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Codex でゼロからプロダクションレベルの AI 音楽 SaaS を作った話

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Last updated at Posted at 2026-07-01

デモでも Todo アプリでもない、実際にユーザーが課金している AI 音楽生成プラットフォームの開発記録です。

ScreenShot_2026-07-01_160657_655.png

はじめに

2025年末、AI 音楽生成プラットフォーム Music0 AI を作ることにしました。

「作ることにした」と言うと少し格好つけていますが、正直なところ 「アイデアを検証したいけど、3ヶ月もコードを書きたくない」 というのが本音でした。

ちょうどその頃、Codex が急速に進化していました。「コード補完ツール」ではなく、本当の意味で「ペアプログラミングの相棒」として使えるのだろうか? そんな疑問が出発点です。

結果として、init から本番リリースまで、65コミット、約400のTS/TSXファイル、58,000行超のコード。フロントエンド・バックエンド・決済・多言語・SEO・管理画面まで、すべてカバーしています。 私がやったことの大半は、「Codex に何が欲しいかを伝える」ことと「Codex が書いたコードをレビューする」ことでした。

この記事は AI の宣伝ではないですし、「エンジニアが不要になる」と言いたいわけでもありません。プロダクションレベルのプロジェクトにおいて、Codex で何がどこまでできて、何ができなかったのか を率直に共有したいと思います。


1. プロジェクト紹介:Music0 AI とは

Music0 AI は、テキスト入力から音楽を生成できる AI プラットフォームです。

  • 🎵 AI 音楽生成 — スタイルと歌詞を入力して、完成度の高い楽曲を生成
  • 🎤 AI ラップ — Rap / Hip-Hop に特化したジェネレーター
  • 🎧 AI Lo-fi — Lo-fi / Chill 系の楽曲を生成
  • 🎬 AI ミュージックビデオ — 生成した音楽に映像を自動的に付与

技術スタック

レイヤー 技術選定
フレームワーク Next.js 16 (App Router) + React 19
言語 TypeScript(strict モード)
スタイリング Tailwind CSS 4 + shadcn/ui + Radix
データベース Drizzle ORM + PostgreSQL
認証 better-auth + RBAC
AI プロバイダー 複数のAI音楽API(ホットスワップ対応)
決済 Stripe / PayPal / Creem(3チャネル)
ストレージ Cloudflare R2(S3互換)
国際化 next-intl(中/英/日/韓/西/仏の6言語)
ドキュメント Fumadocs MDX
デプロイ Vercel / Cloudflare Workers

単なるデモではありません。以下の機能を備えています:

  • 完全なユーザー認証・権限管理システム(RBAC)
  • クレジット制 + サブスクリプション + 単発購入
  • 管理画面(ユーザー管理、注文管理、AIタスク管理など)
  • SEO 最適化(sitemap、robots、OG Image、多言語 SEO ページ)
  • ブログシステム・ドキュメントシステム

2. ゼロから1までのリアルなタイムライン

Git ログをそのまま振り返ってみます。

2025-12-15  init → プロジェクト初期化
2025-12-15  update index → トップページ構築
2025-12-16  update studio → スタジオページ
2025-12-17  implement function → コア機能実装
2025-12-17  update cicd → デプロイパイプライン
...
2026-06-30  feat(i18n): add French locale → 6番目の言語追加
2026-07-01  feat: add localized song SEO pages → SEO 最適化

1日目(12/15): テンプレートから初期化、トップページと基本ルーティングを構築。
2日目(12/16): スタジオのコアページが形になる。
3日目(12/17): AI 音楽生成のコア機能が動作 + CI/CD デプロイ完了。

そうです、3日で MVP が動きました。

その後は継続的な改善です。ラップアシスタント、ミュージックビデオ生成、クレジットシステム、料金調整、ゲスト制限、多言語対応、共有機能、再生可能な作品ライブラリ……。すべての機能追加が「Codex に伝える → レビュー → 調整 → マージ」というサイクルの繰り返しでした。


3. ワークフロー:Codex とどうペアプロしたか

3.1 「AI にコードを書かせる」のではなく「AI と協働する」

これが最も重要な意識の転換でした。

多くの方が AI Coding と聞くと「コード補完」や「プロンプトを投げてコードを生成する」ことをイメージすると思います。しかしプロダクションレベルのプロジェクトでは、「AI がコードを書けるかどうか」ではなく、「自分が何を作りたいかを明確に伝えられるか」 が鍵になります。

私のワークフローは次の通りです:

