではなく、SIを土台にしながら、その先にあるお客様の課題、リスク、意思決定まで扱える存在に。
生成AI時代にSIerが生き残るために必要なのは、AIより上手にシステムを作ることだけではなく、AIを使いながら、お客様と一緒に「何をすべきか」を考えられること。
私は、そこにこれからのSIerの価値があると思っています。
10. おわりに
生成AIのすごさはもとより分かっていたつもりですが、Security Intelligence Libraryを生成AIと一緒に作って、やっぱり「すごい」と感じました。
1人だったら、生成AIがなかったら、たぶん諦めていたでしょう。(諦める前に、思いつきもしなかったかもしれません)
生成AIのおかげで、「個人」レベルでは活動の幅が広がったと思います。
同時に、SIerで働く立場から見ると、恐怖でしかありません。
お客様自身が生成AIを活用すれば、自分の存在価値なんて無くなる、という恐怖です。
今回はその恐怖を文章にまとめ、どうするべきかを考えてみました。
もちろん、完璧な結論はありません。しかし、現状のままで甘んじているわけにはいかない、という危機感は持っています。
願わくば、生成AIがすべての人に富と栄光をもたらしますように!
参考情報
- Security Intelligence Library
https://peridotan.github.io/security-intelligence-library/ - 経済産業省「DXレポート2.1」関連資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dx_support/pdf/002_03_00.pdf - 経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会 今後の検討の方向性」
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240628006/20240628006-b.pdf - 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」
https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html - McKinsey & Company, “The state of AI in 2026: On the road to ROI”
https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai
生成AIの利用について
- 本記事の構成整理と文章の推敲には、生成AI(ChatGPT)を利用しています。
- Security Intelligence Libraryの構築でも、アイデア整理、設計、実装、レビュー、改善に生成AIを利用しました。
- 記事で述べている意見や問題意識、および掲載内容に対する最終的な判断は筆者自身によるものです。