この記事は Claude(設計・構想・レビュー)と Claude Code(実装・記事生成)を相棒にして書いています。AIに作業を「丸投げ(代行)」するのではなく、自分の理解と時間を広げる「自己拡張」の相棒として使う、というスタンスで進めています。
はじめに:休日にしか作業できない、その「時間の壁」
働きながら新しい技術をキャッチアップするって、本当に時間との戦いですよね。
平日は仕事で手一杯。「AIエージェントを自作したい」「学んだことをZennにまとめたい」と思っても、まとまった時間が取れるのは結局休日だけ。しかもその貴重な休日も、実装で力尽きて記事は下書きのまま塩漬け……というのは、仕事と学びを両立させようとするエンジニアの"あるある"だと思います。
私もずっとこの「時間の壁」にぶつかっていました。
このシリーズ(全8回)で挑戦したのは、その壁を気合いと根性ではなく「仕組み」で越えること。具体的には、AIエージェント自作プロジェクト agent01 を題材に、Claude Code を開発と執筆の"相棒"として仕組み化し、Series A・B あわせて16本の記事と1つの動くエージェントを、限られた休日の時間で作り上げました。
この記事は、その全8回(Series B)を「AI×人間のチーム開発挑戦記」として振り返る総集編です。個別ツールの使い方ではなく、どう役割分担し、どう仕組み化し、結果どれだけ心にゆとりが生まれたかにフォーカスしてお届けします。
なお、ここで使うのは Claude Pro アカウントと、ローカルに入れた Claude Code だけです。特別なインフラや追加の有料サービスは使っていないので、「自分の環境でも再現できそうか」という目線で読んでもらえれば嬉しいです。
1. 問題提起:なぜ「AIに丸投げ」では壁を越えられなかったのか
最初に正直に告白すると、私も最初は「AIに全部やらせれば楽になる」と思っていました。
でも、雑に「エージェント作って」「記事書いて」と投げると、返ってくるのは:
- 既存コードの設計を無視した、つぎはぎだらけの実装
- それっぽいけど中身が薄い、どこかで読んだような記事
- 結局自分でゼロから直す羽目になるという本末転倒
つまり「丸投げ(proxy)」では、レビューと手直しの時間が増えるだけで、肝心の自分の理解はまったく深まらないんですよね。これでは時間の壁は越えられません。
実際、最初の数本は痛い目を見ました。AIが出してきた構成案を「それっぽいな」とそのまま採用したものの、読み返すと薄っぺらくて自分でも納得できず、結局ボツに。せっかくの休日を溶かしてしまい「やっぱり自分で全部書くか……」と心が折れかけたこともありました。そこで踏みとどまって、何が足りなかったのかを自分で言語化し直したんです。原因は明快で、「丸投げの指示」に対して「丸投げの答え」が返ってきていただけ。指示の粒度を上げ、構成の意図は自分で握る——この一手間を入れた瞬間から、噛み合い方が一変しました。
ここで発想を切り替えたのが、すべての出発点でした。
2. 思想:AIは「代行(proxy)」ではなく「自己拡張(self-extension)」
私がたどり着いたスタンスはシンプルです。
AIは、自分の作業を肩代わりさせる"外注先"ではない。自分の思考・時間・可能性を拡張する"相棒"だ。
この違いは、チームの組み方にそのまま表れました。agent01 の開発では、人間とAIで明確に役割分担をしています。
人間(自分) ← 「何を作るか」の意思決定・最終レビュー・公開判断
Claude(claude.ai) ← 設計・仕様策定・実装指示書づくり・記事構成
Claude Code ← コード実装・テスト実行・記事生成
PROGRESS.md ← セッション間の文脈を引き継ぐ「共有メモリ」
ポイントは、人間が「考える役」から降りていないことです。意思決定とレビューは自分が握り、その手前の「手を動かす」部分をAIに拡張してもらう。だからこそ、作りながら理解が深まる。これが「自己拡張」の実感でした。
「実験」でも「検証」でもなく、これは紛れもなくチームでの挑戦(challenge)だったわけです。
3. 仕組み:執筆と開発を「仕組み化」した3つの装置
このチームをうまく回すために用意したのが、3つの装置です。Series B の8本は、まさにこの仕組みの解説書になっています。
装置①:CLAUDE.md = チームの「就業規則」
Claude Code は起動時にプロジェクト直下の CLAUDE.md を自動で読み込みます。ここにコーディング規約・Git運用ルール・「まず読むファイル」の3点を書いておくだけで、セッションをまたいでも一貫した動きをしてくれます。
## 作業の進め方
1. `PROGRESS.md` ← 現在地・申し送り事項を確認
2. `AGENT_SPEC.md` ← 仕様・設計を確認
3. 該当する実装指示書(例:`実装指示書_Step02.md`)