┌──────────────────────────────────────────────────────┐
│  自分(プロダクト設計 + アーキテクチャ + レビュー)          │
│                                                      │
│  1. 要件定義(自然言語で機能を記述)                       │
│  2. コンテキスト提供(関連コードや参考デザインを指示)        │
│  3. コードレビュー(重要なロジックを一行ずつ確認)           │
│  4. イテレーション(問題点を指摘し、修正を依頼)             │
│  5. テスト・検証(pnpm build + 手動テスト)                │
└──────────────────────────────────────────────────────┘
                          ↕
┌──────────────────────────────────────────────────────┐
│  Codex(コーディング + 実装 + リファクタリング)            │
│                                                      │
│  1. 要件を理解し、不明点を質問                             │
│  2. 既存のコード構造と規約を分析                            │
│  3. 完全な実装コードを生成                                 │
│  4. フィードバックに基づいて修正                            │
│  5. 面倒な繰り返し作業を処理                               │
└──────────────────────────────────────────────────────┘

3.2 良質な「コンテキスト」を渡すことがすべて

Music0 のプロジェクトでは、AGENTS.md というファイルを常にメンテナンスしています。これはプロジェクト全体の「開発者ガイド」のようなもので、Codex が起動するたびに読み込まれます。中身は以下の通りです:

  • 技術スタックとフレームワークの規約
  • コーディングスタイルガイド
  • ファイル構成の説明
  • ビルド・デプロイコマンド
  • よくあるハマりどころと注意点

最大の学びはこれです:Codex に渡すコンテキストの質が、そのまま生成されるコードの質に直結します。 AGENTS.md は一度書いて終わりではなく、プロジェクトの進行に合わせて継続的に更新しています。

例えば、私の AGENTS.md にはこんなルールがあります:

js/ts/tsx/mjs ファイルを変更した場合、作業完了前に必ず pnpm build を実行してコンパイルが通ることを確認すること。

このルールのおかげで、Codex は毎回自分でビルド検証を行ってくれます。コンパイルが通らないコードを渡されることがなくなりました。

3.3 実例:新しい AI プロバイダーの追加

新しい AI 音楽 API プロバイダーの接続を例に挙げます。Codex に渡すプロンプトはこんな感じです:

新しい AI 音楽生成プロバイダーを追加したい。
src/extensions/ai/ にある既存の provider の実装パターンを参考にしてください。
必要なこと:
1. 新しい provider ファイルを作成し、他の provider と同じインターフェースを実装
2. index.ts に新しい provider を登録
3. API キーは config テーブルから読み込む

Codex は次のように動きます:

  1. 既存の provider のコードを読み、インターフェースパターンを理解
  2. 同じ interface に沿って新しい provider ファイルを作成
  3. index.ts に登録
  4. pnpm build を実行してコンパイル確認

私がやるのは 生成されたコードのレビュー だけ。API の呼び出し方法、エラーハンドリング、レスポンスフォーマットが正しいかを確認します。所要時間は約10分。自分でゼロから書いたら1〜2時間はかかるでしょう。

3.4 実例:多言語対応

Music0 は6言語(中/英/日/韓/西/仏)に対応しています。この種の作業こそ、AI の効率化効果が最も顕著に現れるところです。

やり方はシンプルです:

  1. まず中国語と英語でコア文言を完成させる
  2. Codex に「en と zh の locale ファイルを参考に、すべてのキーを日本語/韓国語/スペイン語/フランス語に翻訳して」と伝える
  3. Codex は翻訳だけでなく、JSON 構造の一貫性や複数形の処理まで対応してくれる

一人で6言語の SaaS プロダクトを運用する——以前なら考えられないことです。


4. Codex が本当に得意なこと

✅ 1. パターンに沿ったコード生成

プロジェクトに明確なコーディング規約(convention)がある場合、「N番目の同じようなもの」を作るのが非常に速いです。例えば:

  • 2つ目・3つ目の AI プロバイダーの追加
  • 既存のユーザー管理ページを参考にした新しい管理画面
  • 既存の CRUD パターンに沿った新しい API エンドポイント

✅ 2. 地味だけど必要な繰り返し作業

  • 多言語翻訳
  • SEO 関連の metadata・sitemap 生成
  • フォームバリデーション(zod スキーマ)
  • 型定義

✅ 3. リファクタリング

「このコンポーネントを小さなサブコンポーネントに分割して」「このファイルが長すぎるからリファクタリングして」といった指示には、非常にうまく対応します。リファクタリングのルールは通常明確だからです。

✅ 4. ドキュメント・コメントの記述

AI が書くコメントやドキュメントは、人間が書くものより丁寧なことが多いです(人間はたいてい面倒がって書かないので)。

✅ 5. デバッグ・問題の切り分け

エラーメッセージを渡すだけで、素早く原因を特定してくれます。特に TypeScript の型エラーに関しては、AI の対応速度は人間を大きく上回ります。


5. Codex にできなかったこと(踏んだ地雷)

❌ 1. プロダクトの意思決定

「ゲストユーザーに利用制限を設けるべきか?」「クレジットの価格設定は?」「ラップと Lo-fi を別ページにすべきか?」

こうした判断は AI には代替できません。どんな方針でも実装はしてくれますが、どの方針がユーザーにとって最適かは分かりません。

❌ 2. 複雑なアーキテクチャ設計

Music0 では、複数の AI プロバイダーのホットスワップ機構、複数決済チャネルの統一抽象化、クレジットとサブスクリプションの混合課金モデルなど、アーキテクチャレベルの設計が必要でした。Codex は設計済みのアーキテクチャを実装するのは得意ですが、ゼロから良いアーキテクチャを設計するのは苦手です。

