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はじめに

Qiitaの記事をきっかけに Tricentis の自動化テスト製品を知り、実際に触ってみました。
その中で、自動化を「作って終わり」にしないための考え方(運用まで意識した仕組み)が、製品全体に反映されているように感じました。

Tricentis は「どれか1つのツールで完結させる」というより、
用途に合わせて複数の製品を組み合わせ、テストの作成から管理までつなげていく使い方が想定されている印象です。

本記事では、実際に試した次の3製品について紹介します。

  • Tosca
  • Testim
  • qTest

「それぞれ何が得意で、どう組み合わせられるのか」を、触って分かった範囲でまとめます。
(※Tricentis には他にも製品がありますが、本記事では上記3製品に絞って紹介します)

日本語情報がまだ多くなく、最初は全体像をつかみにくいと感じたため、以下の観点で整理しました。

  • 3製品の役割の違い(どれが何を担当するのか)
  • どう組み合わせると効果的か(運用までの見える化)
  • 実際につまずきやすい設定ポイント(試して詰まった箇所)

3製品の役割(説明)

結論から言うと、Tricentis は「1つのツールで全部やる」というより、役割の違うツールを組み合わせて使う 前提の製品群だと感じました。

それぞれの担当は次の通りです。

製品 何をするツール? 得意なテスト どんな時に効く?
Tosca 業務シナリオ全体を自動化し、回帰テストを“継続的に回す” Web / API / DB / SAP など幅広い領域 仕様変更が多い業務システムでも、修正しながら長期運用したい時
Testim ブラウザ操作を記録して、WebのE2Eテストを“素早く作る” Web(ブラウザ)E2E 録画ベースでサクッとE2Eを作りたい時/機能追加のたびにテストを増やしていきたい時
qTest テストケース・実行結果・不具合をまとめて管理し、状況を“見える化する” 要件~実行~不具合~レポートの管理 手動・自動の結果を集約して、“今どこまで確認できているか”をすぐ把握したい時

補足
Tosca は、スキャン・実行に LauncherSetup.exe が必要なため、Windows 環境が前提です。
qTest は、実行ツールではなく、結果を集約し、判断できる形に整える管理ツールです。

3製品を組み合わせた全体像

自動化を “作って終わり” にせず、“品質管理まで回せる” イメージです。

test.png

Toscaの操作方法(総合テスト:Comprehensive test)

前提:Tosca の Web UI はブラウザで操作できますが、スキャンや実行には LauncherSetup.exe が必須です。
exe を使用するため、対応 OS は Windows 前提となります。

Tosca の画面は英語ですが、ブラウザの翻訳機能を使えば基本操作は十分追えました。
左メニューの Home にクイックスタート(動画あり)が用意されているので、最短で理解するにはガイドに沿って進めるのがおすすめです。

【クイックスタートガイド】

  • Comprehensive test(総合テスト)
  • On-premises trial(オンプレミストライアル)
  • API test(APIテスト)
  • API Simulation(APIシミュレーション)
  • Administration(管理)

スクリーンショット 2025-12-09 14.00.21.png

今回は上記ガイドのうち Comprehensive test(総合テスト) を実施しました。
基本はガイド通りですが、実際に操作して詰まりやすかったポイントも合わせて書きます。

総合テストの流れ

【全体のステップ】

  1. Install Launcher(ランチャー導入)
  2. Install browser extension(拡張機能導入)
  3. Scan your app to create modules(スキャンしてモジュール化)
  4. Create a test case(テストケース作成)
  5. Add your test case to a playlist(プレイリストへ追加)
  6. Run your playlist(実行)
  7. Check progress and results(結果確認)

【操作手順】

① Launcher をインストール

LauncherSetup.exe を実行するだけでインストールが完了します。

② ブラウザ拡張機能をインストール

Chrome の拡張機能として、以下をインストールします。
Tricentis Automation Extension for Chrome

ポイント
インストール直後に拡張機能が Disconnected になっていても問題ありません。
次の③で必要コンポーネントが導入されると Connected になります。

image.png

③ アプリをスキャンして Module を作る

以下の流れで進めます。

[Scan your app][Create module][Web application(選択)][Start scan] をクリックすると Tricentis Launcher が起動し、スキャンに必要なローカルコンポーネントの導入/更新が自動で走ります。
(このタイミングで拡張機能が Connected になります)