毎回口頭で「規約はこうで…」と説明する手間がゼロになります。新メンバーに就業規則を渡しておくのと同じ感覚です。
装置②:実装指示書 = 粒度を揃えた「作業オーダー」
Claude.ai 側で設計した仕様を実装指示書に落とし込み、Claude Code に渡します。8本を通じて痛感したのは「指示書の粒度が品質を決める」ということ。
- ❌「
read_fileを実装して」→ 迷いが出てブレる - ⭕「引数・戻り値・エラー時の動作」まで書く → 一発で意図通り
特に複数ファイルをまたぐ変更(ツール追加で4ファイル同時更新など)では、冒頭に「作成・更新ファイル一覧」を表で明示するだけで、変更漏れがゼロになりました。
| ファイル | 操作 |
|---|---|
src/tools/exec_tools.py |
新規作成 |
src/tools/__init__.py |
エクスポート追加 |
src/tool_definitions.py |
ツール定義を追加 |
src/dispatcher.py |
import と登録を追加 |
装置③:PROGRESS.md = チームの「共有メモリ」
Claude Code はセッションをまたぐと記憶を失います。そこで考案したのが PROGRESS.md 駆動開発。「現在地・全ステップ一覧・申し送り事項」を1枚のテキストに集約し、セッション開始時に読む・終了時に更新するサイクルを回しました。
### Step 01:Ollamaセットアップ+LLMクライアント抽象化
- 完了日:2026-05-30
- 躓いた点:Windowsのcp932で文字化け。
sys.stdout.reconfigure(encoding="utf-8") で対処。
- 申し送り:Step 02でシステムプロンプトを設定する。
このファイルが効いたのは、開発の引き継ぎだけではありません。ここに溜めた「躓いた点・気づき」が、そのまま記事の一次情報(素材)になったのです。開発ログとコンテンツが同時に貯まっていく。これが16本を量産できた最大のカラクリでした。
4. 成果と変化:生まれたのは「時間」と「心のゆとり」
この仕組みを回した結果、何が変わったか。挑戦の総括です。
🕒 時間のゆとり:開発とドキュメントが"同時並行"になった
コードを書いた Claude Code が、そのコードを直接読んで記事を書く。だから「コードの貼り忘れ」「説明とコードの食い違い」がほぼ起きません。実装と執筆を別々にやっていた頃の二度手間が消え、Series A(コード解説8本)と Series B(活用8本)を同じフローで生み出せました。
🧠 心のゆとり:レビューに集中できるようになった
手を動かす作業を相棒に拡張したことで、自分は「この設計で本当にいいか」「この説明は読者に届くか」という、人間にしかできない判断に集中できるようになりました。published: false で下書きを生成 → レビュー → 公開、という安全弁も、この余裕があってこそです。
📈 学びのゆとり:作りながら理解が深まった
そして何より、丸投げしなかったからこそ、cp932エンコーディング問題も、tool_useのモデル選定も、差分適用の安全設計も、全部「自分の知見」として腹落ちしました。手を動かす部分を任せても、判断を自分が握っていれば理解はむしろ深まる——これが「自己拡張」の実感でした。
おわりに:壁は「気合い」ではなく「仕組み」で越える
振り返ると、時間の壁を越えさせてくれたのは、特別な才能でも残業でもなく、役割分担と仕組み化でした。
- AIを代行ではなく自己拡張の相棒と捉える
- CLAUDE.md・実装指示書・PROGRESS.mdでチームの動きを仕組み化する
- 人間は意思決定とレビューという"おいしいところ"に集中する
このスタンスなら、休日の限られた時間でも、着実に積み上げていけます。同じように仕事と学びを両立させようと奮闘しているあなたの、明日からの一歩のヒントになれば嬉しいです。一緒に、心にゆとりのある挑戦を続けていきましょう。
各回の具体的なテクニックは、以下のシリーズで詳しく解説しています。気になる装置から覗いてみてください。
シリーズリンク(Series B)
| 記事 | テーマ |
|---|---|
| B1 | Claude Codeとは・導入と初期設定 |
| B2 | ファイル読み書きを任せる |
| B3 | コードベース探索を任せる |
| B4 | 差分確認・適用を任せる |
| B5 | テスト実行と結果解釈を任せる |
| B6 | 複数ファイル跨ぎの修正を任せる |
| B7 | PROGRESS.md駆動開発 |
| B8 | Zenn記事をClaude Codeに書かせる |
このシリーズで作ったエージェントの実装詳細は Series A:AIエージェントを作って理解する で解説しています。