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CPANはなぜHTTPを捨てないのか 〜47日証明書時代の配布インフラ論〜

Last updated at Posted at 2025-12-15

はじめに

近年、公開TLS証明書の有効期限が「47日」へと短縮される流れが進んでいます。一見するとこれは「セキュリティ強化」の話に見えますが、インフラ運用・言語エコシステム・パッケージ配布の観点では非常に大きな副作用を持っています。

この記事では、

  • なぜCPANは今でもHTTP/rsyncを捨てていないのか
  • なぜPyPI/npmなどは47日時代に苦しくなるのか
  • これは技術の遅れではなく「設計思想の違い」だという話

を整理します。


結論(先に)

CPANがHTTPを廃止する予定は、公式にも思想的にも存在しない。それは「遅れているから」ではなく、廃止できない構造と役割を担っているから。


47日証明書で何が変わったのか

証明書が47日になるということは、実質的に以下を意味します。

  • 年8回以上の証明書更新が必須
  • 人手運用は破綻
  • 自動更新できない環境は即死

影響を受けるのはWebサービスだけではありません。

実際に壊れるもの
  • パッケージ配布(pip / npm / cargo)
  • CI/CD
  • 隔離ネットワーク・オンプレ環境
  • 古いOS / 組み込みLinux
  • 災害・障害時の緊急復旧環境

つまり、「今すぐ1コマンド入れたい」世界が壊れます。


中央集権型パッケージレジストリの弱点

PyPI / npm / crates.io などの特徴は共通しています。

  • 中央レジストリ
  • HTTPS必須
  • 証明書・CAバンドルに強く依存

1回でも証明書更新に失敗すると、以下が全滅します。

  • pip install xxx
  • npm install
  • cargo build

これは「言語の問題」ではなく、配布インフラ設計の問題です。


CPANはそもそも何者なのか

CPANは単一のサービスではありません。

  • 世界中の大学・研究機関・個人が運営する
  • 独立したミラーの集合体
  • 中央運営者が存在しない

そして設計の前提はこれです。

  • インターネットは壊れる
  • 証明書も壊れる
  • だから配布は壊れないようにする

CPANがHTTPを廃止できない(しない)理由

1. 強制できる主体が存在しない

CPANには「HTTPSを必須にする」と決めて強制できる中央権限がありません。各ミラーは独立しており、

  • HTTP
  • HTTPS
  • rsync
  • FTP

を各自の判断で提供しています。

2. rsync / HTTPは一次手段

CPANにおいてTLSは「必須」ではありません。

  • rsync mirror.example.org::CPAN /usr/local/CPAN

証明書が壊れていても、配布は成立します。

3. 壊れた世界で動くことが使命

CPANが生き残ってきた理由は、

  • 古いUNIX
  • オンプレ
  • 隔離ネットワーク
  • 初期レスキュー環境

でも最後まで動いたからです。HTTPを廃止すると、これらを切り捨てることになります。それはCPANの存在理由そのものを否定します。


「でもHTTPは危険では?」への答え

CPANのセキュリティモデルは以下です。

  • CHECKSUMS
  • PAUSEによる作者管理
  • 署名(任意)
  • ソースコード文化

重要なのは:

TLSは改ざん防止にはなるが、悪意あるコードは防げない

CPANは「経路」より「内容」で安全性を担保しています。


他言語との比較

エコシステム TLS依存 ミラー文化
CPAN 任意
RubyGems やや低
Maven
Go Modules 回避可能
PyPI 必須
npm 必須

47日時代に強い配布とは

  • 中央依存しない
  • rsync / HTTPで同期できる
  • ローカルミラーが作れる
  • 証明書が壊れても配布できる

これは「古い」思想ではなく、障害前提設計です。


まとめ

CPANがHTTPを捨てないのは技術的遅れではない。47日証明書時代でも生き残るための、意図的な設計である。
証明書は壊れる
中央サービスは落ちる
だから配布は壊れてはいけない
CPANは、その前提を30年守り続けています。


おわりに

「HTTPSを強制すれば安全」という単純な話ではなく、
“壊れた世界で何が残るか”
を考える時代に入っています。47日証明書は、その設計差をはっきり可視化しました。


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