スクリーンショット 2025-12-20 21.56.34.png

スキャン対象の 「Web アプリ」を選択し、スキャンを開始します。
画面上で必要な”要素”をクリックして取り込み、完了にて保存してモジュール化します。

スクリーンショット 2025-12-20 22.29.28.png

”壊れにくいモジュール”にするポイント

1. 画面の全要素をスキャンしない(必要最小限の要素だけ取り込む)
全部取り込むほど差分が増え、修正コストが上がりやすくなります。

2. 命名規則を決めて、後から探せる状態にする
例:
 Page_{画面} / Comp_{部品} / Flow_{業務フロー}
 Btn_ / Txt_ / Tbl_ / Lbl_ のプレフィックス固定

この2点だけでも、後から「直す・増やす」が格段に楽になります。

④ テストケースを作成する

スキャンで作成したモジュールを使って、テストケースを組み立てます。
[Create a test case] から作成画面へ遷移します。
Value(入力/期待値)を入れると 「Action Mode」 と 「Data Type」 が自動設定されます。
必要なら Action Mode(Input / Verify / Output など)や Data Type(String / Date / Numeric など)を個別に変更できます。
[Save][Run] で動作を確認します。

スクリーンショット 2025-12-21 10.03.14.png

⑤ テストケースを Playlist に追加する

Tosca では、複数のテストケースを 実行単位(Playlist) にまとめます。

[Go to cases] からテストケースの一覧画面へ遷移します。
対象を選択 → [Create playlist] → 名前を入力 → [Create]をクリックします。

※ Playlist では、実行順(Parallel / Sequential)、実行パラメータ、使用 Agent(Personal / Team)なども必要に応じて設定できます。

スクリーンショット 2025-12-21 16.01.36.png

⑥ プレイリストを実行する

Playlist の [Test run] をクリックして実行します。
実行すると Last run に状態(State) が表示されます。

Last run(State) 意味
Pending 実行待ち
Running 実行中
Canceling キャンセル処理中
Canceled キャンセル済み(またはタイムアウト)
Succeeded すべて成功
Failed 失敗が含まれる

スクリーンショット 2025-12-21 16.18.23.png

⑦ 結果と進捗を確認する

[Open runs] をクリックすると、その Playlist で実行した Test run の一覧が表示されます。
実行結果を開くと、どのテストケース/ステップが成功・失敗したかを追跡できます。

スクリーンショット 2025-12-21 16.39.28.png


Tosca の API テストは「UIと混ぜられる」から強い

Tosca は APIテストも実施できます。
「API テストを Tosca でやる理由は?」と調べてみたところ、個人的に “なるほど” となったポイントがありました。

Tosca API の強みは、UI テストと API テストを “1つの業務シナリオ” に混在できることです。

例)ECサイトの注文フローを “1本のテスト” として表現すると、業務フローは次のようになります。

  1. UI:注文操作(ユーザー操作)
  2. API:注文状態確認API
  3. API:在庫確認API
  4. UI:注文確認画面の表示確認

ここで「UI操作のE2Eだけでよいのでは?」となりがちですが、UIだけだと“どこで壊れたか”が見えにくくなる場面があります。

たとえば次のようなケースです。

▶ UIだけの場合

  1. 注文ボタン押下:成功
  2. 注文確認画面:成功
    → 一見テストは通ってしまう

▶ UI+APIを混ぜた場合

  1. 注文ボタン押下:成功
  2. 注文状態確認API:成功
  3. 在庫確認API:失敗(在庫なし)
  4. 注文確認画面:成功
    → 「在庫確認APIで落ちている」が明確になる

つまり、UI+API を混在させることで処理の途中経過が可視化され、どこで・何が・なぜ失敗したか を、より正確に把握しやすくなると感じました。

Testim(テスト自動化)

Testim は基本的に Web上(ブラウザ)で完結して動かせます。(Macでも操作可能)

【操作手順】

① 新規テスト作成 → 記録(Record)

左メニュー [Editor] から作成画面へ移動します。
赤い ● ボタンで記録開始URL入力[CREATE TEST] をクリックします。

デモサイトが表示されたらログイン操作を実施し、停止(◎)[Save] をクリックします。
「Name」「Description」を入力して [OK] で保存します。

スクリーンショット 2025-12-22 6.03.40.png

② 検証(Validation)を追加する

ログイン後にメニューが表示されていることを検証したい場合など、Validation を追加します。

[+]M(Testim predefined steps)[Validations][Validate element text] → 検証したいテキスト要素を選択 → [Save] をクリックします。
その後ダイアログに補足を書いて [Save] をクリックします。