❌ 3. UI/UX の微妙なニュアンス

機能的に完全なページは生成できますが、「このボタンの配置でユーザーは迷わないか?」「アニメーションの duration は 200ms か 300ms か?」「この色の組み合わせは心地よいか?」——こうした判断には人間の感性が必要です。

❌ 4. サードパーティ API の細かい仕様

Codex が持っている API の知識は最新とは限りません。決済サービスや AI プロバイダーを接続する際は、自分で公式ドキュメントを読み、正しい API フォーマットを Codex に伝える必要があります。Codex の「記憶」に頼り切るのは危険です。

❌ 5. パフォーマンス最適化の勘所

「このページの初回表示が遅いのはなぜ?」「このクエリにインデックスは必要か?」——一般的なアドバイスは出せますが、実際のランタイムデータを見ていない以上、的確な判断はできません。


6. Codex でプロダクト開発をしたい方へのアドバイス

1. テンプレートから始める

Music0 は ShipAny テンプレートをベースにスタートしました。Codex の最大の強みは「ゼロから創造する」ことではなく、「既存の基盤を高速に拡張する」 ことにあります。良いテンプレート + Codex = 圧倒的な開発速度です。

2. コンテキストドキュメントを整備する

AGENTS.md(あるいは .cursorrulesCLAUDE.md など)は、あなたと Codex の「コミュニケーションプロトコル」です。その品質がそのまま出力の品質に直結します。以下を含めることをお勧めします:

  • 技術スタックの説明
  • コーディング規約
  • ファイル構成の説明
  • ビルド・テストコマンド
  • よくあるエラーと解決策

3. 良いプロンプトの書き方を身につける

Codex とペアプログラミングする際、最も効果的なプロンプトのパターンはこうです:

[何をしたいか] を実装したい。
[どの既存コード] のパターンを参考にしてください。
具体的に必要なこと:
1. [具体的なステップ1]
2. [具体的なステップ2]
注意:[特殊な制約や注意事項]

具体的でコンテキストが豊富なプロンプトほど、生成されるコードの品質は高くなります。

4. 重要なコードは必ずレビューする

AI が生成したコードを無条件に受け入れてはいけません。 特に以下は要注意です:

  • セキュリティ関連のコード(認証、権限、決済)
  • データベース操作(データの安全性)
  • サードパーティ API 呼び出し(フォーマットの正確性)

Music0 では、決済関連のコードはすべて一行ずつ手動でレビューしました。

5. AI には「やりたくない仕事」を任せる

「面倒だけど必要」な作業こそ AI の出番です:

  • 多言語翻訳
  • テストケースの作成
  • SEO 最適化
  • 繰り返しの CRUD コード
  • コードフォーマットやリファクタリング

節約した時間は、プロダクト設計、アーキテクチャ、ユーザー体験の改善に投資しましょう。


7. 数字で振り返る

指標 データ
プロジェクト開始日 2025-12-15
総コミット数 65
TS/TSX ファイル数 約400
コード行数 約58,000行
対応言語数 6(中/英/日/韓/西/仏)
AI プロバイダー 複数(ホットスワップ対応)
決済チャネル 3
ルーティングページ 20以上
再利用可能 Block コンポーネント 12種
Extension モジュール 8

8. まとめ

Codex は「コードを書かなくてよくなるツール」ではなく、本当に重要なことに集中するためのツール です。

Music0 の開発を通じて、私の役割はテックリードに近いものでした:

  • プロダクトの意思決定
  • システムアーキテクチャの設計
  • 要件を Codex が理解できるタスクに分解
  • すべてのアウトプットのレビュー
  • Codex では対処しきれないエッジケースの処理

Codex は最高の「ジュニアエンジニア」です。実行力があり、疲れず、文句も言わず、安定したアウトプットを出してくれます。ただし、何を作るべきかを知っている人間の導き が不可欠です。

本当の生産性向上とは、「AI がどれだけコードを書けるか」ではなく、「アイデアをどれだけ速くプロダクトに変換できるか」 にあります。

もし AI を使ったプロダクト開発に興味があるなら、今すぐ始めてみてください。 ツールが完璧になるのを待つ必要はありません。実際のプロジェクトで試行錯誤することが、最良の学習方法です。


技術的な詳細に興味がある方は、ぜひコメントでお気軽にどうぞ。


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