スクリーンショット 2025-12-22 6.45.16.png

③ 実行(Run test)

上部の ▶(Run test)で実行できます。
完了すると成功/失敗が表示され、各ステップにもアイコンが付きます。
ステップをダブルクリックすると詳細結果も確認できます。

スクリーンショット 2025-12-22 7.13.01.png


便利だと思った機能:Shared Steps(共通化)

同じ操作(例:ログイン)を各テストに毎回記録すると、テスト作成が大変になります。
Testim には Shared Steps として操作を共通化し、使い回せる仕組みがあり、この機能を使うと作成・保守がかなり楽になります。

① 作成したテスト右上の「フォルダ+(Add group)」でグループ化します。

② 新規テストの [+] → ファイルアイコン(Shared Steps)から呼び出して利用します。

これにより、同じ操作の重複を減らせて、変更が入ったときの修正箇所も最小化できます。

スクリーンショット 2025-12-22 9.04.15.png


qTest(テスト管理)で “品質として回す”

Tosca / Testim で自動テストが増えるほど、次のような課題が出やすくなります。

  • 「結局どこまでテストできた?」が追えない
  • 失敗しても、再現手順や環境がバラバラで開発に伝わりにくい
  • 手動と自動の結果が散らばり、リリース判断が感覚になっていく

ここで qTest(qTest Manager)をテストの司令塔として使うと、

要件 → テスト → 実行 → 不具合 → レポート

が一本につながり、テストが「作業」から「品質管理」に変わります。

Testim × qTest 連携:自動テスト結果を“管理できる形”にする

この連携で得られること
自動テストの結果が qTest に集約されることで、 「実行した/失敗した」だけでなく「品質判断できる形」 に整います。

今回は Testim と qTest の連携を試しました。
(Tosca も連携項目があるため、考え方としては同様に進められます)

① Testim 側:qTest API 接続設定

【Testimの操作】
左メニュー [Settings]Project Settings[INTEGRATION][TEST MANAGEMENT] で「Tricentis qTest」の URLAPI Key を入力し、[CONNECT]をクリックします。

  • URL:https://{環境ごとに異なる}.qtestnet.com/
  • API Key:qTest 画面上部の(↓)アイコン → 「API & SDK」→ Bearer Token
    ※ “Bearer ” は含めず、トークン文字列のみを入力します

スクリーンショット 2025-12-23 15.12.56.png

② qTest 側:プロジェクト/テストケースを作成 → Testim と紐付ける

【qTestの操作】
[Project] からプロジェクトを作成 → [Test Design] でテストケースを登録します。

補足:qTest には「全体管理(Admin)」と「プロジェクト管理」の画面があります。
Admin 側でプロジェクトを作成し、プロジェクト管理側で対象プロジェクトを選んでテストケースを書いていくイメージでした。

【Testimの操作】
作成したテストを開き、⚙アイコン →「Test in qTest」の項目が表示されます。
qTest 側の "プロジェクト" と "テストケース" を選択し [SAVE] をクリックします。

スクリーンショット 2025-12-24 3.56.14.png

③ 実行結果を qTest に記録する

【Testimの操作】
(▶)再生アイコン横の (▼) から [Run on a grid] を選択して実行します。
この方法で実行すると、結果が qTest 側に記録されます。

重要(ポイント)
[Run test(▶)] ボタンでの実行では、qTest API が呼ばれず、qTest 側に実行結果が反映されませんでした。
必ず [Run on a grid] で実行する必要があります。

【qTestの操作】
対象プロジェクト → [Test Execution] を開くと、Testim の実行結果が反映されていることを確認できます。

スクリーンショット 2025-12-24 4.49.05.png

補足
TestimqTest の実行結果日時は UTC で保存・表示されました。
日本時間(JST)は UTC + 9時間 として読み替えが必要です。

まとめ

今回触ってみて感じたのは、Tricentis は

  • Tosca / Testim で自動化を “作る”
  • qTest で結果を集約して “品質として回す”

という形で、自動化の運用までを前提に設計されている ツール群だということです。

自動テストは「実行して終わり」になりがちですが、qTest と連携すると実行結果が自動で残り、追跡・共有・判断がしやすくなります。
「自動化を資産として積み上げる」観点では、この連携はとても強力だと感じました。

参考リンク(公式)

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